旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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重巡と行く初心者向けレギュレーションの旅。

なお、旅情報はネットで調べた程度なので参考にしてはならない。

あ、あと、メリークリスマス!メリークリスマス!!!

クリスマスのラーメン屋は人がいないなー!!!


355話 初心者向け旅体験その1 前編

社会不適合者しかいねえなこの鎮守府。

 

俺を含めて。

 

「古鷹ー」

 

「はい?」

 

「戦争終わったらどうすんの?」

 

「戦争、が、終わる……?」

 

「やりたいこととかないの?」

 

「やりたいこと……?」

 

うーん。

 

ほら、アレだよね。

 

艦娘って基本的に思考回路が昔のままだから、食事ができるだけで幸せとか言うのよ。

 

日本がまだ、経済技術共に発展していない、二次大戦頃の常識のまま。

 

俺としては、健全でより高次な欲求を持って欲しいところなんだけどな。

 

「古鷹。いずれ戦争は終わる。その時、君の居場所はどうするんだい?」

 

「私は、ずっと提督のお側にいますよ」

 

「だからね、いつも言ってるけど、そうはいかないでしょ。先のことなんて分からないんだからさ。自立してもらわなきゃ困るよ」

 

「じりつ?」

 

「うん、いい加減、戦うことしかできないのも困るってこと」

 

「私、は、要らない子ですか……?」

 

「そうじゃないよ、けどさ、この世界で生きていくなら、戦う以外の生き方も学んでくれなきゃ困るんだよ」

 

いい加減にね、本当に。

 

君らはさ、戦うこと以外にも道を見つけた方が良いよ。

 

俺と一緒にいたいと言うなら尚更。

 

俺は旅人、基本的に自分の面倒を見るのでいっぱいいっぱいだ。

 

俺についてきたいなら、いついかなるところでも生きていける生存力が欲しい。

 

そもそも、平和な現代社会において、戦うことしかできないのは致命的では?

 

いや、それが悪いとは言ってないんだが。

 

戦うことしかできない奴だっていて良いし、それが悪いことだとは思わない。

 

しかし、現代社会において、戦うことは別に役に立たないからな?

 

いや、あの人みたいに、個人で米軍くらい強ければ違うかもしれないが。

 

でも、人から奪って暮らすのは良くないね。

 

生産的じゃない。

 

俺のように、自然と共に生きたり、たまに稼いだ金でその日暮らしをしたりする技能が重要だ。

 

つまりは、「敵を殺す力」より、「一ヶ月を一万円くらいで凌ぐ力」の方が、俺の側にいるというなら必要になる。

 

一ヶ月を一万円くらいで凌ぐ。

 

いやー、昔やってたバラエティ番組じゃないんだからさぁ、みたいに思うかもしれないが、俺はマジで言っているぞ?

 

それに付け加えて、言葉が通じない、衛生環境が悪い、治安が悪い……、そんな地域でも生きていく力が欲しいよね。

 

「つまり、だ」

 

旅ができないなら俺にはついてこれないぞ、と。

 

「そうなんですか……。じゃあ、私に、旅を教えてください」

 

「えー」

 

いやー、それはちょっと。

 

男の一人旅と女の子の旅行は全然違うからねえ。

 

「大丈夫ですよ、文句なんて言いません」

 

「嘘だゾ、ドヤ街スラム街で生き抜く力があるのかなぁ?(疑心暗鬼ゴロリ)」

 

「提督と一緒なら、どこでも楽しいですよ」

 

「オッ、言うねえ」

 

じゃあさ。

 

「試すか?」

 

「良いですよ」

 

 

 

 

 

「はい、来ました、ケニア」

 

旅ゾ。

 

「古鷹、はぐれないようにね」

 

「はい、それじゃあ、手を繋ぎましょう!」

 

「……まあ良いけど」

 

「ケニアですか、聞いたことがありませんけど、どんな国なんですか?」

 

「えっ、ケニア知らない?ヤバくない……?ご、ごほん、ケニアはね、アフリカの国でね、サファリってところに動物がたくさんいるんだよ。あと治安がクソ」

 

「そうなんですかー」

 

はい。

 

「それでな、今回の旅の内容なんだが」

 

「はい」

 

「金を使わない」

 

「はい?」

 

「飛行機代以外で金を使わないで一週間過ごす。現地で稼ぐのは可」

 

「はあ」

 

「物品の持ち込みはいつも持ち歩いているものなら可、俺の場合手持ちのものを今アイテムボックスから取り出す、しかし、食べ物や石鹸、服、靴、水、風呂、寝床、移動手段なんかは現地で買うかなんかして手に入れること。艦娘は万能翻訳マシーン利用可」

 

「はあ」

 

そういうレギュレーション。

 

今回のレギュを初心者向け旅レギュと制定する。

 

これでもかなり甘い方だよね。俺は着の身着のまま密輸船に乗り込んで移動して、労働ビザなしでバイトして、悪党から盗んだりして生きてきたから。

 

「しゃおら、イクゾー!(デッデッデデデデカーン)」

 

「はい!」

 

 

 

「さて、古鷹?金がない訳だ。どうするべきだと思う?」

 

「奪えば良いと思います」

 

んーんん。

 

「それは良くないなあ」

 

「そうなんですか?」

 

「悪い奴からは奪っても良いが、何もしていない奴から奪うのは駄目だね」

 

「それじゃあ、悪い奴を探す?」

 

「まあ、それは俺もたまにやるけどね、今回は旅人の稼ぎ方を見せてやる」

 

俺は背中のケースからギターを取り出した。

 

あとは分かるな?

 

 

 

「いやー、稼いだ稼いだ」

 

「いくらぐらいになったんですか?」

 

「30000シリングくらいかなー。ノースティリスで鍛えた演奏スキルはどこでも活きるね」

 

「それって……、どれくらいですか?」

 

「三万円くらい」

 

「え、それは……」

 

「ああ、ケニアは物価が安いから大丈夫よ。1000シリングもあれば泊まれるし。部屋はアレだけど」

 

虫とかな。

 

まあ場所にもよるけどなー。都会の方は日本と変わらないくらい金がかかるけど、田舎の方はやっすいの。

 

今回はあてもなく観光して回るから、まあー、ちょい田舎の方に行く、かね?

 

だから安めと見積もって……、うんまあ、一週間くらいなら余裕で保つね。

 

「そうなんですか?」

 

「こだわらなけりゃ泊まる場所なんていくらでもあるし……、何なら路上で寝たって良い。食い物だって狩りで獲っても良いんだよ」

 

「成る程……」

 

でもまあ今回は古鷹がいるので、最低限の文明的な生活はするけど。

 

俺一人なら、原住民とコンタクトを取って、狩猟しつつ生活することも可能だが、しないでおく。

 

いやほら、俺なんて、酒と女とギャンブルがあれば幸せだから、そこら辺で女の子引っかけつつ、獣を狩って暮らすのでも十分楽しいんだよね。

 

フォールアウトよろしく文明が崩壊しても生きていけると思うよ。

 

「でも、女の子はそうはいかないでしょ?」

 

服とか化粧とか、色々とさ。

 

「私は特にこだわりはありませんよ?」

 

「えぇ〜?ほんとにござるか〜?服は?」

 

「しまむらです」

 

「おいおいおいおい、しまむらはいかんよ!!しまむらはいかんよ?!!」

 

金のない学生とかが着る奴だろ!!

 

いや……、給料を◾︎◾︎◾︎万は渡してるんだから、もっと良い服買ってくれマジで。

 

「提督はどこのブランドの服を着ているんですか?」

 

「俺?俺は普通にポールスミスだけど」

 

「じゃあ、私も同じのを」

 

「えー……、古鷹はもっと可愛い系じゃないかな?帰ったら服選んだげるから、少しはファッションに興味持とうよ、女の子なんだからさ。鈴谷か……、熊野、金剛、陸奥辺りに聞くと良いぞい」

 

「はあ」

 

「ちなシャンプーは?」

 

「メリットです」

 

「メリットはいかんよ!!え?メリット?いかんでしょ!」

 

髪が痛む。

 

「提督は何を使っているんですか?」

 

「俺?チャップアップシャンプーだけど」

 

「じゃあ私もそれを使います」

 

「んー、あー、良いんじゃない?」

 

 

 

「さて、買い物は済んだことだし、なんか食べに行こうか」

 

バックパック背負って二人で移動。

 

何が食べたい?とは聞かないよ?

 

だって、そうそう選択肢がある訳でもないしね。

 

日本みたいに、どこでも何でも好きなものが手に入る訳じゃねーんだよ。

 

「何が美味しいんですか?」

 

「ピザ」

 

「え?」

 

「もしくはマック」

 

「あ、あの、ここならではの料理とか」

 

「……俺は腐った人肉とかじゃない限り文句は言わないけど、古鷹はウガリとか食べれるの?あれ、美味くはないよ?」

 

「まあ、大丈夫ですよ」

 

ふーん。

 

「じゃあほら、ちょっと食べてみ?」

 

「……美味しくないです」

 

「ね?」

 

だろぉ?!

 

「あー、この中だったらビーフシチューがマシかなぁ?肉は結構美味いし」

 

「あ、本当ですね、お肉美味しいです」

 

じゃ、食べた後は移動して、宿を探そうか。

 




古鷹
身の回りのものには割と頓着しないので、旅力は高い。

旅人
旅力高い。

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