艦娘の戦闘スタイルは、俺の趣味です。
「さあ、やってまいりました!演習!!黒井鎮守府VS音成鎮守府!!解説は私、青葉と!」
「実況は俺、南斗実況拳の使い手、旅人でお送り致します!!そしてゲストの〜?」
「えっ、あっ、あのその、音成鎮守府の提督、海原守子です!!よ、よろしくお願いします!!」
「いやー、久しぶりにポスト開いたら、演習のお誘いですからねぇ?びっくりしたね、いやマジで」
「にしても、演習内容は記録して大本営に送るなんて、何だか、癇に障りますね!司令官!!」
「HAHAHAHAHAHA!!だからこうして、目一杯ふざけてる訳なのだよ、青葉ちゃん!!」
「あの、その割には、皆さん、殺気立ってませんか……?(小声)」
「……気のせいじゃない?」
「あー、なんか、司令官に勝利を捧げるって気合い入れてましたねー。まあ、私だって、戦う立場にあったら本気出してますよ、司令官の為ですもん」
「……お願いですから、殺さないでくださいね……?」
「あー、ちゃんと言ってあるから大丈夫だと思うけど……。やばくなったら即止めるから、安心して」
「えーと、そろそろ始めて良いですかね?」
「あっ、ちょっと待って、ちょっと待って、俺がやりたい。…………よし!」
「え、何ですかその眼帯と付けひげと赤スーツ……」
「それでは、艦娘ファイト!レディー!!ゴー!!!!」
「「?!!!」」
×××××××××××××××
「「「「(…………艦娘ファイト?)」」」」
「……その、これは、始めて良いのか?」
「ちょ、ちょっと待って下サイ…………、はい、良いらしいデース!!……それじゃ、行きマース!!」
「もー!グダグダやないか!!」
まあ、いつも通りの司令官やな。……そういう茶目っ気がある所も可愛いモンや。
……うちら黒井鎮守府の編成は、旗艦の金剛、うち(龍驤)、隼鷹、足柄、如月、三日月。
対して、音成鎮守府は、日向を旗艦に、伊勢、翔鶴、瑞鶴、能代、矢矧……。
まあ、数値の上では負けとるなぁ?……けど、今まで鍛えた練度が違う。負ける要素は、あらへんで。
それじゃ、先ずは制空権、やな?
「さあ、仕切るで……?」
「パーっと行こうぜ?パーっとなぁ!!」
うちは目の前にササっと勅令の文字を書く。展開した式神が束なり、艦載機の姿になる。
「あれは!嘘でしょ?!!烈風改じゃない!!」
相手方の瑞鶴が叫ぶ。まー、ビビるのも無理ないわ。だって、烈風改は……。
「それは、ペーパープランだけの、存在しなかった筈の艦載機よ?!!あり得ない!!」
「アハハハハ!!あるもんはあるんや!堪忍してぇな?!!」
ほんまに、うちの工廠組は優秀やなぁ?
「クッ、翔鶴姉ぇ!!艦戦ありったけ!噴進砲も全弾ばら撒いて!!あれは不味い!!!不味過ぎる!!!兎に角物量でどう、に、か…………?!!!」
「物量がぁ?なんだってぇ?あはははは!!!」
隼鷹は、放たれた大量の式神を、「式神のまま」操っている。その数は、正に圧巻。まるで雲のようや。
確かに式神のままでは、機銃も爆撃もできないし、脆い。だが、隼鷹は、その展開数に着目し、利用した。
「そーら!景気よく行っちまいな!!」
隼鷹が手を振り下ろすと、数多の式神達は、相手の艦載機や放たれた噴進砲の弾に絡みつく。
「そんな!艦載機の制御が!!」
「噴進砲が……!!」
結果、プロペラに式神を巻き込んだ艦載機は墜落、噴進砲は明後日の方向に飛んでいく。
「個」ではなく「群」で操られる式神は、瞬く間に相手の艦載機を「飲み込み」、無力化。そして、
「掌握っと!んじゃ、行っけー!!」
隼鷹は、自らの式神が取り付いた相手の艦載機を「作り変え」、流星改にし、そのまま相手に攻撃を仕掛ける。
「……馬鹿な!」
旗艦の日向が声を上げたその時にはもう遅い、流星改から放たれた爆撃が周囲を吹き飛ばした。
……存外、こんなものか?この程度なのか、他所の艦娘は?
「……いや、これは……」
「……驚いたぞ、まさか私達が制空権を奪われ、更に先制攻撃を許すとは……」
隼鷹の流星改の多くは、空を飛びながらも、ゆっくりと、真っ二つにズレる。
「……居合?」
……ふうん、やるやんか。あの日向、よく見ると航空甲板の裏にポン刀をくっ付けとるな。……じゃ、撃ち抜かれてる方の流星改は……。
「そう、瑞雲だ……!」
おー、おるわおるわ。瑞雲が奴さんの周りに展開されとる。こりゃあ、ちょっちキツイなぁ?
「制空権は取れたわね!じゃあ、行くわよー!!」
えらくウキウキの足柄が文字通り「消える」。……いやぁ、相変わらずおっそろしいわ。気配を消す、ってのも、ここまで来るとまるで魔法やな。
「それじゃ、私も行くわね?」
「…………」
如月、三日月も追撃。
「私も行きマース!龍驤!隼鷹!後ろは任せマスネー!!Follow me!!!」
金剛も突貫。……全く、近接は苦手なんやけどなぁ……。
「あいよー」
「あっはっはっは!!良いねぇ!!どれ、景気付けに一本…………、かーっ!美味い!!」
まーた飲んどるな。ま、隼鷹は飲んだ方が強いし、ええか。
じゃ、殴り合い、やな!
×××××××××××××××
「嘘?!!砲撃しながら突っ込んで来る?!!」
「成る程、大胆で、それでいて的確だ。……フンッ!……頭に真っ直ぐ、直撃コースの砲撃、か。これ程正確な狙いを付けられるなら、同士討ちの危険はないのだろうな。ならば、近付いて乱戦に持ち込むのもおかしく無い。……伊勢は空母と共に金剛達に対処、能代と矢矧は駆逐艦を」
「日向はどうするの?」
「私か?私は…………、こいつの相手だ!!」
……あら?バレちゃった?
「もう、痛いじゃないの!ちょっとは遠慮しなさいよ!!」
「ふん、後ろから大円月刀で斬りかかる奴に遠慮などするか」
まあ、それもそうね。……にしても、一瞬で終わらせるつもりだったのにな。……はぁ、帰ったらまた姉さんに叱られる……。
「……ちなみに、なんでバレたのかしら?」
「決まっている……、瑞雲のお陰だ。私の瑞雲は、私と視覚を共有しているからな。ほんの僅かに、私の後ろで、水しぶきが跳ねるのが見えた」
ふーん、そう。
「でも、自分の手札を晒すなんて、随分余裕ね?……舐めてるの、貴女?」
ムカつくわね。
真っ直ぐ、前へ。あのドヤ顔、叩き斬ってやる。
「それともう一つ、お前は殺気が強過ぎる!!!」
一撃目、顔面目掛けて振り下ろす。……防がれる。続けて二撃目、回転し、遠心力を活かした横薙ぎ。……防がれる。三撃目、大きく踏み込み、腰を使った横薙ぎ。……防がれる、が、日向の刀が砕ける。
「……成る程な、これは、受けきれん。……重巡だと思って、心の何処かで侮っていたのかもな。非礼を詫びよう」
日向は、砕けた刀を投げ捨て、航空甲板の裏にある、もう一本の刀に手をかけた。1、2、3本……。計四本、残り三本。雰囲気が更に鋭くなる。
「あら?今更謝っても手加減しないわよ?」
「だろうな」
……大円月刀を上段に構える。
「……私も一つ教えてあげるわ。……私はね、気配を消すのが苦手なの。妙高姉さんはもっと上手く消えるし、那智なら水しぶきなんて起こさない。羽黒なら、認識されない……」
「……何が、言いたい?」
「ふふっ、つまり私はね……、こう言うやり方が得意って事よ!!!」
全力で、踏み込んで、全力で、振り下ろす!!!
「ちぃっ!!!」
横に回避される。もちろん、織り込み済み。片手を大円月刀から離し、日向に向ける。同時に、手甲の手首部分に仕込んだ暗殺剣を伸ばし、そのまま突き出す。
「う、おお!!」
……ふーん、これも避けるの。そこそこ、出来るのね。
無様に転がって回避した日向に追撃、艤装の砲撃を放つ。
「無駄、だぁ!!」
崩れた体勢からの斬り払い……。まあ、それくらいはできて当然か。でも、攻撃の手は緩めない。……相手が居合を使うなら、刀を鞘に戻さないようにすればいい。
雷撃。そして大きく跳躍。
「おおおおお!!!」
日向は、魚雷を斬り払う。……だが、私に刃を向ける時間は無い!!今だ!!
……しかしその時、私の根幹、本能が警鐘を鳴らす。それに従い即座に身を引く。瞬間、私の前を通り過ぎる影。
「こっ、れは!!」
「……ふん、そうだ、瑞雲だ……。認めよう、貴女は、私よりも、強い。……だからこそ、私の持てる全てを使う。……ここにある瑞雲は、戦況把握の為、この辺りに飛ばしていたもの。それを全て、ここに集めた……。往くぞ、足柄……!!」
こっちに攻めて来る。あら、不味いわね。……そもそも、攻めるのは得意だけど、守るのは苦手なのよね……。ペースを握られちゃ不利ね。
「はぁ、嫌ねぇ、防戦はごめんよ……。だ・か・ら、雲隠れっ!!!」
「ッ?!!!煙玉?!!卑怯な!!!」
あら、「卑怯な!」ですって。随分と、可愛らしいことを言うのね?
「勝利こそが私の誇り……、あの人に捧げる勝利こそが……。それ以外に、何の価値があるの?……負けたら、何も残らない。誇りも、自分の命も、仲間の命もね……。……お喋りは終わり、さあ、往くわよ、日向?」
砲撃、雷撃、同時に移動。何度もこれを繰り返し、撹乱。
「ぐっ、お!こっちか?!」
日向の背後に移動、暗殺剣を頚椎に向けて振るう。
「ッ!殺気!!!」
あら、殺気に敏感だったわね、この子。引っ込めるのは苦手だし……、出してみようかしら。辺りを殺気で埋め尽くすかのように、殺気をばら撒く。
「…………?!!!、これは…………!!!」
あーあ、怯えちゃって、全然駄目ね。
……生唾を呑み込む喉、蠕動するはらわた、早鐘を打つ心臓の音。……獲物の音。
……脂汗、鋼鉄の艤装、詰まった火薬。……獲物の匂い。
……憐れな獲物の、精一杯の警戒の気配。
餓えた狼の前で、何と無力なことか。
「う、あっ!!」
両手首の暗殺剣で突きを放つ。肝臓、腎臓、膀胱、肺、心臓、脾臓、胃、腸……。そして首を掴んで、押し倒す。演習だ、刃を潰しているし、加減もしている。死にはしない。でも、まあ、
「私の勝ち、ね?」
「……ああ、参った」
ふふふ、提督、褒めてくれるかしら?
龍驤
艦載機の扱いが単純に上手い。その上、近接では合気を使う。
隼鷹
常に頭上に式神で作った雲を浮かべ、群のまま操り、目眩しなどに使う。相手の砲撃や艦載機を絡め取って掌握、自分の艦載機として再構成する。近接では、酔えば酔う程強くなる、酔拳の使い手。
足柄
アサシン揃いの妙高型では最も隠密行動が苦手。大型武器で力任せに体勢を崩し、その隙に急所を搔き切る。煙玉や爆竹などの小細工が得意で、旅人に勝利を捧げる為ならどんな汚い手でも平気で使う。
日向
瑞雲による視野の拡大、どんな体勢からでも繰り出せる超速の居合が武器。防戦は得意ではない。
旅人、女提督
若干引いてる。
青葉
新聞のネタができてよかった。