旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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メンタルやられがヤバい。


436話 甲虫王者 前編

相変わらずの夏!

 

それとこれとはあんまり関係ないが……、ああ、いや、夏と言えば虫だし、関係はそれなりにあるかな?まあ、とにかく、かつて子供達の間で一世を風靡した、「ムシキング」という作品はご存知だろうか?

 

大体、二十代くらいの兄ちゃんに聞くと知っていると思うので、知らない人は聞いてみよう。

 

内容は、カードを使った一プレイ百円のゲームで、各国のカブトムシ、クワガタの虫カードと、じゃんけんに対応した三枚の技カードで戦うゲームだ。

 

画面には、自分の虫カードの虫と相手の虫が表示され、三つのボタンを使って相手とじゃんけんをして、勝った方が対応する技カードの技を発動。

 

相手の虫のヒットポイントを削り切った方が勝利だ。

 

もちろん、レアな虫ほどヒットポイントが多く、レアな技ほど攻撃力が高い。

 

漫画化、アニメ化もされた人気作だった。

 

今はもう、サービスを終了しているが。

 

因みに、新しいムシキングは色々と勝手が違うらしいが、俺は古い方しか分からない。

 

ザックの冒険編はマジで名作。

 

今◯俊版の漫画も話が重くて良かった。

 

そう言う訳でそんな話をちょっと黒井鎮守府内でしてみた。

 

 

 

今思えば、ちょっと失敗したなと思う。

 

 

 

俺は、朝早くから起きて、日課のランニングをしに、黒井鎮守府のグラウンドに出ようと、俺の私室がある黒井鎮守府の本館から出る。

 

『ギチギチ……、あ、おはようございます』

 

わー。

 

なんか二メートルくらいのカブトムシがいるー。

 

「ふむ」

 

よし。

 

「ンぁあ明石ィィィ!!!!今度は何をしでかしたーーー!!!!」

 

工廠に怒鳴り込む。

 

「フフフフフ……、私は明石ではありません!」

 

おおっと、なんかこれ見よがしな伊達眼鏡と髪型変更。白衣も着ている。

 

「私は……、虫博士のライトストーン博士なのです!!!」

 

そう言ってメガネをクイっと上げる明石、否、ライトストーン博士。

 

「僕、蛇博士じゃないよ!」

 

「はい?」

 

「いや、何でもない。夕張は?」

 

「私は、森の妖精のユーちゃんです!」

 

なんかこう、全体的にライトグリーンな服装と妖精っぽい羽を生やした夕張、否、ユーちゃんがエントリー。

 

「あ、そっかあ(超速理解)」

 

俺が先日ムシキングの話をしたからこんなことになったんだな。

 

つまり、巡り巡って俺が悪いということか。

 

悲しいなあ。

 

「つまり?」

 

「ちょっと前に虫型の殺戮兵器を造れないかと色々試してたんですが、飽きてやめたんですよね」

 

「うん、そりゃやめて正解だったね」

 

「でも、最近、ムシキングの話を聞いたので、もう一回計画を動かしてみたら、ちょうど良いのができたんですよ!」

 

ふむ。

 

「じゃあ、外にいる二メートルくらいの昆虫は、生物兵器?」

 

「はい!よくできてるでしょう?」

 

成る程。

 

「君は命を何だと思ってるのかなー?」

 

ほっぺたをつねる。

 

「消耗品であり、貴重な資源であると認識していますよ!」

 

うーん、この。

 

畜生である。

 

「まあ、やっちまったもんはしょうがないな。例えどんな経緯であれ、生まれてきた命に罪はないからね。でも、あんな大きな虫を許容できるほどの森はどこにもないけど、どうするつもりなんだい?」

 

「あ、そう来ると思って異次元に巨大な森を予め作っておきました。やっぱり、見た目の通り、資源を馬鹿喰いするんで」

 

「あと、大きさ以外に何を弄った?」

 

「知能と寿命ですかねー?パワーも頑丈さももちろん上げてます。あの大きさで飛行も可能なんですよ!」

 

「それと発声器官と日本語のインストールと、多環境適応調整、自己再生機能の取り付けもしました!」

 

ふむ……。

 

総評。

 

マッハで空を飛び、迫撃砲を防ぎ、鋼鉄を捻じ曲げるパワーを持つ。

 

寒冷地、熱帯関わらず活動可能で、自己再生能力を持ち、人間並の知能も持つ、数百キロの昆虫。

 

ガチな化け物である。

 

「まあ、分かった。但し、生み出したからにはちゃんと責任を持って管理すること!良いね?」

 

「「はい!」」

 

 

 

工廠組の二人を叱ってから、ランニングへ。

 

『あの、何かありましたか?』

 

カブトムシ君が話しかけてくる。

 

「君を生み出した存在に苦情をね」

 

『僕は、生まれてこない方が良かったのでしょうか……』

 

「いや、生まれた命に罪はない。君達、特殊改造昆虫兵器……、デザインドビートルは、明石と夕張の気まぐれで造られた存在だ。君達の住む場所も用意してあるそうだから、自由に過ごしてくれて構わない」

 

『ありがとうございます……』

 

鎮守府で朝飯を作ってから、また外に出る。

 

『あ、どうも』

 

カブトムシ君はまだいた。

 

「森に帰りなさい」

 

『あの、それが、まだ森はちゃんとできていないらしくて、しばらくはここにいろと……』

 

成る程。

 

『それと、これを……』

 

カブトムシの虫カードと三枚の技カードを渡される。

 

「これは?」

 

『プロフェッサー明石が、試運転を頼みたいと……』

 

成る程。

 

基本的に、明石は、兵器は作りまくるが、テストはしない。

 

もしくは、外注する傾向にある。

 

となると……、俺がこのカブトムシ君に指示をして、戦いの練習をする必要があるのか。

 

「君はそれで良いのか?」

 

『はい、僕は戦うために生まれてきましたから。それに、僕もオスです。強くなりたい』

 

ふむ……。

 

「分かった、それなら、訓練の手伝いをしよう。どうすれば良い?」

 

『黒井鎮守府内の他のデザインドビートルと戦って、戦闘経験を得たいと思います』

 

成る程、虫バトルか。

 

『あ!あそこに早速、デザインドビートルがいますよ!バトルを申し込みましょう!』

 

ん?

 

どれどれ?

 

おや、あれは、朝潮と……。

 

『やいやい!お前、今、このノコギリクワガタのギリー様を睨んだな!』

 

ノコギリクワガタだ。

 

「司令官、おはようございます」

 

「ああ、おはよう朝潮。何をやっているのかな?」

 

「こちらのクワガタのギリーさんが訓練をしたいと言うので、手伝いをしようと思いまして」

 

「そうか、親切心は大切だもんな」

 

「はい!」

 

偉いなー、朝潮は良い子だなー。

 

『さあ、俺様とバトルしやがれ、ツルギ!』

 

『うん、良いよ』

 

ってか、カブトムシ君、ツルギって名前なんだね。

 

「じゃあ、朝潮、相手になってくれるかな?」

 

「はい!ギリーさんに指示を出せば良いんですよね?」

 

「そうだね。さあ、やってみようか」

 

ツルギとギリーが向かい合う。

 

「ギリーさん!挟んで!」

 

『おうよ!』

 

早速、ハサミ技でくるギリー。

 

俺は、ハサミ技に対抗して、ダゲキ技を使う。

 

「ツルギ!そのまま体当たりだ!」

 

『はい!やああっ!』

 

ハサミ技(チョキ)はダゲキ技(グー)に弱い!

 

『ぐああっ?!!』

 

ダメージを受けるギリー。

 

「な、なら、ギリーさん!投げ飛ばして!」

 

『おう!』

 

甘いな。

 

「挟め、ツルギ!」

 

ナゲ技(パー)にはハサミ技(チョキ)!!

 

更にここで技カード発動!

 

「カワセミハッグだ!」

 

『うん!』

 

まずは、挟んで弱らせる。そして、捕まえたまま飛んで、地面に叩きつける!

 

『ぐああっ!!!』

 

「ギリーさん?!」

 

『へ、へ、平気だ!』

 

「わ、分かりました! では、次に体当たりを!」

 

『おう!うおお!』

 

よし来た!

 

「ツルギ!超必殺技、トルネードスローを見せてやれ!」

 

『はい!』

 

ダゲキ技(グー)にはナゲ技(パー)!

 

そして、カブトムシは、ナゲ技こそが最も強力な技だ!

 

『うおおおおお!!!』

 

『うわああああ!!!』

 

ツルギは、ギリーを持ち上げて、回転してから投げ飛ばした。

 

ギリーは気絶した。

 

『やったあ!勝てました!』

 

「おめでとう」

 

そこで、朝潮が。

 

「流石は司令官!楽しいバトルでしたね!」

 

「ああ、そうだね」

 

「また、今度もやりましょう!」

 

「うん」

 

そう言って、朝潮は、ギリーを抱えて去っていった。

 

二メートル、数百キロの虫であろうと、艦娘の筋力ならば簡単に持ち上がる。

 

さて。

 

「これは……、艦娘と虫バトルする展開か?」

 

そう言うことらしいな。

 




ツルギ
カブトムシ。

旅人
割と虫には詳しい。少年ハートと自然を愛する心から、虫とかも好き。

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