旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

8 / 593
高評価してくれる人がいてウレシイ……ウレシイ……。

基本的に古い漫画とかアニメが好きなので、ネタが分からない人が多いと思います。

まあ、俺がパロってる作品はこのSSの1145141919810倍位面白いので、興味があったら調べてみてね。


8話 現代社会の闇

午後六時ごろ。

 

所謂定時、と言う時間で、世の中の真面目に働く人々が愛する家族の元へ帰る(はずの)時間帯。

 

 

 

「む〜りぃ〜!!定時だもん!お仕事おしまいの時間だもん!!旅人はお家に帰りま、いや、俺、家なかったわ」

 

「すまないが、この鎮守府に定時という概念はない」

 

そう返すのは、対魔忍みたいな格好の美女、長門さんだ。俺は今、長門さんに連れられて、鎮守府の案内をされている。

 

「なん……だと……?」

 

「24:00までは勤務時間だ、表向きは」

 

「……は?」

 

「まあ、24:00で仕事が終わったことはないがな。皆、夜通し戦っているよ」

 

「……ふっ、ふざけ、ふざけないで!そんなの仕事じゃないわ!ただの拷問よ!!」

 

「まあ、提督はいつ休もうが自由だがな。我々はただの道具だよ、時間がどうとか、気にする必要はない」

 

と、自嘲する長門さん。先ほどのおやつタイムで生き生きとぜんざいをお代わりしていた時と打って変わって、どこか諦めたような顔をしている。

 

「長門さん、向こう一週間ほどお休みにしちゃダメ?提督権限でできないの?」

 

「無理だな、大本営から叱られる」

 

「……叱られるだけ?」

 

「……まあ、良くは分からないが、減給とか、降格とか、そういったペナルティがあるだろうな、それに、深海棲艦が攻め入ればお休みどころじゃない」

 

成る程、減給や降格は怖くないが、深海棲艦(なんか化け物らしい)が攻めてくるのは不味いな。お休みなので、防衛する人が居ませんとは言えないだろう。一応軍隊らしいし。

 

「うーん、でも、何とかして休みにしたい……、休みにしたくない?」

 

 

 

「……何だ、何故そうまでして休ませたい?私達への同情か?」

 

少し、怒ったような顔をする長門さん。おやつタイムに駆逐艦の小さい子達に混ざってぜんざいをお代わりをしていた姿と違い、迫力がある。

 

「いや、そうじゃないよ。単に俺が心置き無く、普通に休みたいってだけで」

 

「……どういうことだ?休みたいなら休めばいい」

 

「だって、皆が頑張ってるのに、俺だけ休んでたら何か悪いだろ?普通はそう考えるだろ?」

 

「……普通、普通か。そうだな、それが普通なんだろう。だが、私達艦娘は生憎だが普通ではない。護国の為、果てるまで戦う、そうあれかしと望まれたもの、それが艦娘だ……。まあ、まともな食事ができただけで充分幸せだよ私も、妹も、な」

 

そう言う長門さんの表情は、幸せとはかけ離れているように感じた。ちなみに、妹の陸奥さんはおやつタイム後に「姉がいやしんぼでごめんなさいね」と態々謝りに来た。

 

「さて、ここが執務室だ。貴方の仕事場所になる。仕事の内容は艦隊の指揮と書類整理が主となってい、ぴゃああああああ!!!」

 

長門さんが変な悲鳴をあげて尻もちをつく。

 

「どったの?」

 

「し、執務室に、お、お化け!ゆ、幽霊がいる!!」

 

まさかのガチビビリである。ビッグセブンとはなんだったのか、と思いつつ、執務室を覗く。

 

「あー、長門さん、あれ人だよ。幽霊じゃないね」

 

「そ、そうなのか?いやでも、あの雰囲気は……、!、もしかして、大淀、か?」

 

そう言うと、長門さんは恐る恐る執務室にいる人影を覗き見る。

 

「やっぱり、大淀だ!大淀じゃないか!何があった?!数ヶ月前と全然違うぞ!!」

 

「……あ、お仕事ですか……。そこに置いて下さい、直ぐにやります……」

 

髪はボサボサ、瞳は死んでる、しかし手元はずっと動いている。現代社会の闇そのものみたいになっているこの大淀と言う子は、長門の声が聞こえていない様子だ。

 

「大淀!仕事じゃないぞ!新しい提督が着任したんだ、挨拶をしろ」

 

長門さんが呼びかけるが、

 

「……はい、お仕事ですね。分かりました今やります」

 

と、取り付く島もない。

 

「……ねえ、長門さん?この子ヤバイよ?目が真っ暗だよ?」

 

「ええい!大淀!!私だ、長門だ!!」

 

長門さんが大淀さんの肩を掴んで強引にこちらを向ける。

 

すると、大淀さんはペンを置いた。

 

「大淀、大丈夫か?」

 

「……はい、長門さんはこれから六回の出撃があります。任務の内容は……」

 

「だ、駄目だ、完全に仕事モードだ」

 

「うーん、これはいかんでしょ。…………当て身!」

 

「あぐっ」

 

「お、おい!大淀に何を?!」

 

「いやこれ、これは休まなきゃ駄目だろ?意思疎通が取れないレベルは不味いよ」

 

「まあ、それはそうだが……」

 

「取り敢えずこの趣味の悪いソファに寝かせとくか」

 

全体的に成金っぽいてか趣味の悪いこの執務室のソファに大淀さんを寝かせる。軽い!めっちゃくちゃ軽い!!ほぼ骨だぞこれじゃ!

 

「……さて、長門さん?」

 

「……何だ?」

 

「ここに今日付の書類が沢山ある訳ですが」

 

「……ああ、そうだな」

 

「こ、今夜は寝かせないぞ❤︎」

 

そう言って俺は、長門さんに山盛りの書類の半分を押し付ける。

 

「か、勘弁してくれぇ……」

 

ごめんな、俺、仕事チートはないんや。

 

 

 

×××××××××××××××

 

 

 

「…………はっ?!わ、私、寝ちゃってた?!外も真っ暗?!ま、不味い、提督に殺されちゃう!!」

 

しかも、最悪なのは、提督用のソファで寝ていたこと。わ、私、本当に殺されるかも……!

 

「しっ、仕事を、お仕事をしないと!!私がお仕事をしないと!皆の分まで!!」

 

私が酷い目に遭うのはもう良いが、私の仕事が不出来だと、皆んなの命に関わる。

 

フラフラの足取りで仕事机まで向かう。大分寝たせいか、少しは体力が回復したようだ。

 

「す、すみません提督!!今直ぐお仕事をしますから!!いくら殴って頂いても構いません!!ですから、お仕事を!お仕事をさせて下さい!!」

 

 

 

……「だーかーらー!!そこは違うってー、長門さーん!!」

 

……「む、そうなのか?す、すまない」

 

……「はい、こっちは終わったわよ、長門の分も回して頂戴?」

 

……「は、榛名はまだまだ大丈夫です!!」

 

……「無理するな、榛名。俺に回せ」

 

……「お昼寝をしたからね、夜も平気さ。さあ、次の仕事はどれだい?」

 

 

 

?、おかしい。いつまでたっても、怒鳴り声も、鉄拳制裁もない。

 

それに、何だか、仲間達の声が聞こえて……?

 

 

 

「あー、ごめんね、起こしちゃった?」

 

顔を上げると、見たことのない男性が私に声をかけてきた。

 

「へ?えっと?だ、誰ですか?」

 

「ν提督、もといNEW提督だよ、よろしく。仕事はなんだかんだで集まった皆んなでやることになったから、君は休んでなよ」

 

「…………へ?えっと、どういう?」

 

は?え?私達の提督は、もっと歳をとっていて、乱暴で、髪が薄くて、背が低くて、太っていて、嫌な顔で……、あれ?

 

 

 

「大淀、ここは私が説明しよう!」

 

この艦隊の主力、長門さんが、困惑する私に指令書を見せながら説明してくれた。何でも、この人が新しい提督になったらしい。

 

 

 

私は、新しい提督を覗き見る。

 

歳は、見た目は二十代後半くらい。

 

髪は、よく手入れされた癖のある白髪、男の人からすると長いが、女の人からすると短いくらい。

 

身長は、艦隊で一番大きい長門さんより、一回り大きい。

 

身体は、良く鍛えられいることが服の上からでも分かる、均整の取れたものだ。

 

顔は、男性的で、鼻が高く、少し彫りが深い。言うなれば美丈夫だ。

 

そして何より、

 

「ん?まだ休んでなかったの?書類は大丈夫だよ、何せ6人もいるんだし。この調子だと朝までには終わるし、大淀さんは休むといい」

 

戦うことのできない、出来損ないの私にも、優しい言葉をくれた。

 

「わ、私、私は、」

 

涙が、溢れてくる。

 

そして、提督は、優しく微笑み、私のことを撫でながらこう言った。

 

「嫌なことがあったなら、泣きなよ。仕事もストレスも、溜めずに吐き出すのが一番ってな!」

 

私は、それを聞いて、提督の胸で泣いた。まるで、子供の様に。提督は、私が泣き止むまでずっと、私を優しく撫でてくれていた。まるで、父親の様に……。

 

 

 

×××××××××××××××

 

 

 

「……ごめんなさい、提督。私ったら、見苦しいところを……」

 

「なーに、構わんよ。いいから休みな、ホラホラホラホラ」

 

「いえ、目が覚めちゃったことですし、私もお手伝いします!」

 

うーん、こういうワーカホリックさんに急に働くのをやめろって言っても駄目なんだよなぁ。徐々に減らしていくしかないか。

 

「んー、じゃ、ちょっとだけ手伝ってもらおうかな?でも、辛くなったら直ぐに休むんだよ?あっ、そうだ、夜食食べたくなったから、パパッと作ってくるね。」

 

「はいっ!」

 

そう言って、大淀さんは、ヨロヨロと仕事机に向かっていく。……本当に大丈夫か、アレ?

 

……「おお、大淀、大丈夫なのか?」

 

……「あら、久しぶりね」

 

……「こんばんは、大淀さん!」

 

……「ん、大淀か。休んでいていいんだぞ?」

 

……「そうだよ。仕事は僕達が頑張るから」

 

……「皆さん……!お久しぶりです!心配しないで下さい!大淀、復活です!!」

 

んー、まあ、あの調子なら大丈夫か。さーて、昼に残った餡子と、カスタードと……たい焼きの出来上がり、っと。

 

 

 

 

 

「おーい、夜食出来たぞー!小休止入れよう!!小休止!!」

 

 

 

 

 

 

 




長門
早速ポンコツがバレる。

大淀
この鎮守府のありとあらゆる書類を処理していた。
鎮守府の苦労人のトップ層。

陸奥
長門が心配で見にきた

榛名
旅人が心配で見にきた

木曾、時雨
執務室の明かりを不審に思い、見にきた

旅人
仕事チートはない。
年齢は自分でも分かってない。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。