A:はぁ……、書けませんでした……。
『…………と、言う訳らしいです。……旅人さん、頑張って下さい。音成鎮守府一同、応援しています!!』
「はいよー、態々ありがとねー」
「……提督、音成鎮守府からですか?」
「うん。なんでも、また大規模作戦があるんだってよ」
「……成る程、また、『鬼』クラスの出現ですか」
そう、鬼クラス……、前回の海域開放作戦の時に現れた、泊地棲鬼のような、強力な深海棲艦のことだ。
他所の鎮守府では、被害を度外視して、艦娘を大量にぶつけ、無理やり撤退させているとか。……そういう、擦り減るだけの作戦では勝てないんだがなぁ。でもそれって根本的な解決になりませんよね?
「よーし、大淀!皆んなを集めろ!!作戦会議だぁ!!」
「はい!!」
「……あの、提督?さ、作戦会議は?」
「うん?続けて良いよ、俺ちょっと何かつまめるもの作っておくから」
「いや、提督は、提督なんですから!お茶汲みくらい私がやりますから、真面目に会議を!」
「えー?いやだって、ほら、なんか最近は女の子にお茶汲みさせると女性差別がどうたらで……、あれ?」
ん?身体が浮いてる?どうした俺?
「馬鹿やってないで、早く来ないか」
ああ、長門さんに持ち上げられてたのか。……そのまま、この日の為だけに態々作った会議室の上座に座らされる。
このクソデカ会議室は、この鎮守府の艦娘全員を集めてもまだまだ余裕があるくらいの大きな部屋だ。壁紙から椅子の一つ一つまで、しっかりと拘ってかっこよく作った。趣味で。
「さて、提督が来たところで、此度の作戦の概要について説明する」
俺の後ろにある大型のホワイトボードに、『南方海域攻略作戦』と大きく書く長門。字がやたらと男らしい。
……普段は芋ジャージで鎮守府をぶらつく長門は、こと戦術論や戦闘行動に関しては一流だ。作戦の立案、実行共に活躍してくれる。
「良いか、今回の作戦の目的は一つ、南方海域の解放だ。……勿論、一筋縄ではいかん。偵察組が言うには、前回の大規模作戦の折、我々の前に立ち塞がった泊地棲鬼と同じ、『鬼』クラスの深海棲艦が待ち構えている、とのことだ」
……そうなのだ、ウチの鎮守府の偵察組からの報告によると、二体の『鬼』クラスの深海棲艦と、黄色い光を放つ深海棲艦が発見されたらしい。
「新種の深海棲艦、そして、二体の『鬼』クラスの深海棲艦だ、決して楽な戦いではない」
そう言って、隣に立つ陸奥から資料を受け取り、ホワイトボードに写真を貼る長門。
「……まず、この黄色い光を放つ深海棲艦だ。……実際に偵察をして、交戦した五十鈴から報告を聞こう、五十鈴、頼む」
結構大きめのおっぱいを持つ対潜対空ツインテール、五十鈴ちゃん。兎に角迎撃力が高い子で、今回は偵察を買って出てくれた。
「……そうね、あの黄色い光の深海棲艦は、エリートの上位個体ってところだと思うわ……。特別な何かは無いけれど、エリートよりも一段上の火力や装甲を持っていたわ」
「成る程、同じ艦種と行動は同じだが、基本的な性能が向上していると?」
「そう言うことね」
……一週間の調査により、新たなタイプ、黄色い光の深海棲艦を発見した。それを便宜上、『フラグシップ』と呼ぶことに。
そして、長門は二枚の写真をホワイトボードに貼り付ける。
「……これが、今回確認された『鬼』だ。まず、この戦艦型……、南方棲戦鬼だ」
大量の大砲が見て取れる下部ユニット、黒鉄の両腕、そしてドヤ顔と言う、いかにも強そうな見た目。
「まあ、見てわかるように、火力に特化している深海棲艦だ……。更に、例によって艦載機も搭載しているとのこと。……敵主砲の威力は馬鹿げている。回避が最優先だ、分かったな?」
そりゃそうだ、俺はまだしも、並の艦娘なら即死するらしい主砲。絶対に回避するべきだ。
「そしてもう一体、空母棲鬼……。その名の通り、空母型の深海棲艦で、此方の火力もかなりのものらしい」
鋭利なデザインの手甲と足甲を着けたサイドテールの女の子。此方も相当な強さらしく、音成鎮守府からの噂によると、数十の艦隊を屠っているとか。
「……そして、何より恐ろしいのは、この二体が同時に出現する、ということだ……。二体で連携することにより、極めて高い火力と制圧力を実現している……。という訳だ、提督、作戦はどうする?」
えっ?俺?
「……そうだな、取り敢えず、このドヤ顔の子のパンツを……、分かったよ、分かったから睨まないで?泣くよ?わんわん泣くよ?」
……作戦って言われてもな。分断は恐らく不可能、海のど真ん中にいる二体の敵、迎撃力も制圧力も火力もバッチリだ、どうもこうもない。
「真っ正面から、高速で懐に入って、叩き潰す」
「……可能か?」
当たり前だよなぁ?だって、
「うん、俺も行くから」
「……はぁ、そう言うと思ったよ……。だが、他に方法が無いのも事実だ。……提督、貴方の力を貸してくれ……!」
悔しそうな長門。……気にするな!半分くらいは、この新しい深海棲艦を脱がせたいだけだから!出撃も趣味なのよ!!とは口に出さないでおこう。怒られそうだし。
「では、編成は?」
「霧島さんと比叡ちゃんと、蒼龍ちゃん、飛龍ちゃん、摩耶ちゃん、那智さん、鈴谷ちゃん、熊野ちゃんに、大井ちゃん、北上ちゃん……。よろしく」
「……その、多くないか?原則、艦隊は六人なんだが……」
え?何言ってんのさ?ゲームや漫画じゃあるまいし、頭数は揃えた方が良いでしょ?戦いは数だよ、兄貴。
「あ、あと明石も着いてきて?整備要員だから(戦闘は)ないです」
「はい!分かりました!」
うむ、これで良し。さて、俺はこれから用事が……。
「待った!」
ヌッ?!待っただと?ゆさぶりには応える他ない。これ、法廷の基本。
「う、噂には聞いていたが、司令官が出撃すると言うのは本当のことだったのか?!」
俺に人差し指をつきつける那智さん。
「マジです」
「それは、その、許可できない!」
「弁護人の意見を却下します」
!!!!!
↓
!!!!
「ぐっ!」
「い、いや、そうではなく!!危険だろう?!……皆も何とか言ってやってくれ!!」
「いや、まあ司令官やし……」
「提督は大丈夫です!」
「提督は不死身でち」
「……まともなのは私だけか?!」
「旅人号を用意しろ!武器はいい、皆んなの分の水と食べ物を!!」
「どう見てもあれは型落ちの輸送船じゃないか!」
「巻き舌宇宙で有名な紫ミミズの剥製は、ハラキリ岩の上で音叉が生まばたきするといいらしいぞ。要ハサミだ。61!」
「?!あっ!ま、待ってくれ司令官!!目の前でダンボールを被っても隠れたことにはならないぞ!!司令官?!司令官ーーー!!!」
会議、終了!!
出撃組
六人編成?なんのこったよ?(すっとぼけ)
那智
今回の心労ナンバーワン。
長門
提督が不死身なのは重々承知だが、それでも心苦しい。
旅人
アラスカで蛇と呼ばれる男と邂逅したり、弁護士やったり、色々した。