視界に突然ウルトラマグナスが現れた。
巨大なキャリアカーが道路端から忽然と此方に向かって飛び出して来たのに驚き、反射的に握っていたアタッチメントのトリガーを引く。
同時にグリムロックの手に握られた二連装ロケットランチャーが放たれ、燃焼する推進剤の尾を引きながら現れた敵へ向けて飛んでいく。
しかし弾頭は途中で軌道を変え、目標を逸れ明後日の方向で爆発した。
「ちょこまかと!」
「いやぁ、相手がどうこうよりもセンスってやつかなぁ……」
会長がなにか言った気がするが、攻撃と前方の敵に気を取られてなんと言ったのか聞こえなかった。
弾頭が無くなり、隙だらけになったこちらに向かい突撃するつもりなのか、相手は加速しながら此方に向かってくる。
思わずトリガーを引くが、弾が切れたランチャーから『No Ammo』の返事が返される。
「おれグリムロック、負けないぞ!」
「お願いグリムロック、言うこと聞いて!」
柚子が回避しようとレバーを引こうとするがウンとも寸とも言わず、グリムロックは正面から受け止めるつもりなのかどっしりと腰を据えて両手を構え始める。
「おれグリムロック、戦士はたたかう!」
「そんなに勝負したければ遠慮無くいかせてもらうぞ!」
相手もその気なのか、一気に加速しそのまま此方めがけて突っ込んできた。
衝突した瞬間、とてつもない衝撃が操縦席を揺らした。
グリムロックは相手前方の車体部分をガッチリと握り込み、踏ん張りを効かせようとする。
だが、まったく重心が制御できずに足下の地面は衝突の衝撃で割れ、一気に吹き飛ばされん勢いで押し返されていた。
柚子が衝突の勢いで揺さぶられたために、咄嗟に受け止める動作ができなかったのだ。
するとウルトラマグナスが急停止した。
突進の勢いで凄まじい慣性が働いているグリムロックは操縦のサポートもなく、車体部分を掴んでいた手を離してしまい、ボディは勢いのまま宙を舞うが如く吹き飛んで、頭から家屋の塀や壁やらを巻き込んで突っ込んだ。
先程とは比べものにならない衝撃が、再び操縦席を襲う。
安全ベルトで固定されているからよかったが、付けていなかったら操縦席の中をきりもみしていたところだろう。
だが脳が思い切り揺さぶられたため、思わず頭を抑えて眉をひそめる。
「うぅ……」
「いててて……ああッ?! あたしの干し芋が……」
手元をなにやら探っていた会長が天井――― 今は上下で言えば床なのだが、天井を見ると干し芋の入ったジップロックの袋が無残に中身をぶちまけて転がっていた。
操縦席が逆さまになってしまっているので、私達は今宙づりの状態となっていたのだ。
「おれグリムロック、目がまわるぞ……」
「すぐに立て直します!」
柚子が頭をブンブンと振って再び集中し、レバーをガチャガチャと動かす。
だが、相手はそんな余裕を与えてくれるほど優しくはなかった。
ロケットランチャーが打ち込まれ、爆発。 そして間髪入れずにレーザーで狙ってきた。
「うーん……柚子。 動けそう?」
会長が渋い顔でコンソールを見ながら尋ねると、柚子は焦った様子で顔を横に振る。
「ダメです、爆発とレーザーの衝撃でまともに立てません」
柚子がレバーを引こうとするが、相手の攻撃が絶え間なく襲い掛かってきているからか、ガタガタと操縦室が揺れるとレバーが再び初期位置へと戻っていった。
「このままじゃあ体のいい的です! 何か手段は……」
「ないね!」
必死に天井の干し芋が入った袋へと手を伸ばしながら、会長はにべもなく答える。
諦めるのかと非難しようとすると、会長は私の考えをわかっているかのように続けて言う。
「たらればの話だけど、西住ちゃんが乗ったらできたかもね。 でもあたしらじゃ逆立ちしたって無理。 ちょっとこの子のこと甘く見過ぎた、確かにスッゴいスペック持ちだけど、こりゃあ私以上のじゃじゃ馬だよ」
「ど、どういうことなの?」
柚子が顔を真っ赤にし、両手でレバーを力一杯引きながら尋ねる。
「グリムロックはね、あたし達のこと嫌がってるんだよ。 グリムロックは優秀な戦士、でもそのプライドは実力と同じでとんでもなく高い。 初期のビースト系によくある問題点らしいね。 で、アタシ達はその能力の十分の一も引き出せてない。 だから嫌がられてるんだよ」
「そんな……」
思わず愕然とする。
嫌だから。
そんな理由で機械が反抗するのかと、酷く驚いた。
ビッグコンボイの言うとおり、今後の改善点だねぇと言いながら、攻撃の衝撃で浮き上がった干し芋の袋をキャッチする会長。
笑顔で中身を取り出して囓り付くが、内心その感情はどうなのだろうと、思わず考える。
あの約束はいつも頭をよぎって、焦っているに違いないのに、平然としていられる。
私には出来ないことだ。
会長は、芋を囓りながら少し考え込み、
「……おいグリムロック!」
「なんだアンズ! おれグリムロック、今いそがしい!」
グリムロックが声に反応したのを確認すると、干し芋を囓るのを止め、すぅと息を吸う。
そして、付けていたインカムに大声で怒鳴り散らし始めた!
「あのグリムロックがこんな弱いなんてガッカリだよ! そんなんで戦士? 笑っちゃうよね! 優秀とか言われるけど、実は一人だとなんにも出来なかったんじゃないの? 仲間のお零れでそんなに持ち上げられちゃってさ、可哀想だよねェ!」
インカムに向かって大声でまくし立てる会長。
あまりの剣幕に、私も柚子も思わず呆然とする。
「それともアレかな? バカには難しくってわかんないか!」
「おれグリムロック、バカいうヤツがバカ! チビのくせしてナマイキだ!」
「チビで結構だね、アンタは馬鹿でかい体して碌に無駄に頑丈なだけじゃん! ほんとに強いんならさぁ、見せてみなよ! アタシ達の下手な操縦でもやれるってところをさぁ!」
「おれグリムロック、イわれっぱなしシュミじゃない!」
すると、突然グリムロックの操縦桿が軽くなったのか、柚子が軽く引いただけで素直にレバーは動き出す。
そして、周囲のモニターやランプが一層激しく点滅し始めた。
会長はコンソールを見ながら、インカムの接続をカットしふぅとため息をつく。
「一気に火が付いたみたいだね……1年分ぐらいの大声出した……はぁ~」
「会長、お疲れ様です」
「後は私達の出番だな!」
そう言って、攻撃用のアタッチメントの操作を格闘戦用に切り替える。
アタッチメントを足下の収納棚に放り込み、格闘専用の操縦桿を握った。
既に柚子はグリムロックを素早く立ち上がらせ、相手めがけて突っ込んでいた。
操縦桿のスイッチを押し、思い切り引くと、グリムロックが何処からか何かを取り出した。
それは、大きな剣の柄だった。
両手でそれを握り込み、ウルトラマグナスめがけ切り込んだ。
すると、柄から凄まじいエネルギーが放出され始めた!
「――― 踏み込みが甘い!」
「クソッ!」
巨大なエネルギーの光――― エネルギーブレードはウルトラマグナスの装甲を焼き切りかけたが、相手が咄嗟に半歩退いたため、相手のもっていた銃の銃身部分だけを両断した。
思わず毒づき、再びレバーを思い切り引き倒す。
それに対し、相手は先の無くなった銃を此方に放り投げた。短くなった銃は、さっきの攻撃で炉の部分を破壊してしまったのか、派手に光を放って爆発した。
強烈な光でカメラが真っ白に白飛びしたが、グリムロックは怯むこと無く剣を振り下ろす。
その瞬間、レバー越しに強い抵抗感を感じた。
「貰ったぞ!」
抵抗に逆らうようにレバーを引く。
剣は最初はゆっくり切り込み、後は一気に振り抜く。
振り抜いた数秒後にはカメラが復旧し、視界に色が戻ると、相手の長い肩部分が肩口付近にまで切り飛ばされているのが確認できた。
足下には切り落とされた肩パーツとロケットランチャーが弾ごと転がっており、相手は苦しげな顔をして肩の部分を抑えている。
あれ? 以外と私、接近戦はイケるかもしれない?
「よーし、上等上等……いい感じだね。 ――― ん?」
満足げに笑っていた会長が、突然インカムのスピーカー部分を抑えた。
そして、一層笑みを深くして、
「時間稼ぎしゅーりょー!」
作戦の最終段階への移行を告げた。
「Eチームまだ残ってる!」
沙織さんが嬉しそうな様子で報告し、操縦席の皆は思わず笑みを浮かべた。
あの後、グリムロックの直ぐ近くまで近づき戦闘が起こっていることに気がついた私達は、物陰に隠れ攻撃の準備をしていたのだ。
「いけるかもしれませんよ! 私達!」
「うん……でも油断は禁物だよ」
優花里さんの歓喜に対して、頭を冷やしてから答える。
なにせ最後に残ってしまったのが相手の大将格、何が起こっても不思議はない。
優香里さんに状況を確認してもらうと、ロディマスは先程の作戦で結構なダメージが残っているようである。
「接近してもこっちは役に立てそうにありません。 射撃で援護しましょう」
「わかりました」
華さんがアタッチメントを構えて、トリガーを引こうとする。
だが、いくら経っても腕を上下左右に動かすだけで一向に撃つ気配を見せない。
不審に思い、尋ねてみる。
「どうかしましたか?」
「グリムロックが射線に入ってきて……撃つタイミングがありません」
華さんの言い分に、私も外部カメラのバイザーを付けると、グリムロックは大剣を振り回して相手に張り付き続けており、一向に射線を開ける気配は無かった。
沙織さんに指示し、射線を開けるに連絡してもらう。
だが、いくら経ってもグリムロックは此方に背を向け剣を振り回し続けた。
「一体何が……」
「ふふふ……イケるッ!! イケるぞォ!!」
「おれグリムロック、このままタオすぞ!」
「ちょっと桃ちゃん?! もう攻撃はいいから!」
「ええい動くな! 真っ二つにしてやる!」
「……駄目だこりゃ!……あっ」
次の瞬間、ウルトラマグナスは、剣を振り下ろしたグリムロックの腕を片手で上から押さえ込んだ。
重心を剣と共に一気に前のめりにしていたグリムロックは、そのまま腕と共に空いていた手で肩も押さえ込まれ、あっけなく地面に倒れ伏した。
そして手首を外側へと捻り込まれ、握力を失った手からブレードをいとも簡単に奪い取られてしまった。
「焦ったが、ここまでにしてもらうぞ!」
「おれグリムロック……くやしいぞ……」
そしてウルトラマグナスはエネルギーブレードを逆手に持ち、そのままグリムロックの胴体部分に差し込んだ。
短い呻き声が聞こえたかと思うと、グリムロックは背中からフラッグが飛び出させた。
「……」
めまぐるしく起こった展開に、思わず誰も何も言えなかった。
だが直ぐに冷静になり、華さんに射撃指示をだす。
呆然としていた華さんも我を取り戻したようにトリガーを引き、攻撃を始めた。
だが、相手はまるで攻撃を予測していたように、すぐさま建物の間の小道へ逃げ込む。
こちらは射線が通らず、相手は手軽な獲物を失う、硬直状態に突入した。
「どうしましょう、強気に攻めてみますか?」
「うーん……相手のロケットランチャーの残弾がどれぐらい余ってるかかな。 剣はグリムロックを刺したままになってるから安全として、もし弾が2発以上残ってたら道の狭さで避けられずに爆風に巻き込まれてリタイアです」
優花里さんの提案も確かだが、このまま悠長に待っていても相手が手を打ってくるはず。
そうしたらロディマスが初撃を耐えられる可能性はとても低いと言わざるをえないだろう。
「優花里さん、ロディマスの各パーツの損傷度はどのくらいですか?」
「ええと……装甲は大分削られちゃってますけど、関節周辺と脚部は無事です」
「みほ、何か考えがあるなら早めに言ってくれ。 奴さんそろそろ仕掛けて来そうだぞ」
ロディマスが急かすなか、なんとか考えをまとめる。
足回りは健在でこっちの武装は射撃中心、対して相手は遠距離武器がロケットランチャーが片方に残っていると仮定して、家屋を盾に狭い道に逃げ込んでいる、
――― やっぱり賭けにしかならないなぁ。
でも、勝ち目があるならやってみる。
「家屋の上を進んで行きましょう」
「え、屋根の上ですか?」
「はい、無理矢理接近戦に持ち込みます」
恐らく、相手が一番恐れているのは残り少ないロケットランチャーの弾を無駄撃ちすることだ。
相手の攻撃手は相当焦っているだろうし、それはウルトラマグナス本人も同様だろう。
そして、相手もグリムロックと戦ったときに受けたダメージもそれなりに大きい。
対してこちらは、遠距離武器なら豊富だが一発どころか爆風すら危うい状態だが、相手に攻撃を当てることが出来れば十二分に勝ちを狙える火力はある。
この勝負を決めるのは、相手に先に攻撃を当てた方になる。
一撃を避けられても、当てられても負ける。
そのぐらいのつもりで行かなければならない。
「よぉし、じゃあ行とするか! 行くぞ麻子!」
「うん」
麻子さんの操縦に合わせて一気に正面の家屋に飛び乗ると、およそ車一台分以上の質量がかかって屋根がミシリと音を立てた。
足場が崩れる前に、次の家から家へと屋根の上を駆ける。
最悪足場ごと崩れ落ちてリタイアなどという可能性が今更ながら思い浮かんでゾッとする。
だが、そんな不安を尻目に麻子さんはロディマスを器用に操り相手に向かっていく。
そしてついに敵がいる通りにまで迫った。
「華さん!」
「任せてください!」
華さんがぐっとアタッチメントを握って構える。
そしてそのまま相手のいる通りへと飛び込んだ!
「相手はッ?!」
「左です! 十時……」
華さんが銃を撃とうと構えた。
だが、ここで予想外の事態が起こっていた。
なんと既に相手は此方に向かってロケットランチャーを既に撃っていた!
読まれていたのか、それとも音で屋根越しにやってくると咄嗟に判断されたか。
いや、問題はそんなところではない。
通常、ウルトラマグナスのロケットランチャーの最大発射数は二発である。
これは両肩に取り付けられているランチャーの最大装填数が片側で一つずつ。これを両方同時に発射した場合に二発同時の最大火力となるのだ。
だが、今は片側が切り落とされて一発しか撃つことはできない。
そして、接敵されている状況で再装填などといった悠長な事はできないのは自明である。
つまり、相手は読んだ、察したという理由だけでたった一発の虎の子を、偏差射撃してきたのだ。
そしてなにより、その読みと博打は見事成功し、此方は空中を自由落下しているところを狙われている。
このままの弾道では直撃することを避けられないことだろう。
撃ち落とせるか―――。
万事休す、そう思ったそのときである。
「――― !」
咄嗟に麻子さんがレバーを素早く操り、フットペダルを蹴り込むと、ロディマスが銃を放り投げ、足が連動して動き出す。
そして、空いた手でロディマスが家屋の屋根を掴み、ぐっと腰を捻り込む、そしてそのまま飛んできている相手のロケットを、
「な――― ?!」
「え――― ?」
蹴り返した、
爆発寸前の弾頭を、相手側に蹴り返したのだ!
これは後でわかったことだが、この曲芸じみた技にはある偶然が絡んでいた。
ウルトラマグナスのロケットは近接信管式ではなく、爆発タイミングが着弾の瞬間である瞬発信管であり、弾頭に信管が備えられていたことと、誘導式ではない所謂撃ちっ放しのロケットであったことだ。
ミサイルを蹴り返した瞬間、ロディマスの爪先は弾の弾底側面部分を蹴っていた。
この時、コンマ数秒の間だが、爆破に誤差が生まれた。
爆破の瞬間はほぼ同時であったが、そのほんの一瞬、側面を蹴り抜かれたロケットは空中で半回転し、推進力が最大になっていた弾は無理矢理軌道を修正され、ほんの少しだけ、相手側へと飛んだのだ―――
そして、弾頭は丁度私達と相手のど真ん中で弾け飛んだ。
一気に視界が明るくなったかと思ったときには、凄まじい衝撃と爆音が操縦席を襲った。
上下左右めちゃくちゃに振り回されて、三半規管は滅茶苦茶にされ方向感覚を失う。
その後も数回、大きな衝撃が走ったかと思うと途端に振動は収まり、あっという間に何事もなかったかのように静まりかえった。
盛大に頭が揺さぶられたため、少し気分が悪くなった。
酷く耳鳴りがして、頭を抑える。
いや、そんなことよりも大切な事を確認しなくては、
「皆さん……大丈夫ですか?」
もしもの事がないかと、すぐに点呼確認をする。
すると、ぽつりぽつりとだが返答が来た。
「秋山ぁ、大丈夫です……」
「五十鈴も、なんともありません……」
「う、うえぇ……私も、なんとか……」
「……大丈夫だ」
全員の安全を確認し、胸をなで下ろす。
次に、ロディマスの状況だ。
「優花里さん、こんな状況ですけどロディマスはどうですか?」
「あ、はい…………」
優花里さんが、ふらふらと目を回しながらコンソールを確認する。
ふっと、その表情が曇ったのがわかった。
「……リタイア判定、確認しました。 ロディマスはスリープモードに入ったみたいですね。 カメラも止まってしまって相手がどうなったかはわかりません」
優花里さんの報告が来たそのとき、沙織さんがインカムのスピーカーを抑えた。
そして、眉をひそめて、
「今、審判側から連絡きた……リタイア判定、ほぼ同時だったけど、タッチの差で相手側の勝ち……だって」
気まずそうに言う沙織さん。
「わかりました……皆さん、お疲れ様でした。 ここまでみたいです」
皆に終わりを告げるが、酷く疲れ切ったのか、誰も何も言わなかった。
「とんでもない新人が現れたモノね……」
機能停止に追い込まれたウルトラマグナスのコックピット内で独り言ちる。
最後の最後で、まさかあんな捨て身の作戦にでてくるとは、正直驚いた。
最後の攻撃を蹴り返してきたのもそうだが、なによりなりふり構わず飛び込んでくるあの度胸は、私には出来ないやり方だ。
通常、あの状況で武器が制限されていれば、恐らく屋根越しに攻撃を仕掛けてくるというのは考える人は多いだろう。
だが、それはあくまで考えるだけである。
実際にやるというのは無謀や蛮勇といったものだ。
屋根越しに移動しようというのは、基本空を飛ぶ能力があってやることである。陸上を走るトランスフォーマーで行おうとするのは勇気と相応の技術いる。
なにより相手はほぼ初心者。
手元が狂えば無様に転げ落ちる危険性は十二分にありえたはず。いや、殆どの者はここまで操縦しきることはできないだろう。
少なくとも、我が校でも初心者でそれが出来そうな操縦手はいないだろう。
だって、誰もやろうとしないもの。
すると、通信席で目を回していたペコが起き出した。
「いてて……あ、皆さん大丈夫ですか」
「あら、今頃起きたの? 皆無事よ。 あと、勿論勝ったから安心なさい」
「そうですか……はぁ……よかったぁ」
無事と結果を報告すると、安心したのかぐったりとシートに体を預けて脱力した。
最後の奇襲。
恐らくペコがいなかったらマトモに食らってこっちがリタイアしていたかも知れない。
攻撃手はプレッシャーで完全に視野狭窄一歩手前になっていたし、私も先程言ったように奇襲について考えてはいたが確信を持てずにいた。
そんな時、外部スピーカーにただひたすらに耳を傾けていたペコが、異常な位置の音源と接近速度、距離感を報告してきたのだ。
咄嗟に私は攻撃手に指示を出して、一発しかなかったロケットをペコが予測した位置とタイミングで打ち込んだ。
いくら焦っていたといっても、流石私と共に三年も訓練してきただけあり、攻撃手の子は命令すればあとは慣れた手つきでやってくれた。
思い返せば親善試合としては上々、濃密な内容だった。
此方の強みも、弱みも、改めて理解させられた。
ほぼ実戦が始めての学校相手にだ。
開始前にみた、相手側の代表の顔が思い浮かぶ。
確か名前が、
「西住みほ……あの西住流の……合わないはずだわ」
「……どうかしましたか?」
「ペコ、戻ったら彼女達に茶器を差し上げて。 いい物をね?」
そう言い残して、私も目を閉じ、シートに身を預けた。
彼女達は今年の全国区には出場するのだろうかと、ふと思った。
出場するとしたら今年の大会、面白いことになりそうだ。
期待に胸踊らせながら、軽く眠りに就いた。
解説! TF図鑑
【グリムロック】 出典・戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー
強い!絶対に強い!そんな安心感のあるサイバトロン屈指の強者で、恐竜にトランスフォームするダイノボットのリーダーである。
ティラノサウルスへと変形するが、放映の時と今の研究では、ティラノサウルスの姿は違うとされており、のび太の恐竜に出ていたような尻尾が地面についているタイプのデザインである。
特筆すべき点は、なんと言ってもその強さ。サイバトロニアンの偉大な生みの親、ウルトラコンピュータ『ベクターシグマ』を介していないため知能は低いが、その圧倒的パワーはそれと引き替えにしても十二分な程に強力である。だが力が圧倒的な分、強い者を重視しており、弱いトランスフォーマーや人間を見下しているところがある。
知能が低いと記述はしたが、玩具設定のテックスペックに於いては知力は7であり、そこまで馬鹿と言うわけではない。続編の2010ではとある機会に際し、凄まじい知性を持っていたことが発覚し、一人で演算容量無限大の合体戦士コンピューティコン・テックボット部隊を即興で作り上げた。