なお、旅情報はネットで調べた程度なので参考にしてはならない。
あ、あと、メリークリスマス!メリークリスマス!!!
クリスマスのラーメン屋は人がいないなー!!!
社会不適合者しかいねえなこの鎮守府。
俺を含めて。
「古鷹ー」
「はい?」
「戦争終わったらどうすんの?」
「戦争、が、終わる……?」
「やりたいこととかないの?」
「やりたいこと……?」
うーん。
ほら、アレだよね。
艦娘って基本的に思考回路が昔のままだから、食事ができるだけで幸せとか言うのよ。
日本がまだ、経済技術共に発展していない、二次大戦頃の常識のまま。
俺としては、健全でより高次な欲求を持って欲しいところなんだけどな。
「古鷹。いずれ戦争は終わる。その時、君の居場所はどうするんだい?」
「私は、ずっと提督のお側にいますよ」
「だからね、いつも言ってるけど、そうはいかないでしょ。先のことなんて分からないんだからさ。自立してもらわなきゃ困るよ」
「じりつ?」
「うん、いい加減、戦うことしかできないのも困るってこと」
「私、は、要らない子ですか……?」
「そうじゃないよ、けどさ、この世界で生きていくなら、戦う以外の生き方も学んでくれなきゃ困るんだよ」
いい加減にね、本当に。
君らはさ、戦うこと以外にも道を見つけた方が良いよ。
俺と一緒にいたいと言うなら尚更。
俺は旅人、基本的に自分の面倒を見るのでいっぱいいっぱいだ。
俺についてきたいなら、いついかなるところでも生きていける生存力が欲しい。
そもそも、平和な現代社会において、戦うことしかできないのは致命的では?
いや、それが悪いとは言ってないんだが。
戦うことしかできない奴だっていて良いし、それが悪いことだとは思わない。
しかし、現代社会において、戦うことは別に役に立たないからな?
いや、あの人みたいに、個人で米軍くらい強ければ違うかもしれないが。
でも、人から奪って暮らすのは良くないね。
生産的じゃない。
俺のように、自然と共に生きたり、たまに稼いだ金でその日暮らしをしたりする技能が重要だ。
つまりは、「敵を殺す力」より、「一ヶ月を一万円くらいで凌ぐ力」の方が、俺の側にいるというなら必要になる。
一ヶ月を一万円くらいで凌ぐ。
いやー、昔やってたバラエティ番組じゃないんだからさぁ、みたいに思うかもしれないが、俺はマジで言っているぞ?
それに付け加えて、言葉が通じない、衛生環境が悪い、治安が悪い……、そんな地域でも生きていく力が欲しいよね。
「つまり、だ」
旅ができないなら俺にはついてこれないぞ、と。
「そうなんですか……。じゃあ、私に、旅を教えてください」
「えー」
いやー、それはちょっと。
男の一人旅と女の子の旅行は全然違うからねえ。
「大丈夫ですよ、文句なんて言いません」
「嘘だゾ、ドヤ街スラム街で生き抜く力があるのかなぁ?(疑心暗鬼ゴロリ)」
「提督と一緒なら、どこでも楽しいですよ」
「オッ、言うねえ」
じゃあさ。
「試すか?」
「良いですよ」
「はい、来ました、ケニア」
旅ゾ。
「古鷹、はぐれないようにね」
「はい、それじゃあ、手を繋ぎましょう!」
「……まあ良いけど」
「ケニアですか、聞いたことがありませんけど、どんな国なんですか?」
「えっ、ケニア知らない?ヤバくない……?ご、ごほん、ケニアはね、アフリカの国でね、サファリってところに動物がたくさんいるんだよ。あと治安がクソ」
「そうなんですかー」
はい。
「それでな、今回の旅の内容なんだが」
「はい」
「金を使わない」
「はい?」
「飛行機代以外で金を使わないで一週間過ごす。現地で稼ぐのは可」
「はあ」
「物品の持ち込みはいつも持ち歩いているものなら可、俺の場合手持ちのものを今アイテムボックスから取り出す、しかし、食べ物や石鹸、服、靴、水、風呂、寝床、移動手段なんかは現地で買うかなんかして手に入れること。艦娘は万能翻訳マシーン利用可」
「はあ」
そういうレギュレーション。
今回のレギュを初心者向け旅レギュと制定する。
これでもかなり甘い方だよね。俺は着の身着のまま密輸船に乗り込んで移動して、労働ビザなしでバイトして、悪党から盗んだりして生きてきたから。
「しゃおら、イクゾー!(デッデッデデデデカーン)」
「はい!」
「さて、古鷹?金がない訳だ。どうするべきだと思う?」
「奪えば良いと思います」
んーんん。
「それは良くないなあ」
「そうなんですか?」
「悪い奴からは奪っても良いが、何もしていない奴から奪うのは駄目だね」
「それじゃあ、悪い奴を探す?」
「まあ、それは俺もたまにやるけどね、今回は旅人の稼ぎ方を見せてやる」
俺は背中のケースからギターを取り出した。
あとは分かるな?
「いやー、稼いだ稼いだ」
「いくらぐらいになったんですか?」
「30000シリングくらいかなー。ノースティリスで鍛えた演奏スキルはどこでも活きるね」
「それって……、どれくらいですか?」
「三万円くらい」
「え、それは……」
「ああ、ケニアは物価が安いから大丈夫よ。1000シリングもあれば泊まれるし。部屋はアレだけど」
虫とかな。
まあ場所にもよるけどなー。都会の方は日本と変わらないくらい金がかかるけど、田舎の方はやっすいの。
今回はあてもなく観光して回るから、まあー、ちょい田舎の方に行く、かね?
だから安めと見積もって……、うんまあ、一週間くらいなら余裕で保つね。
「そうなんですか?」
「こだわらなけりゃ泊まる場所なんていくらでもあるし……、何なら路上で寝たって良い。食い物だって狩りで獲っても良いんだよ」
「成る程……」
でもまあ今回は古鷹がいるので、最低限の文明的な生活はするけど。
俺一人なら、原住民とコンタクトを取って、狩猟しつつ生活することも可能だが、しないでおく。
いやほら、俺なんて、酒と女とギャンブルがあれば幸せだから、そこら辺で女の子引っかけつつ、獣を狩って暮らすのでも十分楽しいんだよね。
フォールアウトよろしく文明が崩壊しても生きていけると思うよ。
「でも、女の子はそうはいかないでしょ?」
服とか化粧とか、色々とさ。
「私は特にこだわりはありませんよ?」
「えぇ〜?ほんとにござるか〜?服は?」
「しまむらです」
「おいおいおいおい、しまむらはいかんよ!!しまむらはいかんよ?!!」
金のない学生とかが着る奴だろ!!
いや……、給料を◾︎◾︎◾︎万は渡してるんだから、もっと良い服買ってくれマジで。
「提督はどこのブランドの服を着ているんですか?」
「俺?俺は普通にポールスミスだけど」
「じゃあ、私も同じのを」
「えー……、古鷹はもっと可愛い系じゃないかな?帰ったら服選んだげるから、少しはファッションに興味持とうよ、女の子なんだからさ。鈴谷か……、熊野、金剛、陸奥辺りに聞くと良いぞい」
「はあ」
「ちなシャンプーは?」
「メリットです」
「メリットはいかんよ!!え?メリット?いかんでしょ!」
髪が痛む。
「提督は何を使っているんですか?」
「俺?チャップアップシャンプーだけど」
「じゃあ私もそれを使います」
「んー、あー、良いんじゃない?」
「さて、買い物は済んだことだし、なんか食べに行こうか」
バックパック背負って二人で移動。
何が食べたい?とは聞かないよ?
だって、そうそう選択肢がある訳でもないしね。
日本みたいに、どこでも何でも好きなものが手に入る訳じゃねーんだよ。
「何が美味しいんですか?」
「ピザ」
「え?」
「もしくはマック」
「あ、あの、ここならではの料理とか」
「……俺は腐った人肉とかじゃない限り文句は言わないけど、古鷹はウガリとか食べれるの?あれ、美味くはないよ?」
「まあ、大丈夫ですよ」
ふーん。
「じゃあほら、ちょっと食べてみ?」
「……美味しくないです」
「ね?」
だろぉ?!
「あー、この中だったらビーフシチューがマシかなぁ?肉は結構美味いし」
「あ、本当ですね、お肉美味しいです」
じゃ、食べた後は移動して、宿を探そうか。
古鷹
身の回りのものには割と頓着しないので、旅力は高い。
旅人
旅力高い。