旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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うわ。

新年になってしまった。

時間よ止まれ。


358話 初心者向け旅体験その2 後編

宿はどうすっかなー。

 

「鈴谷、シャワーは温水が良い?」

 

「うん」

 

「じゃあちょっと高くなるな」

 

「んんー、我慢した方がいいかなー?」

 

「いや、大丈夫。今回は初心者向けだから」

 

上級者向けとなるとこうはいかないけど。

 

上級者向け旅レギュとなると、「地球がリングだ!」並の投げやり設定になる。

 

例えば、ランダム転移魔法で適当に転移して、そこで着の身着のまま過ごすとか。

 

引きが悪いと雑草を食う羽目になるぞう!

 

さて、宿は……?

 

「ここにしようか」

 

「あ、思ってたよりは綺麗かも」

 

二千円ちょいくらいの宿にした。

 

ちょっと良いとこ。

 

「そうだね。でもほら、酷いところはもっとアレだからね、うん」

 

俺は一般的に酷いと言えるレベルの環境の宿でも気にならないけど。

 

まあ俺は隣に神話生物がいようとも眠れるし。

 

「シャワー浴びたら明日は観光だ、もう少ししたら一緒に寝よう」

 

「オッケー……、テレビ何やってるんだろ?何これ、映画?」

 

インド映画がテレビでやっている。

 

「……何で踊ってるの?」

 

「あー……、まあ、そういう文化なんだよ」

 

「そっか」

 

「でも、面白い映画も沢山あるんだよ!翻訳版が確か鎮守府に何本もあるから、なんか見てごらん?」

 

「ふーん。まあ、映画なら北上が詳しいから聞いてみよーっと」

 

「北上なあ、あの子は映画好きだからな……」

 

北上は映画好きで、ジャンルを問わずに色々見ている。特に、クソ映画を面白おかしくレビューするのが持ちネタで、かなり笑える。

 

その北上の面白クソ映画レビュートークをまとめた、この前のコミケに出した「とびっきりのクソ映画レビュー」はアングラな人気を誇り、結局増版して更に売ることになった。

 

「テレビも全部インド語だから分かんないなー」

 

「ヒンディー語な」

 

「ひんでぃ」

 

「そう」

 

「インドではなんて挨拶すれば良いの?」

 

「नमस्ते」

 

「えっ、えっ、はい?もう一回」

 

「नमस्ते」

 

「分かんないよ、分かんない」

 

「カタカナだとナマステ、かな」

 

「なますて」

 

「そう」

 

「じゃあ明日は色んな人にナマステって言おう!」

 

「良いんじゃないかな?アイサツは大事だ、古事記にもそう書いてある。そろそろ寝るかい?」

 

「もうちょいツイッター弄るよー。提督はもう眠い?」

 

「俺は一二週間くらいなら別に眠らなくても平気だし」

 

「うへえ、私も夜型だけど、一日五時間くらいは寝たいかな……」

 

「徹夜とかしないの?」

 

「たまにするけど、普段はあんまりしないかなあ」

 

お、偉いぞ、ちゃんと寝てるな。

 

「……よし、と。そろそろ寝ようかな。提督ー、腕枕してー」

 

「はいよー、はいはい」

 

「んー、程よく硬くてむっちりしてる。良い筋肉ですなあ」

 

「よく言われるよ。さ、おやすみ」

 

「はぁい、おやすみー」

 

 

 

「朝だよ」

 

「おはよ、じゃなかった、ナマステー」

 

「はい、ナマステー。朝食は近くの店で何か食べよう」

 

「何がおすすめ?」

 

「インドはですねえ、サンドイッチとか割と美味いんですよ」

 

「サンドイッチ?意外ー」

 

正確にはホットサンド的なものだけど。

 

「あ、本当だ!美味しい!」

 

「肉が入ってないのがちょっと寂しいけど、野菜の味とスパイスの香りがするサンドイッチは、カレーに飽きたって時には最適だね」

 

 

 

因みに服は、俺も鈴谷も近場の服屋で一週間分買ってある。

 

「うわー、エスニックー」

 

「似合ってるよ鈴谷」

 

折角だから鈴谷には現地の民族衣装、サリーを着てもらった。

 

あれだよ、5mくらいの布を巻きつけるやつだよ。

 

似合うな。

 

顔の作りがアジア系だからか?

 

いや、鈴谷は髪の色も綺麗なエメラルドグリーンで、鼻も高く小顔だ。ハーフに見えるな。

 

鈴谷には学生服とかが一番似合うかなー。

 

なんかそういうコスプレっぽいのが似合っちゃうタイプ。

 

俺?

 

俺は普通に安めの長袖シャツと帽子かな。

 

あー、あのね、暑い場所では長袖の方が良いんだよな。

 

日の光が直接地肌に当たるのは良くないんだよ。だから、長袖の通気性がいいシャツとかで過ごした方が良いんだよね。

 

 

 

さて、インドだしな。

 

となると、やはりここかな。

 

タージマハル。

 

文化遺産だしな。

 

でも鈴谷はこういうのは分からないだろうから、軽く見て回る程度で。

 

妙高辺りは歴史に詳しくて興味もあるから、色んな話ができるんだけどな。

 

鈴谷は歴史とかに興味がないから軽く建物と景色を見て回る感じになると思う。

 

「へー、綺麗」

 

「ここはね、女の人のお墓なんだよ」

 

「王女様とか、そういう人の?」

 

「そうだねえ、こんな大層な建物を作られちゃうくらいなんだから、相当愛されていたんだろうねえ」

 

「ふーん……。提督は私のことどれくらい好きか教えて?」

 

「いっぱいちゅき」

 

「じゃあ、私が死んじゃったら、どうする?」

 

「普通に生き返らせるけど」

 

「あ、そんなことできるんだ。死んでも安心だね」

 

「あ、でも死体がないと生き返せないから、死んでも帰ってきてね」

 

「うん、モチロン!私は提督の側にずーっといるからね!」

 

そうか……。

 

「にしても、うーん、お墓かー」

 

「どうした鈴谷」

 

「私はどんなお墓に入るかなー、って」

 

「艦娘は基本的に歳をとらないんだし、お墓には入らないんじゃない?」

 

「でも、死ぬことは死ぬでしょ?その時のためにどんなお墓が良いか考えておこうかなー」

 

「因みにどんなお墓が良いの?」

 

「提督と一緒のお墓が良いかな」

 

「俺は死ぬつもりはないからなあ」

 

「そうなの?じゃあお墓は良いや。提督、死ぬ時は言ってね。提督が完全に死んで、二度と生き返る気がないって言ったら、その時は」

 

「その時は?」

 

「私も一緒に死ぬから」

 

………………。

 

「俺の人生と鈴谷の人生は別だろ?俺に合わせる必要はないよ」

 

「えー?でもさ、提督がいなくなった世界とか、なんの価値もないよね?」

 

「そんなことはないさ、確かに世界は無価値なゴミも多いけど、それと同じくらい価値あるものに溢れているんだ」

 

「そう、かな」

 

「そうとも。俺がいなくなっても、死ぬだなんて言わないでくれ」

 

「うーん、じゃあこうしよう!鈴谷とね、子供を作るの!」

 

「無理」

 

「そしたら、その子を育てるのが私の生き甲斐になると思うから」

 

「無理」

 

「無理とかじゃなくて」

 

「無理」

 

「提督はさあ、もういい加減観念したら?私達もね、どうせならちゃんとエッチして妊娠したいって思ってるだけで、その気になれば提督の精液のサンプルで体外受精もできるんだからね?」

 

「お願いだからやめて?」

 

「提督のおちんちんで孕ませるか、体外受精で孕ませるかの違いしかないんだよ?どの道孕ませるんだから、どうせなら二人で気持ちよくなった方がいいでしょ?」

 

いや、本当にもう。

 

お願いだからやめてくれない?

 

 

 

「旅はどうだった?」

 

「うーん、黒井鎮守府って恵まれてるんだねー、ってことが分かった、かな?」

 

確かにな。

 

毎日美味しいものをいくらでも食べられて、清潔で温度や湿度も丁度いい。しかもスマートハウス。お手伝いロボット付き。理想的な家だ。

 

「インドは暑くて大変だったねー。あ、カレーは美味しかったかな。あと飲み物とお菓子も結構美味しかったよ」

 

成る程成る程。

 

「まあ、また行きたいかと言われると微妙だけどねー。あ、でも提督と一緒ならどこに行っても楽しいからね」

 

「そっか。じゃあ、帰ろうか」

 

「うん!」

 

鈴谷と手を繋ぐ。

 

そして空港へ。

 

まーなんだ、あれだなー。

 

結構楽しかったなー。

 

またどっか行こうか、鈴谷。

 

今度は、熊野も一緒に。

 




鈴谷
コスプレっぽい服が似合ってしまう。

旅人
イケメンでどんな服も着こなす。

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