「俺さ、自分のこの、しっかりとフラグを回収する所、好きだわ」
「きゃー!きゃー!かわいい!かわいい!!」
「提督、あーんですよ、あーん」
愛宕と加賀、おねショタの総本山の人達に捕まった俺。
経緯など特に無い。工廠のドアを開けた時点でとっ捕まった。……そう言えば、空母の皆んなに監視されてたっけ、俺。
今は、休憩室のソファーに座った愛宕の膝の上。
何故か、加賀に餌付けされてる。
何これ。
「そ、その、帰って良い?」
「お姉さんに沢山甘えて良いんですよ〜?」
「癒し、これが癒し……。成る程、流石に気分が高揚します」
「駄目だ、話が通じねぇ……!」
完全に自分の世界に入ってるこの二人。
この姿じゃ、イケメンパワーで乗り切ることも不可能。力づくで逃げ出すと、この子達が傷つく。どうする?
その時である。
「あら?愛宕さん、加賀さん?……その子は?鎮守府に部外者を入れちゃ駄目じゃないの!」
叢雲!助けて!
「あら〜?大丈夫よ〜?身内だもの、ねぇ?」
「この子は私の弟です(錯乱)」
「はぁ?何言ってんの?……待って、なんだか、この子、見覚えが……。………………も、もしかして、し、司令官?」
「助けて叢雲」
「司令官?!!司令官なの?!!」
「そうそう、説明は省くけど、なんだか小さくなっ」
が、愛宕に口を塞がれる。
「うふふ、違うわよ〜?」
「弟です(混乱)」
「駄目ね、話が通じないわ……!」
そして、騒ぎを聞きつけて集まる艦娘達。
「提督?!提督なの?!そんなにかわいい姿になっちゃって……」
那珂ちゃん……。
「……良し、じゃあ、ちょっと女装して、那珂ちゃんとトップアイドル目指そう!!大丈夫、女装した男性アイドルがこの前テレビに出てたから!!」
なんでや!!
「て、提督……。貴方は大物になるって思っていたけど、まさか小さくなるなんて……」
五十鈴……。
「こうなったら、私が責任を持って、立派な男になるまで育ててあげるから!!」
なんでや!!
「な、なんやて?!司令官が子供に?!!……ほんまや!かわいい!!ほーら、司令官ー?飴ちゃんやるでー?こっちおいでー?」
「龍驤、今の時代にそれやると、男女関係なく不審者扱いで捕まるからな、注意しろよ」
「なんでや!!」
くっ、不味いな、収集がつかなくなりそうだ。
仕方がない、肉を切らせてなんとやら、だ。喰らえ!
「愛宕姉さん、そろそろ離してよ?……愛宕姉さんの顔が見たいな、僕」
「そ、そうね!私も、提督の顔が見たいわ!」
はい、解放。
……吐きそう。なんだよ、愛宕姉さんって。辛いわ。俺、何歳だと思ってんだ。死にたい。
さあ、今のうちに……、ん?
「お姉ちゃんです(半ギレ)」
加賀ァ!!呼べってか!!
「ぐっ、か、加賀お姉ちゃん?お菓子、ありがとね!美味しかったよ!」
「………………」
無言のガッツポーズ。なんなん?言っておくけど、中身は◼︎◼︎歳だからな?
まあ、なんにせよ、これが我が逃走経路だ……!!
「とうっ!」
「あ、逃げた!」
すまんな、おねショタは好きじゃないんだ。
そろそろ夕食の仕込みもあるし。じゃ、食堂へ。
「…………と、言う訳で、今日のメニューは和食中心ね!鳳翔さん、よろしく!」
「旦那様、お母さんですよ〜!」
畜生!こっちも狂った!ひどい、世も末だ……!
「鳳翔さん……」
「はっ!い、いや、こ、これは……。そ、そう!練習です!練習なんです!い、いつか私もお母さんになる訳ですから!ねっ?!……ねっ!!」
ねっ、じゃないが?流石に、お母さんはキツイんだけどなぁ。でも、言わなきゃ駄目そう。
「はぁ……、お母さん?今日の晩御飯は?僕も手伝うからさ、早く作っちゃおうよ?」
「はぁぁぁん❤︎」
鳳翔さん……。
「じゃあ、私達はママ、ですかね、伊良湖ちゃん?」
「そうですね、間宮さん!」
だから、じゃあ、じゃないが?……まあ、ママならそんなに。スナックとかだと思えば。
「ま、間宮ママ、伊良湖ママ?サボっちゃ駄目だよ!お料理の時間なんだから!」
「「はーい❤︎」」
ああ、辛い。下手すりゃ君らくらいの娘がいてもおかしくはないんだぞ、俺……。
とっとと飯作ろう。拒絶反応で死ぬ前に……。
「チカレタ……(小声)」
「……司令官、大丈夫?」
弥生に慰められる俺。駆逐艦に混ざれば違和感無くね?と思って来てみた。いつもの場所だとおねショタの総本山の人達に捕まりそうだし。
「あれは、駄目みたいですね(冷静)」
「……私と同じぐらいの大きさなのに、いつもと食べる量は変わらないんですね」
吹雪、引き気味。そう?いつもの半分くらいだけど。
「にしても、君らは特に反応無し?助かるっちゃあ助かるけど。……こら、暁!好き嫌いしないの!」
「うっ、ピ、ピーマンは勘弁してぇ……」
「駄目だよ!暁!関東野菜連合にシメられるよ?」
「関東野菜連合?!!!」
実際に俺の知り合いのアフロは何度か殺られたからな……。
「にしても、こうしてみると、兄弟みたいだねー。……あ、提督?良ければ後で私の部屋に来て?新刊落としそう……」
「あいよー」
オータムクラウド先生、ピンチ。……それと、姉妹がいなくて寂しそう。……そもそも、艦娘という時点で、親はいない、姉妹はいたりいなかったり、そして、人間とは埋められない身体能力の差があるからな。
皆んな、孤独だ。……憐れんでやれる程人間が出来ている訳じゃないし、共感できるような繊細な精神は持ち合わせちゃいない。でも、こんなかわいい子達が寂しい思いをするのは許せん。
「……そろそろ、建造とかするか?皆んな寂しいだろ?」
「……別に?」
「えっ?」
そうなの?
「まあ、仲間が増えたら嬉しいけどね。……それより私達は、司令官に子供扱いされる方がずっと寂しいよ」
望月……。意外なこと言った。
「そうねぇ、こんな見た目でも、私達は子供じゃないのよ?ちゃんと女の子扱いしてくれなきゃ嫌よ〜?」
如月が非難するかのような目をして言う。けどよぉ……。
「自分の娘くらいの年頃の子を本気で口説くのもさぁ……」
「あら?今は貴方も子供よ?」
これは一本取られた。そうか、今は子供か俺。
「そっか、そうだな。……でも、まあ、姿形が変わろうと、俺が俺であることは変わらないし。駄目なもんは駄目だよ」
「はぁ、凄いわねぇ、提督は。……私はね、ちょっと怖いの」
「何が?」
「艦娘ってね、どんなに怪我をしても、入渠すれば治っちゃうんですもの……。時々、自分が何なのか、分からなくなりそうで……」
頬に手を当て、憂いを帯びた顔で言う如月。
周りの艦娘達も、如月の言葉に同意するかのように首を縦に振る。
アイデンティティの欠如、か。うむ、前までと違って、各々「自分自身」を形成できているようで何よりだ。
えーと、何だったか、欲求の五段階説、だっけな。つまり、今の艦娘達は、衣食住や安全、所属などの低次の欲求は満たされ、今度は、尊厳や自己実現などのより高次な、内的な欲求を持ち始めた、と言うこと。
欲望は大事だ。満たされないからこそ、行動を起こす。行動を起こすことは、結果はどうあれ素晴らしい。
そしてまた、自己について悩み、答えを求めるうちの艦娘達は、より高次な知的生命体となった、と言える。
「素晴らしい、素晴らしいな君達は。……自分を探すこと、自分が何なのか考えること、それはとても大切なことだよ」
……人生は楽しむもの、それが俺の自論だが、そもそも楽しむというのは本人の感性による。そして感性とは、自分の中にあるもの。故に、自己実現とは感性の強化、「楽しみ方」の強化に他ならない。自分自身を磨けば、世界はもっと面白く見える。
「……もう、提督って、たまに難しいこと言うんだから」
「すまんな。……でも、少なくとも、俺は皆んなのことをちゃんと見ているから。どんどん新しい自分を探して、俺に見せて欲しい。それが俺の望みだよ」
そして、自己実現を成し、他人に自らの心を伝えられるようになること。自己を通して何かを創り出すこと。それこそが本当の「モノづくり」だ。
つまり、DIY精神は世界を救う……!
「もう!私のどこを見たいのかしら?しょうがないにゃあ……、良いよ?」
……物理的にって意味じゃねえけど、まあ、見れるんなら見とくか。如月、かわいいし。
この後無茶苦茶見た(意味深)。
おねショタ総本山の人達
おねショタものが多い気がする。
艦娘達
旅人のショタ化によって、一部喜ぶ子もいれば、大人の方が好みの子も。中には、匂いが変わったせいでエラーを起こす子もいるとか。
関東野菜連合
野菜を残した奴の元に現れ、リンチして帰っていく謎の族。よく黄色いアフロがピーマンを残してボコられる。
旅人
考えてないようで考えてる。