旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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なんかよくわからないけどイライラする!


432話 東北バイオハザード その3

『はいよー!朝飯はハムエッグだ!並べ並べ!』

 

『お、美味そうだ』

 

『大盛りでくれ!』

 

『チーズ入りじゃねえか!やったぜ!』

 

マオが、早朝から元気よく炊き出しに参加している姿を横目に、列に並ぶ。

 

……俺は、クリス・レッドフィールド。

 

バイオテロ対策部隊、BSAAに所属している。

 

今回は、日本の東北方面に、Tウイルスがばら撒かれたと言う報告を受け、BSAAの半数程のチームを引き連れて制圧しに来た。

 

相棒であるジルは、本部に残してある。

 

今回は、何かと縁のある民間協力者、マオ・シンダイの早急な連絡と支援があり、バイオテロ発生から24時間以内という異例のスピードで部隊を展開できた。

 

マオの支援とは、日本の国家元首との素早い連携と、前線基地の製作、避難民の受け入れだった。

 

基本的に、バイオテロに対しては、即応性が重視されている。

 

他者に感染しパンデミックを起こす生物兵器は、時間が経てば経つ程感染が広がり、不利だからだ。

 

しかし、そうは言っても、普通、このような早さで話が進むことはあり得ない。

 

大体は、バイオテロが起きている国の国家元首が、BSAAという他国の戦力を自国に侵入させることを拒否したりして、時間がかかるものだ。

 

そして、やっとの思いで交渉が終わり、国内に踏み込んだ頃には、感染拡大で大パニックになっているのが常だ。

 

しかもそこから、前線基地を設営する手間もかかる。

 

更に、パニックの最中、人々を迅速に救助するとともに、感染者であるゾンビやBOWを排除する必要もある。

 

特に、人々の救助は極めて難しいものだ。

 

例えば、怪我で歩けなくなった人を背負って、前線基地まで引き返さなくてはならない、など。

 

これは、戦える兵士が一人、救助の為に離脱して、なおかつ、その兵士の体力を大きく消耗させるのだ。

 

救助の際には、感染していないか厳重にチェックをした上で逃す必要がある為、気も抜けないし、時間もかかる。

 

そうしてまごついているうちに、どんどん人が死んでいくんだ。

 

だが、今回は違った。

 

何故かは分からないが、日本の国家元首と直通の電話を持つという、マオの謎のネットワークにより、即座に国家元首と交渉が終わり、閉鎖してある国際空港への着陸が根回しされていたからだ。

 

その上で、空間転移という、物理的におかしい反則技の使用と、たったの三時間で、高さ三メートルの鉄のバリケードで四方を囲んだ前線基地が完成したこと。

 

そして、あらかじめ大まかな敵戦力や詳細なマップを用意されていたこと。

 

これらの要因から、バイオテロ発生から24時間以内という異例のスピードで部隊を展開できた。

 

更に、今回は、日本国の軍隊までもが増援として回されている。

 

また、マオの空間転移により、極めて迅速な救助が可能になっている。

 

かつて、これ程までに恵まれていた作戦はなかっただろう。

 

そして、そのどれもこれもが、マオの人脈と手腕によって成し遂げられたものだ。

 

全く、なんて奴だ。

 

旅人をやらせておくのはあまりにも惜しい存在だ。

 

BSAAだろうと何だろうとやっていけるだろうに……。

 

『おらっ、大盛りだ!食ったら働け!』

 

更に、前線基地での朝晩の炊き出しまでも担当し、進軍中は最前線で戦い、援護を中心に何でもやれる。

 

これ程までに有能な人材は他にいないだろうな。

 

聞いた話によると、世界中のありとあらゆる組織が彼を狙っているらしい。

 

それも道理だろうな。

 

何せマオは、一人存在するだけで、BOW並の戦闘能力と、一つの戦線を支えられるほどの後方支援能力が得られるのだから。

 

数百時間の間継続して戦える上に、死なず、部隊の兵士と兵器全てを一瞬で好きな場所まで運べ、潜入や破壊工作にも造詣が深く、敵対者の心を読み、考えられないほどの武器弾薬食料薬品を一度に運べ、味方の怪我や病気を一瞬で治療し、外見を自由に変化させたりも可能。

 

あらゆる分野の知識を持ち、数十カ国語を自在に操り、交渉や指揮も上手く、ヘリコプターから漁船まであらゆる乗り物を使いこなし、如何なる時でも冷静でポジティブでいる。

 

欠点と言えば、女に弱く、大酒大飯食らいで、ギャンブル好きなところくらいのものだが、作戦中は控えるくらいの分別もある。また、銃器や刃物の扱いもまるでできないが、並の銃器を超える性能の弓矢を扱い、刃物を持ったベテラン兵士を無力化するほどの近接格闘能力も持つ。

 

更に、最近では、一人一人が米軍の複数の大隊レベルの戦力を持つと言われている艦娘を二百人ほど集めた組織を編成し、忠実な部下にしたと言う。

 

総評すると、世界のバランスを左右するほどの戦力を保有する、万能で不死身の男だ。

 

最も評価できるのは、その万能性……。

 

どんな命令でも、必ず一定の成果を上げる。

 

どんな命令でも、だ。

 

交渉、潜入、尋問、輸送、戦闘、補給、援護、工作、護衛、指揮、救助、治療、救出……。

 

どんなことでもできる。

 

人間ではないらしいが、それは些細な問題だろう。

 

どこの組織も皆、彼を欲している。

 

もちろん、BSAAの上層部も、可能な限り便宜を図り、できれば勧誘するようにしたいと言う方針を明言している。

 

だが、俺本人は、あまりその気はない。

 

マオは、旅人だからだ。

 

自由に旅をしている姿が最も似合っている。

 

それに、わざわざBSAAに引き入れずとも、世界の危機とあれば、どこからともなくひょっこりと現れる男だ。

 

昔から、そうやって俺に手を貸してくれてきた。

 

今回は、俺が手を貸す番だ……!

 

『よう、クリス!良い朝だな!こんな朝にはハムエッグを山盛りで食べなきゃ駄目だ!』

 

『ああ、頼む』

 

 

 

山盛りのハムエッグを口に運びつつ、今日の作戦について考える。

 

次の侵攻予定地は、宮城と呼ばれる地域だ。

 

現地の自衛隊が反攻作戦を実施して、住民をある程度保護しているらしい。

 

他にも、住民が武装して、ショッピングモールなどに逃げ込んでいるとのこと。

 

救助活動をしつつ、ゾンビの排除をしよう。

 

……このハムエッグ、めちゃくちゃ美味いな?!

 




クリス
ゴリラ。

旅人
朝はパン派。

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