旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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忘年会シーズンだなあ、忙しいなあ。

おまけに最近めちゃくちゃ太ったっスよー。

必死こいて体幹トレーニングやってる。


351話 海原守子、回顧しつつ語る

はい、こんにちは。

 

海原守子です。

 

今年で26歳ですよ私……。

 

そろそろ結婚とか考えなきゃ……。

 

うぅ、嫌だよ……。

 

最近はお仕事が充実してるから、あっという間に時間が過ぎていくけど……、私、特にこれといって技能がある訳じゃないし。

 

気がついたら何もできないおばさんになっちゃってるかも……?!

 

こ、怖い!

 

私の仕事なんて、クレーム対応と受付、簡単な書類仕事くらいのもの。

 

特別なスキルとかは特になし。

 

私、このままでいいのかな……?

 

「ヒャアァ!スカート捲りー!」

 

「やーん❤︎」

 

うう……、あそこで楽しそうにスカートを捲って回っている旅人さんは、ああ見えて仕事はバッチリできる。

 

書類仕事なんて私の三倍は速いし、速読速記もできる上、何十ヶ国語も話せて、あらゆる分野の知識があるし、職人技もある。

 

何をやっても一流並なのが旅人さんだ。

 

本人が言うには、一流以上にはなれないのが弱点らしいけど、普通に生活する分なら一流並の技能があれば十分だよ……。

 

私は……、最近やっと英語を覚えたくらいですね。

 

「もーりこちゃーーーぁあぶねぇぇぁ?!!!勢いでスカート捲るところだったぁ!!!」

 

何故か縦回転しながら詫びを入れてくる旅人さん。

 

「あ、その、め、捲らないて下さい、ね?」

 

「もちろん、俺はセクハラしない。黒井鎮守府にセクハラとかないから(大嘘)」

 

アッハイ。

 

「まあ俺は態々スカートを捲らなくても何穿いてるか大体想像できるんだけど」

 

「えぇ、何ですかそのスキル」

 

「でもスカート捲りとかのコミュニケーションを取らないと艦娘が不機嫌になるから。俺はセクハラを……、強いられているんだ!!!(集中線)」

 

は、はあ。

 

「で、守子ちゃん。今回は何を悩んでいるのかね?愚痴と相談は聞くよ」

 

「え、あ、分かるん、ですか?」

 

「あ、ごめんね、俺、顔を見れば他人の考えていることが大抵わかるんだよね。心理学<80>で」

 

そう、でしたね。

 

「でも、私の話なんて」

 

「ノンノンノン、守子ちゃぃん、君も黒井鎮守府の仲間、言わば家族、familyじゃないか。悩みを聞こうとも」

 

家族、かぁ。

 

「分かり、ました。それじゃあ、ちょっと聞いて下さい」

 

「よっしゃ、酒飲みながら聞くわ。飲んで話そう、飲んで」

 

「あ、いや、ちょ、お酒は」

 

「まあまあまあまあまあまあまあまあ」

 

「いやいや、ちょっと」

 

「いいからいいから」

 

良くないですって!

 

 

 

結局、飲まされちゃいました……。

 

あうー、おさけおいしい……。

 

「旅人さん、私はもう駄目です、駄目な女なんですー!」

 

「そーんなことないよー!」

 

うぅ、旅人さん優しいから……。

 

「でも、特に何もできないし、これと言った経験もないまま、どんどん歳ばかりとっていて……」

 

「そうかな?結構色々な経験をしていると思うけど?」

 

「いえいえ!全然ですよ!私なんて受付のおばさんですから……」

 

「ヤクザやマフィア、ギャング、悪の組織、テロリストを相手に取引できる度胸があれば何でもできるでしょ」

 

「………………はぇ?」

 

「え?」

 

はい?

 

「え?いや、ほら、守子ちゃんってあれでしょ?うちの取引先と色々話したんでしょ?」

 

「え?その、不動産屋とか、家具屋さんとか、です、よね?」

 

「不動産屋は地上げ屋、家具屋は密輸人だよ」

 

「えええええーーー?!!!」

 

「あら、気づかなかったの?」

 

「き、気づきませんでした……」

 

「いや、とっくに気づいてやってるもんだとばっかり……。ごめんね」

 

「いえ、その……」

 

「うーん、いやならやめてもいいんじゃよ?」

 

そ、れは……。

 

「ただ、麻薬とかそういう人を不幸にする悪事は誓ってやってないから安心してね」

 

「な、なら、まあ……」

 

ええと。

 

「その、主にどんなことをやっているんですか?」

 

「うん?武器とか、象牙とか、剥製とか、そう言うのの密輸とか、海外の土地の売買とか。ほら、今は中国の土地が儲かるよ」

 

「は、はあ」

 

「他にも、深海棲艦に麻薬密売組織の襲撃をやらせたりとかもしてるし、妙高型は悪人の暗殺もしている。霧島はヤクザとアルバイトしてるね」

 

「あの……、あまり、悪いことはしない方が」

 

「んー、これ、必要悪だからね。半グレやら中国人朝鮮人にやられると、加減を知らねえからやり過ぎたりするのよ。だから、俺がやらにゃならない」

 

「必要悪……」

 

私だって子供じゃないし、そう言うのがないと世の中が回らないとは分かっているけど……。

 

「まあ、安心しなよ。俺達は悪人からしか奪わないからね」

 

「で、でも、悪人にも家族がいたりとか」

 

「ああ、そうだね。でも、悪人を放っておけば、より多くの罪のない人が苦しむよ」

 

「それは、そう、ですけど」

 

「まあ、基本的に、殺しはしないけどね、俺は」

 

難しいな、世の中って。

 

 

 

「それで?何悩んでるの?やっぱり、結婚とか?」

 

「まあ、はい……。実家からお見合い写真が送られてきて……」

 

「うーん、今の時代、結婚に拘る必要もないとは思うけどね、俺は」

 

「そっ、そうですよね!結婚しなくても平気ですよね!!」

 

「まあ、どうしてもってんなら相手を探す手伝いくらいするけど、無理に結婚しなくても良いんじゃない?」

 

そうですよね!

 

「でも、あれだよなぁ、今の仕事じゃ出会いとかないよなぁ……。趣味関係で男の人と会ったりはしないの?」

 

趣味関係、かあ。

 

私の趣味は読書と釣りなんだけど……。

 

うーん、本を読みながら鎮守府で釣りをするのがいつもの過ごし方だからなあ……。

 

でも、釣りで知り合いができたことはないかなあ。

 

「守子ちゃん、釣りとか好きでしょ?遠くに釣りしに行った時とか、男の人と会わない?」

 

「会うんですけど……、男の人って、ちょっと苦手で」

 

「俺は?」

 

「旅人さんは、何故か平気なんですよね」

 

「ふーん」

 

あれ?

 

そう言えば、なんで旅人さんは平気なんだろう……。

 

旅人さんは……、何というか、嫌な感じが全然しない。

 

下心がない、と言う訳ではないんだろうけど……、旅人さんは、本能的に、「この人は自分を害さない」と思える人だ。

 

悪戯に人の気分を悪くしたり、暴力を振るったりとかをしないように思える、そんな人。

 

顔は少し鋭くて、ハンサムだけど、いつも微笑んでいて、楽しそうに笑う人。

 

身構えようと思えない。

 

「でもほら、世の中には笑顔で人を騙す奴なんて沢山いるから。気をつけた方が良いよ」

 

「旅人さんは、多分、そんなことしませんよ」

 

「おや、随分と俺を買ってくれているね。何でかな?」

 

「勘、です、かね?」

 

「ふふっ、勘か。乙女の勘なら仕方ないよなあ」

 

旅人さんがビールを飲む。

 

「あぁ^〜、生き返るわ〜。……じゃあ、好きな男とかはいない感じ?」

 

「はい、特には……」

 

「そう?うちに俺の知り合いとか来てるけど、カッコいいな、って思った人とかいない?」

 

「何人かはいるんですけど……、私が見た中では、旅人さんが、一番好み、で、す……っ?!あ、あう、忘れて下さいっ!」

 

「ん、あ、うん」

 

うわー。

 

変なこと言っちゃった……。

 

……でも、旅人さん、かあ。

 

旅人さんが結婚してくれたら……。

 

「するかい?結婚」

 

「い、いやいやいや!そんなの、駄目ですよ!艦娘の皆さんに怒られちゃいますし!」

 

「そう?結婚はアレだけど、養うよ?」

 

「え?あ、いえいえ!働きますから!」

 

「良いって、一生面倒見るよ」

 

「そんなこと……」

 

でも、そうすれば。

 

皆んなとずっと一緒にいられるのかな。

 

「皆んなで好きに生きていこうよ」

 

「……はい」

 

なんだか、それで良い気がする。

 

それなら。

 

好きな人とずっと一緒に、いられる、から。

 

旅人さん本人に好きだなんて言えないけど、ね。

 

「あ、そうそう」

 

「はい?」

 

「俺も守子ちゃんのこと好きだよ」

 

「……はい」

 

言わなくても、バレちゃってるし……。

 




海原守子
歳をとった。

旅人
歳をとらない。

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