若葉に腹パンしたい。
追記
elona世界のサンドバッグは比喩とかじゃなくてマジで人を吊るすものだから、サンドバッグのように吊るす訳ではなく、サンドバッグそのものにするのだ。
あらすじ、黒井鎮守府に帰りたくないので、音成鎮守府にお泊まりすることにした。
ラインはガンガン鳴ってる。
ハッハー、999件だってよ。
はー、死んだかな?俺?
中々のピンチだが、今の俺はまた別のピンチを抱えていて……。
「分かった!腹パンだ!せめて腹パンをしてくれ!!先っちょだけ!先っちょだけだから!!」
「ぬおおおおお!!!離せぇい!!!!」
「何故だっ!!腹パンだぞ?!!皆んな大好き腹パンだぞ?!!!性器を使わずに子宮を犯すセッ」
「やめろや!!!!」
それ以上いけない!!!
「良し!よく分かった!ならば妥協しよう!!取り敢えず、この鎖を持ってくれ!!」
「ま、まあ、そのくらいなら……」
意図は分からんが。
「そのまま引っ張ってくれ!!遠慮はいらん!全力でだ!!」
「ええ?……ちょっと待て、これ、若葉のロック装置に繋がってるじゃねえかよ!!!」
「ふふふ、このまま散歩でもどうだろうか、御主人様!!」
「誰が御主人様だ!!!」
「なるほど、犬が人の言葉を話すな、と、そう言うことかっ!!わんわん!!」
「言ってねーよ!!!」
何でこんなことに?誰だ?どうしてこんなになるまで放っておいた?!!
「わわわわわ若葉ぁーーー!!!!」
「ぐっ?!は、初霜かっ?!!ええい、私の邪魔をするな!!!」
「何馬鹿なことやってるの!!!旅人さんから離れなさい!!!」
「ぐああああ!!!やめろぉ!!!せめて引っ張るなら鎖の方にしてくれ!!!あああああああー…………」
た、助かった!!このままじゃ色んな意味で大変なことになっていた……!!若葉め、侮れん!!
「本当に、本当にすいませんでしたぁ!!!」
土下座。お手本のような土下座。
「い、いや、良いんだよ、初霜!怒ってないからさ?!」
「で、ですが」
「構わんよ(心が寛大)」
「あ、ありがとうございます!!」
初霜、いつも若葉のフォローか。大変だなぁ。
流石に、攻める方が好きだと言っても限度があるわ俺も。
こんな時、知り合いの冒険者なら喜んで殴るんだろうが、俺には無理だ。
……あいつは、王都のど真ん中でペットの少女をサンドバッグに吊るして殴りつつ、血の繋がらない妹を縄で縛りつつ騎乗し、無邪気な少女の肉を貪りつつ、お嬢様と気持ちいいことするようなド変態だからな。
と、昔を思い出していると、初霜が話をし始めた。
「……若葉は、ああ見えて優しい子なんですよ」
「ああ、うん」
「昔から、誰よりも前に立って、皆んなの盾になって……。私は、傷付くのが怖くないから、平気だからー、とか、寧ろ好きなくらいだー、とか言って」
優しく微笑む、初霜。
「辛くない訳、ないのに。……ご存知かもしれませんが、艦娘は、手足が吹き飛び、臓腑が溢れようとも、入渠すれば元通りです。……でも、痛くない訳じゃ、ないんです」
「……ああ、知ってる」
実際、最近は少なくなってきたとはいえ、うちの鎮守府にも常人なら死んでいるような怪我をして帰ってくる子が沢山いた。
「あんな、あんなに小さな身体で、必死になって……。今でこそ、ロック装置の恩恵で怪我をし辛くなってはきていますけど、それでも、無茶ばっかりして……」
「……心配かい?」
隣の初霜の頭に手を伸ばす。
「正直、かなり。……でも、若葉は、何を言っても止まりませんから。仲間が傷付くくらいなら、私が、って。……だから、私にできることは、若葉を守ってあげることなんです!」
「……そっか、偉いな、初霜は」
仲間を守る。
当たり前だが、その当たり前をこなせるやつが世界にどれ程いるのか。
「えへへ、当然ですよ、このくらい。……でもまあ、本当に痛いのが好きになるとは思いませんでしたけどね」
苦笑いする初霜は、見た目よりずっと大人びて見えて。
「初霜……」
「はい?」
「好きだ」
「………………はい?」
「いや、もう、かっこよくってつい。惚れた」
「も、もう!そう言う冗談はダメですよ?そ、それじゃ!」
はぁ、かわいい。
スカートを翻して去っていく初霜の美少女っぷりには感服した。
あ、パンツ見えた。黒か。黒だ。もうなんか、大人じゃん。手を出しても……、はっ?!あ、あれは式神?!い、いかんいかん、危ないところだった……!!
「……で、実際のところどうなん?若葉ちゃんよー?」
真っ赤になった若葉が出てきた。俺が気付かない訳、ないよねー。
「ぐぬぬ、気付いていたのか……」
「当たり前だよなぁ?」
「羞恥プレイか、やるな……。そ、その、だな、初霜が言っていたことは、忘れてくれないか?何となく、気恥ずかしくて、な」
あらかわいい。
「えー?」
「そ、そこを何とか」
「まあ、良いよ。秘密だ」
「あ、ああ、ありがとう」
すると、若葉は、初霜と同じく、俺の隣にぴったりと座った。……ああ、クソ、黙ってりゃこんなにかわいいのに!!
「…………その、だな」
「ん?」
「初霜は、私のことを優しいと言ってくれたが、少し、違うんだ」
「……そう?若葉は優しくて」
「違うよ。……私は、怖い。ただ、ただ、怖いんだ」
「……ふむ」
まあ、言わんとしていることは分かる。
「……私は、召喚されてからすぐに、私について調べたんだ。戦争で負けたのは、まあ、驚いたが、それ以上に……」
「乗組員のこと?」
多いんだよ、自分について調べる艦娘は。
「……ああ。皆んな、死んでしまったんだ。飯もろくに食えず、慣れない陸の上で……、皆んな……」
半分泣いてるな。
……まあ、他人を想って涙を流せる奴は、良い奴だよ。嫌いじゃない。
「辛かっただろうになぁ、痛かっただろうになぁ……。私は、沈んだ私には、何も、何もしてやれなかった……」
背中でも撫でてやるか。
「……だから、な?もう、私の仲間には、嫌な思いをさせたくないんだ。皆んなが酷い目に遭うところ、私は見たくない。皆んなが辛い思いをするくらいなら」
「自分が、って?」
「ああ、そうだ。……もちろん、皆んなが強いことも、私を心配する人がいることも知っているさ。ただ、私が勝手に怖がって、勝手に皆んなの盾になっているんだ」
はーん?やっぱり、他人に何と言われようとも、自分の正しいと思うことをやるタイプか。
そう言うのはな、悪の組織で最も重要なんだ。
例え、他人に批判されても、法律で禁じられていようとも、自らの目的の為に戦う、それが悪ってもんだ。
「若葉ぁ?」
「む、何だろうか?」
「結婚してくれ」
「…………あ、あのなぁ、人が真面目な話を」
「いやぁ、もうあまりにも良い女だったから。……本当は、一番怖がってるの、自分が死ぬことでしょ?」
「……参った、お見通しか」
死ぬのが怖い、死んだ後、仲間が守れないのが怖い。でも、今いる仲間が傷付くのも怖いから、戦うしかない。そんなところか。
「凄いじゃないか、尊敬するよ。俺は逃げてばっかりだからな」
まあ、逃げられなくなったら戦うけど。
「そう、なのか?」
「ああ、だから、恐怖に立ち向かえる奴には敬意を払う。惚れた。……と言う訳で結婚しよう」
「む、むむむ……、そ、その、だな、私は音成鎮守府の仲間がいるから、中々会いに行けるか分からんし……、それにマゾで……、見た目は子供だし、賢い訳でもないし……」
あらら?モジモジし始めたぞ?乙女若葉。アリだな。
「関係ないさ」
かなり強めに抱き締める。大丈夫大丈夫、実は、艦娘にはマゾが多い。
そもそも、入渠すればあらゆる怪我が元通りになる存在だ、アイデンティティに悩むに決まっている。
その悩みは、大体、痛みは生きてる証拠だよ、みたいな結論に達するからな。戦っている間は、自分が自分らしくある一番の瞬間だと。
若葉もそうなんだろう。
自分が痛い思いをしている間は、仲間は無事で、自分の役割を果たしていると。
かわいそうだ、とは言わない。戦士への哀れみは侮辱だから。
でも、こうして若葉という女の子を可愛がるのは、まあ、セーフってことで。
……この後若葉は、俺の胸で泣いた後に、一緒に厨房から風呂から寝室までべったりだった。
いやー。
さでずむに目覚めそうだ。
「おっ、初春ー!一緒に寝よー!さー、ベットの上で組んず解れつ」
「ま、全く、わらわの様な童女に何を言う?!ま、まあ、秘め事は二人きりの時に、な?」
「あー!私もー!旅人さーん、隣で寝ても良いですか?」
「OKですわ、阿賀野ー!」
「うきゃー!嬉しいです結婚しましょー!!」
「おーおー、してやるしてやる!毎週結婚してやる!」
「なっ?!ま、まさか、お前は、そこらの女皆んなに結婚を申し込んだりしていないだろうな?!!」
「えっ、してるけど?」
「わ、わ、わ、私の乙女心っ!!!」
「はいはい、若葉にそんなものないでしょ?早く寝るよ、明日も仕事なんだから」
「酷いぞ初霜ぉ!!!」
若葉
見た目よりも大人。自分のことは自分でやるので手がかからない。実は料理もできるし、日曜大工も得意。その上、器もデカイし見た目もかわいいマゾ。マゾ。
初霜
こちらも、あまり手のかからない良い子。他人を守ることに生き甲斐を感じる。マゾではない。
冒険者
ヤバい。
旅人
女の子に声をかけるのはライフワークなので。