うどんより蕎麦!
特に天ぷら蕎麦が大好きでして。あと鴨せいろ。
でも量が少ないんすよね。
「ベイ、どうだい、黒井鎮守府には慣れたかい?」
「あ、Admiral!う、うん、大丈夫、all OK、黒井鎮守府、とっても良いところ」
「……」
「あの、Admiral?」
「ベイって言うとあの中尉を思い出すな」
「え?誰ですか?」
そんなことはどうでも良い。
もうやめにしませんか?ベイ中尉について考えるのは。
俺の中でのベイはガンビア・ベイちゃんただ一人!
あんな串刺し公のことは忘れよう!
「ベイは可愛いもんな、よしよし」
「ふにゅ……、私、Admiralに撫でられるの、好きです……❤︎」
ベイは可愛い。
アメリカ人にしては(まあ、この鎮守府生まれだから正確に言えばアメリカ人ではないが)控えめで大人しい女の子だ。
はっきりものを言う女の子も好きだが、控えめな子も可愛らしいしいじらしい。好きだ。
だが、こうしていると。
「AdmiralはMeのhusbandよ!」
「私のよ!」
「いや私のだ!」
あっはっは、海外艦達が取り合いを始めたぞー。
全くぅ、可愛いなあ君達は〜!
「私の!」
「私のだ!!」
「ぐああああああ!!!」
ブチっていっ、あ、腕取れた。
「あ、ごめんねAdmiral」
「くっつけよう」
「ぐああああああ!!!」
取れた腕を傷口に押し付けられる。
「ちょ、ちょっと待っ」
「そうだ、折角だからこの腕もらって良いかしら?」
アイオワがもぎ取った俺の腕に頬擦りする。
「サラに食わせるのか?」
ガングートが尋ねる。
「駄目よそんなの、勿体ない」
ビスマルクが茶々を入れる。
さて。
「良いかな君達、まず、人の腕を捥いだらごめんなさい、じゃ済まないな、でもとりあえずごめんなさいだろ?」
「「「ごめんなさい」」」
「そう、それで良い」
俺はポーションを服用して回復し、腕を再生する。
袖ごと持ってかれたからな、服も縫い直す。
正直、肉体持ってかれるより服が駄目になる方が困る。
さて海外艦。
海外艦の皆んなは、サイコパスだがかなり社交的で、日本の艦娘達とも仲良くしてくれている。やはり、サイコパス同士何か通じ合うところがあるのだろうか?
基本的に誰とでも仲良くしてくれるし、外部の人間に対しても態度が悪いなんてことはない。
そして、海外艦の特徴として、旅行好きなところがある。
俺がこっそりと海外艦旅サークルと呼んでいる海外艦の集まりは、黒井鎮守府がノルマさえこなせば何も言わないし、好きなだけ休んでいいというところを利用して、毎月旅行に行っている。
黒井鎮守府は、ゲゲル方式を採用している。即ち、決められた時間内に、決められた数の深海棲艦を討伐する方式。
最近は、月や週の初めに一斉に出撃して、深海棲艦を一気に山ほど殺し、そのあとはまた来月来週まで休むというのがデフォルトになってきている。
具体的には一週間で千体のノルマ。因みに、鬼クラスなら五体分、姫クラスなら十体分とカウントされる。
ここで、海外艦は、月の初めに一斉に出撃し、深海棲艦を四千体殺害し、残りの日を遊んで暮らすような形になった。
他にも、別途お小遣いが欲しい場合は、追加で出撃することもあるし、趣味で夜戦の申請(夜戦は残業と同じで申請を出す必要がある)をする子、習慣として毎日出撃する子など色々いる。
因みに、深海棲艦の撃破数は、最初は適当な艦娘にバグンダダ持たせてカウントさせようかと思ったけど、それは手間なので、工廠にアクセサリー型の自動撃破数カウンターを作ってもらい、それを使っている。
「ねーえ、Admiral?ベイばっかりじゃなくってMeも構ってくれなきゃ嫌よ?」
アイオワが頬を染めて再生した方の腕にしなだれかかる。
「はいはい、分かったよー」
分かりましたともー。
そのまま俺はクレーン車もかくやと言ったパワーで引っ張られ、隣に座らせられた。
ビスマルクが膝の上に、ガングートが空いたもう片方の隣に座る。
はいハーレム。
「ねえねえ聞いて?この前はね、皆んなでヨハネスブルグに行ったのよ!」
「そうか」
「……心配とかそういうのは?」
「あのね、確かにヨハネスブルグは治安悪いけど、観光客が普通に観光してたら襲われたりなんかしないんだよ。よくネットでヨハネスブルグのガイドラインなんてのを見るけど、あんなん嘘だからな」
「そこは嘘でも心配してるって言うのよー!」
「いや、俺はアイオワの強さを信用してるからなあ。俺より強いアイオワなら、どこでも大丈夫だろ」
「むぅ〜」
むぅ〜、じゃないよ。君、俺より強いでしょ。
「それで、どこに行ったの?」
「あのね、色んなところに行ったわ!えっと、Lionがいっぱいいるの!」
あー、ライオンパークだっけ。
「Lionはね、こーんなにbigだけどcatみたいで可愛いの!」
んん?
「あれ、ライオンパークは確かサファリパークみたいに車で回るやつだったはずだけど?」
「降りたわ」
降りたの?
「だって、間近で見たかったんだもの」
「現地の人びっくりしたでしょ?」
そういうのはやめようね!
「ええ、確かに現地の人間はびっくりしてたみたいだけど、実際、Lionに噛まれた程度じゃ痛くないし……、それに、Lionもちょっとじゃれついてきただけなのよ?catと同じよ!」
「はっはっは、一般人はライオンにじゃれつかれたら死ぬんだぞー」
「それでね、そのあとは移動して、ビーチに行ったの!penguinがいっぱいいたわ!……penguinって、皆んな寒いところにいるものだと思ってたわ」
「ああ、ケープペンギンね」
ボルダーズビーチか。あそこは良いぞ眺めが最高だ。
「ビスマルクは気に入ったから一匹持って帰ろうとか言って、鞄に押し込もうとしてたわ!」
「野生動物は捕まえないでねー」
「はーい」
ビスマルクが返事をする。
「でも、Me達、サファリでハンティングしてきたわよ?」
「そうなの?」
ふむ。
ハンティングか。
自称自然保護活動家、なんて連中は大嫌いだよな、ハンティング。
俺は結構好きだけどね。
人は生きているだけで沢山の生き物を殺しているし、毛皮や角の為に獲物を狩ることの何が悪いのかね。
感謝の意と敬意が大事なんであって、行為そのものはそこまで悪くねえだろうに。
肉をとる家畜と何が違うんだ?家畜の肉は良くて、ヒョウの皮は駄目なのか?鰯はあんなにお安くやり取りされるのに鯨は駄目なのか?それをお前らが決めるのか?
結局、生命の価値なんて主観でしかないんだ。
「殺し過ぎたりしてはいけないよ、環境の保護は大切だからね」
「もちろんよ!」
なら良いさ、生態系を大きく崩さない程度ならハンティングでも何でもやれば良い。
「それでね、私はleopardを狩って、毛皮をとってきたの!とっても綺麗よ!」
ん?
「どうやって狩ったの?」
「普通に、飛びかかってきたから、捕まえて頚椎を折ったの」
んん?
「それで、えっと、ビスマルクはbuffaloを銃で、ガングートは素手でelephantを狩ったわ!」
んんんんんー?
「ワシントン条約って知ってる?」
「ええ、大丈夫よ、ちゃんと、うちの息がかかった密輸業社に運ばせたから!all OK!」
何が?
ま、まあほら、多少はね?
犯罪は駄目だぞぅ、と叱っておいたが。
まあ、なんかあればマネーパワーと裏社会パワーでもみ消すし。
「あ、あの……」
「おやおや、どうしたベイ」
「わ、私も構って下さい……」
「おお、いいとも」
可愛い奴め。
「むー!むー!」
「アイオワ、嫉妬しちゃあ"あ"あ"あ"あ"!!!」
また折れた。
海外艦旅サークル。
毎月一週間くらい旅行する。
旅人
旅人の旅は旅行ではなくライフワークであるため、海外艦旅サークルとは相容れないところがある。