皆さんどうします?
俺は実家で久しぶりにママンの手料理を食べる。
そのついでにジョナサンの物真似して母親を煽ってきます。
「はいあらすじ。なんかやろうと思って色々と仕事の手伝いをやっていた俺はいとも簡単に頭がパーン。普段働かないから拒絶反応が出て爆発(物理的に)してしまったのである。そこから首だけの姿で過ごして、三日後に身体が再生した頃、俺は思った」
旅してえ、と。
最近なー!!!
旅してねーよなー!!!
俺は旅人なのにな、おかしいな。
しゃオラ。
旅るぞクルァ!!!
オルァー!!!
「こんな時のために電子基板弄って作った『旅先おまかせマッスィーン』で旅先を選定じゃー」
のじゃー!
ッフゥー。
はいはいはい。
じゃ、イクゾー。
「スイッチオォン」
液晶画面上でルーレットが回る。
何で電子式にしたのかと言うと、人力ルーレットやダーツ、クジ引きなんかでは好きな結果が出せちゃうからだ。
電子式の完全ランダムなら俺も読めない。いや、脳内の瞳使えば読めるけど、少なくとも平常時では見えないよ。
そして……、はいドン。
『ボリビア』
ボリビアかあ。
ボリビア……。そうだね、あの、ブラジルの隣にある国なんだけど、貧乏でね……。大体スペイン語が話されるから言葉で苦労はしないけど。
まあほら……、発展途上国だし、治安は悪いわうるさいわ臭いわでね。
いやほら……、違うんだよ、日本が綺麗過ぎるんだよね。
俺は基本的に同じ場所には三年以下しか滞在しないんで、世界各国色々見てきたけど、日本はもう、マジで綺麗。
逆にパリとかニューヨークとかって、皆んなが思ってる程綺麗じゃないんだよね。
特にパリなんて住民の心まで汚……、いや、怒られそうだからやめておこう。
あ、でもあれだ、ボリビアはウユニ塩湖って言うデカい塩湖があるんだけど、あそこの景色はめちゃくちゃ綺麗だぞ。旅人なら一度は行ってみるべきだな。
今は丁度乾季に入った頃かなー?
地面がぜーんぶ塩の塊でね、真っ白で綺麗だよ。
えーと、ついでだから首都のラパスで一泊しようかな。
帰りはブラジルに寄ってナンパしよーっと。
「あ」
「あ」
「あ」
出会ってしまった旅人三人……。
これも俺の運命力によるものか……?
「久し振り、クウガさん、オーズ君」
「久し振りだね、新台さん」
「わあ、お久し振りです!」
いやいやいやいや。
本当にもう。
クウガさんはねー、もう、十年以上前くらい?に会った人でね。
二千の技を持つ男を自称する冒険家で、世界を旅して回っている人だよ。
そうだなー、あの時はヤバかったなー。
日本に、「ゲゲル」と言う、殺人数を競う殺戮ゲームを行う古代の種族、「グロンギ」が現れて、日本中の人を殺戮したんだよね。
それを、クウガさんは、古代の戦士クウガに変身して戦う術を得て、皆んなの笑顔を守る為に戦ったんだよね。
俺も成り行きで巻き込まれたけど、俺は美人の為にならまだしも、顔も分からない誰かの笑顔の為に戦うことなんてできないからな。
まあ、凄い人だよ。
俺なんかよりずっと。
そしてこっちはオーズ君。
何年か前に会った。
欲望を食らって育つ怪物、「グリード」と戦う戦士、オーズとなって戦った人だ。
詳しくは省くけど、まあ、本当にいい人だよね、うん。
いやね、空っぽだったオーズ君が、相棒のアンク君との取引と対立の末に、自分の夢を、やりたいことを見つける旅路にね、俺は感動したよ。
ほら、俺の旅って基本、他人に巻き込まれるものだから。技能は身についたけど、主人公になれないのが常でさ。
だから、オーズ君みたいに、旅を通して大きく成長できた人なんかは凄いと思うね。
俺はまあ、メンタルは強くなったけど、基本的に本質は子供の頃から変わってないから。
少年ハートを忘れないと言えば聞こえは大分マシだけどさ。旅をしても、俺の本質、中身は変わっていない。
羨ましいって訳じゃないけど。
なんか、こう。
眩しい、よね。
「お二人も旅?」
クウガさんが尋ねてくる。
「そうだね、旅だね」
「はい」
俺とオーズ君がそう返す。
「へー、二人は最近どこに?」
「俺はここ最近ずっと日本」
「俺は……、最近は南米辺りですかね。チリの方から歩ってきました」
ほー。
「クウガさんは?」
「んー、ここ最近はブラジル辺りかなあ」
そっかー。
「二人とも、日本には顔出してる?」
「「……あー」」
あー、じゃないよ。
「で、でもほら、定期的に電話してるから」
「そ、そうですよ、俺も連絡してますし」
「クウガさんはほら、妹さんに会わなくて良いの?」
「あー、うん、まあ、そろそろ顔を出そうかな……。新台さんも妹さんいるじゃないですか、その辺りは?」
「んー、あー、まあ、妹の誕生日には毎年顔出してるし。オーズさんは?比奈ちゃんに合わなくて良いの?」
「ええと、まあ、そろそろ会いに行くつもりです」
アレだね、旅人の特徴として、身内と顔を合わせる機会が少ないってのがあるね。
まあ、良くないよね。
俺もね、妹には年に一回は会ってるんだけどねー。
「そっかー。あ、そうだ、飯でも食ってかない?奢るよ」
「えっ?」
「新台さんが奢るだなんて珍しいですね」
「いやー、昔は金が無いからね、奢らなかったしむしろたかってたけどね?今は俺もうブルジョワだし?」
「え、何?何か悪いことでもした?」
「してないって!働いてんの!」
「えー?!新台さん、働いてるんですか?!珍しい!」
「え?酷くない?」
言い様が。
何?二人にどう思われてんの俺?
「だって新台さん、仕事したくないって常日頃から言ってるでしょ」
「新台さんの稼いだお金は賭け事と女の人に貢ぐのですぐになくなっちゃうじゃないですか」
「いや、まあ、そうだけど」
そうだけどね?
「最近はね、日本の軍隊関係の司令官になってね。それと副業で貿易関係をちょっと。言わば社長?」
「軍隊?似合わないね」
「自覚してますよクウガさん」
「でも社長って、凄いじゃないですか!」
「君の頭ん中にあるのは多分鴻上ファウンデーションだろうから言っておくけど、そんなでかい規模じゃないからね?」
さて、それじゃ行こうか。
「いやあ、まさか本当に奢ってくれるとは。でも、ありがとう」
「ご馳走様です」
食ってきた。
「にしても、相変わらず食べるねえ」
「お酒もリットル単位で飲んでましたね」
「いや、控えめに十人前くらいだよ?あと、この辺の酒はそんな強い酒じゃないからね、いくらでも飲めるね。二人は飲まないの?」
「いや、日本ならまだしも、海外で昼間っから酔っ払ってたら、悪い人とかに絡まれちゃうからね」
そっか。
「それにしても、ビックリしましたよ!日本にはあれ以来帰ってないんですけど、そんなことになってたんですね!」
「俺も深海棲艦の噂は聞いてたけど……、そんな感じなんだ」
うんまあ、辛いよね!
「艦娘さん達も凄く美人さんだし……、なんて言うか、新台さんは相変わらずですね。いっつも女の人と一緒にいますよねえ」
「いやー、もうね、酒とギャンブルと女の子はやめらんないね、うん。二人はこれからどうするの?」
「俺は……、ペルーに行こうかな」
「おっ、良いじゃん。ペルーは飯が美味いんだよなあ」
「俺はちょっと飛行機代を稼ぎます。それでまたちょっとアフリカの方に行こうかな、と」
ほーん。
「新台さんは?」
「俺?俺は取り敢えず、ウユニ塩湖見に行って、ブラジルの方でぶらりナンパ旅よぉ」
「え?良いの?その、艦娘さん?が待ってるんじゃない?」
「い、いや、ま、まあ、ほら!良いの良いの!」
「えぇ……」
「新台さん、本当に大丈夫ですか?また女の人に刺されるんじゃ……」
「大丈夫だって、今年はまだ十六回しか刺されてないから」
「刺されてるじゃないですか!」
「それとは別に爆発したり解体したり食べられたりもしてるよ」
「相変わらず不死身だね」
「そうでもないけどねえ……。さて、と、ナンパ旅始め、ん?」
「おはようございます、提督」
大、淀?
「クウガさん、オーズ君、俺はちょっと用事を思い出した」
「「え?」」
「こんにちは。お話は伺っていますよ、五代さん、火野さん。提督が自慢の友人だと仰っていました」
「「あっはい」」
その台詞を吐いた瞬間に、大淀は俺の手首を掴んだ。
「さて、帰りましょうか、提督」
「ヤダーーーーーーーーー!!!!!」
俺は掴まれた片腕を切り落とし、走った。
走った。
走った。
「……五代さん、新台さんは大丈夫なんですかね?」
「うーん……、まあ、あれくらいならいつものことだと思うよ」
クウガさん
2018の技を持つ冒険家。昔、日本で旅人と知り合った。めちゃくちゃ良い人。
オーズ君
明日のパンツとちょっとの小銭があれば良い系旅人。ちょっと昔、日本で旅人と知り合った。めちゃくちゃ良い人。
大淀
ストーカー。旅人を追って不法入国。めちゃくちゃ悪い人。
旅人
人間の屑。色々な人と縁がある。良くも悪くもない人ですらない。