俺の名は……、まあ、いいだろう。
本当の名前は捨てたし、仕事用の名前ならいくつも持っている。
この業界にいる奴なんかみんなそうだ。
名前を捨てない暗殺者なんて、アサシン教団の正義の味方気取りのアホ共くらいのもんだ。
だが、俺の通り名である『ジグソー』は、裏社会じゃちょいと有名だぜ?
そんな俺は、とある喫茶店の地下室に、他の暗殺者と共に集められた。
俺達暗殺者は、定期的に顔も名前も変えるから、ここにいる奴らに見覚えはない。
だが……。
「くっくっくっ……、楽しめそうな仕事ならいいんだがなァ……?」
あの金色の腕輪をしている奴は、古代インカ文明の秘宝であるガガの腕輪の劣化コピー品……。
通り名を『ペイン』と名乗る男だ。
「ふん、くだらん……」
あっちの眼帯の男は、恐らくは魔眼使い……。
となると、『ジャッカル』だろう。
「早くしてくれないかな……、あと一時間二十四分後には仲魔に餌をやる約束なのに……」
あのCOMPを腕に巻いている奴はデビルサマナーだろう。
多分、『百々目鬼』だろうな。
そんなこんなで十人程の暗殺者が揃った。
『もしもし?聞こえてるかな?』
そして、プロジェクターにメシア教を意味する十字架が映る。
つまりメシア教からの依頼……、と見えるが真実は闇の中だ。もしかしたら、メシア教のふりをした全く別の組織が依頼主かもしれない。
ただ、俺達もある程度裏を取ってある。
相手はメシア教と見てまず間違いない。
『今回の依頼だが……』
話を聞いたところ……、黒井鎮守府提督、新台真央の暗殺の依頼だった。
確か、相当にしぶといとか……。
そして、強力な力を持つ神霊に守られていて、暗殺は非常に困難とも……。
なるほどな、この人数を揃えた理由は理解できた。
だが、数撃ちゃ当たる鉄砲玉扱いってのは気に食わないがね。
ターゲットは、普段は難攻不落の黒井鎮守府の中にいる。
なので、ターゲットが一人で外出している時が狙い目だな。
何日か、黒井鎮守府の周辺で待っていると、ノコノコとターゲットが外に出た。
ターゲットは、そこら辺の人間とよく話す。
それは丁度、古いマフィア映画のボスのように、武力と組織力で街の住人の悩みを解決していた。
多分、後で『友人としてのお願い』とか言って、便宜を図ってもらおうって寸法だろう。
今時は流行らないやり口だ。
さて、そんなターゲットが……、一人で裏路地に入った!
今だ!行くぞ!
俺がターゲットの後ろから襲い掛かろうとしたその瞬間……。
「ビガラパ『ムセギジャジャ』バ?」
「は……?」
ターゲットは、こちらを振り向いてそう言った。
何語だ、これは……?
俺は一応、五カ国後くらいは話せるが、こんな言語は知らない。
「『ムセギジャジャ』バ、ドビギデギス」
「な、何を……?!」
「あっ、なるほど、君は人間か。その『魔石ゲブロン』はどこで拾ったのかな?」
笑う。
笑っている。
子供に諭すように、道を尋ねるかのような気安さで。
「おや、ゲブロンだけじゃないね。『悪魔人間化』の施術もしているのか。得物は腰の鎖に吊るしたアクセサリーを、モーフィングパワーで槍に変えるってところかな?凄いね、それなら『ゴ集団』並みにゲブロンの力を使いこなしてる」
「な、なにを、何を言ってるんだ、お前は?!!」
意味不明ながらも、俺の全てを見透かすように考察してきた。
『魔石ゲブロン』ってのが何なのかはよく分からないが、俺は警察官を買収して、警察が保管しているマジックアイテムらしき魔石を裏ルートで手に入れて、それを自分に埋め込んだんだ。
『モーフィングパワー』や『ゴ集団』とか意味の分からない単語があったが、俺が腰に吊るしているアクセサリーを、魔石の力で変形させて武器にするのは、俺の秘中の秘だ。何故それを知っている?!
それだけじゃない、『悪魔人間』であることまで見抜かれた?!
「ん?ああ、その顔だと、ゲブロンがなんだか分かってないみたいだねえ。大方、警察を買収して裏ルートで購入したってところかな?」
何故だ、何故わかる?!
どこまで知っているんだ、この男は?!
「う、あ、うおおおおおおっ!!!」
堪らずに、隣の『ペイン』がターゲットに襲いかかった。
「へえ、ガガの腕輪のレプリカかな?でも君、実物は見たことないでしょ。再現性が低過ぎるもん。多分、ガガの腕輪の似姿を作って意味を抽出して、無理矢理神秘を引き出しているんだと思うけどどう?ああ、あと、君は対魔忍の系譜だね?足運びで分かるよ。多分……」
「死ねぇ!!!」
「ああほら、やっぱり。『ふうま』の家系でしょその動き。えーと、多分、『二車』の分家筋でしょ?それは知ってる」
半笑いで、ペインの放つ凄まじい速さの突きを避けるターゲット。
「こ、これでどうだ!」
『ジャッカル』が、魔眼を発動させる。
「ははあ、『炎焼の魔眼』か。久しぶりに見たなあそれ」
すると、ターゲットに火がつき、炎に包まれる。
だが、ターゲットは……、炎に包まれながらも平然と喋り続けた。
「良いねえ、レアな魔眼持ちは。ん?でも君、『オーグマン』だよね?魔眼はオーグマンとしての特殊能力とは別なのかな?でも、それは知ってる」
「や、やれっ!」
『百々目鬼』が仲魔を召喚する。
「あー、『リオレイア』の『ドラゴンゾンビ』か。なるほどね、知ってるよ」
だが、ターゲットは、百々目鬼の仲魔に施餓鬼米を叩きつけて怯ませ、攻撃をするりと避ける。
何だ、何なんだ?!
さっきから、「知ってる」だと?!
「そっちの君のそれは『クラヴマガ』だね。こっちは『鹿島新當流』で、これは……、『八極拳』か。知ってるよ、対処できる」
こ、こいつ……?!!
今まで……、今まで一体、『何を』『どれだけ』見てきたんだ?!!!
俺の持てる手札を全て切っても、どれもが全て『知ってる』の一言で簡単に対処された!
十人……、十人だぞ?!
一流とまでは言わないが、そこそこのランクの暗殺者十人に囲まれて、何故平然としている?!
「今手を引くなら見逃すけど、まだやる?」
「て、てめぇ!舐めるんじゃねえ!」
「そうか、じゃあ……」
「Wasshoi!」
ニ、ニンジャ?!!!
「ドーモ、暗殺者=サン。川内デス」
「最後の忠告だ、死にたくなければ消えろ!」
「じょ、冗談じゃねえ!」「やってられっか!」
何人か逃げたが、まごついていた奴は……。
「敵対者殺すべし!慈悲はない!イヤーッ!!!」
「「「「グワーッ!!!!」」」」
一瞬で殺された。
ひ、ひいっ!
やべえ、に、逃げなきゃ!!!
もう、もう二度と関わらねえ!
暗殺者なんてやめだ!
貯金でパン屋でもやろう……。
旅人
大抵のことは体験しているので、何をやっても「もう見た」で対処してくる。「グロンギだー!」「もう見た」「悪魔人間だー!」「もう見た」みたいな。なので、未知の行動をとる奴を見つけるとスッゲェ喜ぶぞ!とは言え、スペックそのものは神域に達することはないので、某水銀のように全てが既知でつまらなくなることはない。「今日の空と明日の空は違う、景色一つだって毎日が未知でいっぱいだ!人生は楽しい!」とのこと。
川内
ニンジャにして旅人のセコム。イエスはいばらの冠を引っ張るとウリエルが飛んでくるが、旅人は指パッチンすると川内がどこからともなくエントリーしてくる。
殺し屋
この後、殺人級に美味いパン『ジグソーパン』でそこそこに稼ぐ。