旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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艦娘がファンタジー風VRMMO世界でちょっと冒険する話なんてどうでしょう?

ネタくれ。


336話 異世界転移これくしょん その5

はい、こちらアイオワ。

 

昨日の夜の飲み会以降の記憶がないわ!

 

HAHAHAHA!

 

笑っちゃうわね!

 

「で?ここはどこかしら?」

 

暗い街角。

 

中世風。

 

何処からか血生臭いような臭いが漂ってくるのが、艦娘という超常的な感覚神経の持ち主であるMeには感じられたわ。

 

それに、薄暗い。

 

月明かりだけが、陰鬱な街並みを怪しく照らしている。

 

時計を見たら夜の十二時であることが分かった。

 

「どこよ、ここ」

 

遠くから、人のような、獣のような遠吠えが聞こえる。

 

うーん、そうね。

 

取り敢えず、歩いてみましょうか。

 

 

 

あ、人影。

 

ghost、ではない、わよね?

 

嫌よ、ghostとか。

 

そういうのはシラツユシスターズの領分でしょう?

 

さて、と。

 

取り敢えず英語で良いわよね。

 

「hey!」

 

「ウ、あ」

 

あら?

 

……人じゃないわね、これ。

 

「ヴァア、うるぐるるう」

 

人の形をした、獣?かしら?

 

血生臭い、獣臭い。

 

化け物じゃないかしら。

 

でも、Admiralもこれ以上の化け物だし、話が通じるかも。

 

「もしもし、英語は分かるかしら?」

 

「ケモノ、獣の、獣が、ああ、あうるるる」

 

「……その、ここはどこかしら?」

 

「……まれ」

 

「え?」

 

「黙れえれれ?!、この病気持ちのネズミが!!殺してやるれ!!!れあ!れあるるる!!!」

 

片手の斧を振り上げて、襲いかかってきた。

 

「ちょ、ちょっと貴方ねえ……」

 

ただの鉄の斧みたいだから、素手で受け止めたけれど……、腕力が凄いわね、人間の倍くらいあるんじゃないかしら?

 

「もしかして、物盗りとか、そういうのかしら?Meは軍人だから、無駄な殺しはしない主義なんだけれど……、襲ってくるなら、殺すわよ?」

 

その時。

 

「………………ぁぁぁ」

 

「ん?」

 

「ぉぉぉあああ!!」

 

人の胴体を真っ二つにできそうなほど重厚な斧を持った大柄なおじさんが、目の前の獣人間を蹴り倒して。

 

「がああああ!!!」

 

「ぎぃあああああ?!!!」

 

頭をかち割った。

 

え?

 

……え?

 

やだ、何これ。

 

何でこんなgrotesqueな光景を見せられなきゃならないの?

 

Meなんか悪いことした?

 

「……女、無事か」

 

「……あっ、え、ええ、大丈夫よ」

 

大柄なおじさん……。

 

片手には、そう、確か、ヤマカゼが持っていたものと同じ大斧。左手には散弾銃……、それも、antiqueな古いモデルのもの。服装は神父服に黒いマント、そして、黒革の帽子。

 

少し長めの髪、そしてヒゲ。色は銀。顔は、悪くないけど、表情が険しいのと、目元をボロボロの包帯で隠しているのが不気味でminus pointかしら?

 

「獣狩りの夜に出歩くとは……、愚かな女だ」

 

「獣狩りの、夜?」

 

「……知らないのか?お前……、この匂いは、人じゃないな、艦娘、とやらか」

 

「え?に、匂い?!」

 

やだ、Me、変な匂いとかするの?!

 

「匂い立つなぁ……、分かるんだよ。鉄と火薬の匂いがするんだ」

 

「metal?gunpowder?そ、そうかしら?Meには分からないけれど」

 

really?!

 

「アイリーンなら教会だ」

 

え?え?

 

「あ、あのね、Meはここに迷い込んだみたいなの」

 

「……迷い込んだ、だと?」

 

「ええ、その、昨日、酔っ払って」

 

「……馬鹿なのか、お前は」

 

なっ、ば、馬鹿とは何よ!!

 

「う、うるさいわね、たまには羽目を外したって良いじゃない!それで、ここはどこなの?」

 

「ヤーナムだ」

 

ヤーナム……、シラツユシスターズが話していた、ような?

 

「そう……、それで、黒井鎮守府に帰りたいのだけれども」

 

「知らん」

 

知らんって……。

 

「俺はお前らがどこからきたかなんて知らん」

 

まあ、そうよね、それもそう、か。

 

「……だが、道くらいは教えてやる」

 

「あら、thank you」

 

なんだ、思ったより優しい人ね。

 

 

 

おじさん……、ガスコインと名乗った神父さん。

 

一緒にヤーナムの街を歩く。

 

ヤーナム。

 

この古い都は、とある病が流行っているそうだ。

 

その名も、『獣の病』。

 

感染したものは、理性を失い、獣になるそうだ。

 

聖職者ほど、より強大な獣になる、とか。

 

そして、月夜の日。

 

獣狩りの夜が始まる。

 

獣狩りの夜とは、即ち間引き。

 

獣の病により、獣となって暴れる人々……、いえ、『元』人々を、殺して回る夜のこと。

 

そうやって、獣狩りを実行する人々のことを、狩人と呼び。

 

狩人は獣の血に塗れながら、獣狩りを行うらしい。

 

この、ガスコインさんも、狩人の一人だと言う。

 

相棒のヘンリックさんとは別行動で、『仕事』をしているらしいこと。

 

狩人狩りのアイリーンと言う人が面倒を見てくれると言うこと。

 

獣は殺せるなら殺してしまって良いこと。

 

それくらいしか聞き出せなかった。

 

何せ、このガスコインと言う人は、気難しい上に無口で。

 

あまり話しかけることはできなかったし、話すのが面倒なようで、答えてはくれなかった。

 

でも、なんだかんだ言って、仕事の最中に素人で一般人(?)のMeを案内してくれる辺り、悪人ではないな、とは思うわ。

 

 

 

「アイリーン」

 

「何さガスコイン……、あら」

 

案内された先には烏の羽の大きなマント。黒い革の服と小さなとんがり帽子。ペストの医師のような、嘴のような白いマスク。

 

声からして女性、それも老齢の。こちらもまあ、不気味ね。

 

「可愛らしい子じゃないか。それにこれは艦娘だ」

 

「ええと、貴女がアイリーンさんかしら?」

 

「そうさね、私がアイリーンさ」

 

「Meはアイオワって言うの。よろしくね。その、それで、Meはちょっと迷っちゃって……」

 

と、経緯を話すと。

 

「……成る程ねえ。迷い込んだのかい」

 

納得してもらえた。

 

因みに、ガスコインさんは、アイリーンさんにMeを預けると仕事に行くと言ってどこかへ行った。

 

薄情ね。

 

「しかし、参ったね。獣狩りの夜だ、安全な場所なんてありゃしないよ」

 

そう?

 

なら……。

 

「うーん、そうね、折角だし、お仕事を手伝ってあげるわ!」

 

「手伝い?……艦娘なら、できる、か。いやあ、それでも狩人でもない奴が獣狩りなんてやるもんじゃあないよ」

 

「確かに、MeはHunterではないけれど、その代わりにArmyよ!治安維持なんて簡単なんだから!」

 

「……はぁ、まあ、私の側が一番安全かね。ついておいで、この辺りの獣を狩るよ」

 

「ええ!」

 

 

 

「私の担当はこの辺りでね。気をつけるんだよ、聖職者の獣は手強い」

 

大聖堂付近がアイリーンさんの担当らしい。

 

街にはガスコインさんとヘンリックさん。

 

旧市街は封鎖されていて、古狩人がいるとか。

 

森には連盟と言う人達がいて、獣の間引きをしているらしい。

 

さて、Meはアイリーンさんと一緒に巡回ね。

 

「デカいのだ、気をつけるんだよ」

 

六メートルくらいの巨人が、ハルバードを振り回して暴れている。

 

どうなっているのよ、この街は。

 

「オオォオン!!!」

 

「ふっ」

 

「馬鹿!受けるんじゃないよ!!」

 

その声を無視して、振り下ろされるハルバードを受け止める。

 

「はぁあ!!!」

 

片腕を思い切り振って、ハルバードをタイミング良く弾き飛ばす。

 

「オオオオオ?!!!」

 

「やああ!!!」

 

「ゴッ?!!!」

 

そのまま、蹴りを入れて倒す。

 

「なんて馬鹿力だい……」

 

倒したところで、アイリーンさんがとどめを刺した。

 

「無茶はおよしよ、見ててヒヤヒヤするよ」

 

「いつも通りよ?」

 

「それにしたって、獣の正面に立つのは良くない。力でゴリ押しちゃいけないよ」

 

「まあ、分かったわ」

 

 

 

そうして、幾らか獣を狩った頃。

 

「ここにいたか、アイオワ」

 

「あら、Admiral」

 

「迎えに来た、と言いたいところだが、折角だし獣狩りを手伝っていくか。前衛頼んだ」

 

と、弓を取り出したAdmiralが、言った。

 

「OK!任せて!」

 

獣狩り、治安維持活動。

 

そういうのは得意よ!

 

 

 

そして夜が明けて……。

 

「はい、獣狩り終了ー!狩人の皆さん、お疲れ様でーす!あ、ガスコインさん、これケーキ。娘さんと奥さんに」

 

「ああ」

 

Admiralに連れられて、解散。

 

帰り際には、ガスコインさんにケーキを渡していた。何でも、娘さんがいるそうだ。

 

「アイオワ、帰るよ、おいでー。あ、アイリーンさん、ありがとうございます、これ、うちで焼いたクッキーです」

 

「ありがとう。白露型の子達によろしく伝えておいておくれ」

 

「はーい」

 

と、普通に、さも当然のように、転移魔法で帰った。

 

ヤーナム、恐ろしい土地だったわ。

 




アイオワ
一応CQBはできるが、得意なのは射撃。ヤーナムでレールガンをぶっ放すわけにもいかず、近接格闘で処理していた。

おじさん
妻と娘を大事にしている。

おばさん
白露型の師匠ポジ。

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