二月下旬、先日の青葉の密着取材から一週間が過ぎ、青葉ちゃんの新聞(何故か俺のグラビアばかりだった)も出た頃。ウチの優秀な(自称)猟犬、古鷹と加古は……。
「なーにやってるんですかね?古鷹、加古」
「あ、提督、お洗濯をしようと思いまして!」
あー、確かに、「何か手伝いたい」って言ってた二人に、洗濯を頼んだっけ?
……でも、俺の分は頼んでないんだけどなぁ?それに、
「何やってるの?」
「折角ですから、少し休憩をしてるんです。提督も一緒にどうですか?」
満面の笑みを浮かべる古鷹。かわいい。……けど、何で俺のシャツを羽織ってるんですかな?加古は俺のベッドで、俺の枕を抱いてお昼寝中。なにこれぇ?
「まあね?別に休憩するのは良いよ?でもね、その、何で俺の服を?あっ、待って、嗅がないで?」
「?」
「その、心底何言ってるかわからないみたいな顔やめて?いや、かわいいけどさ?」
だぼだぼの黒いシャツを羽織り、余った袖を鼻に押し当てている古鷹。成る程、これが日本の萌えというものか。最強かな?
「すんすん…………、んっ、はあ…………❤︎」
こいつぁ、グレートですぜ?まるで麻薬でもキメたみたいに蕩けていやがる!そして古鷹は、服の匂いを嗅ぎながらも、俺の手を引くと、ベッドに押し倒す。
「ふぁあ、あ、提督?……起きたら隣に提督がいる……。えへへ、なんか、良いなぁ、こう言うの。さて、お昼寝再開、っと」
加古は、寝ぼけながらも俺の右手をがっちりホールド。反対側は古鷹がホールドしている。やばいやばいやばい、理性が、理性が!!
「……提督❤︎大好きですよ❤︎ずっーと一緒にいて下さいね❤︎戦争が終わっても、ずっーと、ですよ❤︎……私、お母さんになりたいんです❤︎提督は、きっと素敵なパパになれると思います❤︎」
「……むにゃ、私、提督の為なら、料理でも洗濯でも頑張っちゃうよ❤︎だって、提督が大好きだから❤︎……好きだよ、提督❤︎大好き❤︎一生一緒だよ❤︎」
あ"あ"あ"あ"あ"!!!ステレオ催眠音声あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!理性ィィィィィ!!!!
「おあ"あ"あ"あ"!!!ヤメロォ!!狼さんになっちゃう^〜!!」
「ふふふ、じゃあ、私達はワンちゃんですね❤︎提督の忠実な犬です❤︎いっぱい可愛がって下さいね❤︎」
「……ふぁあ、提督はそう言うのが好きなのか?もー、しょうがないなぁ❤︎提督の為なら、犬にでもなんでもなってあげちゃうからね❤︎」
あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!
……泣きたくなるような状況だ、ミスらしいミスはしてないのに。
どうして……。
この据え膳を食うとオワり。鎮守府での立場とか色々と。
なんとか避妊、てか(穏便に)逃げなきゃ……!
頼む……!
……こない……!
変えてくれっ!
誰でもいい……!
このすけべな空気、流れを変えてくれっ!
誰でもいい……!
悪魔でも……!!
「……ん?」
「……もう、誰ですか?そこのドアのところ」
「んむぅ、折角提督と良いところだったんだ、さあ、帰った帰った!」
「待ってくれ、赤城は俺が呼んだんだ!これから弓の稽古をするって約束で!!と言うことで、また後でな、古鷹、加古!!」
「もう、分かりました、また後で、ですからね!ほら、加古!起きて!!」
「ふぁあーあ、はいはい、起きますよー、っと」
そう言うと、俺の服を洗濯カゴに入れて持って行った古鷹。……あのカゴ、古鷹と加古の服も一緒に入ってるよな、アレ。……そっとしておこう。
「……提督、何だか、気配が死んでますよ?」
「……いつものことだよ」
「……で、稽古だっけ?俺程度に教わることなんてなくない?」
赤城に連れてこられたのは弓道場。何でも、倉庫から引っ張り出してきた弓に慣れないので、稽古をつけて欲しい、とのこと。
「いえ、提督の弓の腕は神懸かり的ですから。是非、ご教授願いたいです」
と、加賀が言う。そうか?俺より上手い奴なんて一杯いるぞ?アメリカで会った弓使いのヒーローなんて凄かったよ、この世界最高の腕前だった。
「私も、噂の弓の腕を見てみたいです!」
「私も!」
蒼龍ちゃん、飛龍ちゃん、我が鎮守府が誇るおっぱいドラゴン。……相変わらず、正規空母の皆んなはむちむちで良い身体してるな。言い寄られたら10秒で堕ちる自信がある。気を付けねば。
「その、出来れば私も……」
鳳翔さん。すらりとした日本人女性らしい身体。この前着物を着てもらった時は、あまりの美しさに膝から崩れ落ちた。俺が。
だが、俺が本気で大弓を射ったら、弓道場の壁を貫く自信がある。そうならないよう、予め的の後ろに大盾を配置しておく。
「よし!(適当)じゃ、今から射るから。見てろよ見てろよ〜?」
懐からアーロンの大弓を取り出し、構え、放つ。
一射目、的のど真ん中を貫き、後ろに配置した黒鉄の大盾に突き刺さる。
二射目、先程射った一射目の大矢の筈に当てる。威力は、大矢を割らないように注意して控えめ。
三射目、四射目も同様。
最後に出来たのは、四本の大矢が一本の棒になったもの。大盾から棒を引っこ抜き、修理の光粉を振りかけ、懐に仕舞う。
「……と、まあ、こんなもん」
「……相変わらずの腕前ですね……!」
感嘆する赤城。このくらい、ちょっと練習すれば誰にでもできるのにな。
「凄い!凄いです!!」
「提督、かっこいい!!」
よせやい、照れるぜ。ダブルドラゴンに囃し立てられる。
「はい!じゃ、やってみて?」
「「「「あ、それは無理です」」」」
?、何で?
「提督、その心底分からない、と言った顔をおやめ下さい。いかに艦娘といえども、可能不可能はあります」
そうか?これくらい普通じゃん?
「あ、あの、提督?この黒弓の使い方ですけど……」
的に向かって、ファリスの黒弓を構える鳳翔さん。
「ああ、それはちょっと使いづらいけど、構え方を……」
「あ、分かりづらいので、私の後ろに立ってもらえますか?できるだけ密着して。……あっ、はい、そうです、そんな感じです❤︎」
黒弓を構える鳳翔さんの背中にくっ付き、構えている手を上から握る。……いいのかなぁ、こんなことして。
そうして、適当に指導したところ……。
「提督、次は私達を」
加賀、ちょっと待って、握力強い。肩掴まないで?
「あはは、次は私達ですよ、加賀さん。……まだここに来たばかりで、あまり戦闘慣れしていませんからね?」
蒼龍ちゃん?痛いよ?肩掴まんといて?
「は?」
「何か?」
うーん、この。最早日常の一コマとなりつつある修羅場。加賀、蒼龍ちゃん、二人とも至近距離で睨み合っている。……けど、二人とも、かなり巨乳なせいで、おっぱいがくっつかって、こう、ね?目福ですわ。………………よし、そろそろ止めるか。
「やめなされ、やめなされ……」
「「ひゃわあ!!」」
脇腹つーん。
「きゅ、急に突っつかないで下さいよ!」
「あ、頭にきました!」
「仲間外れは良くないなぁ?俺も入れてくれないと!じゃあ、じゃんけんで勝った方からね!時間は先でも後でも一緒、五時には終了、良いね?」
「「……はい」」
「ではまず、私達、一航戦からですね」
とのことで、じゃんけんに勝った加賀が、期待に満ち溢れた目でこちらを見る。
「うん、よろしくね。……じゃあまず、大弓はかなりの筋力と技量が要求されるから…………という訳。分かった?」
「……そうですね、口頭だけでは少し分かりづらいので、私の後ろに立って、密着して……、はい、そうです、気分が高揚してきました。はい、はい、そうです、妻手を力強く握っていただいて、…………はい❤︎」
えぇ?良いのかなぁ?いや、俺はまあ、ただ後ろから抱きついてるみたいなもんだし、理性も生き残っているけど。
まあ、そんな感じで……、
「私の番、ですか?は、はい、よろしくお願いしますね。……成る程、祈りを込めて……?!、その、着弾した矢が爆発したんですけど……?」
「よーし、次は私です!飛龍には負けないから!!……え?これ、竜狩りの大弓って言うんですか?……それは、なんと言うか……。ま、まあ、良いです!……んっ、提督、力、強いんですね❤︎」
「提督、この弓面白いねー、剣にもなるんだ。……何で弾薬を消費するのかは聞いちゃ駄目?……ま、いっか。これなら多聞丸も喜んでくれ…………、え?多聞丸と会った?菅野デストロイヤーとも会った?!じょ、冗談ですよね?!ねえ?!!提督?!!」
と、皆んな満足してくれたみたいだ。最悪、ドクロ先生を呼ぶくらいのつもりだったが、大丈夫みたいだ。
あと、返された洗濯物は、古鷹と加古の甘ったるい女の子の匂いでいっぱいだった。ちょっと嬉しい。
古鷹、加古
猟犬。
赤城
食欲が神域。ミルヴッドの大弓をもらう。
加賀
鬼討ちの大弓をもらう。
鳳翔
ファリスの黒弓をもらう。
蒼龍
竜狩りの大弓をもらう。
飛龍
シモンの弓剣をもらう。
多聞丸、菅野直
異世界に漂流した。
弓使いのヒーロー
サーカス出身。紫色。弓が上手いだけの一般人。
ドクロ先生
一度見た技を完璧にコピーする上、それを他人に有料で教える銭ゲバ。頭がおかしい方の赤タイツと旅人とは腐れ縁。
旅人
弓と投擲武器ならチート級。