旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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何がウケるのかよく分からないので、自分が好きなものを書き続けます。

あ、あと、誤字報告ありがとうございました。

……18話、やっぱり分からないか……。悲しいなぁ……。




57話 たっぽいたっぽい

「て、提督、その、良いか?」

 

「あいよ、どーぞ」

 

「あ、ありがとう!……では!……えい!」

 

おーおー、相変わらず力強えな、長門は。スゲェわ、これ。普通の人間にやったら、胴体真っ二つだろうよ。

 

「むふー、あー、良いなぁ……」

 

今、長門は、俺に抱き付いて、胸に頬擦りしているけど、これも普通の人間だったら胸が抉り取られてるね。俺からしてもちょっと痛いくらいだもん。相当だよ?

 

「ほら、長門、力加減の練習でしょ?もうちょっと力抜いて?」

 

「あ、ああ!すまない!……こんな感じか?」

 

「力抜き過ぎだね〜。俺なら思いっきり抱き付いても大丈夫なんだ、もっと頑張って!」

 

「わ、分かった!」

 

あらら、今度はもっと強い。

 

 

 

……事の発端は、長門の相談だった。

 

どうやら長門は、力加減が苦手。もっと言うと、力加減が極端なんだ。

 

普通の艦娘なら、1から10まで、1刻みに力の調整が出来る。だからこそ、普段は1から3の力で生活し、仲間同士での演習なら4から7くらい、戦闘なら10まで、と言うように、加減をする事で、超人的な肉体を持ちながらも、日常生活を送れている。

 

因みに俺なら、0.01から10まで、ゼロコンマ刻み以下くらいの調整が可能。

 

しかし、長門は、1、5、10くらいの、極めて大雑把な加減しか出来ない。

 

それだけなら、ただ、不器用な人だね、で済むだろうが、さっき言ったように艦娘には超人的な身体能力がある。その中でも、長門は特別「強い」。

 

どうにか、日常生活は送れているようだが、油断すれば力が入り過ぎてしまう、とのこと。

 

「はぁ、強くなれるのは良いことだが、調節が出来ないとはな……。全く、難儀なものだ」

 

そう言いながらも、俺に抱き着く長門。でもな、俺、地面に足付いてないからな?

 

「ほらほら、今度は入れ過ぎだよ〜」

 

「す、すまない……」

 

しょんぼり長門。

 

ふと、長門の髪が顔にかかる。

 

うむ、石鹸の匂い。

 

 

 

……長門よ、固形石鹸で全身丸洗いはやめなさい?服も芋ジャージしかないし……。

 

んー、でも、これはこれで。死ぬ程健康的だからこそ、美容に気遣いは不要と言うことかな?

 

「……最近は、益々力強くなってしまってな……。見てくれ、腕なんてこんなに太く……」

 

力こぶを作って見せる長門。女の子にしてはかなり太い、よく鍛えられた二の腕。今じゃ、俺のハイエースに縄を括り付けて引っ張るからな、長門は。

 

そりゃあ、こうもなるでしょうよ。

 

「いやぁ、別に良いと思うけどな、俺は」

 

そう言いつつ、長門を見やる。

 

……飾り気のない、タンクトップの黒インナーは、筋肉量が多く体温が高い長門の愛用品。

 

最近は段々と暖かくなり始めたので、長門は、上はインナー、下はジャージという、凡そ女の子らしくない格好で、普段からそこらをふらついている。

 

 

 

それがたまらなくエロい……!!

 

鍛えられた大胸筋を差し引いても、かなりのサイズのおっぱいが、俺の身体に惜しみなく押し付けられている。

 

仄かに香る女の匂いは、汗なのか何なのか。何もせずとも良い匂いするタイプの女なんだよ、長門は。

 

ついつい撫でちゃう。

 

おお、髪もサラサラ。どうなってんだマジで。手入れしないでこれって、全世界の美容師を敵に回したぞ。

 

「あ、な、撫でるのか?私を?……いっ、いや、もちろん、嫌じゃない!その、むしろ、嬉しくて……」

 

更に強く抱き締められる。

 

「……ふふ、こうして私は、力加減の練習を口実に、貴方に甘えたいだけかもしれんな……」

 

んもー、可愛いこと言ってー。でも、そのパワーだと、もはやこれ鯖折りだからね?他の人にはやっちゃ駄目ね?

 

「……なあ、提督。私達は、どうなるんだろうな」

 

「んぁ?急にどうしたの?」

 

「……私達は、強くなり過ぎた」

 

「はあ」

 

「……私も、何度か外出して、今の時代の人々を見てきた。そして、思ったんだ。……私達は、異常だ。ヒトの形をしながら、ヒト以上の筋力、耐久性、体力、反射神経……、あらゆる点で優れている。そして、その力は、海の上では何倍にも膨れ上がる」

 

「そうだねぇ」

 

「その力は、ロック装置によって、高まる一方だ……」

 

「大丈夫、ちょっとずつ加減を学べば……」

 

「違うんだ」

 

一層、悲しそうな顔をした長門。こんな顔は久々に見る。

 

「はい?」

 

「……この前、街に出た時にな、ナイフを持った暴漢に襲われたんだ」

 

「なんだと、どいつだ!」

 

は?誰だ?殺すか?

 

「私は、上手く鎮圧する自信がなかった。だから、直接殴らず、ナイフを握り潰して見せたんだ」

 

「おお、偉いな」

 

「……そうしたらな、こう言われたんだ……。『この、化け物め』と……。周りで見ていた人々も、私のことを、まるで化け物を見るかのような目で見ていた……。私は、その言葉が忘れられないんだ……」

 

「長門……」

 

成る程なー、そう言う系かー。

 

……でも、俺の知り合いには、ナイフくらいなら平気で握り潰す奴一杯いるし、なんとも……。

 

つーか、闘気纏えば俺にも全然できるし。

 

やって見せるか。

 

「長門、確かに、普通の人から見れば、艦娘は恐ろしい存在なんだろう」

 

「……ああ」

 

「だがな、世の中には、普通の人しかいないって訳じゃない」

 

懐から安物のナイフを取り出し、握り潰して見せる。

 

「……と、このように、普通じゃない奴なんて、探せばいくらでもいる」

 

「……提督……。慰めてくれるのは分かるが……、そんな芸当は提督くらいしか……」

 

あらら、やっぱりこれくらいじゃ駄目か。まあ、長門には、言葉を重ねるより、実際に超人を見てもらった方が早い。

 

じゃあ、

 

「長門、散歩に行こう!」

 

「…………はぁ?」

 

「なあに、論より証拠、超人を見せてやるって事さ!」

 

 

 

×××××××××××××××

 

「その、何だ、ここは……」

 

「田舎?」

 

「い、いや、まあ……」

 

そう、さっきからすれ違うのは、年寄り、動物、モヒカン、ターバンの子供……。

 

ん?モヒカン?!

 

「おーい、こっちだよー!」

 

「あ、ああ!」

 

き、気のせいか……?

 

 

 

「「「「ヒャッハー!!!!」」」」

 

あっ、気のせいじゃなかった!!!

 

「ここは、南斗の里……。平たく言えば、超人達の総本山だよ。まあ、この辺りはお粗末な雑魚しかいないね、もっと奥に行けば……」

 

「なぁんだとぉ?!誰がお粗末な雑魚だってぇ?!!」

 

「あらま、めんどくさい」

 

……いや、どう考えても、こんな血の気の多そうな連中にそんな事言ったらそうなるだろう。

 

騒ぎを聞きつけた、筋骨隆々な男達がこちらを取り囲み、罵声を発し、今にも襲いかからんとしている。

 

「提督……」

 

「でも、こうするとな……」

 

 

 

「……貴様か。厄介ごとは勘弁してもらいたいんだがな」

 

 

 

「……大ボスが釣れる」

 

その時、とある男が空から現れた。

 

その男は、提督と同じような眉目秀麗な偉丈夫であり、しかし、提督より長い白髪と鋭い雰囲気を醸し出す男だ。

 

……戦わずとも分かる。この男、強い……!!!

 

 

 

「よー、久し、ぶ、り……、って、お前!真っ白やんけ!!!漂白剤使った?似合ってる似合ってる!!ギャハハハハハハハ!!!」

 

「クッ、笑うな!!」

 

 

 

 

 

「で、何でお前ここにいんの?仕事は?」

 

……場所を移して、古い寺院の中。先程の騒ぎは、荒れ狂う男達を、この目の前の鋭い相貌の男が一睨みしただけで収束した。……やはり、私の目に狂いは無かった。この男、確実に私以上だ……!!!

 

「……クビになった……」

 

「テラワロス」

 

「仕方ないだろう?!目の前で女性職員にセクハラする上司を殴ってしまったんだからな!!大体にして残業と休日出勤ばかりで休む暇も無かったし!!ぐうぅ、アイリにもマミヤにも顔向けできん!!やっと決まった就職先だと言うのに!!!」

 

「で、今は古巣でバイト?もうさ、聖帝様とか、UD様とかに雇ってもらえば?」

 

「そんなみっともない真似はできん!!」

 

「その歳でフリーアルバイターの方がみっともないゾ」

 

「お前だって旅人だろう!!」

 

「残念!俺、最近就職しましたー!!」

 

「な、何だと?!」

 

……だが、提督と仲は悪くないみたいだ。しかし、警戒を怠ってはならないな。

 

「……それで、何の用だ?何をしに来た?あらかじめ言っておくが、厄介ごとは……」

 

「あー、この子に里の奥を案内してやって」

 

「……入門希望者か?だったら、正規の手続きをして……」

 

「いや、ただ見たいだけ」

 

「はぁ……、南斗聖拳は見世物ではないぞ?」

 

「就職先、紹介するから」

 

「……まあ、見せるだけなら良いだろう。よし、ついて来い」

 

「(ちょろい)さ、行くぞ長門」

 

「あ、ああ」

 

 

 

「…………これは!」

 

この里の奥の奥。ここで見たものは、今までの私の常識を覆すものだった。

 

素手で岩肌を切り刻む男、蹴りで石柱を斬る女、鉄製の鎧を切り裂く男……。

 

「あれは右から、南斗夜梟拳、南斗翡翠拳、南斗流鴎拳……。皆んな、人間だけど、長門より強いよ。ほら、他にも、あっちには南斗比翼拳、南斗飛燕拳、南斗隼牙拳……」

 

 

 

……成る程、これを見れば、自分がいかに狭い枠組みでものを見ていたかがよく分かる。

 

「まさか、これ程まで……!!」

 

提督の言うように、世の中は広かった。まさか、自分よりも強いであろう人々がここまでいるとは……。

 

「因みにさ、あそこの、流鴎拳の人なんて、この近くで農家やってるんだ。……あれだけの力があっても、普通の暮らしは出来るんだよ、別に」

 

「そ、そうなのか?」

 

「そうそう。……自分の居場所なんてものはね、探せばいくらでもあるもんよ。もしもないなら作れば良いし。そんなに難しく考えることはないよ」

 

「……う、む。そう、だな……。難しく考えるのは、私らしくないな!」

 

「よし、その意気だ!……まあ、少なくともさ、長門がどんなに強くなっても、俺は側にいてあげるから、安心して強くなりなよ」

 

「……ああ!」

 

……そもそも、私の居場所は、最初から提督の隣にあった、と言うこと、か。

 

考え込むのは性に合わない。いつも通り、提督の為に強くなればそれで良いんだ。

 

きっと、提督なら、私に居場所をくれるだろう。鎮守府も、この場所も、提督に導かれたんだ。

 

だから、私は……、

 

「私は、一生、貴方について行くぞ!だから、だからこれからも私を導いてくれ、提督……!」

 

 

 




長門
黒井鎮守府最大戦力の一人。超弩級のパワータイプ。余りにも力が強いので、他人との接触が出来ず、人恋しそうにしている。唯一、全力でぶつかっても大丈夫なのは旅人だけ。よって、隙あらばなんだかんだ理由をつけて甘えてくる。

鋭い雰囲気の男
南斗六聖拳が一つ、南斗水鳥拳の伝承者。その鋭い雰囲気から中々就職先が見つからず、結果、ブラック企業に捕まる。心労で白髪に。

聖帝様
偉い。ターバンのガキが弱点。

UD様
頭文字はJ。

旅人
子供の頃は、良く里に出入りしていた。

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