「そ、その、折角来ていただいたんですが……」
「え、ええ〜〜〜!!!」
「た、確かにこれだけの強さなら……」
「ご、ごめんなさい……。え、えっと、が、頑張って下さいね……?」
「は、はい……、大丈夫です……。それでは、失礼致しました……」
………………。
…………………………。
「ど、どうしよーーー!!!!」
あ、あ、あ、明日からっ!お仕事がっ!!無いっ!!!
「どうしようどうしようどうしよう!!!い、いっそ、そこのローソンでバイトするしか……、って駄目ー!勿論駄目ー!だって私は練習巡洋艦だもーん!あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
……そう、私は艦娘。
香取型練習巡洋艦二番艦、「鹿島」。
お仕事は、「艦娘を鍛えること」……。
……最初、私は、大本営で建造が得意な提督に召喚されたんです。
でも、練習巡洋艦ですから、全く期待されてなかったみたいで……。
……『フン、矢張り、「練習巡洋艦」か。大した性能は無いな。雑魚だ』
……お恥ずかしながら、この一言が頭にこびりついて……。
とっても、ショックでした。
その後は、そのまま近くの鎮守府に配属されまして。
そこで、何とか評価を覆そうと頑張ったんですよ?でも、単純な火力で勝る戦艦や、燃費の良い潜水艦とか、周りの皆んなには敵わなくって……。
練習してもらおうにも、皆んな、沢山戦ってばっかりで、そんな暇無くて……。
そして、遂には、鎮守府から追い出されちゃったんです。
丁度、数年前の今くらいの季節でしたっけ。
路頭に迷った私は、たった一人で彷徨っていました。お金も何も無い訳ですから、ただ、虚ろに、道に座り込むことしか出来なくて……。
その時の自分が、酷く無力で……。
やっぱり私は、役立たずなのかな、雑魚なのかな、とか、そんな暗いこと考え始めちゃって……。
そんな時、です。
私の人生を大きく変える、「出会い」がありまして……。
……『うう、もう、十日も碌に食べてません……。い、如何に艦娘と言っても、もう、限界です……』
そう、あの日、今日みたいな夏の日。燦々と光る太陽が、どうしようもないくらいに私の体力を奪って行って……。
あ、私、ここで、死んじゃうんだ、って。なんと無く分かっちゃって。でも、それが、たまらなく怖くて、悔しくて、それで……、寂しかった。
立つ事も出来ないくらい消耗していた私は、道端に座り込んだんです。
ここが死に場所だなんて、嫌だな、とか思いながら。
そしたら、
……『死に晒せェェェ!!!タスクマスターァァァァァ!!!!!』
……『煩いのである!!!死ぬのは貴様である!!!とっとと金を払って死ぬのであるッ!!!!!』
……えっと、この時は、二人のスピードが速過ぎて、何が何だか良く分からなかったんですけど……。
……『人が女抱いてる時にいきなり現れる奴があるか?!!!大体、旅人の俺が金持ってる訳ねーだろーがよぉ?!!』
……『キャバクラに入り浸っておいて金がないは通らないのである!!!無いなら無いで、ハラワタなり何なり売っ払って来るのである!!!!』
……『キャバクラじゃねえドリームクラブだぁぁぁぁぁ!!!!』
物凄い戦いだったのは分かりました。すぐ近くで戦いが起きてるのに、凄いなー、とか、なんとなく他人事に感じて、ボーッと見てたんですよ。すると……、
……『大体にしてお前からは十万ドルくらいしか……、ん?ありゃあ……』
……『いや、我輩の記憶だと十五万ドルは……、なんだ?』
……近付いて来たんです。二人が。
……『おいおい、大丈夫かい、お嬢さん?今時行き倒れなんて流行らないよ?』
白髪のカッコいい人と、
……『む、この女、中々にポテンシャルの高い肉体を持っているのである』
骸骨のマスクの人?だった……。
……『あ、ありがとうございます。ご馳走してもらっちゃって……』
白髪のカッコいい人……、旅人さん。彼は、近くの定食屋に私を連れて来ると、突然、「おばちゃん、メニュー全部!!君は何頼む?」と言い放って。
勿論、遠慮はしました。でも、隣で美味しそうに食事されると、我慢なんてとてもじゃないけど出来ませんでした。
……『いやあ、沢山食べる子は大好きだよー?そうだ、今度は俺の料理を食べて欲しいな!自慢じゃないが、並みのプロよりかは上手いんだよ?』
そう言って、今日の太陽みたいに笑う彼は、本当に眩しくて……。どうしようもないくらいに、私の心を奪ったんです……。
こんな風に、人間に優しくしてもらったのは生まれて初めてで。
なんてことはない、ちょっとした優しさの一つ一つが、嘘みたいに心に溶け込んでいって……。
思わず彼の胸で泣いてしまったけれど、彼は優しく受け止めてくれて……。
……『よしよし、泣きたい時には泣いた方が良い。抱え込むのは良くないからね』
……本当に、本当に、優しい人だった。
……多分、初恋、だったんだと思う。
我ながら、単純だなぁ、って思うけど。
……その後は、艦娘であることを伏せて、軍で教官のような仕事をしていたけれど、必要とされなくて、クビになった、と、簡単に説明しました。
ま、まあ、大体は合ってるし、良いんじゃないかなぁ……?なんて。
……『成る程ねぇ、クビになった、かー』
……『他人事じゃないのであるなー』
聞けば、この髑髏の人も、フリーの教官らしく、日本には休暇で来ていた、とか。
……『私、これからどうすれば良いんでしょうか……』
思わず、彼の優しさに甘えるように、聞いてしまっていた。
普通は、そこまで面倒を見きれない、と、突っぱねるだろう。けど、彼は……、
……『…………良し!じゃあ俺が解決してあげようじゃないか!オラッ、金だタスクマスター!!』
……『ム、十五万ドル、確かに……、それと、この三十万ドルはなんであるか?』
……『三ヶ月だ』
……『……ム?』
……『三ヶ月で、そこの鹿島ちゃんを日本一の教官にまで仕上げろッ!!!(諸経費込み)』
……『……フム、良いだろう!契約成立だッ!!!』
……『……えっ?……えー!!』
と、私の目の前で、私に関わる重要なことが決まりました。
私の許可無しで。
……『ちょ、ちょっと、その、私は』
……『ん?ああ、大丈夫。このおっさんは、三ヶ月もあれば幼稚園児を暗殺者にできるから。腕は確かだよ』
……『そ、それは一安心……、じゃなくって!!お金は……』
……『あー、立替えておくよ!いつか、返してね?』
……『で、でも……』
……『もちろん、踏み倒してもオッケーよ?』
……『三ヶ月で日本一となると、少々タイムスケジュールが厳しいであるな。さあ、早速修行である!!ついて来い鹿島!!』
……『あっ?!えっ?!!えっと、えっと、ええーーー?!!!』
……『それじゃ、またねー』
…………こうして、私の人生を変えた出会いは終わった。
この後、タスクマスターさんに日本一のお墨付きをもらった私は、各地の鎮守府を転々としながら、フリーの教官として、今の今まで生きてきた。
けど……。
「音成鎮守府、強過ぎだよぉ……」
最近は、鎮守府もめっきり減って、私の仕事はただでさえ少なかったのに!
あんなに強い鎮守府じゃ、私が教えることなんて何もないんだよなぁ……。
私はあくまで教官で、基礎までしか教えられないもの。自分の戦闘スタイルがキッチリと確立できている子には何も口出しできないんだもんなぁ。
「あー、どうしよ……。音成鎮守府さんが言うには、近くにある黒井鎮守府は更に強いって言うし……」
「行くだけ言ってみれば?」
「えー?行っても無駄ですよぉ……。あー、私は、ちょっとでも稼いで、あの人にお金を返して、皆んなの食い扶持を……」
「皆んな?結婚したの?」
「いえいえ、私、結婚するのは初恋の旅人さんと、って決めてます、か、ら…………?」
あれ?
ちょっと待って?
私、今、誰と話して…………?
「へえ、旅人さんって俺のこと?かわいいこと言ってくれるね、鹿島ちゃんは」
「………………あ」
「あ?」
「うわあああああああああ!!!!!!」
……多分、今日は、人生で一番大きな声を出した、と思う。
鹿島
フリーの教官として、日本各地を流離うキャリアウーマン。最近の鎮守府減少に伴い、仕事が激減して大変だった。
骸骨マスク
フォトグラフィック・リフレクシズと言う能力により、あらゆる武技をコピーし、それを他人に教え込む鬼教官。金にがめつい。
旅人
旅先で手にした様々な武技で戦う。武技版のゲートオブバビロンみたいな奴なので、見た技をコピーするタスクマスターとの相性は悪い。でも、仲はそんなに悪くない。