普通に考えて、ナンバリングタイトル以外にストーリーの本筋があるのはおかしいよね?って言ったんですけど、アサシンクリードだってナンバリングタイトル以外も重要だろと言われてぐうの音も出ねえ。
「で、良いこととは、具体的に何をやるのだ?」
と長門。
「んー、そうだねえ、例えばほら、虐待児童を助けるとか、いじめをやめさせるとか……」
「都合よく見つかるものなのか、それは」
「はいはい!そう来ると思って、この明石がこんなものを用意しました!名付けて、『悪意発見機』です!」
明石が言うに、このアプリをダウンロードすると、悪意を持った人間を強調表示することができるらしい。
「あ、因みに、提督のお知り合いの方は表示されませんからね」
さて、じゃあやるか!
俺は東奔西走!駆け巡り!
日本全国の悪人を退治して回った!
「おっ、カツアゲかあ、良くないなあ」
「ああん?なんだおっさん?」
「ほら」
「がっ?!!て、てめえ!!」
「二度とカツアゲが出来ない体にしてやろうか?」
「やってみろよ!」
「えーと、確か、ここだ。醒鋭孔」
「いてっ、な、何が?」
「お前は痛風なんて目じゃないくらいに痛みに敏感になったんだよ。人を殴ったら、殴った拳が痛くなるんだ」
「はあ?そんな訳あるかよ!おらっ……?!!!ぐああああああああああああ!!!!」
「まあ、真面目に勉強して知的労働ができるようにならなきゃ生きていけないだろうね。心を入れ替えて真っ当に生きなよ」
とか。
放置された子供を見つけて。
「あ、だ、誰、ですか?」
「その前にお水飲もうね、ゆっくり飲んで、そう、大丈夫」
「あ、りがと、ござい、ます……」
「倒れちゃったか……、病院に送ろう」
とか。
艦娘も同じく頑張った!
頑張った、んだが……。
「ちょーっとやばいレベルの苦情来てるんだけど」
どうして……、どうして……。
「えー、まず長門」
「ああ」
「何しでかしたの?」
「む、指示の通り、悪人を退治した」
資料をめくる。
「……えー、虐待児童の父親の腕をねじ切り、『もしまた子供に手を上げるなら、もう片方の腕もなくなると思え』と脅して去っていった」
「うむ」
「いやいやいや」
「駄目なのだろうか?」
そりゃ駄目でしょ。
「子供は国の宝だ。それをストレスのはけ口にして意味もなく手を上げるなど、あってはならないだろう」
「そうだけど……」
攻撃が過剰なんだけど?!
「それと、引ったくりの腕をへし折ったとか」
「うむ」
「……まあ、それくらいは良いよ」
苦情は来たけどね。
「それと強姦魔の……、その……、た、玉をつ、潰したとか」
「うむ。強姦をしようとするような卑劣漢にイチモツはいらんだろう」
ひぃ……。
「だってこれ、金的蹴りのあまりの威力に、玉だけじゃなく竿も破裂して尾てい骨も粉砕骨折って……」
「妥当だろう」
……まあ、良いよ。
「えー、次。阿賀野」
「はい!」
「頑張りましたか?」
「頑張ったよ!」
「うん!めっちゃ苦情来てる!」
「ええ?!が、頑張ったのに……」
はい、まずはこれ。
「いじめられっ子を助けてきたんだね」
「うん!悪い子がいっぱいいたから、コツン!ってしてきたの!」
そうかー、ははは。
「いじめっ子は全身複雑骨折で全治八ヶ月だとよ。やり過ぎだ!!」
「え、ええ?で、でも、ちょっと小突いたくらいなのに」
「人間の子供なら、艦娘がちょっと小突いたくらいで死ぬからな?」
「ううー、ごめんなさい」
「えー、次。高雄」
「はい?」
「やり過ぎ」
「え、そうですか?」
「君はもうさ……、ヤクザを斬り殺してきてさ……」
「ヤクザくらい、いくら死のうと関係ないかと思いまして」
怖いわ!
「事務所ごと更地にしたの?」
「ええ、魔法で」
勘弁してくれよ。
「次、那智」
「何だ?」
「やりやがったね?」
「何をだ?」
「過激な発言をした野党の政治家が軒並み不審死……」
「ああ、上手くやっただろう?」
上手い下手じゃないよね。
「政治家殺しはやべーって」
「だが、あのような政治家は日本に必要か?生かしておいてマイナスになるなら殺した方が得では?」
「んん、まあ……、多分死ねって思われてると思うけども」
「むしろどうやって政治家になったのだ?日本が嫌いな日本の政治家とは割とまずいと思うのだが」
「そりゃまあね、まあね、そうだけどね?!」
だからって殺すのはね?
ゲシュタポじゃないんだからさ、ほら、言論の自由がね?
「はい時雨」
「何かな?」
「やってくれたねえ」
「不満かい?」
「苦情はなかったよ、苦情はね」
「なら良いじゃないか」
「……最近、虐待児童の親、犯罪者、不法滞在者、ヤクザや中国マフィアの構成員が、謎の発狂死を遂げる事件が多発しているそうだ」
「ふふふ、それは怖いね」
「全員、見えない何かに恐怖して暴れ、ある者は喉を掻き毟り、ある者は自ら頭をかち割り死んでいったそうだ」
「それで?」
「殺すなーっ!」
「いやあ、誤解だよ提督。僕はちょっと話し合いをしただけさ」
「君と話し合うと発狂死するのか?」
怖えよ。
「仕方がなかったのさ。僕はしっかりお願いしたんだけど、聞いてくれなかったからね」
「どんな感じに?」
「悪いことはやめよう、って」
「それでやめる訳ないでしょうが!!最初っから殺す気満々だったなコラ!!」
「ふふふ」
ふふふじゃねーよ全くもー!
「望月」
「はーい」
「手を抜いたな?」
「うっ、い、いや、頑張ったよ?」
嘘をつくんじゃない。
「配布した資金を全部孤児院に募金してきたろ」
「い、いや、ほら、お金ないみたいだし」
「一千万ポンと渡すか普通」
「うー、だって面倒だったんだもん!」
「まあ、良いよ。なんだかんだで受け取ってもらえたし」
「次、比叡」
「はい!」
「……割とまともだな」
「はい!」
不良の顎を叩き割ったくらいか。
「比叡は器用で手加減が上手いもんな」
「当たる瞬間に引くのがコツです!」
「偉いぞー」
「嵐!」
「おう!」
「んんん、偉いなあ君はー!ちゃんと穏便に済ませたんだもんなー!トラブルシューターやらせたら一番だなー!」
「へへへ、て、照れるぜ!」
さて……。
悪人の一斉排除、各方面への募金。
偽善作戦は一定の成功を収めた。
『10:名無しさん
XXXX/XX/XX ID:◯◯◯◯◯◯
また黒井鎮守府か
11:名無しさん
XXXX/XX/XX ID:◯◯◯◯◯◯
やりやがった
12:名無しさん
XXXX/XX/XX ID:◯◯◯◯◯◯
やべーやつらじゃん
13:名無しさん
XXXX/XX/XX ID:◯◯◯◯◯◯
もう遊んでてもらった方が平和だよな』
収めた、のか?
まあ、良いんじゃね?
旅人
偽善作戦、成功。