あと、艦娘ちょろくね?と思うかもしれませんが、旅人はクッソイケメンで高身長、頭も良く、金もどこからともなく調達してきます。その上、あらゆる話題の知識を持ち、女性に優しく、艦娘達を女の子扱いしてくれます。モテる。(確信)
中身は駄目人間だけど。
……ここは、音成鎮守府。
去年設立されたばかりで、規模は小さく、私も未熟ながらも、大きな戦果を上げ続けている。
これは、勿論、私の艦娘達の努力もあるが、大きな要因として、この『ロック装置』が挙げられるだろう。
この装置については、技術的なことは分からないが、艦娘達をより強くするものらしい。お陰で、私の艦娘達は他の鎮守府の艦娘よりも非常に強くなっていった。
……どれもこれも、ひとえに、この装置をくれたあの人のお陰だろう。
私の尊敬する、あの男の人……。
また、会いたいな……。
「どうかした?提督?」
「ひゃい?!」
「ひゃい、とは何だ、ひゃい、とは」
「お、おどかさないでよー、日向さーん!」
び、びっくりしたなぁ、もぅ。
「何度も声をかけたんだがな?」
「あ、あー、ごめん、ぼーっとしてた」
「成る程、分かるぞ、……瑞雲のことを考えていたんだろう?」
「あ、もう瑞雲の講釈はいいです」
「……そうか」
いや、しょんぼりされても……。もう100回くらい聞いたし……。
「しかし、伊勢は出撃しているし、私も退屈なんだ。なあ、初春もそう思うだろう?」
「……ん、なんぞ?わらわに用かの?」
初春ちゃん。執務室のソファーで寝そべり、本を読んでいるみたい。
「退屈だな、という話だよ」
「お仕事も終わっちゃったしねー」
「わらわに言われてものう……」
どうしようかな?……そうだ、演習!黒井鎮守府に演習を依頼しよう!大本営から、演習の催促もきているし、ちょうど良い。
「て、提督ー!!」
そんな時、休暇の筈の艦娘、阿賀野が、この執務室に駆け込んできた。
「わっ、ど、どうしたの?血相変えて」
「て、提督!聞いて!その、そのね、私……、恋しちゃったみたいなの!」
「ええーーー!!!」
え?!恋?!わ、私だってまだなのに?!
「ほうほう?なんぞ、めでたい話かのぅ?」
「へぇ、何に惚れた?瑞雲?」
え?え?嘘でしょ?!生まれて数ヶ月の艦娘に先を越されちゃうの、私?!
「そ、それで?!あ、相手は?!!」
「え、えっと、街で一目見ただけだから、名前とかはわからないんだけど……」
ひ、一目惚れ?!
「ど、どうしよう提督!わ、私、最近太っちゃったし!どうしよう!!」
「お、落ち着いて、阿賀野!その、私も経験が無いから、なんて言えば良いのか分からないけど……、そう、まず、相手はどんな人?」
まずは相手の分析!戦術の基礎!……万が一、相手が悪い人だと困るしね。
「えっとね、その、すっごく、かっこいい人!」
……えーと。
「はぁ、阿賀野や?それでは何も分からぬぞ?もっと、詳しく話すのじゃ」
うん、その通り。
「く、詳しく、ね。……えっと、背が高くって、大っきな身体で……、綺麗な白髪の人!優しそうな笑顔がとっても素敵なの!」
……ん?あれ?
「街で、知らない男の人達に絡まれて、どうしようって思ってる時に、私のことを颯爽と助けてくれて……、かっこよかったなぁ……」
……えーと?
「……あっ!そう言えば、海軍の軍服を羽織ってた!!提督、知らない?!」
その、その人、多分知ってる人なんだけど……。
「……提督、気のせいかな、阿賀野の言うその人、聞き覚えがあるぞ?」
「……多分、気のせいじゃないね、日向さん」
多分、いや、十中八九、その人は……。
「提督ー!子日だよー!子日とお客さんだよー!」
「あっ、どうも、お邪魔します」
「あっ、はい」
……………………。
………………?!
「え?!!何でここに?!!」
「いやー、近くまで寄ったから、挨拶してこうかなーって。……そしたら、子日ちゃんに着いてきて欲しいって言われて、ね?」
「提督!この人いい人だよ!いっぱいお菓子くれた!提督にもあげるー!」
……もー、子日ちゃんったら。
「あ、ありがとう、でも、知らない人をここに連れてきちゃ駄目だよ?」
「……あ、ご、ごめんねー?海軍の人だから大丈夫だと思ってー」
「ははは、まあまあ、取り敢えず、お茶でも淹れるね?コーヒーでいい?」
いや、何でお客さんの貴方がお茶を淹れるんですか?!
「だ、大丈夫です!私が淹れ」
「はい、コーヒー。と、チョコレートでコーティングしたバームクーヘン」
早い!!行動が早い!!
「チョコレートとコーヒーはドイツのだよ、この前ドイツに行ってね」
「は、はあ」
「知り合いのサイボーグと会ったついでに、色々と買い込んできたんだよ。……あと、現地の艦娘をもらってきた。いやー、ヤバかった。またブラ鎮だったもんだから、反射的にあっちの提督をノックアウトしちゃって……。最終的に英国に逃げ込んで、空路で逃げたよ。王立国教騎士団の力を借りなきゃ危なかったな……」
「はあ……?」
サイボーグ?王立国教騎士団?
「……ところで、そこで固まってる女の子は?」
「……えっ?」
あ、阿賀野?……阿賀野ー?
「……はっ?!わ、私、ついに幻覚を?!!」
阿賀野?!
「あ、あは、あはははは、こ、こんなところに、初恋の人が来る訳ないじゃない!きっと、夢を見てるのね!……折角の夢だし……、えいっ!」
「おお、膝の上かい?構わないけどさ」
阿賀野?!!阿賀野が狂った!!!
「んー!夢の中でも優しい!大好きー!」
「そそそそその、う、うちの阿賀野が!!すいません!!本当にすいません!!」
「んー!バームクーヘン美味しーい!!ねぇ、貴方が作ったって本当?凄いのね!」
ああ、阿賀野が、新台さんの膝の上で寛いでる!こ、これは、もう、またご迷惑を……!
「気にするな!(魔王並感)」
うわー!この人、本当に良い人だよー!!ごめんなさーい!!
「で、でも、何かお詫びを」
「良いんだって、これくらい!こんな可愛い子に相手してもらえるなんて、それだけで幸せさ!」
ああ、こんなに良い人に借りを作ってばっかりで……、心苦しい!!
「で、でも、それじゃあ、私の気が済みません!何か、貴方にお返しをしたいんです!」
「そんなこと言われてもなぁ」
「まあ、そこを何とか頼むよ、君。……私を含め、君には感謝しているんだ。何か、お返しがしたい」
「そうじゃのう、わらわにも何か恩返しをさせてたもれ」
日向さんも、初春ちゃんも、この人に感謝してる。その気持ちは本物だ。
「うーん、……、あ、そうだ、じゃあさ、ちょっと話を聞いてくれるかい?」
「話、ですか?」
「うん、そう。これは、自慢というか、愚痴と言うか……、俺がこの前、ドイツでしたこと、だよ。……大本営には秘密だよ……?」
「そんなことで良いんですか?」
「いやいや、これ、かなり大事、凄く大事……。今回は、ちょっと、悪いことしたんで、ね?」
「は、はあ……?」
一体、どんなことを?
「それじゃあ、聞いてくれ、俺はこの前、ドイツに行って…………」
音成鎮守府
伊勢型、翔鶴型、阿賀野型、初春型を保有。少数ながらも、個々の強さとチームワークで大きな戦果を上げるホワイト鎮守府。
女提督
外面が最高に良い旅人を、良い意味で誤解している。
サイボーグ
004番目の男。仕事の休暇に、故郷のドイツへ帰り、旅人と美術館へ。
旅人
ドイツから、イギリスへ向かい、空路で帰宅。