旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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やべえ!書溜めが!!


417話 鎮守府正面海域防衛

「鎮守府正面海域に敵影」

 

「無人兵器群が破壊されました。姫クラスと予想されます」

 

「どうしますか、提督?誰か適当に出しますか?」

 

いや、うーん?

 

「なんか、嫌な予感がする」

 

「……それは、つまり?」

 

「相手、強いと思う。最大戦力は誰か空いてる?」

 

「木曾さんが空いてますね」

 

「じゃあ呼んで、俺も出る」

 

「はい」

 

 

 

なんてことない初夏のある日、黒井鎮守府に珍しい殴り込み。

 

一年ぶりくらいの出来事に皆驚いていたが……。

 

俺は、何故か嫌な予感がした。

 

よって、最大戦力の一人である木曾と、バックアップに数人の艦娘を連れて、鎮守府正面海域を蹴散らすことに。

 

今回は……、おや、新しい深海棲艦だ。

 

「やあやあやあやあハローハロー、お名前は?」

 

『……深海鶴棲姫』

 

「へえ、それで?要件は?」

 

『ク、ククハハハハ……』

 

「楽しそうだね」

 

『オ前ヲ殺セバコチラノ勝チナノニ、ノコノコト前ニ出テクルンダモノ……、笑エルワ』

 

「笑うことは良いことさ、さて、形式上降伏勧告を」

 

あ、不味い。

 

「ッオオ!!!!」

 

素早いパンチが飛んできた。

 

あまりにも速く、重いので受けきれない。

 

防御に使った片腕が吹っ飛ぶ。

 

「死ね」

 

その瞬間、木曾が飛び出て、深海鶴棲姫に大斧を振り抜くが。

 

『死ヌノハオ前ダ』

 

斧を「砕かれた」……。

 

「ほう」

 

木曾が小さく感嘆の声を上げる。

 

「あふん」

 

片腕を失った俺を片手で抱き寄せ、もう片方の手に召喚した艤装のマシンガンをばら撒きながら、一瞬で後退する。

 

そしてバックアップの艦娘が援護射撃をして、俺は後ろへ放り投げられる。

 

「あーーーれーーー」

 

吹っ飛ばされた空中で短く呪文を唱え、失った腕を再生。

 

着水前に空中受け身、空中ダッシュで前線に戻る。

 

「はああっ!!!」

 

『オオオオオッ!!!』

 

木曾の恐ろしい威力のパンチ。

 

更に、「その上をいく」威力のパンチで殴り返す深海鶴棲姫。

 

成る程、「パワーは木曾以上」か。

 

つまり俺より強い。

 

『パワーノ強サハ「知ッテイル」ワ。サア、死ニナサイ!!!』

 

どこから取り出したのか、二メートル程の長柄の両刃バトルアックスを振り回す深海鶴棲姫。

 

その馬鹿力から繰り出される一撃は喰らえば不味い。

 

「ぐ、おお!」

 

木曾は回避を続けるが……、不味いな。

 

圧倒的なパワーで暴れている。

 

木曾は搦め手を使うのが苦手な方だ、単純にパワーで上回る奴とはやり辛い。

 

木曾のやり方は……。

 

「はぁあああ!!!!」

 

超高速飛行による……。

 

「叩き斬る!!!!」

 

ヒットアンドアウェイ!

 

『グ……!』

 

「まだまだ行くぞ!!!」

 

超高速で空を駆け、トマホークで斬りつける。

 

スピードとパワーが乗った一撃はただでさえ協力だというのに、それを何度も繰り返すのだから、強力さは伺えるだろう。

 

「はあ!!!」

 

並大抵の相手なら一撃で砕くんだが……。

 

今回のは並大抵の敵じゃないってことだ。

 

『無駄!ソノ戦法ハ「知ッテイル」ノヨ』

 

そうだな……、木曾は高速で移動し奇襲を繰り返す戦法だ。

 

つまり、奇襲の方向がバレると。

 

「か、はっ」

 

カウンターをもらって大ダメージ、って訳だ。

 

「木曾!高速修復剤だ!」

 

「ああ……、うっ」

 

高速修復剤……。

 

プロトタイプの高速修復材を、使い捨ての注射アンプルに入れるようになったもの。

 

よく考えて欲しいんだけど、バケツ一杯の回復薬って持ち歩けないじゃん?

 

だから、静脈注射アンプル式に切り替えたんだよね。

 

これを艦娘の静脈に注射すれば、失った手足すらボコボコと生えてくるよ。

 

え?涅マユリ???

 

何のことだかわからないなあ!!!

 

さて。

 

「くっ……、強いぞ、こいつ」

 

『マダダ、行クワヨ……、艤装召喚!』

 

深海鶴棲姫の手元に黒い光……、いや、この場合闇というべきだろうか、闇が集まって、武器の形をとる。

 

見たところ黒い……、ライフル?

 

俺は思考と同時に鑑定の魔法を詠唱。

 

「あれはショットガンだ!」

 

鑑定完了。

 

あれは散弾銃。

 

フルオート、艦娘系の技術故にリロード要らず。

 

威力は……。

 

「ナーク=ティトの障壁!!!」

 

『無駄ヨ。ソレノ硬サハ「知ッテイル」ワ』

 

「ッ!!!」

 

障壁が破られ、複数の散弾が俺に突き刺さる。

 

障壁で幾らか減衰したとは言え、効くなぁ!!!

 

更に、俺の身体に突き刺さった弾丸が炸裂した。

 

「ぐおっ!」

 

赤い花火と共に爆散する俺。

 

頭部分は幸いにも残っていたので、バックアップの如月に回収してもらう。

 

「あらあら」

 

「退がれ如月、今回のは相当だぞ、油断するな」

 

「はあい」

 

『無駄ナノヨ……。データハ採取シテアルワ。何ヲヤッテモ無駄』

 

「データ……、データねえ」

 

『ソウヨ。何回貴方達ト戦ッテキタト思ッテイルノ?貴方達ノデータハ採取シテアル』

 

ほうほう。

 

『戦法、火力、防御力、機動力……。全テオ見通シヨ!!!』

 

へえ。

 

「じゃあこれはどうだい?」

 

俺がテレパスを使って周囲の艦娘に指示を飛ばす。

 

バックアップの睦月型数人が、物理属性の弾丸を叩き込む。

 

『「知ッテイル」ト言ッタワ』

 

艤装……、盾だと?

 

「提督ー!あれ、うちの物理盾だよー!」

 

「ああ、俺も見たことある!」

 

うちで使ってるタイプのに形が似ている……。

 

海に飛び散った物理盾の破片を集めて解析したか!

 

ふむふむ。

 

そう来るかー。

 

「じゃあアレだな。コジマキャノン用意!」

 

「はい!」

 

「撃て!」

 

「コジマキャノン、発射!」

 

『ナ……?!!!』

 

片腕が消し飛んだ深海鶴棲姫。

 

「まあ、アレだね。見せてない武装なんて幾らでもあるってことだよ。さあ、降参かな?」

 

『ク……、ソウカ、マダ認識ガ甘カッタカ……。今日ハ撤退スル!更ナルデータヲ……!!!』

 

「逃すと思うかい?」

 

俺が尋ねる。

 

首だけで格好つかないが。

 

『フン、コレヲ見ロ』

 

「それは……!!」

 

帰還のスクロールか!

 

『コレハ素晴ラシイモノダナァ?即時ニ撤退ガ可能ナノダカラ。我々モ有効活用セネバ』

 

成る程、うちの艦娘には帰還のスクロールと高速修復剤を持ち歩かせている。

 

特に帰還のスクロールはそんなに難しい魔法じゃないし、艦娘も遠方の出撃から帰還する際になどよく使い捨てている。

 

タネが割れるのもおかしくない、か。

 

『次ハモットデータヲ集メテオクワ。ソレジャ、サヨナラ』

 

消えた……。

 

 

 

「あー、今回はやられたなあ」

 

「そうか?勝っただろう」

 

木曾と執務室にて。

 

「いやいや、今回の襲撃は多分データ採取だよ」

 

「そうなのか」

 

「次はもっと強くなって攻めてくるぞ」

 

「そうか……。アレを使うべきだったか?」

 

「ゲッター線か?アレは駄目だ。アレは軽い気持ちで使っていいもんじゃない。今回はコジマ粒子という札を切らされちゃったからな。やっちゃったなー」

 

うーむ。

 

俺の予想だと、地球の環境に悪いコジマ粒子やゲッター線などのエネルギーは恐らく、深海棲艦は使わないとは思うが……。

 

それでも、強めのカードを切らされたのはミスったな……。

 

深海棲艦も舐めてかかれるほど弱くはない。

 

油断しちゃならないな。

 




木曾
スピードとパワーが特徴的。

旅人
また首だけになったが、次話では元どおりになっているので心配いらない。

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