いや、あれですよね、そもそも人間は毎日寝なきゃいけないんですよ。徹夜とかしちゃいけないんですよ。おっかしいなー、高校の頃とか徹夜余裕だったのになー?
私達は、艦娘の仲間を引き連れて、暗黒大陸へ向かった。
例の十人の魔王、そいつらを倒せば世界は平和になるっぽい。
十人の魔王……、一体何者なんだろう?
暗黒大陸についた。
普通は船に乗って何日もかけていくものらしいけど、艦娘の速度と、水の上を走れる能力からすると、ちょっと走れば隣の暗黒大陸に辿り着くことができるね。
さて、この中世レベルの技術でどうやって建てたんだ?って感じの巨大な魔王城に入る。
そこには……!!
「……おや、思いの外早かったね」
「そう?こんなもんっぽい?」
「想定の範囲内だよね」
ふぅ。
さて。
「身内かよぉぉぉぉぉーーーーー!!!!」
現れたのは白露型。
確かに魔王でも違和感はないけどね?
あのね?
ねぇ?
あーもうファンタジーぶち壊しじゃん。
まーた身内だよ!!
「ふむ、折角ここまで来たんだ……」
え?
『相手をしよう。魔王としてね』
そして、姿が変わる白露型の十人。
白露。
頭から尻尾の先まで10mはありそうな巨大蠍に。しかし、頭には人の上半身を持ち、甲殻で覆われた身体をしている。
両手のハサミは肥大化し槍のようになり、何故か炎を纏っている。尻尾は三本目は六つ。
時雨。
6m程の人型。頭には、長く伸びた頭髪のような触腕が多数。異様に伸びた触手のような尾も生えている。
骨のような長い両腕には、火を噴く刀が二本握られている。不気味な、血とも髄液とも言えるような液体が滴っている。
村雨。
15m級のドラゴン。赤黒い全身には鱗が生え、尻尾には鋸の歯のような器官が存在する。
首は二本に分かれ、頭は二つ。コウモリの羽のような翼は全身を覆い隠すほど大きい、奇形の龍だ。
夕立。
4m程のケンタウロス型。顔はなく、口のような割れ目だけがある頭。青白い光を放つ鋭角な鎧のようなものを身に纏う。
青白い巨大な大剣を担ぎ、鬣のような金髪をたなびかせる。
春雨。
4mもある烏が、無理矢理に人の形に歪められたかのような姿。
肩から伸びる複数の触腕の先には、銀色の鉤爪が煌めく。
五月雨。
5m程の蜘蛛。全身が淡く光る鞭毛に覆われていて、手脚は大鎌の様に鋭い。
それだけじゃなく、甲虫の羽根のようなものが生え、口元からは残忍そうな牙が覗く。
海風。
青白い触手の塊。7m程の巨体を、粘液を垂らす触手の塊で動かしている。
触手の塊には所々ブルーの瞳が覗き、一際大きな触手には鋸の歯と刃がついている。そして、溶解液と毒を滴らせている。
山風。
3m程の獣人。浅葱色の、ハリネズミのような体毛を全身から生やしている。
身の丈を超える巨大なハルバードを持ち、電撃を放っている。
江風。
5m程の鹿人間。赤黒い毛が全身を覆う。
巨大なハンマーのような右腕には炎が。
涼風。
極彩色の4m程の魚人。脇腹と背中から甲殻のある触腕を生やしている。
片腕が肥大化し、弓のような形になっている。
え?
……え?
「あ、あのさ、ちょっと」
『僕達が魔王なんだよ。さあ、かかってくるといい』
「い、いや、身内で潰し合いは」
『まあ、良いじゃないか。さあ、殺し合おう』
「ちょ、ちょ、ちょ、待っ!!!あああああーーー!!!」
と言う訳で、私VS時雨。
いやーキツイっす。
触手を揺らめかせながら、コマ送りみたいな速さで踏み込んでくる時雨。
「ヤバっ……!!!」
クイックブーストを吹かして急加速、回避。
ギリギリだねえ……!!
「でも、さ、長所を自分で潰しちゃあ、ねえ!!」
まあ、恐らくは手加減舐めプなんだろうけどねっ!!
……時雨は間違いなく、黒井鎮守府でも最強格だ。
特に恐ろしいのは技量と速度の融合……。
所謂、拍子が読めない、んだよね。
いつ動いたか分からない速度と足捌きで、気付いたら目の前で刀を振りかぶっていた、いや、気付いたら斬られていた、なんて調子に。
秘儀と呼ばれる魔法のようなもので、ただでさえ、視認することすら困難な機動性を更に底上げして、炎を纏う刀ですれ違いざまに斬りつける。
ステップと同時に姿が掻き消えたと思いきや、何十体もの深海棲艦が一秒せずに斬殺されたなんてザラ……。
艦娘として限界まで速く、鋭い。
間合いに入ればその圧倒的な技量から、技で勝つことは誰もできない。
近付かれたら死ぬ、かねえ。
でも、今はあえて、移動前の溜めや、武器を振りかぶるスピードを意図的に遅くしているように感じるし、事実、あの巨体を使いこなせていないように思える。
そこが付け入る隙、かな。
ってか!
「私のレーダーで捉えきれない……、ってか、私の動体視力が足りないっ、ねっ!!」
脳内のレーダーには、コマ送りみたいに高速で移動しまくる時雨のシグナル。アテにならないね!
武装切り替えパルスガン。
弾幕を張る!
『へえ……』
「あークソ!エネルギー弾斬るとか平気でやるから剣術ガチ勢は嫌いだーーー!!!」
こんの、エクストリーム剣術!!!
パルスガン弾幕を斬った!
『遅いよ』
「あ、ぐうっ!!!」
あっ、クソ、避け損なった。
片腕が斬られる。
くっ、腕の筋肉がやられた……!
これじゃ銃が撃てない!
「けどさ」
随分優しいね、時雨。
斬る前に声をかけてくれるなんて……!
カウンターしてくれって言ってるようなものだよねえ……っ!!!
クイックドロー、ムーンライトソード!!!
『……ふふ、上出来だよ、望月』
他の皆んなも、魔王白露型を倒したみたいだ。
……ってか、魔王白露型は、皆んな微妙に手加減していた。
古鷹型コンビなら勝てるかもだけど、他の艦娘じゃ多分相討ちくらいかなぁ。私は負ける自信ある。
それなのに勝てたってことは、手を抜かれてたってことだね。
……何で?
「いや、ね。こういうものは正義の味方が勝たないと困るだろう?」
「あ、気を遣ってくれたのね」
「ああ。あらかじめ魔王は殺しておいた。四天王も死んだ。この世界に人外の被害は当分ないだろう」
んー。
「僕達は先に帰るよ。必要なデータはとれたしね」
「そう……」
多分データとりの方がメインだったんだろうなあ。
「どうする?」
「帰る、かなぁ……」
「勇者達よ、よくやってくれた!褒美に王子との結婚を許そう!」
「「「「結構です」」」」
「では辺境伯の爵位を」
「「「「いりません」」」」
「な、何が望みだ?」
「「「「帰ります」」」」
全てをお断りして、皆で黒井鎮守府に帰る。
「ただいま〜」
「おー、望月。どうだった?」
「いや……、面白くは、なかった、かな」
「そっか……」
「スーパー身内ファンタジーだったしね」
うん……。
やっぱり私は、現代のこの、黒井鎮守府で、ぐだぐだ過ごすのが一番、だね。
望月
スーパー身内ファンタジーに草も生えない。
魔王白露型
獣化して襲いかかってきた。