旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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山風、堕ちそう。

まーたクソ忙しくてクソですわ。永遠に休みたい。


96話 病みにのまれよ!

「ここが、工廠……」

 

……何だか、思っていたのと大分違う。

 

良く分からない機械と、良く分からない機械がガチャガチャ動いて、なんか、大きなやつがぐるぐる回って、変なのが転がってる。

 

……なにこれ。

 

「うへ、うへへへへへ、ここを……、こうして……、こんな感じかしら、夕張ちゃーん!」

 

「うひひ、最高ですよ明石さーん!」

 

……うわぁ。

 

おかしいよ、あれ。あの人達、変。

 

「ん?……あら?これは、これは……」

 

「ふふ、可愛らしいお客さんですね」

 

ひっ、こ、こっち来た……?!

 

「こんにちは!この工廠に、何かご用ですか?」

 

「もしかして、武装の整備とかかな?良いよ、すぐに受け付けるから!」

 

あ、れ?

 

……うーん。

 

嫌な感じは、しない。ぽかぽかして、優しい人達。何となく分かる。

 

「よくぞ聞いてくれたっ!俺達は、この鎮守府の調査をんぐっ?!は、はちゅつき?!もごもご!!」

 

「い、いやあ!その、この鎮守府に来てまだ慣れないからな!色々と見て回っているんだ!」

 

早速、口を滑らせようとした嵐の口を塞いで、初月がフォローした。す、素早い。

 

「なるほど、見学ですか!良いですねー、私もまた、工場見学に行きましょうかねー?」

 

「あ、良いですね!そう言えば、今度、提督のコネで半導体製造工場の見学に行けるそうなんですよ!一緒にどうです?」

 

「えっ、良いんですか!嬉しいです!」

 

うーん、こうしていると、仲良しで、優しそうな人達なのに。

 

「ええと、その、質問しても良いですか?」

 

「あら?……えーっと、海風ちゃん、ね?海風ちゃん、何が聞きたいのかしら?」

 

「はい、えっと……」

 

「あら?……ふふふ、やっぱり、もう、分からないかしら?私は、こう見えても工作艦の明石なの!こっちは軽巡の夕張ちゃんよ」

 

……そうだ。何か違うと思ったら、この二人、分からないんだ。

 

普通は、艦娘なら、他の艦娘を見れば何となく名前とか艦種とか、そう言うのが分かるのに。

 

……どうしてだろう。

 

……そんなことを考えているうちに、皆んな、色んな質問をしている。

 

「ああ、うちの鎮守府はね、提督のコネとか、アイテムとかで色々と弄ってあるのよ」

 

「ワープ装置?ロボット?……ああ、あれは提督がくれたものを解析して、独自に開発したものです。沢山勉強して、提督の、皆んなのお役に立ちますからねー!」

 

……うーん、やっぱり、嫌な感じはしない。

 

むしろ、すごく、良い感じだ。あったかい感じ……、これは、多分、愛情なのかな。

 

「そ、その、二人は、好きな人が、いるの?」

 

「「もちろんです!私は、提督を愛しています!!」」

 

う、うん。

 

……また、提督、か。

 

「凄いんですよー、提督は!優しいし、カッコいいし、強いし……、何より研究用に資材をくれたりとか、私の趣味にも理解を示してくれるんですから!」

 

「機械は苦手、とか言いながら、十分な知識はありますしー、ちゃんと勉強してますし!ついつい熱中して長話をしちゃっても、ちゃんと聞いてくれて!」

 

は、はあ。

 

「ミスをしちゃっても、「なーに、失敗は成功のもとだろう?」とか言って、いっつも許してくれて!行き詰まっていると的確なアドバイスとか、息抜きにデートとか……、兎に角、気が利くんですよ!!」

 

「実験の時はちゃんと手伝ってくれて!成功したら沢山褒めてくれるんです!それだけじゃなくって……」

 

「わ、分かった、分かったから!」

 

初月も引いてる。

 

うーん、やっぱり、提督のこと、すっごく好きなんだろうな。それは分かる。

 

皆んな、提督が大好き。それだけ、なのかな。

 

あたしも、あの人は、嫌いじゃ、ない。訓練、ちゃんと見ててくれて、頑張ったねって、褒めてくれるし。

 

誰よりも、ぽかぽかする、優しい人。

 

できれば、ずっと、一緒にいたい……。

 

……もしかして、考えすぎ、なのかな?おかしいことなんて、何も、ないのかな。

 

「いやー、にしても、明石さんも夕張さんも、最初、誰だか分かんなかったぜ!艦娘の勘ってやつも、アテにならねーな!!」

 

……嵐、失礼。

 

でも、二人は、さっきと変わらない笑顔で答えた。

 

 

 

「ふふふ、仕方ないですよ!私はもう、明石ではありませんから!」

 

「もちろん、私も既に、夕張じゃないんです!」

 

 

 

………………え?

 

 

 

そう言って、艤装を見せてくる二人。

 

「ほら、これ、最新型の炉心なんですよ!スクリューも増設して、装甲なんて有澤重工の二枚重ねなんですよ!」

 

「私だって負けてません!リアクターはもちろん、ミサイルにレールガン、最近は有線ビット兵器にも着手し始めたんです!!」

 

「そんな……!!」

 

嘘、でしょ?

 

こんな、こんなの……!!

 

「お、おい!そんなに艤装に手を加えたら……!!」

 

「お、お前達はなんなんだ?!そこまで改造したら、もう……、艦娘ですらないじゃないか!!!」

 

「「……?、それの、何が問題ですか?」」

 

………………どうして?

 

どうして、笑っていられるの?

 

「この力があれば、提督のお役に立てるんですよ?」

 

「提督の為になら、どんな姿になっても構いません」

 

そんなのって……!

 

「だ、駄目、駄目だよ……!だって、そんなの……!」

 

「こんな姿になっても、提督は私の名前を呼んでくれるんです!!「明石、頑張ったね」って、「明石、かわいいよ」って!!!」

 

「だから、私達は艦娘なんです!もう艦娘じゃないけど、提督が呼んでくれますから!!提督が、私の名前を呼んでくれますから!!!」

 

ち、違う、違うよ……!

 

「そんなの、間違ってるよ……!」

 

「「………………どこが、ですか?」」

 

「や、やめなさい、山風!!」

 

海風、止めないで……!

 

だって、違うもん!

 

あの人は……!!

 

「提督は、ただ、皆んなと一緒にいたいだけだよ!そんな、無理して強くなることなんて、望んでないよ!!」

 

 

 

「「あはっ、あはははは!あはははははは!!!」」

 

 

 

なんで、笑って……?

 

「嫌ですね、山風ちゃん。……聞いてますよ。貴女、捨てられたんでしょう?」

 

「あ、たし、は……」

 

……『クズが!使えない、盾にもなれんのか?!』

 

……『使えない、雑魚め!役立たずのゴミだ、お前らは!!』

 

……『もううんざりだ!使えないクソガキ共め!とっとと出て行け!!消え失せろ!!』

 

「やだ、やだ、違う、違う……」

 

「弱い艦娘なんてね、要らないんですよ」

 

「そんな、こと、ないもん……」

 

違う、提督は、優しくて……!あたし達を、捨てたり、しない!

 

「ええ、ええ、もちろん、提督はそんな方ではありません、本当に、本当に、優しい方ですから……」

 

「どんなに使えない艦娘も、あの人は守ってくれますよ?大切に、大切に……。でも、そんな艦娘、必要あるかしら?」

 

「それ、は……」

 

「提督の足を引っ張るなんて、とてもとても……」

 

「戦うことしか能のない艦娘が、戦えないなんて、許させると思うかしら?」

 

弱いと、迷惑?

 

弱いと、提督が、困る……?

 

あたし、提督に、迷惑だって、思われてるのかな……。

 

「あ、あ、あたし、あたしは……」

 

「大丈夫ですよ」

 

あ、明石、さん……。あたしを、抱きしめて……。

 

……あったかい……。

 

「強くなれば良いんです」

 

「強く、なる……」

 

強くなれば、捨てられない?

 

強くなれば、提督の側にいられる?

 

強く、なれば……。

 

「強くなれば、提督からも、皆んなからも、必要とされますよ?絶対に、捨てられないんです」

 

「捨てられ、ない……?」

 

「ええ、使える道具は大切にされる……、当然でしょう?」

 

 

 

道具……。

 

あたし、は、道具……。

 

提督に、大切にしてもらえる、道具……。

 

 

 

「……そ、その!時間を割いてくれて、ありがとう!ぼ、僕達は、これで!!行くぞ山風!!」

 

「あっ……」

 

「あら?まだ大丈夫なのに……」

 

 

 

初月に引っ張られて、工廠の外に出た。

 

あたし、は……。

 

「や、山風、大丈夫か?」

 

「……うん、あたしは、平気……」

 

「……山風?貴女……」

 

「あたし、頑張る、から。提督の、道具として……」

 

「なっ……?!や、山風!正気に戻れ!あの人は、提督は、僕達を捨てたりなんかしない!!お前は、道具なんかじゃないんだ!!!」

 

「……でも」

 

「大丈夫よ、山風!大丈夫、大丈夫だから……」

 

海風姉……。

 

「……なんだか、山風の様子が変になっちまったな。この調子じゃ、今日はこれ以上探索できないな。……取り敢えず、部屋に戻って休もうぜ?」

 

「ああ、そうだな……」

 

……考えすぎ?いや、でも、あたしは……。

 

 

 

あたし、は……。

 




山風
SAN値激減。

旅人
鹿島とデート中。

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