旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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デビルメイクライ5、クリアしました。

まさかあいつがあいつだったとは……。正直、またかよ!って思いましたが、楽しかったです。バルログが一番使い心地良かったかなー。


380話 ネルソン、建造

……1949年3月15日。

 

余の意識は、そこで途切れた。

 

余は……、戦ったのだ。

 

立派……、かどうかは、後世の人々が評価するものだろうが、余は精一杯戦った。

 

それで、退役し、解体。

 

余は、『終わった』のだ。

 

……だが、余の魂は……、海に『在る』。

 

人間でいう、微睡みの中にいる。

 

何年も、何年も、微睡んでいた。

 

そして、ある日。

 

『おいで』

 

声が、聞こえた。

 

男の声だ。

 

余は、それに従ってみようと。

 

そんな気に、なった。

 

 

 

『っ……、は?!こ、ここはどこだ?!』

 

微睡みから、意識が覚醒する。

 

余は……?

 

ええと、余はネルソン。ネルソン級戦艦一番艦にして、ビッグセブンのうち一隻……、で。

 

多分、その、艦娘?というものだと思う。

 

艦娘?

 

艦娘とはなんだ?

 

艦娘とは……、よく分からないが、人間の形をした艦で……、女だな。女だと思う。

 

『おお……』

 

凄いな、艦の頃と違って、手足があるぞ。舵を操作されずとも自由に動けるのか。

 

『んっ……』

 

胸に大きな脂肪の塊が。これが乳というものか?むにむにだ。これで子を育むのだな。

 

服装は……、スカートが短いな。女が足を見せるのはあまり良くない、か?

 

余は、何故ここに?

 

……そうだ、深海棲艦を殺す為だ。

 

深海棲艦とはなんだ?

 

人類にあだなす怪物だ。

 

怪物?そんなものがいるのか?!

 

そもそも何故、余は艦娘になった?深海棲艦を討たねばならぬと思った?

 

……何も、分からない、か。

 

 

 

『あの、良いかな?』

 

美しいクイーンズイングリッシュで話しかけられた。

 

この声は……、そうだ!余を呼び出した声ではないか!

 

『貴様、何も、の、だ……?!!!』

 

余が顔を向けると、そこには。

 

絶世の色男がいたのだ。

 

なっ……?!

 

何と良い男だ!!

 

背も高く、体格も良く、白髪が美しい。

 

同郷の者ではないが……、高い鼻と深めの彫りは西洋の男のそれだ。

 

知性的な黒い瞳に余を写し、真っ直ぐに見つめてくる。

 

『うっ……?!』

 

『っと、大丈夫?!』

 

『い、いや、その、貴様を見ると、何故か胸が高鳴るのだ……』

 

恐らくは心臓であろう、臓器がどくんと動いたのを感じる。

 

『……あー、それは、まあ、いずれ慣れると思うよ』

 

だ、駄目だ、止まらん!この男に見つめられると、胸の高鳴りが抑えられん!!

 

どういうことだ?!

 

『……ちょっと離れようか?』

 

『そうして、くれ』

 

しかし、男が余の側を離れるとどうだろうか?

 

今度は、心臓が締め付けられるような……。

 

ええい、離れられるとかえって辛い!

 

『いや、やはりもっと近くに来い!』

 

『あー、うん』

 

むぅ……?

 

一体どういうことなのだ?

 

近付かれると鼓動が早くなり、離れられると胸が痛くなる……。

 

『……何かの病気だろうか?』

 

『……まあ、不治の病だよね、それは』

 

『な、何だと?不治の病か……!艦娘?とやらになって早々、死んでしまうのだろうか?!』

 

『死にはしないと思うよ?』

 

『そうか……?』

 

って、それよりもだ!

 

『貴様は、誰だ?』

 

『黒井鎮守府提督、新台真央。ネルソンさん、君を建造……、この世界に再び呼んだんだ』

 

『建、造……』

 

『君は艦娘。深海棲艦を倒す者だ』

 

それは、何となく理解している。

 

『……でも、そんなことは関係なく、君にはこの世界を楽しんでほしい』

 

『楽しむ、だと?』

 

『ああ。自然に触れ、芸術を楽しみ、美食を味わい、愛を知り……、この世界で生きてほしい。女性としての幸せを知ってほしい。そう思っている』

 

『……それは、理解した。つまり、余は貴様の指揮下に入り……、人間の真似事をしながら、深海棲艦と戦えということだろうか?』

 

『まあ、その認識で良いよ』

 

そうか……。

 

『……何故、この様な姿になったのだろうか?』

 

『んー、そうだね……。それは分からないけど、ネルソンさん、君は世界大戦で必死に働いただろう?』

 

『ああ』

 

『次は、人間として、幸せな日常を過ごして良い、と考えれば良い。第二の人生だ』

 

第二の人生、か。

 

『ネルソンさんは戦艦だし、山や森なんかは見たことなかっただろ?綺麗な自然を見に行かないか?』

 

自然……、見てみたいな、確かに。

 

『それに、今この世界は、君が解体されてから七十年以上の時が過ぎている。今の人間の営みなんか、そういうの、見てみないか?』

 

そう、だな。

 

余が守った人間を見てみたいものだな。

 

 

 

『……それより貴様、もう少し私の近くに寄れ』

 

『こうかな?』

 

『うむ……❤︎』

 

これは良いな、実に良い。

 

何故かは分からんが、この男が側にいると心地いい。

 

む?

 

『『『………………』』』

 

『お前達は……!!!まさか!』

 

ウォースパイト、アークロイヤル、そしてジャーヴィス!!!

 

『こんなところで戦友に会えるとは……!!久しいな!!』

 

『ええ、久しぶり。随分とAdmiralと距離が近いのね、ネルソン』

 

む?

 

『ああ、この男はよく分からんが側にいてほしく思う。この男は司令官としてはどうなのだ?有能か?』

 

『これ以上ないくらいに有能よ。このレベルの司令官は中々お目にかかれないわね』

 

ほう!

 

有能な美男か。

 

神は二物を与えたと言うことか。

 

『ならば、余の側に相応しい男と言う訳だ』

 

『ええ、そうね。でも、Admiralは貴女だけのものじゃないわよ』

 

『む、そうか?』

 

ふむ。

 

ふむ……?

 

なんだ?

 

なんだか、それは少し嫌だな。

 

この男は余だけのものにしたい。

 

『余だけのものにしてはならないのか?』

 

『できるものなら』

 

そして飛んでくる本気の殺意。

 

『……ッ?!!わ、分かった、それはやめておこう。しかし、余もAdmiralの側にいて良いだろうか?』

 

『ええ、皆で一緒に彼の側にいましょう』

 

 

 

『今日はネルソンさんの為に腕によりをかけて料理したよ。さあ、どうぞ』

 

『うむ、礼を言うぞ』

 

なんとこの男、多才で、料理の腕も一流だと言う。

 

沢山の料理を余を歓迎する為に作ってくれたとのこと。

 

『む……!これは美味いな!』

 

ほう……!

 

驚きだな!

 

料理の記憶はなんとなくあるが、ここまで美味いものの記憶はないぞ!

 

このローストビーフのソースの奥深い味と言ったら……!

 

この男は本当に有能だな!

 

余の側に置いておきたい!

 

『ラム酒もどうだい?』

 

『Admiralもいけるクチか?』

 

『ああ、酒を飲まないと干からびて死んでしまうんだ』

 

『ふふふ、面白いジョークだな』

 

 

 

『ここがネルソンさんの部屋だ。他のイギリス艦と一緒だよ』

 

『そうか』

 

友と一緒か。

 

態々個室にしてもらう必要はないな。士官でもあるまいし。そもそも、私室の必要性がほぼない。

 

何せ、この、黒井鎮守府は、施設が広く様々なものがある。

 

私室など、寝るときくらいにしか使わないだろう。

 

しかし……。

 

『それじゃあ、今日は寝ると良い。ゆっくり休んでね、ネルソンさん』

 

『待ってくれ』

 

『ん?何かな?』

 

『貴様といると、心臓が高鳴るんだ。これは、なんなんだ』

 

『……それは自分で考えた方が良い問題だと思うね。俺じゃ力になれないよ』

 

………………。

 

『もしかしたら、だ。これは、多分、恐らくは』

 

今日一日、この男と一緒に行動して。

 

『余は、貴様に恋をしたのかもしれない』

 

『……そうか。恋は良いよ、素晴らしいものさ。それで?』

 

『余を抱いてくれ』

 

『喜んで』

 

余は、余は……!!!

 

 

 

うわあああ?!!

 

邪魔するなウォースパイトーーー!!!

 




ネルソン
人間の形に戸惑う。

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