旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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スーパー眠いのでサボる。

短め。


70話 近海掃討作戦 前編

鎮守府を出発して数時間、近海領域の最後の地点に急ぐ。

 

音成鎮守府とは、現地の少し前のポイントで落ち合う予定。

 

にしても……、

 

 

 

「ファ-……ブルスコ……ファ-……ブルスコ……ファ-」

 

……Admiral、大丈夫かしら?さっきから様子が変ね。

 

「What's wrong?……どこか悪いのかしら、Admiral?」

 

何故か、ナカチャンの背中に負ぶさるAdmiral。

 

「その!那珂ちゃんの扱い、何か酷くない?!那珂ちゃんはアイドルなんだよー?!」

 

「那珂ちゃんは後でスカイダイビングな。知り合いのアイドルと一緒に」

 

「?!」

 

あら、ナカチャン、またスカイダイビングかしら?相変わらず凄いわね、そのヤマトダマシイは賞賛に値すると思うわ。

 

まあ、いつものことね。そんなことより、Admiralの方が大事よ。……Admiralは、会議が終わってから、何だか元気がないように見えるわ。

 

「ナデナデシテ-」

 

「あら?撫でて欲しいの?ふふ、可愛いわね、提督!安心して、私は、ビスマルク姉さま、なんだから!」

 

「モルスァ」

 

今度は、ビスマルクがAdmiralを抱き寄せて、頭を撫でている。

 

何だか、大きなティディベアみたいね。

 

「ふむ、もしかして……、提督殿は予定が一杯なのが嫌なのでは?」

 

なるほど、アキツマルの言う通りね。Admiralは子供のように奔放で、純真なお方。予定で一杯なのはきっと辛いわ。

 

「大丈夫、Admiral。ゆっくりで良いのよ、時間は幾らでもあるんだから」

 

「勘弁してよォ!!式とかさぁ?!」

 

……あら?

 

「……Admiral?私と結婚は、嫌なのかしら?」

 

また、冗談かしら?中々面白いわね?

 

……本当に、面白いわ。

 

「あー、その、いや、アレだよ。ま、まだ結婚は良いんじゃない?ほら、ふ、二人の時間を楽しむ的な?!ねっ?!」

 

…………そう、そう言うことね?

 

「ふふふ、そうね、まだ私達は、恋人をしていないものね!」

 

「What?!」

 

やっぱり、Admiralは優しい人ね。

 

……彼は、私達になるべく人間らしい人生を歩ませようと尽力してくれているわ。

 

確かに、結論を急ぎ過ぎていたかもしれない。普通の女性は、結婚する前は、夫となる殿方と恋人として愛を育むのだから。

 

「嬉しいわ、Admiral!愛の前には恋、なのね。……貴方も、私に恋をしてくれるかしら?」

 

「んえあ?!」

 

して、くれないのかしら。

 

そんな訳、ないでしょう?

 

貴方は私が好き、私は貴方が好き。

 

「……いざりの女が嫌?それともlooks?bustの大きさ?少しでも嫌なところは直すわ。恋人ですもの、貴方に美しいと思ってもらいたいの」

 

「あっ(察し)。だ、大丈夫だよー!今のウォースパイトが一番好きだ!!」

 

好き?

 

……好き、好き!そう、好きだと言ってくれるのね?

 

「足が不自由?大丈夫、俺が杖にでも何にでもなってあげちゃう!!」

 

……ああ、ああ、こんなにも、こんなにも嬉しいことはない。愛する人が、私を永遠に支えてくれると、そう誓ってもらえるだなんて……!

 

 

 

…………しかし、ここで邪魔者が現れる。

 

『ギョッギョッギョッギョッギョッ!!!!』

 

『ギィイイィイィイィ!!!!』

 

『グゴオオオオオォォォ!!!!』

 

 

 

深海棲艦……。

 

「さあ、行くわよ!!」

 

ビスマルクが号令をかける。

 

闘争の時間だ。

 

 

 

はぁ、嫌だ、闘争は嫌だ、戦争は嫌だ。

 

戦火がもたらすものは破壊だけ。

 

破壊がもたらすものは悲愴だけ。

 

悲愴がもたらすものは苦痛だけ。

 

皆が手を取り合って歩けば、世界はもっと美しいと言うのに……。

 

お互いの足りない部分を補い合って、支え合って生きていけば、平穏が得られると言うのに……。

 

闘争と言う蛮行など、この世界には不要だ。あってはならない。

 

 

 

私は、Warspite。

 

闘争を侮蔑する者。

 

 

 

でも……、

 

『ガァァォァァオオオ!!!!』

 

「ウォースパイト!そっちに行ったわよ!!」

 

それでも、武器を取ると言うならば……、

 

「……Fire」

 

『ゲァアッ?!!!』

 

私が、全てを終わらせよう。

 

願わくば、この蛮行が最後の闘争になることを祈って……。

 

 

 

「雑魚とはいえ、数が多いです……!」

 

「むー!夜戦まで体力を温存したいのにー!」

 

「ひゃあああ?!な、那珂ちゃんピーンチ!!か、齧らないでー!!」

 

 

 

「Move back please ……。蹴散らします」

 

「!! 全体、退がって!!」

 

殆ど動かない私の足に、回転させた鉄球を当てる。

 

すると、まるで何かに操られるかのように、私は海上に立ち上がった。

 

そして、もう一つ。

 

皮膚を鋼のように硬化させ、身体能力を向上させる。

 

「Enemy ship is in sight ……」

 

敵機発見、照準合わせ。艤装の主砲を取り外し、両手に構える。

 

「Open fire !!!」

 

全砲門、斉射。

 

「Fire!」

 

斉射。同時に、目の前の深海棲艦を蹴り殺す。

 

「Fire!!」

 

斉射。同時に、真後ろの深海棲艦を殴り殺す。

 

「Fire!!!」

 

斉射。同時に、隣の深海棲艦を千切って殺す。

 

 

 

私は、Warspite。

 

敵艦の腹に風穴を開ける啄木鳥。

 

 

 

私の名を、その身に刻め。

 

恐れ慄くがいい。

 

そうすれば、このような蛮行もなくなるだろう。

 

 

 

……そして、時間切れ。

 

私の未熟な技術では、ほんの数十秒が限界。

 

再び、自由の効かなくなった足は、ゆっくりと力を失っていく。ああ、いけない、艤装に戻らないと。

 

あ、足が、滑って……!

 

 

 

「おっと、大丈夫かい、ウォースパイト?」

 

「……あ、Admiral ……」

 

優しく、抱き寄せられる。

 

「大分上達したね、鉄球の回転。その調子なら、ちゃんと歩けるようになるのもそう遠くはないんじゃない?」

 

「ふふ、そうね。……もし、もしも私が歩けるようになったら、お願いがあるの、Admiral ?」

 

「ん?何かな?」

 

「私が、ちゃんと歩けるようになったら、結婚式を挙げましょう?一緒にWedding aisleを歩いて頂戴?その後、パーティで、一緒にダンスを踊るの」

 

「ん、ああ、バージンロードか。いいよ、俺はまあ、君達の父親みたいなもんだし?ははははは、なーんだ、そう言うことかー、なら全然OKだよー、父親としてなら結婚式に出るのもやぶさかじゃないね!ダンスももちろんいいよ!」

 

「Really?出てくれる?嬉しいわ!」

 

Wedding aisleを二人で歩いて、その先も貴方と一緒。

 

今までも、そしてこれからも。

 

貴方は私の父親であり、兄上であり、そして夫であるから。

 

 

 

ずっと、ずっと一緒よ、Admiral……。

 

 




ウォースパイト
誰よりも平和を望む、心優しい女性。鉄球の回転によるバフがかかっているときは、艦娘の中でも最強と言っていい程。ヤンデレ特有の、都合が良い所しか聞こえないタイプの難聴。

知り合いのアイドル
スカイダイビングからバンジージャンプまで幅広く活躍するトップアイドル。

旅人
バージンロードで新婦をエスコートするのは父親の役目だと思っていた。最近は夫でもOKというケースがあることを知らない。

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