「もう七月か……」
最近は暑くなってきたなー。
「夏か、夏といえば海、海といえば「サメ映画」……?」
「サメ映画だよ、提督」
「北上……?」
「サメ映画だよ、提督(リフレイン)」
「いや……、二回も言わなくて良いから」
「サメ映画、楽しいよ」
「そ、そう……」
サメ、ねえ……。
「でも、サメを狩ったりしちゃ駄目だぞ?ジョーズのモデルのホオジロザメなんて、ワシントン条約に登録されてるんだからな」
「大丈夫、大丈夫」
「何が?」
「今回のサメは、白露型と工廠組の生物兵器だから」
………………。
え?
「テレビ見て」
『今朝未明、日本海近海にて、十メートルを超えるどう猛な巨大人喰いサメが複数体発見され……既に13名が死亡……軍隊が出動するも通常兵器がほぼ無効化され……深海棲艦の新兵器との見通し……』
………………。
あー。
あー?
あー。
「緊急放送ーーーッ!!!手が空いてる奴は集まれェイ!!!!」
なんて事をやってくれるんだよ本当に!!!
バレたら怒られるの俺なんだよ???
「まあまあ、人間なんて何匹死んでもどうだって良いじゃないですか」
「少しは悪びれろー?」
「ごめんちゃい」
「ははは、こやつめ、ははは、本当に怒るぞ」
明石を捕まえて叱る。
まあ、ぶっちゃけて言えば、俺も、顔の知らない誰かが死んだ程度で心を痛めるとかそういうのはないんだけど。
「ところで、サメ映画のお約束だと、美男美女のカップルである提督と艦娘って確実に死にますよね」
「そうだね……、カップル?」
「カップルですよね?」
「そうなの?」
「カップルですよ」
そーなのかー。
「って言うか、カップルと美男美女を優先して狙うように作りましたから」
………………。
「あのさぁ」
「大丈夫ですよ!バレてません!海水浴ついでに始末しに行きましょう!」
「本当にさー」
「大丈夫ですよ、大丈夫大丈夫」
「で?」
「はい?」
「ただの巨大サメじゃないんだろ?」
「もちろんですよ!スペシャルサンクス北上さんでユニークなサメを作りました!」
「ほう、ユニーク」
「題して、ナチスシャークです」
オッ、クソ映画の香り!
「どんなの?」
「サメが空を飛んで爆発します」
オッ、クソ!
「何で爆発するの?」
「低予算映画は爆発オチが基本だって北上さんが」
オオオオオー!!!
めんどくせえ!!!
旅人号に搭乗。
旅人号(豪華客船)。
「取り敢えず寛いでましょう!そのうちサメが来ます」
「何で?」
「海の上で寛いでいる奴から優先して殺すように……」
「何で?(怒り)」
「まあまあ」
いや怒るわ。
「お前本当に……、本当に……」
「でも海上で寛いでる奴なんて金持ちの浮かれポンチでしょう。殺しても良くないですか?」
「俺も現状は金持ちの浮かれポンチだけどね」
「ははは」
なにわろてんねん。
「今日は綺麗どころも用意してありますから」
旅人号から陸奥や愛宕と言ったセクシーお姉さんが!!
「素晴らしい」
なんか、美女のお尻とおっぱいを見ると全体的にどうでも良くなってくるな!
そして、キャッキャウフフしてたら。
「えー、これは……」
『GUOOOOO!!!』
ナチスシャークが空を飛び襲いかかってくる。
……そもそもどの辺がナチス要素なんだ?
「ビスマルクさんの生体データ使ってます」
「やり過ぎィッ?!!!」
艦娘の生体データ使ったサメ兵器とかヤバすぎんよー。
「ってかやばくね?こまった、ちょっとかてない」
「大丈夫です、イケメンは死なないですから!」
「そのセリフ吐いた奴死んだじゃん!!!」
ま、不味いぞ、このままではまたハッピーツリーフレンズみたいな死に方をしてしまう!
はいお決まりのこのパターンと言われてしまう!
「助けてー!」
「ヘーキヘーキ!大丈夫ですって!安心してくださいよぉ!」
「何をもって大丈夫だって言ってんの?根拠は?」
「ないですけど。でもどうせ死にませんよね」
「死なないけど」
でも痛覚はあるんだよ?
『SHAAAAAA!!!!』
「うわあああああ!!!」
「死になさい!!!」
『GYYYAAAAAA?!!!!』
陸奥が俺の目の前に飛んできたナチスシャークを殴り殺す。
「た、助かった」
ん?
『Pi……、Pi……、Pi……』
あー?
「そういや爆発するんだったな!!!」
うおお!
「『英雄』!『筋力向上』!『レイジ』!」
パワーを上げて、爆発しようとしているナチスシャークを持ち上げ、海に放り投げる。
『Pi Pi Pi Pi Pi……!!!』
そして、俺の想像の三倍ほどの大爆発。
巨大な船である旅人号が大きく揺れる。
「明石イイイ!!!どんだけ火薬詰めたんだあああ!!!」
「てへぺろ!!!」
やってくれましたねえ!
「米軍で使用されている一般的な空対地ミサイルくらい炸薬を詰めました!!!」
「イキ過ぎィ!!!」
「やああっ!」
愛宕が空を飛んでくるナチスシャークを大槌でぶっ飛ばす。
「それーえい!」
北上が飛んでくるナチスシャークをチェーンソーで破断。
順調にナチスシャークを撃破している。
順調だ。
しかし……。
「嫌な予感がするんだが」
「提督のその嫌な予感って何で当たるんですか?」
「まあ、長年の旅で直感が鋭くなってるんだよ」
「まあ、当たってますけど」
「何やったんだ、言いなさい」
「キングナチスシャークがいます」
「キングナチスシャーク」
「キングナチスシャークは全長2キロメートルの巨大サメです」
「やり過ぎだって言ってるでしょ???何でそんなことしたの???」
「ボスキャラです」
ボスキャラだと?
「口からビーム出します」
「加減しろ莫迦!」
「おっ、そろそろ来ますよ!」
『GUOOOOO!!!!!』
アッーーー!!!!
キングナチスシャークのビームが旅人号の船体にダメージを与える。
「やめてえええ!!!俺の旅人号がーーー!!!」
「まあまあ、あとで直しておきますから」
「その前に壊さないで!!!」
畜生!
「では、そろそろフィナーレなので、これをどうぞ!」
「これは?」
「爆弾です」
「……自爆しろと?」
「はい!」
そうか……。
サメ映画だもんな、爆発オチじゃないとな……。
「じゃあ……、まあ、行ってくるけど。今回のことを反省して、二度とやらないように」
「はい!」
返事だけは良いんだからもう。
「じゃあ提督が自爆するシーンを敬礼しながら眺めてるね」
と北上。
「まあ、好きにすれば良いんじゃないかなぁ?じゃ、逝って来ます」
俺は爆弾を抱えてキングナチスシャークへ……。
エピローグ。
爆発炎上する旅人号から、艦娘の乗った脱出艇が。
旅人号に向かって敬礼する艦娘達。
俺はナチスシャークに爆薬を積んだ旅人号で特攻した。
どかーん。
キングナチスシャークは死んだ。
「いやー!ひっどいオチですねえ!最高です!」
「爆発オチは基本だからねえ」
「あとは消し炭の提督を回収して、帰りますか」
なんてことだ……。
北上
クソ映画スペシャルアドバイザー。
旅人
今回は愛機の旅人号ごと粉砕された。