旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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ほんへの書き溜め沢山あるぞー。

あと、おすすめssを投げてくれる人多くて助かる。

今のマイブームはやる夫スレなので色々見てる。


397話 ミリタリ記者 後編

「ミリタリークラシックスの松浦です、よろしくお願いします、加賀さん」

 

「よろしく」

 

ミリタリークラシックスの松浦です。

 

34歳、妻子がいます。

 

いやー、あの謎の組織黒井鎮守府への取材ができるとは!

 

楽しみにしてたんですよねえ。

 

「………………」

 

「あ、あの?」

 

「何かしら」

 

「ええと、その、案内は……?」

 

「どこへ行くのかしら」

 

「で、では工廠で武装について話してもらいたいのですが」

 

「分かりました」

 

無言で歩いていく加賀さんの後ろについていく。

 

無口で威圧的な人だな……。

 

少し怖い。

 

 

 

工廠、明石と夕張と名乗る艦娘に迎えられた。

 

先程、鎮守府全体を紹介された時にも会った艦娘だ。

 

さて、どこまで教えてくれるか……。

 

「ええとそれで、何が聞きたいんですか?」

 

作業着を着込んだピンク髪の艦娘、明石さんが言った。

 

「艦娘の武装についてです」

 

「武装について、ねえ……」

 

明石さんはプロジェクターに艦娘の姿を映した。

 

私には分からない、近未来的なグラフや表と、艦娘、そして武装の数々。

 

どう見ても格闘武器が多いようだが……?

 

「えー、まず、現在の黒井鎮守府において、武装の統一はしていません。つまり、艦娘の型毎に固有の武装がある形になっています」

 

「は……?」

 

え……、では、となると、単装砲や機銃を装備している訳ではないということか?

 

「艦娘には、艦娘固有の、その艦娘のポテンシャルを最大限に活かす専用装備があるのです」

 

「整備の問題などは……?」

 

「整備は皆自分でやります。しかしまあ、どうしようもないときは私が見ますよ。ですが……、艤装である、という時点で、それは艦娘の身体の一部とカウントされますから、破損紛失したとしても、入渠や時間経過で元に戻ります」

 

成る程……?

 

「ええと、つまり、艦娘の武装は統一されていない上に、整備は自己責任、と?」

 

「そうですね」

 

いやいやいや……。

 

「そうしたら、艦娘は戦場で武器を失った際どうするのですか?」

 

「失いませんよ。艦娘の艤装は艦娘の身体の一部です。いつでも好きな場所に出したり消したりできます」

 

「どういうことですか?」

 

「あー……、例えばこのスパナ、私の艤装なんですけどね、まずこれを投げます」

 

スパナは、硬質な音と共に、五メートルほど先の地面に落ちた。

 

「で、スパナ見ててください。……はい、消しました」

 

「おお?!」

 

スパナはパッと光って消えた。

 

「そしてはい、艤装召喚」

 

「おお!」

 

明石さんの手元に先ほどと同じスパナが、また同じようにパッと光って現れた。

 

「これ、艦娘なら誰でもできます。だから、武器がなくなるってことは滅多にありません。それに、予備の武器も持ってますしね」

 

成る程……、紛失の心配はない、と。

 

「では、艦娘のポテンシャルを最大限に発揮する武装とは何ですか?」

 

「ですから、艦娘によって違います」

 

ふむ……。

 

「例えば、どのような感じですか?」

 

「例えばー……、あー、そうですね、白露型なら狩道具に仕掛け武器と銃、睦月型なら近代兵器、長門型なら徒手空拳、綾波型ならナノマシン……、とかですかね」

 

聞いたことのない単語がちらほらと出てきたな……。

 

「えー、まあ、まず、白露型を例に挙げて話しましょうか。そうですね、これは海風ちゃんです」

 

駆逐艦海風の写真とデータが表示される。

 

「仕掛け武器のノコギリ鉈と、水銀の弾丸を放つ獣狩りの短銃……、予備もあるそうです」

 

表示されたのは、拷問器具のような恐ろしさがある大鉈と、アンティークな短銃。

 

「持ち物はスローイングナイフと遠眼鏡、そして携帯ランタンと輸血液、手記」

 

投げナイフ、遠眼鏡、腰につけるタイプの小さなランタン、輸血パック?と手記。

 

「以上です」

 

「以上って……、彼女は大砲も持たずに出撃するのですか?」

 

「白露型は仕掛け武器があれば大丈夫なんですよ」

 

戦闘時の映像が流される。

 

海風さんは、深海棲艦の砲火を軽々と躱しながら接近して、鉈を深海棲艦に叩きつけている。

 

また、短銃で近付いてきた深海棲艦を撃つと、深海棲艦は大きく仰け反り、その瞬間に……、あれは臓器だろうか?深海棲艦の腹部から臓器を引き抜いて殺している。

 

投げナイフも巧みに牽制に使い、深海棲艦の眼孔や口蓋、喉や心臓などに正確に投げて倒すシーンもあった。

 

また、手元から青白いうねる触手を出して、深海棲艦を弾き飛ばすのも見えた。

 

「あー、あれはエーブリエタースの先触れですね。上位者の力の一部を引き出して使ってるみたいですよ。白露型はそういうの得意ですから」

 

「触手、が」

 

「だから、エーブリエタースの先触れですよ。まあ、人間には分からないと思いますけど……、神の一種の力を借りた秘儀だそうです。呪術とか魔法とかそんな感じです」

 

「そ、そんなもの……」

 

「非科学的だけどあるものはあるんですよねー。そもそも、艦娘だってある意味では神の一種ですし」

 

魔法……。いやしかし、艦娘の存在そのものがオカルトだから……。

 

「まあ、白露型は分かりづらいですかね。じゃあ睦月型を見ていきましょうか。皐月ちゃんです」

 

黄色い髪の少女が映し出される。

 

「皐月ちゃんはミサイルをこよなく愛する火力信奉者ですね。基本的に、睦月型は菊月ちゃんと三日月ちゃん以外は作戦によって武装を変えますね」

 

「えっ、さっき、艦娘のポテンシャルを最大限に発揮する武器とか言ってましたよね?」

 

「はい、言いましたね。でも、睦月型は器用で、大抵の武器に適性があるんですよ」

 

そう、なのか?

 

「皐月ちゃんは……、ミサイルとバトルライフルを好む傾向にあります。睦月型の装備は銃が二種類ずつ二丁、それと格納武器、予備、オーバードウェポン、全部含めて十種類は装備していますね」

 

「そんなに」

 

「皐月ちゃんは基本的に、バトルライフルをメイン火力に、命中時のストッピングパワーが強いハンドガンとVTFミサイルを装備していることが多いです。部隊では中衛をすることが多いですね」

 

「中衛ですか?戦艦に前衛や後衛があるのですか?」

 

「はい、睦月型なら前衛は睦月ちゃんや如月ちゃん、水無月ちゃん、三日月ちゃん、中衛は皐月ちゃん、菊月ちゃん、文月ちゃん、後衛は望月ちゃん、長月ちゃん、卯月ちゃんですかね」

 

「その、陣形、とか」

 

「人間大の大きさの艦娘が複縦陣とかをして意味があると思いますか?」

 

……まあ、他の艦をかばい合うにも、人間大なら小さ過ぎて意味がない、か。

 

「成る程。では、前衛は深海棲艦に直接攻撃を?」

 

「格闘攻撃や実体剣、レーザーブレード、パイルバンカーなどで攻撃をします」

 

「レーザーブレードですか?!」

 

「はい。黒井鎮守府の科学力では実用レベルに達しています」

 

確かに、一部組織ではレーザーの軍事転用もされていると言う噂はあるが……。

 

「レーザーブレードの稼働時間はどれくらいですか?」

 

「レーザーなどのエネルギー系兵装は艦娘の神秘エネルギーを使って使用します。艦娘のスタミナが切れない限りは稼働するでしょう。それに、睦月型のレーザーブレードの使い方は、斬りつける一瞬だけレーザーブレードを展開するやり方なので、極めて燃費が良いそうです」

 

それは……、確かに、一瞬だけ展開するならば間合いも読めないですし、エネルギーも節約される……。

 

効率的な運用だ。

 

「なら、中衛は?」

 

「中衛はまあ、色々ですね。ライフルとマシンガン、パルスガン、レーザーライフル……、重武装すればキャノン砲やガトリング、大型ミサイルやチェーンガンなどもありますね」

 

「主にどのような戦術を?」

 

「あー……、うちは少数精鋭かつ、それぞれに役割があるので、皆自由な戦術で動きます。指揮を執ってもらうケースもありますけど、基本的な遭遇戦や小規模な強行偵察などでは、艦娘が独自のロジックで動くので、なんとも……」

 

「では、睦月型はどのように動きますか?」

 

「睦月型はですねえ、中衛なら、前衛が敵を引きつけたり、ショックを与えて動けなくさせたりするので、それを叩いたりしますね。他にも、後衛と連携しての制圧射撃や……、前衛が動きやすくなるように雑魚を倒したりもします」

 

成る程……。

 

「では、後衛は?」

 

「睦月型の後衛は、スナイパーライフルやスナイパーキャノン、レールガンなどで武装していて、主に敵の指揮官を遠距離狙撃で早期に殺害する役割があります」

 

「深海棲艦にも指揮官がいるのですか?」

 

「いますね。基本的にその場で最も強い深海棲艦が指揮を執るようです」

 

「指揮官を倒すと、やはり、深海棲艦も混乱するのですか?」

 

「ええ、明らかに動きに精彩がなくなりますね」

 

「そうですか……」

 

深海棲艦の艦隊にも旗艦は存在するのか……。

 

「深海棲艦はどのように指揮を?」

 

「鳴き声と……、特殊な音波というか、波動というかで指示しているみたいですね」

 

「まるで動物ですね……」

 

「深海棲艦は動物並ですよ、実際。上位の深海棲艦なら高い知能を有しますけど、下位の深海棲艦はほぼ動物並の知能です。でも、数は圧倒的に多い。だから私達艦娘は、知恵と個々の戦闘能力で上回らなきゃならない訳ですね」

 

「成る程……」

 

 

 

ふむ、取材はこんなものか。

 

帰って特集記事を組むぞ!

 

 

 

×××××××××××××××

 

「提督、そう言えば前の記者達の記事はどうなりましたか?」

 

「うーん?まあ、エキゾチックな出来になっているね。スッゲー売れたらしいよ?」

 

「爆破……」

 

「そんなことしなくて良いから(良心)」

 




明石
技術担当。めちゃくちゃ賢いがアホ。

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