旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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子供の頃はSDガンダムが好きでした。

旅人が大丈夫大丈夫とたまに言うのは、運び屋リ・ガズィからきています。


322話 死の楽団

ここは地下室。妙高型の拠点だ。

 

私達、妙高型が支持する、アサシン教団の旗がかけられた一室。

 

ホワイトボードに男の写真を貼り付けて、妙高姉さんが口を開く。

 

「ターゲットはこの男。カーチック・ゴドフリー。46歳、アメリカ人。アブスターゴの幹部よ。例によって、裏から世界を支配しようと暗躍しているの。つまり、提督の敵ね。質問は?」

 

質問は?と問われれば、当然、ある。

 

私は、手を上げて尋ねた。

 

「はい、那智」

 

「ターゲットの位置、警備は?」

 

「ネバダ州で休暇中、らしいわ。いつもの、警備員満載のビルに突撃って訳じゃないから、その分楽かしら?」

 

若干雑な説明だが、正直に言って、警備状況がはっきり分かることなどまずない。

 

そもそも、警備状況が丸裸になるならば、最初から依頼なんてこない。

 

依頼主であるアサシン教団も暗殺者の団体。殺せるならばとっくに殺している。我ら妙高型に来る依頼は、どれも、警備が厳重過ぎてまともに暗殺できないようなものばかりだ。

 

まあ、これも、まともな人間ならば、という次元での話。艦娘である私達には特に問題はない。

 

「はーい」

 

足柄が元気よく挙手。

 

「はい、足柄」

 

「逃走経路は?」

 

「今回も、教団が用意した足を使います。陸路で一日移動した後は、飛行機で帰国しますから、偽造パスポートを無くさないように!特に足柄!」

 

「あ、あはは、はーい」

 

足柄はパスポートを失くして、一人だけ別ルートで帰ったことがある。

 

この手の仕事でミスは許されないというのに、全く。

 

「あ、あの」

 

「はい、羽黒」

 

「ど、毒物の制限は?」

 

「ネバダ州の真ん中よ?拡散性がある毒は駄目、極力小規模のものにしてね」

 

「わ、分かりました」

 

その後もいくつか質問を重ねて、準備ができたところで。

 

「それじゃあ、行きましょう」

 

空路で、ネバダ州へ。

 

 

 

ネバダ州ラスベガス。

 

艦娘としても、暗殺者としても縁がない土地だ。

 

実際、今回来るのも初めてのことだ。

 

だがまあ、どうとでもなるだろう。

 

ターゲットがいるのはこのカジノらしい。

 

いつもの、フード付きコートを着込んで、カジノ内に入店。

 

ターゲットは……、いた。

 

二階の吹き抜けのすぐ側。

 

……ん?

 

「成る程」

 

『レディースアンドジェントルメン!本日は、この、カーチック・ゴドフリーの主催するショーにようこそおいで下さいました!』

 

罠、か。

 

その瞬間、カジノのドアや窓が締め切られる。

 

そして現れる大量の警備員、そして、サイボーグ。ほう、月光……、アームズ・テック・セキュリティ社製の無人二足歩行兵器のことだ、まで導入してきたか。

 

『楽団め、やり過ぎたんだ、貴様らは。今日こそ終わりにしてやる!死ね!』

 

楽団、とは、私達の業界での呼び名だ。

 

能面で活動しているうちにそう呼ばれるようになった。

 

ふむ、にしても、どうやら本気で潰しにきたらしいな。

 

第一陣、警備員、小銃で武装。

 

ふむふむ。

 

「いやはや、侮られたものだ」

 

笑える話だ。

 

この程度で、私達が殺せるとでも?

 

艤装召喚、アルタイルの剣。

 

無論、伝説と謳われたアサシン、アルタイルの剣の本物ではなく、レプリカであり、艦娘用に作られた超硬合金製の両刃剣だが。

 

「シィイ!!!」

 

『速っ……?!!』

 

一太刀で首を斬り飛ばす。

 

私は無駄に痛めつけるようなことはしない。

 

一瞬で殺してやるぞ。

 

「それっ」

 

『ぺぁ』『ぶがっ』『げはっ』

 

大円月刀を振るい、一息に数人をまとめて吹き飛ばす足柄。

 

『くそ、くそおおお!!!死ねえええ!!!』

 

足柄は小銃で撃たれるが、避けない。それくらいじゃ私達は死なないし、大してダメージもないからだ。

 

『う、嘘だろ、マシンガンを食らってピンピンしていやがる?!!』

 

「やったわね?」

 

『う、う、うわあああ!!化け物おおお!!!』

 

「あら、失礼しちゃう。えいっ」

 

『があっ』

 

蹴りの一発で、首から上が柘榴のように弾けた。

 

全く、足柄め、殺し方が汚いな。

 

私のようにスマートにできんのか。

 

ほら、妙高姉さんのようにしても良いぞ。

 

『死ねえええ!!!』

 

「ふっ」

 

二本のピストルソードで小銃の弾丸を弾く。

 

単純に、小銃より私達の方が速いのと、それを成すほどに剣が丈夫なのがある。まあ、弾丸が当たっても死なないんだが。

 

『ヒッ、あ、弾切れ、が、あぁ』

 

「死になさい」

 

さくり、と。

 

心臓を貫いて、殺す。

 

首を断ち、頭蓋を割って、殺す。

 

流れ作業のように手早く殺す。

 

やはり、妙高姉さんは一流だな。

 

羽黒も負けていないぞ。

 

『お、おい、おかしい、何かがおかしい。そう、そうだ、四人いたはずだよな、三人しかいねえ、ぞ……?がはっ』

 

『何だ、どうし……、げへぁ』

 

気配を完全に消して、指揮官を殺して回っている。

 

暗殺という一点においては黒井鎮守府最高の腕前だからな。

 

さて、そろそろ第二陣が来るか。

 

第二陣は、サイボーグか。

 

『死ねえ!!!』

 

まあ、人間よりはマシだが。

 

それでも。

 

「甘いな」

 

要は、私達にとって、斬るものがちょっと変わっただけなのだ。

 

血と肉ではなく、カーボンと人工筋肉の塊と言うだけ。

 

とどのつまり、斬れるのであれば、相手が何でも構わないのだ。

 

「貴様が死ね」

 

どんどん、首を斬り落としていく。

 

「なんだ、サイボーグも大したことはないな」

 

さっきの焼き増しだ。

 

足柄は素手でサイボーグを投げ飛ばし、大円月刀でボディを斬り飛ばして殺す。

 

妙高姉さんも二刀流で手早く首を斬り落として、舞う。

 

羽黒もこっそりと殺す。

 

さて、最後に第三陣。

 

月光などの無人兵器だ。

 

まず、足柄が、こんなこともあろうかと!と言いつつ、取り出したチャフグレネードで撹乱。

 

まあ、やはり、これもまた。

 

斬るものがちょっと変わっただけだ。

 

鉄の塊を斬れば良いんだろう?

 

簡単な話だ。

 

フリーランで月光のボディを駆け上がり、メインコンピュータらしき部分に剣を突き立てる。

 

『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!!!』

 

図体だけ、だな。

 

他の妙高型も、同じような要領で月光を撃破していた。

 

さて。

 

「カーチック・ゴドフリーだな」

 

『ば、馬鹿なっ!!あれだけの数を一分で殲滅だと?!あり得ん!!!』

 

「そうか、では死ね」

 

『ま、待ってくれ、金ならいくらでも』

 

「ん、ああ、いや、金は最低限で良いんだ。私はな、」

 

『げ、あ……!!』

 

「お前のような屑には、一人でも多く死んで欲しいだけなんだ」

 

半ば慈善活動なんだよ、これは。

 

 

 

その後は、陸路で逃走。

 

顔もバレてない。

 

服も着替えた。

 

完全に旅行に来たOL四姉妹にしか見えないだろう。

 

使った武装も全て艤装なので、喚んだり消したりは自在。

 

検問も素通りだ。

 

「いやあ、大したことなかったわねー!」

 

「足柄……!」

 

「ヒッ、妙高姉さんごめんなしゃい」

 

「良いですか足柄?今回は珍しく、罠にかけられたんですよ?つまりこれは、相手側がこちらを狙って来たと言う訳です。要するに、今後もこのようなことがあるかもしれない、のですよ」

 

「ま、まあまあ、あの程度なら幾らいても」

 

「その油断がいけないのです!もしも提督のお手を煩わせるようなことがあれば……、私は絶対に許しませんよ!」

 

「もー、分かってるわよー!」

 

まあ、確かに、このように罠をかけられるのは初めてのことだ。

 

つまり、暗殺は、これからもっとやりづらくなるだろう。

 

司令官が嫌う屑共の排除も、うまくいかないと言うことだ。

 

この世界は司令官のもの、司令官が心地良く暮らせるよう整備するのが私達の使命。

 

だと言うのに、仕事が捗らなくなると思うと、怒りが湧くが……。

 

「まあ、良いだろう。今日のところはゆっくり休んで、また次に目一杯殺そうじゃないか」

 

「そうそう、帰って飲みましょ!」

 

「ああ、全くもう……、でも、そうね、休むのも仕事のうちね」

 

頷く妙高姉さん。

 

「羽黒も飲もうな。ああ、お前は酔わないんだったか?」

 

「う、うん、アルコールにも耐性があるから。でも、折角だから一緒にお酒飲もう?」

 

「ああ、そうだな」

 

こうして、飛行機に乗り、無事帰国した。

 

 

 

うむ、一仕事した後の酒は、格別に美味いものだな。

 




妙高型
暗殺者兼艦娘。

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