旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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黒井鎮守府の中でも特にブッ飛んでる白露型(隣の部屋は同じくブッ飛んでる睦月型)に引き渡される、改白露型の明日はどっちだ。

どうでもいいけど、白露型となると、一番パンツが美味しそうなのは江風ですね。



書けば書くほど評価が下がる、凄いssだよ。俺ももう何がウケて何がダメなのか分からんから好きにやります。


93話 雨と風

「さあ、着いたぞ!……おっといかん、決め台詞決め台詞、と。……ゴホン、黒井鎮守府へようこそ!!歓迎しよう!盛大にな!!」

 

「…………わぁ……!!」

 

大っきい。

 

あ、いや、提督(予定)も大きな人で、ちょっと怖いけど、そうじゃなくって。

 

……黒井鎮守府、すごく、大きなところ。

 

前に、私達がいた鎮守府とは比べ物にならないくらい。

 

「……なあ、何で、この、看板にさ、これ見よがしに『悪の組織黒井鎮守府』なんて書いてあるンだ……?」

 

「……そこだけは譲れないのだ」

 

「……はあ?」

 

……江風の疑問も最もだけど、そんなことよりもあたしは、この鎮守府の綺麗さが目についた。

 

あたしの知る鎮守府と言う施設は、もっと、こう、ジメジメしていて、嫌な感じがするところだった筈なのに。

 

門とか、塀とかも、艦娘を逃さないように、がっちりした、牢屋みたいな感じじゃないの?

 

ここは、全然違う。掃除が行き届いていて、門も塀も、上品で、嫌な感じのしない、お屋敷みたいな……、何というか、そんな風に見える。

 

「それじゃ、入って、どうぞ」

 

「……は、はい」

 

皆んな、おっかなびっくり、って感じ。もちろん、私も怖い。けど、海風も、江風も、手を握っていてくれるから。

 

前の鎮守府でも、嫌な思い、沢山したけど、仲間達皆んなで支え合って、乗り越えてきたもん。今回だって、きっと大丈夫。

 

 

 

……と、そう思っていたあたしが見たものは……、

 

 

 

「し・れ・い・か・ん❤︎春雨、輸送任務、完了致しましたぁ❤︎アハッ❤︎ちゃーんと、愚かな深海棲艦共に『死と絶望』を届けて参りましたよぉ❤︎」

 

「お、おう、頑張ったな」

 

 

 

……変わり果てた姉の姿だった……。

 

 

 

「そん、な……!!」

 

「春雨、姉さん……?」

 

「嘘、だ、姉貴が、あんな……!!」

 

血が……、血が、あんなに沢山!!

 

「春雨姉!!!」

 

「あら?……もしかして、山風ちゃん、かしら?」

 

「春雨姉、死んじゃやだよ!!折角、折角また会えたのに!!!」

 

やだ、やだ、やだ!!死なないで!死なないで!!

 

 

 

「ふぇ……?……あ、ああ!そのね、山風ちゃん?これはね、全部返り血なの!だから、大丈夫よ?」

 

「………………え?」

 

返り、血?

 

「ほら、これで、深海棲艦共の内臓を引き裂いて殺して来たの❤︎」

 

そう言って見せられたのは、血に塗れながらも、流星みたいな輝きを放つ、歪んだ二枚組の短刀だった。

 

「春雨、姉……?」

 

「?、何かしら?」

 

可愛らしい笑顔を見せる春雨姉は、確かに、どこも怪我をしているようには見えなかった。

 

でも……、

 

「司令官❤︎これ、見て?ぜーんぶ、深海棲艦共の心臓だよ?あんな醜い見た目なのに、心臓は綺麗だよね❤︎……まるで、宝石みたい……❤︎」

 

春雨姉さんは、どこか、怖い。

 

……あっ、そ、そんな、大切な姉さんを怖いだなんて……。あたし、疲れてるのかも。そうだ、きっと、今日はたまたま、たまたまだ。いつも姉さんが血塗れな訳じゃ、

 

「ただいま!帰投したよ、提督!一々首を持ってくるのは面倒だからね、頸椎を引き抜いて来たよ!多分、全部で百くらいかな?」

 

「殺した数、覚えてられないから、心臓を引き摺り出して来たっぽい!ひい、ふう、みい、よ……、沢山殺したっぽい!!」

 

「「「うきゃぁぁぁあああああ!!!!」」」

 

 

 

 

 

「あはははは、怖がらせちゃったみたいだね。ごめんよ?」

 

「大丈夫?びっくりさせてごめんね?」

 

「でも、そんなんじゃ、この先生き残れないっぽい?」

 

……あの後は、普通に、何事も無かったかのように、鎮守府の中へ通された。内装も綺麗だったし、所属している艦娘の皆んなも、幸せそうに見えたけど……?

 

今は、取り敢えず、時雨姉に案内されて、白露型の部屋に来た。

 

他の皆んなも、姉妹艦だったり、手の空いている艦娘だったりに案内されて、自室(予定)に向かったみたい。まあ、荷物、置かなきゃならないし。

 

「これからお昼だけど……、まだちょっと時間あるし、工房においでよ」

 

「……工房?」

 

何だろう?工房?何か、造ってるんだろうか?

 

「工房って言うのは、提督が僕達の為に作ってくれた施設なんだ。名前は工房だけど、用途は武器の整備と物置、かな」

 

「は、はあ……」

 

武器……。なんで、艦娘が格闘武器を持っているんだろうか。

 

「んー?何で刀なんて持ってるのか分からない、そんな顔をしているね?」

 

「えっ、あっ、ち、違くて……!」

 

いけない、失礼だったかな?

 

「ふふふ、良いんだよ。山風の疑問も最もだよね。……良いかい?僕達はね、艦娘なんだよ。艦でありながらも、人のカタチをして生まれてきたんだ」

 

「艦でありながら……」

 

「そう、艦でありながら、人のカタチをね。……だったら、艦の力と頑強さで、人の手足を振り回して、もっと言えば、武器を直接振り回すのって、おかしなことかな?」

 

「それは……」

 

……確かに、私達は、カタチは人だけど、力も装甲も、艦のそれだ。だったら、人の器用さで艦の力を振るうのはおかしくはないかもしれない。

 

「分かってくれたかな?……それじゃ、こっちだよ。工房は外なんだ」

 

「あ、うん……」

 

……正直、納得はできないけど、理解はした。

 

兎に角、その、工房に行ってみようと思う。時雨姉は、信用、できるから。

 

 

 

「…………すごい…………!」

 

物置、何て言うくらいだから、もっと無骨な建物を想像してたのに。工房は、すごくおしゃれな、西洋式の建物だった。……お隣の、近未来的なガレージも気になったけど。

 

「うわー!すっげー!!カッコイイ!!!」

 

江風が大騒ぎするのも無理ないよね。今回ばかりは。

 

「君達も、道具を持った方が良いよ?そこにあるの、どれでも好きに持って行って良いから」

 

「マジ?!やったぜ!!じゃあ私は……、これ、貰っちゃおっかな〜!」

 

撃鉄の付いた金槌を引っ張り出す江風。……金槌なのに、火薬の匂い……?どう言うこと?

 

「こ、こら、江風?姉さん達に迷惑かけちゃ……」

 

海風がそう言うのも当然だよね。江風は、ちょっと、流石に調子に乗りすぎ。

 

「あはは、良いんだよ。……提督に迷惑をかけない限りは」

 

…………そうだ、さっきから、何かおかしいと思ってた。時雨姉は、さっきからずっと笑ってるけど、でも、瞳の奥は、全然笑ってない。……どうして?

 

私達、何か悪いことしちゃった?

 

「?、ほら、海風も、山風も、遠慮しないで、道具を選んで?……一緒に提督の役に立とうじゃないか」

 

…………提督。時雨姉の瞳は、提督って言葉を口にする度に、黒く澱んで……。でも、提督って言葉を口にする度に、幸せそうに、本当に笑ってる。提督が、原因なの?あの人からは、嫌な感じがしなかったのに。……後で、話をしてみよう。

 

「ええと、じゃあ、私はこれを」

 

海風が、遠慮がちに目の前の武器を手に取る。……あれは、鉈?ノコギリ?……ちょっと、海風のセンスが分からないかも。

 

「さあ、山風も」

 

「う、うん」

 

えっと、あたしは……、どうしよう、まともな武器がない。どれも、嫌になるくらい禍々しい。ん?……斧、か。まあ、無いよね。絶対に呪われてるもん、アレ。怖いからやだ。

 

「……選びかねているなら、最初に目に付いたものを手に取ると良いよ。はい、どうぞ」

 

「………………えっ?」

 

あ、あれ?斧を押し付けられちゃった?

 

「白露型は直感に優れるからね。大体は、最初に目に付いたものが正解なのさ」

 

い、いや……、は、ハズレだと思うよ、時雨姉!!

 

「し、時雨姉?あ、あたしは」

 

「おっと、そろそろ昼食の時間だね。それじゃあ、渡した道具は肌身離さず持っておくんだよ。一週間もしないうちに、身体が艤装だと認識して、艤装と同じように消したり出したりできるようになるから」

 

「「はい!」」

 

「え、ええー?」

 

あ、あたし、この斧を持って歩くの?!ぶ、物騒過ぎるよ……。

 

 

 

……結局、断りきれずに、この物騒な斧を押し付けられちゃった……。でも、帯刀した人とか、戦鎚を持ち歩いている子とか、そんな子が沢山いて、幸いと言うかなんと言うか、目立ってはいない。

 

あっちの人も、西洋剣を帯刀して……?

 

……嘘、あれ、あの人って……?

 

「……ふむ、今日はめでたい日だ、少々お高い洋酒を開けるか。羽黒、お前もどうだ?」

 

「うーん、じゃあ、ちょっとだけ……。本当に、今日はおめでたい日だもんね」

 

……分かる。艦娘として備わった機能なのか、艦の頃に会った艦とか、姉妹艦とか、そう言うのは、なんとなく分かるんだ。

 

あの人は……、

 

「那智さん、羽黒さん!」

 

「む?お前は……、山風、か?!再び相見えるとは!いやあ、今日は実にめでたい!!」

 

「わぁ……!久しぶり、山風ちゃん!また、会えるなんて、司令官さんには感謝してもしきれません!!」

 

那智さんに抱き上げられる。嬉しい、な……。

 

……でも、めでたい日、って何だろう?

 

「んー?ああ、今日はな、私達妙高型の練度が90を超えてだな?」

 

「もう、少し。あともう少し……」

 

那智さんは、黒く澱んだ、でも、とても幸せそうな瞳。羽黒さんは、熱に浮かされるみたいに、狂ったかのように笑っている。

 

「練度?練度って、何……?」

 

……やっぱり、この艦隊は、どこかが……。

 

「……ああ、説明がまだだったのか?ふふふ、何、大丈夫だ、すぐにお前も幸せになれる」

 

「司令官さんから、首輪を貰わないとね……」

 

「今の時間帯なら、提督は食堂だろうね。さあ、早く、提督のモノになろうじゃないか……」

 

皆んな、自分の首にかかった首輪を愛おしそうに撫でてる……。

 

 

 

やっぱり、やっぱりこの艦隊は……、

 

 

 

どこか、おかしいよ……。

 




山風
極めて直感が鋭く、危機察知に関しては現段階でもトップクラス。黒井鎮守府の歪み(ヤンデレ)に気付くが、相手が最愛の姉や大切な身内の為、何も言えないでいる。

那智
やっと、妙高型の平均練度が90を超えた。

時雨
黒井鎮守府屈指のイかれっぷり。深海棲艦を殺し、旅人の役に立つことが生き甲斐。悪鬼羅刹の如く強い。

旅人
返り血塗れの白露型は流石にヤベーな、とは思っている。

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