この辺りではあまり敵が現れないとのことで、提督の指示により、二組に分かれて昼食を摂る私達。提督は相変わらず、深海棲艦にくっつかれている。
「提督、コッチヨ、コッチノ方ニ南方棲戦鬼ト空母棲鬼ガイルワ!早ク倒シテアソビマショ?」
「ヲッ!作戦、終ワッタラ、アソンデ?」
「アタシモ!アタシトモアソンデクレ!!提督!!大好キダ!!」
…………?!
し、深海棲艦が、増えてる?!!
い、いつの間に?!!
「よしよし、じゃ、この作戦終わったら、また今度遊びに来るからね」
「「「ワーイ!!」」」
「ちょ、ちょっと!待って下さい提督!!」
「もー、良いじゃん、大井っちー。あいつら、大人しくしてるみたいだしさー」
き、北上さん……。
「……でもさ、何であんなにいちゃいちゃしてるのかな?……ちょっと、ウザいかなー。一言いってくるね、大井っち」
き、北上さん……!!
何て頼もしい!提督を叱りに行ってくれるなんて!!
「提督ー?その子達、何なのー?どういう関係ー?」
「んー?この子達は深海棲艦、俺の、そうだな、知り合いだよー」
「「「恋人デス(ヲ)!」」」
「は?(半ギレ)」
北上さん、怒ると怖い!!
「……ほら、この子達は人恋しいんだろうよ、皆んな、ここらの離島でひっそりと暮らしてるから。……大目に見てやってくれないかな?」
「……それは」
「……仲間以外の誰とも会えないって、寂しいことだろ?それは、北上ちゃんだって身をもって体験したじゃないか。……できれば、仲良くしてあげてくれ」
……まあ、そうですね……。深海棲艦である以上、仲間以外に会うことはできないでしょう。それは、確かに寂しいことですけど……。うーん、でも、深海棲艦は敵で……。
「ン?オマエ、北上カ?……ジャア、アタシト同ジ、雷巡カ?!同ジ雷巡ニ会ウノハ初メテダ!仲良クシテクレ!!『トモダチ』!!」
「え?!あ、うん……、?!、もしかして、チ級?!仮面は?!」
「アア、アレカ?アタシノ艤装ハカワイクナイシ、シマッテアルゾ?アト、アタシノコトハ『ちーちゃん』ッテ呼ンデクレ!!」
嘘?!じゃあ、さっきからずっと艤装を展開せずに、艦娘の目の前に立っているってこと?!
「ば、馬鹿じゃないの?!武器も持たずに敵の前に立つなんて!!」
「ン?何デダ?オマエ達艦娘ハ、武器ヲ持タナイワタシ達ヲ撃ッタリシナイダロウ?提督ハ、イツモ言ッテイルゾ?艦娘ハ、イイヤツダ、ッテ」
そんな、そんなの……!
「まあ、そういう事!……戦わないで済むならさ、それが一番だろ?平和が一番!ラブアンドピース!!ってね?」
………………はぁ、もう、分かりましたよ。貴方は、そういう人ですから。最善ではなく、最高の結果を望む、そういう人です。
確かに、戦わないで済むなら、それが一番ですし……。でも……、
「貴方は、私達の提督ですから!深海棲艦ではなく、私達を見て下さい!!」
……あっ?!つ、つい本音が?!!
「……あー、うん、ごめんな、寂しかったのな、大井ちゃん。安心して、ちゃんと見てるからさ」
「ちっ、ちっ、違いますっ!!そんなんじゃないです!!た、ただ私は、北上さんとの約束のことを……!!」
「よしよし、いい子いい子」
「わひゃあ!な、撫でないで下さい!!」
もう、本当にこの人は……。でも、良いですよ、許してあげます。…………でも、北上さんと私を裏切ったら、その時は…………。
×××××××××××××××
さて、そろそろ決戦かね。……夥しい程の血の匂い、火薬の匂い、鉄と肉の焼ける匂い…………、近い、いや、向こうから来たな。
『ワタシノホウゲキハ、ホンモノヨ……』
『ナンドデモ、ナンドデモ……、シズンデイケ……!』
さあて、おいでなすった、大ボス二人。……ん?アレ?こっち見てる?めっちゃ見てる?
『『…………アーーー!!オ、オマエ!!黒井鎮守府ノ変態提督!!』』
「えっ?ひどくない?」
『ウルサイ!!オマエノ所為デ、初期型ノ深海棲艦ハ皆、使イ物ニナラナクナッタ!!』
『コスプレダノ、露出ダノ、変ナコトニハマッテ、ソノ上ドMニナッタリ!!命令ヲ聞カズアソンデバカリダ!!』
「大変っすね(笑)」
『『ブッ殺ス!!!!』』
全く、俺が変態な訳ないじゃないか。仮に変態だとしても、変態と言う名の紳士だよ。
怒り狂う戦鬼の放つ砲撃を弾く。……成る程、自分で本物と言うだけはある。かなりの威力だ。これは、直撃すればウチの戦艦でも危ない。続いて、空母棲鬼の艦載機が、制空権を取らんと飛んでくる。
「総員、弾幕を!!」
「「「「了解!!!」」」」
対空砲火……。戦鬼の砲撃なら、なんとか防げるが、空母棲鬼の爆撃は無理だ。攻撃範囲が広すぎる。……だからこそ、爆撃はさせない。高射砲などを装備した比叡ちゃん、霧島さん、そして鈴熊シスターズ。更に、ダブルドラゴンの艦載機による対空攻撃により、制空権を確保する。……しかし、こちらの艦載機もほぼ全滅、援護は期待でなきなそうだ。
『馬鹿ナ?!ワタシノ艦載機ガ?!!』
おや?制空権を取られるのは初めてかな?なんにせよ、これで空母の制圧力は封じた。……あとは、まっすぐ行ってぶっ飛ばす!
『落チ着ケ、砲撃デ殺レバイイ!』
『ヨシ、沈メッ!!』
飛来する砲弾。だが……、
「はぁい、駄目でした!!効きませーん!!」
……ハベルの大盾……。最高の、いや、最硬の大盾だ。これを両手でしっかりと構え、叫ぶ!!
「スーパーズ!重巡!!俺について来い!!突撃だ!!!」
「「「「了解!!!!」」」」
大盾を構えたまま、まっすぐ前に進む。空は、残りの皆んながどうにかしてくれる以上、警戒すべきは砲撃のみ。……そして、その砲撃も防げるのであれば、接近は容易!!
『ナ?!!正気カ貴様等?!!!』
「ハッハー!正気だよぉ?!昔はねぇ!!雷撃用意!!撃てぇ!!」
「喰らえ……!!」
「吹っ飛べ!!でぇぇぇい!!」
「二十射線の酸素魚雷、大井っちと合わせて四回!行きますよー!!!」
「九三式酸素魚雷、行くわよ!!」
馬鹿みたいな量の魚雷。海中からの絨毯爆撃。
『『グオオオオオオオ!!!!』』
「やったか?!」
那智さん!それ言っちゃ駄目!!
『グウゥ!!危ナイトコロダッタナ……!!』
『クソ!艤装ガ……!!』
「嘘だろ?!あれ程の雷撃を受けて生き残るなんて?!!」
いや、違うな、多分、向かってくる雷撃に砲撃を当てて、迎撃したんだ。全て処理することはできなかったみたいだが、それでも、戦闘能力は喪失していない。しかし、空母棲鬼は大破、戦鬼は中破といったところだ。
『キ、貴様等……!!生カシテハ帰サン……!!』
「どうする司令官!魚雷はほぼ使い果たした!この距離だ、背中を向けて逃げることもできん!!」
「空母棲鬼はほぼ死に体だ!那智と摩耶で戦艦が来るまで時間稼ぎ!素手でも充分な筈だ!!戦鬼は俺とスーパーズで倒す!!行くぞ!!」
「全く、鬼と殴り合いとは!無茶を言う!!」
「なーに、相手にとって不足はねぇ!!行くぜ那智!!」
「応!!」
空母棲鬼に駆け寄る二人。実力的には充分な筈だ……。
×××××××××××××××
「どうした?!空母棲鬼!!それでも鬼か?!!」
那智が西洋剣で斬りかかる。
『グッ!!貴様ナド、艦載機ガアレバ……!!』
「オラ!余所見すんなよ!この摩耶さまを忘れんな!!」
アタシが殴る。
『グアッ!!貴様ァ!!』
提督の言う通り、艦載機も砲撃もないならば、鬼であれ素手で倒せる、これは事実だ。
『喰ラエ!!コノ!当タレ!!当タレ!!……何故当タラナイ?!!』
……だが、その力と耐久力は確かに鬼。そしてこちらは、一発でももらえば危ないだろう。……くっ、無茶苦茶に暴れやがって!!あの鋼鉄の手足に当たれば、タダじゃ済まないぞ!!
「くっ!喰らいやがれ!!」
機銃を放つ。……今回は魚雷しか装備してないんだ!備え付けの機銃しか、射撃武器はない!!
『効カンゾ!!』
くっ、やはり駄目か!機銃程度じゃダメージを与えられない!!やはり、アタシ達だけじゃキツイ!!
「じゃあ、これはどうかしら!!」
「気合い!入れて!!行きます!!!」
『ゴアッ!!』
「霧島!!比叡!!」
おお!空母棲鬼の横っ面をぶん殴りやがった!!
『不意打チトハナ!!舐メタ真似ヲ!!』
「失礼ですね、奇襲も立派な戦術ですよ?……さあ、お喋りは終わりです。司令の敵は"挽き肉"にして差し上げます……!!」
?!
眼鏡を握り潰し、そう言い放つ霧島。
…………鎮守府で近接格闘最強は長門だろう。だが、二番目がいない訳じゃない。多くの候補がいるが、ことステゴロにおいては、この霧島が最有力候補だ。
『"挽き肉"ダト?!ヤッテミロ!!』
空母棲鬼の拳が真っ直ぐに突き出される。……私が喰らえば、骨にヒビが入るであろう一撃。だが、霧島は違う。
「うおりゃあ!!!!」
『何?!!』
?!
自分の拳が割れるのも気にせず、鋼鉄の拳に合わせて、真っ正面からぶん殴る!!!あの鋼鉄の拳は、霧島の鮮血に彩られながらも、バラバラに破壊された!!
「もう一発!!!」
?!
そして、『割れた方の拳』で追撃!!正気かよ!!
『クッ、オオオオオ!!!』
空母棲鬼は、苦し紛れに、もう片方の鋼鉄の拳を翳すが、そちらもあえなく叩き割られた。
「もう、一発!!!!!」
?!
『ヤ、ヤメロオオオオオ!!!!!』
ぐしゃり、と、ものすごーく、イヤな音。空母棲鬼は、縦に回転しながら、数十メートル吹っ飛ぶ。最後の方は、河原に投げた石みたいに、水上を跳ねていった。……死んだか、ありゃあ?
「ドエレーーー"COOOL"でしたよ!霧島!」
「フフ、ありがとうございます、比叡お姉さま」
返り血をべっとり顔に付けた霧島が、いつもの笑顔を見せる。
……まあ、アレだな。『霧島を怒らせちゃならねえ』ってことだ。
×××××××××××××××
横目で見ると、あっちは終わったみたいだね。
こっち、戦鬼の方は、と言うと……。
『貴様、服ヲ破イテ何ガシタイ?!ソレシカ出来ンノカ?!……ソシテ見ルナ!!触ルナ!!!』
「くっ!羞恥心が薄いタイプか!!強い!!」
いつも通り、提督が馬鹿なことやってる。
「真面目にやって下さい!!」
備え付けの機銃を放つ大井っち。まあ、効くわけないよねー。軽く弾かれちゃってる。……どうしよう、戦鬼には、副砲とはいえ、こっちを倒せるだけのものがある。でも、こっちには決め手がない。戦鬼を倒せるだけの決め手が。
「何?!写真撮影も効かないだと?!」
『ウザッタイゾ!失セロ!!』
「ぐはぁ!!!」
その時、私の直ぐ後ろから二本の矢が飛来した。
『?!、副砲マデモガ……!!クソッ!!』
「いやー、奇襲成功だね、飛龍!」
「そうね、これで副砲は使えない!」
蒼龍、飛龍の二人だ。弓で副砲を貫いたみたい。よし、これなら、囲んで格闘戦で……!
「行くよ!大井っち!!」
「ええ!北上さん!!」
自慢じゃないけど、私と大井っちは息ピッタリの名コンビだ。……何も言わずとも、まるで鏡合わせみたいに動ける。
「えい!」
「それ!」
『グ、オオ、オ、チョコマカト!!奇妙ナ動キヲ!!!』
「「こっちだよ!(ですわよ!)」」
鈴谷と熊野も来たみたい。戦鬼の背中に蹴りを入れる。
『キ、貴様等!寄ッテ集ッテ!卑怯ナ!!』
「なーに言ってんの?戦隊ヒーローだって5、6人いるだろ?正義の味方はこう言うことして良いんだよ!!」
『オアアアア?!!貴様、ナンテコトヲ?!!!』
そう言って、瞬時に戦鬼の下の毛をハート型にカットする提督。うわぁ、自殺もんだよ、あれ……。でも、ふざけているように見えて、効果はてきめんだ。顔を赤くして、片手で下半身を隠すようになった戦鬼。片手が塞がった。
……そして。
「よし!当たった!下部ユニット破壊!!」
蒼龍の矢が下部ユニットを壊す。
「でかした蒼龍!!おおおおお!!必殺!!水龍敬ランドの刑!!!!」
すると提督は、またもや一瞬で戦鬼を下部ユニットから引き剥がすと、戦鬼に服を着せた。
……いや、あれ、服っていうか……。
『ア、ワ、ワタシ、ナンテ格好ヲ……?!キ、キャァアアアアアア!!!!』
ピンクのハート型のニプレス、網タイツにガーターベルト、太ももに正の字、その上から、大事なところを全然隠せてない、オープンクロッチショーツ……。ご丁寧に、ショーツの端には、意味有りげな白い液体の入ったゴム風船が括り付けられている。……私でも自殺するね、あんな格好。誰にも見せたくないよ、普通。…………いやでも、提督になら……。いや、まあ、うん。
皆んな、戦鬼のあまりの格好に、顔を赤くしてしまう。……提督、ああ言うのが好きなのかな?
「俺達の、勝利だッ……!!」
完全勝利したと言わんばかりに、右手を上げる提督。
いや……、まあ……、うん、そうだね……。
出撃組
あそこまで大暴れした旅人を見ても好感度は下がらず。
那智
西洋かぶれ。実は英語ペラペラ。持ってる剣はとある伝説のアサシンの剣。手首には暗殺剣。趣味は西洋文学と洋酒集め。
霧島ネキ
怒らせると並みのヤクザより怖い。近づくと気合いと根性を活かした格闘攻撃が飛んでくる。今回は使わなかったが、釘バットやツルハシ、ハンマーなども持っていたりする。最近の趣味はバイク弄り。愛車はGSX400インパルス(霧島スペシャル)。
たっちゃん
タ級。エロ可愛い。
ちーちゃん
チ級。少し抜けてるけど社交的で元気な子。
ヲっちゃん
ヲ級。純真爛漫。
南方棲戦鬼
このあと、普通に旅人に捕まる。
空母棲鬼
このあと、旅人に治療され、捕まる。
旅人
戦鬼ちゃんを脱がせて大満足。