いやあアレですよ、違うんすよ、愛情表現なんすよ。
好きだから、良い子だから……、ぶん殴りたい、みたいな。そういうのあるでしょ。
例えばゆゆゆの友奈ちゃんとか仲良くなってからおもむろにぶん殴ったらどんな絶望顔見せてくれんのかなみたいなそういう邪念、誰にでもあるでしょ?
ぶん殴って「う、ぐう……?!え……、なん、で?」から「その、ごめん、ね。何か、気に障ること、しちゃった、んだね。ごめん、ごめんね……」みたいな?あの屈託のない笑顔を曇らせてえなあと思いませんか?
そのあと謝って優しく撫でる。DV男の気持ちになるでごぜーますよー(パッションアイドル感)。
そして最終的に、あんなに明るかったあの子が、常にビクビクしてこちらの顔色を伺いつつ媚びた笑顔を見せるように!周りからなんか言われても、「あの人は私がいないと駄目だから……」みたいな?
あーーー、美人のヒモになりてーーー。
ロンドン二日目。
さて、フィッシュ&チップスを食べて……。
うん、まあまあ美味い。
「塩気が、ない……?」
驚愕している長門。
「イギリスの料理には、基本的に自分で塩をかけるんだよ」
「そういうもの、なのか」
そういうもんよ。
「しかしこの、フィッシュ&チップスと言うもの……、あまり美味くはないな。紅茶は中々だったんだが」
「しゃーない」
イギリスの飯は、そんなに美味くはないから。
「まあ、食い物に文句は言わん。食えるだけで幸せだ。もぐもぐ」
そうだね、俺もそう思うよ。
「で、提督、今日の予定は?」
「母校の教授に挨拶してくる」
「ほう」
いるかな、レイトン教授。
グラッセンヘラーカレッジ。
俺はここで、考古学を修めた。
「因みに守子ちゃん、学部は?」
「あ、人文学部です」
「そうなんだ」
と、守子ちゃんを引き連れて大学へ。
ついでに扶桑もついてきた。
「旅人さん、本当にこんな良い大学に通ってたんですか?」
失礼な。学歴詐称などしていないぞ。
っと、ついた。
教授の研究室だ。
『教授ー』
ノックする。
すると。
『その声は……、ああ、やっぱり。久し振りだね、旅人君』
山高帽の英国紳士が現れた。
『彼女達は?』
『恋人、兼同僚です』
『……私の記憶だと、他にも何人かと結婚していなかったかい?』
『気のせいでは?(すっとぼけ)』
『……男性たるもの、いつでも紳士であることを心がけなくてはいけないよ』
おや、やんわりと女癖の悪さについて注意された。
『これ、お土産に。日本のお菓子です』
『ああ、ありがとう。英国には旅行かな?』
『ええ、社員旅行です』
『ああ、そう言えば提督になったとか……。世界征服はどうしたんだい?』
『やってますよー』
と、教授といくらか言葉を交わして、紅茶をご馳走になって。
『じゃ、そろそろ帰りますわ。近くに来たらまた会いに来ますし、力が必要なら呼んで下さいね。教授と冒険できる日を、また、楽しみにしてます』
『ああ、私もだよ』
大英博物館。
「教授はやっぱり良い人だったな」
「優しそうな人でしたね」
と、守子ちゃんと言葉を交わしつつ。
大英博物館の見物。
すると、ロゼッタストーンの前で微妙な顔をする日向が。
「うーん」
「どうした日向」
「ああ、君か。……私には、これが価値あるものに見えなくてね」
「まあ、単なる掲示板みたいなもんだからな」
ただ古いだけ、とも言えてしまう。大したことは書いていない。
「なんて書いてあるんだ?」
「……父の王位を継いだ若き者、王の中で最も傑出したる者、エジプトの守護者、神々にどこまでも忠実に仕え……」
「あー、もういい、分かった。いや、分からないが」
そう?
「と、言うより、読めるのか。何やら古い文字のようだが」
「ヒエログリフだね」
読もうと思えば幾らでも。
「あ、あれは分かるぞ。イースター島のモアイだ」
「そうだよ。イースター島のモアイだ。ホア・ハカナナイアだね」
「しかし不気味だな、何のために存在するんだ?」
「あー、これは、アクアクって邪霊を封印するためにあるんだよ」
「……聞いたことがないんだが」
「いや、本当だって。モアイの下にはアクアクがいるんだ。実際に俺がイースター島に行った時は大きなアクアクが復活して、あわや地球壊滅の危機、ってところだった。まあ、現地の精霊やとあるケロン人と事件の解決に努めたが」
あん時はやばかった。死ぬかと思った。実際に軍曹殿は一回死んだ。
「ケロン人とは?」
「ガマ星雲第58番惑星、ケロン星の知的生命体だ」
「つまり、なんだ、宇宙人と協力して古代の悪霊を倒したと?」
「だからそう言ってるじゃんよ」
「はぁ……」
何かおかしいこと言っただろうか?
「阿賀野ー」
「はーい!」
ロンドン橋で阿賀野とプチデート。
「私、お邪魔ですよね、すいません……」
消え入りそうな声で言う守子ちゃん。
「なんの、守子ちゃんも一緒にデートだー」
「ダブルデートだよ、提督さん!」
「い、いや、ダブルデートって言うのは、2組の男女がデートすることで、二人の女性を連れて歩くことじゃ……」
「まあ、良いじゃん良いじゃん、気にしないで。ほら、夕暮れが綺麗だよ」
ロンドン橋で見る、暮れなずむ夕陽は例えようもなく綺麗だった。
「わあ、綺麗……」
「そうだねぇ」
「ロマンチックな雰囲気だね……」
「そうだねぇ」
「ここは、夕陽をバックにキスなんてすべきじゃないかな?かな?」
「そうかねぇ」
じゃあほら、ちゅー。
「んー❤︎」
「守子ちゃんもするかい?」
「いっ、いえ、私は……」
「えー?折角だしして貰えば、提督さん」
はい、守子ちゃんも。
「そ、その、ちょっと、私は、んぅ❤︎」
『エエエィメェェェン!!!』
「ぐ、おお、守子ちゃん、逃げるよ!」
夜、やばいのに見つかった。
「きゃああああ!!!」
銃剣が何本も飛んでくる。怖い。ヤバい。
「何ですかあれえええ!!!」
「イスカリオテだ」
「知りませんよ!」
「ヴァチカンの悪魔祓い機関だよ、そういや俺、悪魔とか吸血鬼とかになりかけてるからな、そりゃ狙われるわな」
『薄汚い化け物(フリークス)に、神罰をォォォ!!』
「あっ、ぶねえ!」
守子ちゃんを庇って銃剣が複数本背中に刺さる。
「げ、が、はっ、守子ちゃん、取り敢えず、王立国教騎士団のところまで逃げよう。流石にあれも、ヘルシング機関の本拠地までは入って来ないだろう」
「た、旅人さん……」
「転移、は無理っぽい、結界が張られてる。物理で逃げるしかないか」
「……私のこと、置いていって下さい!」
「守子ちゃん?」
「今、私が足手まといになっていますよね?旅人さん、私のことは気にせずに、逃げて下さい」
「駄目だ」
「でも……」
「大丈夫、俺は嫌なことから逃げることに関しては超一流だ。見とけ……」
やりたくなかったが、しょうがない。
「あ、が、があっ!!!」
変異誘発剤で肉体を変異させ、背中に羽を生やす。反動で刺さった祝福済みの銃剣が抜ける。痛いね、痛い。
物理より祝福済みってのがよく効く。
「はぁ、はぁ、はぁ、空飛ぶから、掴まって」
「でも」
「早く、見つかるから」
結界を解析、このタイプなら……。
「これを、抜いてェ!ぎぃ、い、焼けるゥ……!」
焼ける手のひらを無視して、結界の基点となる銃剣を抜く。結界が薄くなり、そこから突破できる。
俺は完全な悪魔吸血鬼じゃないので、聖なるものに対してもこれくらいのダメージで済むのだ。
「さあ、逃げよう」
「は、はい」
割と簡単に逃げ切れた。青鬼くらいの難易度だったな。
レストランにて。
「ふいー、痛え痛え、死ぬかと思ったぞ」
「とか何とか言っても、どうせ死なないでしょ、旅人さん」
「死ぬときゃ死ぬよ、神風ちゃん」
誤解されがちだが、死ぬときは普通に死ぬ。
「お、このパイは中々だな」
「そうね、でもやっぱり、私は和食の方が好きだけど」
まあ、和風な見た目してるもんな。
今日だって旅行だって言うのに、洋服じゃなくって和服だし。
「あれ?もしかして、私服、和服しか持ってないの?」
「ええ、そうよ」
えー、あー?
「洋服プレゼントしようか?」
「要らないわ、どうも洋服は性に合わなくって」
そう?
……さっきから注目されまくりなんだがね。
『オー、サムライガール?』
『wahuku……』
『ジャパニーズ……』
和服で海外旅行する人、初めて見たかもしれん。
しかも、姉妹含めて五人で和服だ。
世界の法則が乱れる……。
「さーて、ヤバイのに見つかる前に帰るぞー」
「はーい」
二日目も無事(?)終了し、帰る日に。
「いやー、生きてるって素晴らしい」
「また死にかけたんですってね」
と、如月。
「まあ、よくあることさ」
「もう、心配かけちゃ駄目よ?」
「ああ、ごめんな」
これっぽっちも悪いとは思っていないが、謝っておく。
悪いのは俺じゃない、クソ物騒なイスカリオテだ。
俺は人間なのに……。
まあ、母校があるとは言え、クソ面倒な連中、美味くない飯、とっても怖い吸血鬼の旦那と、来るメリットは殆どないイギリス。
「また来ましょうね、司令官」
「お、おう」
また、かぁ……。
音成提督
無事トラウマに。
旅人
ロンドンには極力行きたくない。