旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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ヒェーッ!


427話 ファンタジーVRMMO その2

「そ、そのだな、Admiral?よ、良ければ、私の背中に乗らないか?」

 

「えっ」

 

「いやその、Admiralさえ良ければ、な?折角ユニコーンなのだから」

 

「まあ、良いなら乗せてもらおうかな?」

 

「むふふ、そうか。落馬しないようにしっかりと抱きしめ……、ではなく、掴まっているんだぞ?」

 

ふふふふふ……、そうだ、私の腰に腕を巻きつけて……。

 

愛するAdmiralを背中に乗せて歩けるとは。

 

この半馬の身体も悪くないな。

 

「あ、その、手綱は必要か?必要とあらば付けてくれても構わんぞ?な?」

 

「いや、そこまでは良いよ、アーク、ありがとう」

 

「構わん、Admiralのためだ」

 

 

 

「アークロイヤル、ユニコーンの聖騎士(パラディン)。巻雲、ハイエルフの大魔導師(スペルマスター)。摩耶、人狼(ライカンスロープ)の剣聖(ソードマスター)。天龍、ドラゴニュートのサムライマスター。プリンツオイゲン、黄昏の魔人(トワイライトデーモン)のウェポンマスター。鹿島、淫魔(サキュバス)の魔物使い。菊月、ハイエンド・オートマタのガンナー……」

 

Admiralがクランメンバー表を読み上げる。

 

「……ゲームバランスこわれる」

 

「そうなのか」

 

「どう考えても上位ステータス、上位種族、上位職業じゃん。初期レベルも500超えてるし」

 

「初期ステータス、種族、職業、レベルについては、現実世界のものと、最初の質問によって左右されるらしいぞ」

 

「ほーん……」

 

おかしいだろうか?

 

「まあ、そうだわな。VRゲームで筋力耐久力反応速度が人並みまで落ちたら、艦娘からすればおかしいだろって話だもんな。だったら、システムの方を現実に合わせた方が良いのか」

 

「実際、軍人やプロスポーツ選手などのプレイヤーは、初期ステータスが高いそうだ」

 

「そうだよなあ、鍛えてる人がゲームの世界で弱体化しちゃおかしいよな」

 

そんなことを言いながら、Admiralを背中に乗せて草原を駆け抜ける。

 

最初の街から五日も走れば、ギャンブルの街『イダス』に着く。

 

「ってか、アークは俺に付き合ってくれなくても構わないよ?好きなとこ行って良いのよ?」

 

「私の好きな場所はAdmiralの隣だよ」

 

「あら可愛い。隣と言わず胸の中でもええんやで、と」

 

 

 

イダスにて。

 

まあ、Admiralはギャンブルなら大抵の相手には負けない。

 

そもそもの動体視力や器用さ、記憶力などから、大抵のギャンブルは勝てる。

 

伊達にギャンブルをやり続けていない、勝率は相手がAdmiralを超えるやり手かド級のイカサマ使いでもない限り、ほぼ百パーセント勝つ。

 

聞いた話によると、麻雀では裏世界のトップに挑んでボロ負けするらしいが……、そこら辺の雑魚には負けないとのことだ。

 

目標は「アカギシゲル」とか「カイ」に勝つこと、らしい。

 

Admiralは山程儲けて、胴元を泣かせると、大量の金貨とカジノの景品全てを掻っ攫う。

 

「よーし、後は逃げるぞー」

 

「分かった」

 

ギャンブルで勝った後は逃げるのが鉄則……、だそうだ。

 

確かに、この手の胴元は反社会的な組織であることが多い。

 

国営だとしても、胴元が泣き出すほどに稼げば、睨まれもするだろう。

 

私も、そこら辺の雑兵に負ける気は無いが、正面から戦って突破する理由はない。

 

結局、逃げてしまうのが手っ取り早いということだ。

 

 

 

「いやー……、後は全力で旅するけど」

 

「そうか」

 

「アークは別についてこなくて良いんだよ、本当に。みんなと冒険したりすれば良いと思うよ?」

 

「ついて行っては、嫌か?」

 

「嫌ではないけど……、俺はノースティリスのあいつや@みたいな冒険者ではないからね?」

 

「?」

 

誰のことだ?

 

「あー……、俺の知り合い。ジューアのクレイモアのあいつと、エントのスペルマスターの@だよ。友人だ」

 

「ふむ」

 

「あいつは専科百般、古今無双の化け物で、クレイモア……、大剣使い。まあ、魔法でも何でも使いこなすけど」

 

「なるほど」

 

「@はがまんづよい、エント(木人)のスペルマスター。近接はぶっちゃけ俺でも勝てるくらい弱いけど、魔法ならとんでもない使い手だよ。総合的な戦闘能力じゃあいつにも匹敵するかもな」

 

「そうなのか。それは、強いのか?」

 

「少なくとも、君なら五分保てば良い方ってところかなー」

 

「そんなにか」

 

世界は広いな、この私より強い者がいるとは。

 

「話は変わるけど、どうやら、この世界は白露型の協力で、魔法が使えるようになっているらしいしね」

 

「ああ、確かに、魔法が発動する」

 

そう言えばそうだな。

 

「俺もあいつや@に魔法を習ってさ、ある程度は使えるんだよ、魔法」

 

Admiralが言うには、Admiralは職業的には観光客だけど、「世界」のルールに縛られないから、どんな領域の魔法もスキルも覚えられるらしい。

 

しかし、「世界」のルールに縛られないが故に、恩恵もないそうだ。

 

Admiralはそれを、悪役補正も主人公補正もどっちもないと称している。

 

Amiralは常に私の考えている世界よりも大きなものを見ている気がする。

 

「この電脳世界においても、魔法の使い方は現実世界とあんまり変わらないみたいだ」

 

「そうだな、私も少しは魔法が使えるから分かるが、少し術式を弄ればこの電脳世界でも魔法は使える」

 

「そもそも、今回は、一般人の魔法適性を調べる目的があったから」

 

「そんなものを調べてどうするのだ?」

 

「さあ……?何かしらに使うんじゃない?」

 

そうか……?

 

 

 

「イダスでは十分稼いだ。次は……、首都に行こう!」

 

「はっ!」

 

私とAdmiralは、北へ向かう。

 

道中、モンスターの襲撃はあったが、弱かったので消しとばした。

 

首都は……、煌びやかだ。

 

「ふむ……?私が思うに、中世ヨーロッパをモデルにした、と言う割には、街並みが美しく、嫌な臭いもしないぞ?」

 

「そこら辺は魔法でどうにかしてる設定だから……(震え声)。あんまりリアルにこだわり過ぎると、街中クソまみれってことになっちゃうから……」

 

「成る程。これはゲームと言うことか」

 

「このすば的ファンタジー世界だから……」

 

確かに、リアリティを求めて、本物の中世の都市の様にしたら、衛生面などで不愉快な街になるな。ゲームだからと理由をつけて、ある程度近代化せねばなるまい。

 

「じゃあ、王都を見て回ろうか!」

 

「ああ」

 

王都は……、ヨーロッパの様でいて、イギリスでもフランスでもイタリアでもない……、私からすれば若干違和感のある家屋が並び、王城もまた、ゴシックでもルネサンスでもロココでもない、尖った屋根の大きな城だった。

 

ファンタジーとは、こんな感じなのか。

 

「おー、良いね!自撮りスクショ撮ってツイッターに上げよう!ほらおいで、アーク!」

 

「あ、ああ」

 

Admiralは、ゲームの機能の、スクリーンショット機能で写真を撮り、街を回る。

 

「城に入りたい……、城に入りたくない?」

 

「そうだな、だが、兵士が沢山いるが……」

 

「ちょっと待って」

 

Admiralは兵士に駆け寄って話をする。

 

「何をしたんだ?」

 

「兵士に、鎧と槍の生産をやっている鍛冶屋の在り処を聞いてきた」

 

……ふむ?

 

「どうするつもりだ?」

 

「まあ見てな」

 

鍛冶屋に行くAdmiral。

 

「こんにちは、ラファウル王国新兵士です。鎧を受け取りに来ました!」

 

「ん?おう、そこにあるだろ、持ってけ!」

 

「ありがとうございます!代金はお城に請求してください!」

 

そう言って、まんまと正規兵の装備を手に入れたAdmiral。

 

「成る程、正規兵に化けて忍び込むのか。しかし、私はどうすればいい?」

 

「我に策有り」

 

ど、どうする気なんだ?

 




アークロイヤル
リアルパラディン。ちょっとマゾ。

旅人
観光客。

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