好き。
「この人は私がいないと駄目なんだ」とか言い始めちゃう女の子かわいい。
「避難訓練?」
「はい!」
執務室にて、書類チェックの最中に、笑顔の鹿島が現れる。
「避難訓練……、確かに必要だな」
「そうですよね、今まで一度もそう言うことをやっていなかったので、やるべきなんじゃないかな?と思いまして」
「そうだよなあ、うちってかなりデカい施設だから、そういうのも必要だよなあ」
良し。
「着いてきて鹿島。まずは設備関係の責任者である明石に話を聞きに行こう」
工廠。
俺ですら分からない様々な機械がそこら中に転がっている。
「避難訓練?要りませんよ、そんなの」
と、明石。
「何で?」
「うち……、黒井鎮守府の防災システムは完璧だからです」
ほー。
「kwsk」
「はい!まずですね、黒井鎮守府の外装からいきましょう。外装ですが、重力子による斥力フィールドと熱量を分解吸収するバリアフィールド、白露型特製魔導防御機構……、は私はノータッチなんですけど、あるそうです」
ほうほう。
「砲台ですが、普段は砲台のほぼ全てが地面に埋められています。ですが、最大展開数はカノン砲、榴弾砲、レーザー砲、魔導キャノンの四種が三十門ずつあります。それとは別に、SIWSと地対空ミサイルの発射台も隠してあります。あ、核兵器もありますよ」
なそ
にん
「こちらが第一戦闘配置時の黒井鎮守府の予想図になります」
そして目の前にARビジョンが浮かぶ。
空飛ぶ黒井鎮守府に円形の半透明バリア、そして沢山の武装が生えている図が見られた。
「えぇ……、こんなんなるの?やり過ぎでは?」
「いやー、作ってる最中になんか楽しくなっちゃって。私の考えた最強の要塞になっちゃいました」
うーん、気づいたらうちが宇宙要塞になっていた件について。
「理論上は、生産プラントをフルで動かせば、自給自足をしたまま宇宙旅行ができますね」
「マクロの空を貫きそう」
「そうですね、そのうち変形機能とどデカイ主砲を取り付けたいですね」
なーにを目指してんのかね。
「それで内装ですが……、監視カメラ、警備ロボ、赤外線センサは常にオンラインです。それに付け加えて、五種類の監視防衛システムからランダムで二種類、十二時間毎に切り替わります」
あー、そんなことも言ってたっけかな。
「それと、ファイアウォールはもっと凄いですよー!ペンタゴンのファイアウォールの三倍はあります!攻勢防御プログラムも付いて、一流ハッカーをダース単位で、スパコンを数台用意しない限り突破は困難ですね。まあ、重要なデータは外部ネットワークと切り離してあるんですが」
成る程。
「あ、それで防災システムなんですけど……、工作用ロボットと隔壁、自動消火、ガス排気、毒物やウイルスを分解するナノマシンの散布などが可能です。理論上では、黒井鎮守府の67パーセントまでなら破壊されても120時間以内に復旧が可能です」
凄え。
「因みに動力は?」
「核融合と反応炉、魔力炉心ですかね」
おー。
「まあ、そんな訳で、黒井鎮守府で防災訓練をやるメリットはほぼないです。もし仮に黒井鎮守府から退去しなければならないなら、その場合は黒井鎮守府は堕ちているでしょうから」
成る程なー。
「じゃあ、あれだな、なんか特殊なパターンの事件が起きたと仮定して、その場合の対応について考えるのはどうだ?」
「特殊なパターン、ですか……?」
「そうだな、例えば」
ゾンビパニックとか、どうだろうか。
×××××××××××××××
「今日も一日ガンビア・ベイ!!」
「え?え?な、何?」
「今日も一日ガンビア・ベイ!!」
「だ、だから、何?」
「今日も一日ガンビア・ベイ!!」
「モチヅキ、サザナミ、ハツユキ……?」
「いや、特に用事はないよ」
「そ、そうなの……?」
私はガンビア・ベイ。
軽空母。
Admiralとか一部の艦娘に会うと、何故か、「今日も一日ガンビア・ベイ」と言われる。何だろう?
それはさておき……、今日は何して遊ぼうかなー?
仕事は月の初めにまとめて終わらせたし、あとは遊んでるだけで良いんだもんね。
お部屋に篭ってゲームしよう。
ヌマブラの最新作楽しいなー。
でも、モチヅキは異常に強いから一緒にやりたくない……。
あ、それとドラワエビルダーズの新作もそろそろ出るし、やらなくちゃ!
アニメも今期は当たりだし!
漫画も沢山買った!
うふふ〜、やることいっぱいあるなー!
『鎮守府放送、鎮守府放送……。えー、これから、特殊条件下における避難訓練を開始する。これは訓練です、これは訓練です』
「え?え?」
な、何?
何が起きたの?
『これは、黒井鎮守府の防衛システムがダウンした状況を想定した訓練です。各自、侵入者に対して対処してください』
えっと……?
うーん、侵入者に対処ってことは、そんな難しいことじゃないかな?
多分、サイボーグとかで代用……。
『あ、因みに、侵入者は、presents by 白露型です』
あっだめだこれ逃げよう。
そう思った瞬間、窓を突き破って何かが現れる。
『ヴアァァァ』
『テケリ・リ』
『◯×△◇?!/#&_<*$€』
『キシュォァ……』
『じょうじ』
「い、い、い、いーーーやーーー!!!!」
気持ち悪いっ、気持ち悪いっ、気持ち悪いっ!!!
人肉を繋ぎ合わせて作ったようなゾンビ、スライム、いつぞやのホムンクルス、醜い獣、黒い人型の化け物……。
シラツユシスターズの作るクリーチャーは酷く悍ましい。
ああ、どうしよう!
室内では、私の武装は強力過ぎて使えな、
「ふぅんぬぉお!!!」
『アギャギ?!!!』
「きゃーーーーー!!!!」
「む、どうしたガンビア・ベイ?女のような悲鳴を上げて」
「女ですから……」
ナ、ナガト?!
室内でも容赦なくぶん殴って破壊した?!
えぇ……。
ああぁ?!!
レーザーの光が壁をぶち破って飛んできた?!!
爆発っ?!爆発してるっ?!!!
きゃわあ!肉片が飛んできた?!!!
も、も、もう!!!
「鎮守府が壊れちゃうよ!!!戦う人は外に出てーーー!!!」
私が叫ぶと。
「「「「確かにそうだ」」」」
と、艦娘全員が外に出た。
そして。
「各員、殺せえええええ!!!!」
「「「「おおおおおおお!!!!」」」」
「はいっ、反省会」
異形の屍肉から、濃い血と体液の匂いが立ち込めるグラウンドの中で、Admiralが手を叩きながら言った。
反省会……。
確かに、今回の件は反省すべきだと思う。
「そうねえ、私達って、指示されないとまともに動けないことが分かったわ」
イントレピッドが言った。
「でも、個人個人の判断で戦ったのはおかしくないでしょう?」
アイオワが言った。
「でも、そのせいで鎮守府はボロボロよ」
サラが言った。
うーん……。
「そうだね、今回の場合は、室内戦ができる艦娘が室内を掃討して敵を外に追い出して、それ以外の艦娘は外で敵を倒すべきだったね」
と、Admiralが告げる。
そっか、そうですね……。
「まあアレかな、こういう時用のマニュアルを用意してない俺が悪いみたいなところはあるよね。次からはさっき言ったように、外に敵を追い出してから戦うこと!イイネ?」
「「「「はい!!!」」」」
よし、次からはちゃんと対処しよう。
明石
働いてはいる。
ガンビア・ベイ
今日も一日ガンビア・ベイ!
旅人
避難訓練のつもりが大変なことになったなあ。