旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

83 / 593
言う程セクハラ出来なくて草も生えない。

しかしステマは出来たので痛み分け。


83話 ハラスメントの帝王 癸

……「なんかの撮影?」

 

……「あ、あの子かわいい!」

 

……「おかーさん、あの子すごーい」

 

……「可愛過ぎる、修正が必要だ」

 

……「おっさん、負けんなー」

 

 

 

街の中。買い出しの途中。

 

「何あれ」

 

人だかりが。

 

「いだだだだだだ!だ、だから誤解だって!!!」

 

「まだ言うか!この狼藉者め!!」

 

「は、初春ちゃーん!や、やめてー!」

 

……そして、聞き覚えのある声。

 

成る程、強制的に始まるサブストーリーか。わかるわ。

 

面白そうな厄介ごとには首を突っ込まないと死ぬ。

 

いつものトラックを路駐して、人だかりの中を歩いて抜ける。

 

「はいはーい、ごめんねー、退いてねー」

 

そして、人だかりの真ん中では……。

 

 

 

「こんの、竿師崩れめ!!何がきゃばくら、じゃ!うちの提督をどうするつもりじゃ?!」

 

「ち、違うってば!別にいかがわしい店じゃないよ、うちのエリーゼは!!ってか、力強いね君?!!」

 

「は、初春ちゃん、私、怒ってないから!大丈夫だから!!」

 

 

 

……ふむ、音成鎮守府の提督と、初春。それと、初春に腕を捻り上げられている、知り合いの金貸し。

 

あー、あれだ、ただただ、面倒なやつだ。大して面白くもない厄介ごとだ。

 

俺は面倒は嫌いなんだ。

 

……逃げちゃえ。

 

 

 

「この!このっ!このままへし折ってくれるわー!!」

 

「折れる!!本当に折れるから!!!……あっ?!そ、そこにいるのは、新台君?!新台君!!ちょっと!!!」

 

「え?あ!黒井鎮守府の……!!」

 

ぐっ、見つかった!流石に神室町でコインロッカーの鍵を50本近く見つける人の視力は侮れんな!!!

 

「あー、はいはい、分かりましたよ!」

 

 

 

「……で?何事?」

 

人だかりを解散させて、三人に話を聞く。大体予想はついているがね。

 

「そこの男が、うちの提督を誑かそうと!!」

 

「だ、だから、ただ単にスカウトを」

 

「喧しい!言い訳など聞きとうないわっ!!」

 

「は、初春ちゃーん……」

 

激おこ初春。……て言うか、やっぱり私服は着物なんだ。

 

艦娘は目立つよなぁ。私服が着物の子多いから。そういや、うちの艦娘も話題になってたっけ。「着物を着た凄え美人がいる」って。本人達はナンパだのなんだのがうざったいらしいけど。

 

あと、個人的に、初春は艤装の鎖骨と脇がセクシー。

 

「い、いや、本当にさ、いかがわしい店じゃないよ?!ちゃんと風俗法守ってるし、給料も出してるし!!」

 

大慌ての金貸し。キャバクラのオーナーもやってる。顔も良いし頭も切れる、その上腕っ節も上等で金持ち。凄い男だよ。……だけど、毎度毎度、変な事やら事件やら、そういったことに巻き込まれる。

 

今回もまた。

 

「あー、守子ちゃん?何があったの?」

 

「は、はい!」

 

守子ちゃん。うちの隣にある、音成鎮守府の提督。可愛くって優しい子だよ。ちょっとビビりだけど、肝は座っているし、艦娘にキツく当たったりもしない良い子だ。

 

音成は、規模は小さいが、艦娘の個々の実力はうちに次いで強いね。戦果もバンバン挙げていて、表向きには、この国のトップ、と言うことになっている。

 

おっぱいも大きいし、ウエストは細めでお尻は肉付きがよろしい。

 

完璧だ。

 

「その、ですね、私達二人はお休みで、ここに遊びに来ていて……」

 

 

 

……『神室町、かぁ。実家とは全然違うなぁ……』

 

……『何とも、まぁ……。妾が知る日本とは、随分変わったものじゃなあ……』

 

……『でも、折角来たんだから、楽しんで行こうか!』

 

……『そうじゃな!』

 

ふむ、そうして遊んで、それから?

 

「それから、少しして……」

 

……『にしても、喉が渇いちゃったね。喫茶店も混んでるみたいだし』

 

……『ならば、そこの自販機なるもので何か買ってきてやろうではないか』

 

……『大丈夫?初春ちゃん、機械とか駄目じゃないの?』

 

……『ば、馬鹿にするでない!最近はてれび、を見れるようになったのじゃぞ?!』

 

成る程、その、初春が一瞬目を離した隙に?

 

「はい、その、そちらの秋山さんが……」

 

……『ん?おお、ちょっと、そこの君?』

 

……『ふえっ?!な、なんでしょう?!』

 

……『君さ、もし良かったら、キャバクラで働いてみない?』

 

……『え、ええっ?!!わ、私が?!!』

 

……『君には光るものがあると思うよ、ナンバーワンだって夢じゃない。……ああ、申し遅れました、自分、こう言うものです』

 

……『あ、こ、これはどうもご丁寧に……。ええと、秋山駿、さんですか』

 

……『ええ、そこのキャバクラのオーナー兼、しがない金貸し、ですよ』

 

……『は、はあ……。で、でも私、キャバクラなんて、とてもじゃないけど……』

 

……『いやいや、君は本当に魅力的だよ?何事も経験って言うし、話だけでも聞いてみる気は』

 

「そして、その時……」

 

……『な・に・を!しておるーーー!!!』

 

……『うおっ?!!』

 

……『うちの提督に身売りなどさせんぞ!!!失せんか、このうつけめ!!!』

 

……『み、身売りって……。い、いや、そんなことは』

 

……『成敗してくれるーーー!!!』

 

……『ちょ、ちょっと!ちょっと待っ、痛たたた!!!』

 

 

 

「……で、現在に至る、と」

 

「……はい。そ、その、初春ちゃんを止めて下さい!」

 

「分かったよ」

 

まあ、あのままじゃ不味いしな。

 

「ほら、初春?一旦離れて?ねっ?」

 

身体を掴む。振りしてさり気なく胸にタッチ。バレへんバレへん。

 

まあ、揉むほどねぇけど。こう言うのは気持ちの問題だから。触っていると言う事実に意味があるから。

 

「む、黒井の……!今はいかん、賊を逃してしまうからな」

 

「あー、そのね、その人、俺の知り合いなんだ」

 

あ、着物がちょっとはだけてる。エロい。見えないエロスである。

 

「……なんじゃと?」

 

「俺が話をするからさ、許してもらえないかな?」

 

「むう、大恩ある旅人の言葉故に、聞き入れたいのは山々だが……」

 

「いや、話を聞くだけさ、本当にこの人が悪いなら、警察にでもつき出せばいい」

 

「……分かった、良いじゃろう」

 

何とか、説得に成功。

 

 

 

「あー、すまない、助かったよ」

 

「年端もいかないような子供に痛めつけられた気分はどうです?」

 

「はぁ、最高だね」

 

はだけたジャケットを直しつつ、適当に軽口をたたく。

 

「よりにもよって守子ちゃんをスカウトしようだなんて、相変わらず命知らずだよ、全く」

 

「こんな可愛い娘さんがいるとはね、失敗したよ。あ、いや、妹さんかな?」

 

「いやいや、どっちでもないさ」

 

「と言うと?」

 

「この子は提督、こっちの子は艦娘」

 

「……ははっ、成る程ね、大失敗だ」

 

いやあ、本当に、相変わらずだ。

 

 

 

「それで?この男は?」

 

おっと、ご機嫌斜めだ初春。駆逐艦にしては大人っぽくてセクシーだぞ初春。

 

「この人は、そう、金貸しだよ。真っ当にやってる人でね、悪人じゃないさ」

 

「ほう」

 

「それで、金貸し以外にも、まあ、なんだ、とある店のオーナー、要は店長でね、そこに守子ちゃんをスカウトしようとしたんだと」

 

「身売りなどさせんぞ?」

 

なんで身売り?発想が古い!

 

「ああ、いや、なんと言うか、キャバクラはあれだ、うーん」

 

「あー、花魁とか?」

 

「舞妓でも近いかも?」

 

「「うーん」」

 

おっさん二人で頭を抱える。

 

「……もしや、水茶屋か?」

 

「あー、それだ!」

 

「そう、それ!給仕に近い仕事だよ!」

 

「……つまり、うちの提督を給仕にしようと?」

 

「そのつもり、だったんだけどもね、提督さんとなると無理、だなぁ」

 

「公務員だしな、一応」

 

「……まあ、分かった。邪な気持ちはないのじゃろう、暴力を振るったことは詫びよう」

 

綺麗な形で頭を下げる初春。何をやっても様になる。立てば芍薬、とはよく言ったもの。あと、髪の毛を振る度に椿の匂いがするな。素敵だ。

 

「あ、ああ、いや、良いんだよ、気付かなかった俺が悪いんだし」

 

まあ、艦娘は知識がなぁ。英霊の皆さんみたいに、現代知識をもらって召喚されりゃ楽なのにな。

 

「ご、ごめんなさい、どれもこれも、初春ちゃんにちゃんと教えておかなかった私の責任です……」

 

申し訳無さそうな守子ちゃん。でもさ、こう、胸に手を当てるそのポーズ、エロいね。

 

「良いんだって!気にしないでよ」

 

にしても、女運無いな、この人。まさか提督を引っ掛けるなんて。

 

そうだ、うちの艦娘を引っ掛けられたら困る。在籍艦娘のリスト(と言う名のプロマイド写真)と、俺の名刺でも渡しておくか。

 

「秋山さん、ちょっと。……これ、うちの艦娘のリストね。手を出さないようにお願い。他所にも言っておいて」

 

趣味で撮った。後悔はしてない。……個人的に撮った水着バージョンは誰にも渡さん、永久保存だ。

 

「ん、ああ。……おいおい、こんな美人ばっかりなの?!この子も、それと、この子も、皆んな一月もあればナンバーワンだよ?!」

 

クックックッ、羨ましかろう。

 

「それと、これ、俺の名刺。今日みたいに、怒った艦娘がいたらこれを使って欲しい」

 

「はぁー、了解……。全く、こんな可愛い子に囲まれて、さぞかし楽しいんだろうねぇ?」

 

「あぁ、最高だよ」

 

定期的に命に関わるスキンシップが飛んできて、定期的に修羅場が起きるけど。

 

「それじゃ、解散、かね?」

 

俺がそう言って、帰ろうとすると、

 

「待たれよ」

 

初春にベルトを掴まれる。

 

「えっと?何かな?」

 

「何、折角じゃ、音成に寄って行くと良いじゃろう。皆も会いたがっておるぞ」

 

君ら、ほぼ毎日うちの鎮守府に来てるじゃん?

 

「あ、私からもお願いします!実は、実家から沢山のお魚が送られて来て……」

 

と、守子ちゃん。守子ちゃんの実家は漁師らしい。

 

「そこまで言うなら、寄ろうかな?」

 

「ありがとうございます!」

 

「うむ!」

 

さて、帰りは遅くなる、と。ライン入れとこ。

 

「じゃ、秋山さん、そう言うことなんで」

 

「はぁー、モテるねぇ、妬けちゃうよ。……それじゃあね、また」

 

そう言って、秋山さんはプロマイドを見ながら歩き出した。

 

 

 

 

×××××××××××××××

 

「うわっ、こっちの子はアイドル目指せるよ……。艦娘ってのは可愛い子ばっか、おっと!すまないね、前を見てなかっ」

 

「あー!!!痛え!!骨折れちまったーーー!!!」

 

「オイオイオイオイ!!どう落とし前つけてくれんだ、おっさん!!!」

 

「カッコつけてんじゃねーぞ?!!」

 

あー、相変わらず、チンピラが多い……。

 

「うわっ、面倒臭さっ……」

 

「なんだとてめえ!!!」

 

「舐めやがって!!!」

 

「おい、どうせなら、さっきの女の前でボコってやろうぜ!!」

 

不味いな、巻き込みたくはないんだが……。

 

「おいおい、彼女達は関係ないよ」

 

「とぼけんなや!!!おらっ、女とガキ連れてこい!!!」

 

あっ、ヤバっ?!

 

 

 

「提督、旅人の側におるといい。旅人よ、提督を任せるぞ」

 

「はいよ、殺しちゃ駄目だぞ」

 

……おいおい、初春ちゃんがやるのか?!

 

止めるべき、か、な……?!

 

「おらっ!こっちに来おグッ?!!!」

 

「不届き者め……」

 

あれは……、鉄扇?!

 

「こ、このガキへぶっ?!!!」

 

「な?!あ、あのガキ!!」

 

「ふざけやがって!!!」

 

「なんじゃ、大の男が、女相手にだらしの無い……」

 

鉄扇を開いて防ぐ、閉じて叩く、持ち替えて、引っ掛けて倒す……。

 

「終わりじゃあ!!!」

 

「ヒッ!!ぐああああぁ!!!」

 

最後は突き、か!

 

「全く、迷惑千万、じゃな」

 

あの、動き…………、!!

 

閃いたぜ……!!

 

 

 

『鉄扇公主の極み』を修得した!!

 

 

 

これだ!!

 




初春
旅人には惚れているが、あまりグイグイ来ない。品格を重んじるから、だろう。音成鎮守府では、まるで母親のように振る舞うことから、バブみを感じる艦娘も。前に、子日にお母さんみたいと言われたらしく、若干ショックだったとのこと。

海原守子
美人。実家は漁師で、魚料理が得意。顔もスタイルも非常によろしいが、若干人見知り。旅人のことは尊敬しているし、普通に好き。唯一まともな人。

金貸し
無利子無担保の金融会社、スカイファイナンスの社長。キャバクラ、エリーゼのオーナーも兼業。強く賢くカッコよく、絵に描いたようなハンサム。

旅人
今度、また艦娘の水着バージョンのプロマイド写真集を作ろうとしている。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。