ガールズ&トランスフォーマー   作:ヘキサショット

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第六話 親善試合

「というわけで、聖グロリアーナ女学園との親善試合を組むことになった。皆、心して準備するように」

「ちょっと唐突すぎない?!」

「聖グロリアーナってどんな学校だっけ?」

「超が十個付くぐらいのお嬢様学校」

 

 いつものようにTF道の訓練を始めるために集まった私達だったが、いつものというか、相も変わらず突然の報告に面食らう一同。

 そしていつも通りに生徒会長―――最近やっと生徒会の人達の名前を知ったが、角谷さんとい言うらしい。角谷さんは気楽そうな風体で芋けんぴをポリポリ齧っている。

 

「ねぇねぇ、聖グロリアーナ女学園ってTF道としてはどんな感じなの?」

「端的に言って強豪ですね。 全体の連携もさることながら個人個人の操縦技術を高い水準で維持する努力を怠らない、バランスのいいチームと言えます」

 

 まぁ実戦のビデオや関連雑誌からの受け売りですがと、最後に断りを入れる優花里さん。

 優花里さんが言うように、確かあの学校は中々に優れた操作テクニックを持っていたはず。

 決定的な打撃力に乏しい面はあるが、代わりに少数であっても確実な結果を残すことができる厄介さを持つといった印象だ。

 

「この後、各チームのリーダーを集めてミーティングを行う。 リーダーは生徒会室に集まるように、以上」

 

 片眼鏡――― 河嶋さんというらしい。その河嶋さんがいつものように終わりのあいさつをすると、みんな思い思いに散らばって行く。

 前回の訓練の後、なんだかんだで分隊長の役割に据えられた私は、指示通りに生徒会室へ足を運ぶ。

 その後は予定通り作戦会議はつつがなく進んだ。

 河嶋さんがホワイトボードに張り付けた地図とその書き込みを、手で示しながら説明する。

 余程自信があるプランのようで、説明に力が入っているのが目に見えた。

 だが、その内容に私は少し思うところがあった。

 

「……と、このように閉所に誘い込みつつ、私達は高所であるこの地点に陣取って敵を待ち伏せする」

「……あの、ちょっといいですか?」

「ん、どうした西住」

「その……」

「取りあえず言ってみなって」

 

 角谷さんからの押しもあり、思ったことを口にする。

 

「その作戦だと、航空機型のトランスフォーマーに対しての警戒が薄いんじゃないかと……うちには飛行できるトランスフォーマーはいませんし、閉所だと最悪一方的に……」

「お前は私の立てたプランじゃ不満だというのか?」

「え、いや……」

「作戦に文句があるなら、お前が隊長をやれッ!」

 

 責めるように威圧する河嶋さんに、思わず口ごもる。

 思わず目線を下げてしまうが、更にそれが河嶋さんの癪に障ったらしく、更に追求される。

 このまま気まずい問答が続けられると思われたが、見かねたのか角谷さんが助け船を出す。

 

「まぁまぁその辺にしときなって、桃ちゃん」

「桃ちゃん言うなッ!」

 

 桃ちゃんという呼び方にコンプレックスでも持っているのか、逆鱗に触れたようで烈火の如く怒り出す河嶋さん。一喝すると、途端に頭が冷えたのか一つ咳払いをして冷静になる。

 角谷さんは静かになった河嶋さんから視線を私に移し、

 

「でも、確かに隊長は西住ちゃんがいいかもね」

「はぁ……え?」

 

 とんでもないことを言い出した。

 突飛も無いことに思わず辞退しますの一言がでてこず、動揺する私にたたみ掛けるように角谷さんは話しを進める。

 

「そんじゃ、西住ちゃんがウチのチームの指揮をとって!」

 

 そういうと、パチパチと拍手をする。同じく生徒会室に集まっていた他の分隊長の皆もそれにつられて拍手をし、事実上リーダーになることを容認されてしまった。

 

「もちろん、勝ったらいいモンあげるからさ! 干し芋3日分! どうよ!」

 

 笑顔で提案するのに対して私の口からは愛想笑いが出ていたが、恐らくその景品をもらって喜ぶのはこのメンバーの中で貴方だけだろうという言葉をぐっとこらえた。

 すると、横で話しを聞いていたバレー部のキャプテン(予定であるらしい)の磯部さんが質問する。

 

「ついで、負けたときはどうなるんです?」

「ん? ん~そうだなぁ……納涼祭であんこう踊り踊ってもらう?」

「えっ?!」

「あ、あのあんこう踊りをですか……」

 

 角谷さんの提案を聞いた途端に、なぜだか生徒会室の部屋の気温が1~2度は下がったかのような錯覚を覚えた。

 皆は顔を引きつらせており、河嶋さんも小山さんもまるで歯医者に行くと親に告げられた子どものような顔をする。

 

「んじゃ、皆親善試合に向けてガンバルゾー!」

 

 一人元気な角谷さんが笑顔で拳を振り上げた。

 

 

 

 

 

 早朝、冷たい海風が頬を撫でる。

 学園艦の朝はいつもだが、朝の底冷えが酷い。夜中にタイマー付きのエアコンで部屋をある程度暖めていないと恐らく十中八九風邪をひきそうなほどだ。

 そろそろ夏本番ということもあり、昼間には日本特有の夏の湿気や海からの照り返しなどもあってなかなかの暑さになるが、朝の海風はどうにも寒くていけない。

 夜の湿気と温度の対処に頭を悩ませながら、学校の倉庫へと歩をすすめる。

 朝早くと言うこともあって、校庭は朝霧と異様なほどの静けさに包まれており、昼間の賑やかな光景とのギャップからなんだか不思議な気分になる。

 早くロディマスを出してしまおうと校門へと向かうと、校門の入口に髪をキチンと切りそろえておかっぱにしている風紀委員の人が立っていた。

 相手もこちらが目に入ったようで、キチン姿勢を正して挨拶をしてくる。

 

「おはよう、貴女たちも大変ね」

「おはようございます。 毎朝頑張ってる風紀員さん程じゃありませんよ」

「……確かにね。 冷泉さんがもっとシャンとしてくれれば、私ももっと気楽でいられるんだけどね……今はそんなことどうでもいいか。 今日は試合なんでしょ?」

「はい、聖グロリアーナと」

「ふうん……TF道とかは私にはよくわからないけど、頑張ってね」

 

 素っ気ない様子で言い残して、再び風紀員らしくキチリとした姿勢になる。

 彼女なりに気を浸かってくれているのだろうと、内心感謝しながら校門を後にする。

 その足で倉庫へと向かうと、既にいくつかのチームが集まってパートナーのトランスフォーマー達と話していた。

 

「おや、ニシズミ隊長。 今日はよろしくね」

 

 ホイストが手を振って挨拶して来たので、軽く手を振って返すと、周りにいたバレーボール部の皆もぺこりと頭を下げて挨拶をしてくる。

 運動部らしく、大きくハッキリとした声に少し驚きながらまた挨拶を返す。

 

「隊長、今日は勝ちましょう!」

「あんこう踊りは絶対避けましょうね……」

 

 明るい様子の典子さんとは対照的に、他三人は若干引きつった笑みを浮かべている。

 昨日から気になっていたが、そこまで酷い物なのだろうかと、今更ながら不安になってくる。

 試しにホイストに尋ねてみると、

 

「……昔アレを見たことあるけど、少なくとも一生忘れられない思い出になると思うよ」

 

 言い淀みながら答えた。聞かなかった方が良かったと若干後悔する。

 昨日、沙織さん達にも聞いてみてはいたが、やはり相当アレな行事らしい。

 すると、話しを聞いていたのかマイスターが横から話しかけてくる。

 どうやら一年組はまだ来てないらしく、暇をもてあましていたらしい。

 

「いやぁ、そんなに気を揉む事も無いさ。 案外ノれるいい曲だよ」

「それを言えるのは少なくとも君だけ思うな……」

「アレを踊ったら少なくとも高校生活の間はずっと笑いのネタにされますよぉ……」

 

 音楽好きで知られるマイスターは務めて明るく言うが、ホイストとバレー部の近藤さんがそれを引き気味に否定する。

 恐らく彼女の言うとおりなら、節目節目に思い出されては笑いのネタ扱いにされる一番酷いタイプのモノなのだろう。

 

「おいおい。 お喋りするのは構わないが、早く行かなきゃならないんじゃないのか?」

 

 すると、倉庫の奥でチャーやグリムロックと話していたロディマスが催促してきた。

 時計を見ると、予定の時間までもう少しといったことに気がつく。

 話しているのに気を取られて完全に失念してしまっていた。

 

「いやぁグリムロックを抑えてたんだが、やっぱりいくら話しても無駄だな」

「おれグリムロック、早く戦いたい!」

「やめんかバカ! その元気は試合までとっとかんかい」

『す、凄い馬鹿力だぞコイツ!』

「あははは! いいぞ~やれやれ!」

「会長、笑ってないでなんとかしてください!」

 

 狭い倉庫の中で尻尾を振り回そうとするグリムロックを歴女チームの皆が乗り込んだチャーでなんとか押さえ込んでおり、それを会長が笑って見ていた。

 関わらないのが吉とみて、ロディマスはさっさとトランスフォームし、私もそれに乗り込む。

 

「よし、ぶっ飛ばすぞ!」

「危ない運転しないでくださいよ……?」

「分かってるって、行くぞ!」

 

 口ではそういうロディマスだが、私が触れる前にギアが一気にガガッと音を立て1速に叩き込まれ、アクセルが勝手に踏み込まれる。

 エンジンが盛大に音ながら一気に回転数を上げると、一気に車体が加速し倉庫を飛び出す。

 そのまま校庭の砂利を盛大に巻き上がらせながら校庭を突っ切り校門へと突入、先程会った風紀委員の人の横をドリフトしながら通り抜ける。

 

「こらーっ、危ないでしょお! まったくやっぱりアイツの知り合いに碌なのいないじゃない!」

 

 そんな声が聞こえた気がしたが、そんなことはつゆ知らずといった様子でロディマスはエンジンを噴かして一気に走り抜けた。

 そのまま朝の静けさを台無しにするような爆音をたてながら暴走同然に目的地へと向かう途中、華さんと優花里を迎えに行く。華さんに操縦を変わってもらう頃には、ある程度走って満足したのか操縦をこちらに譲渡して安全運転に切り替わった。

 そのまま華さんの安全第一の運転で目的地……麻子さんの家へと向かう。

 一軒家の平屋の麻子さんの家に到着すると、どうやらまだ起床に苦戦しているらしく沙織さんが布団を引きはがしている所だった。

 

「華さん、思い切りエンジンを噴かしてください」

「いいんですか?」

「近所の皆さんも珍しく早起きできる機会だと思えば大丈夫です」

 

 華さんがアクセルを踏み込むと、フロントのホットロッドエンジンの回転数が一気に上昇し、エグゾーストパイプとエンジンからけたたましい音が鳴り響く。

 周囲の民家からは何事かと表に人が集まってきたので、軽く謝罪をしてエンジンを止める。

 企み通り、あまりの五月蠅さに麻子さんも観念したようで、寝間着の姿のままだが荷物を持ちながら家から出てきた。

 そのまま沙織さんと麻子さんを乗せ、副操縦席で麻子さんの支度をさせながら寄港の際の乗り降りのための大型駐車場へと乗り入れる。

 何十分かロディマスに載せたカーラジオを聞きながら揺られていると、ようやく寄港先の大洗町へと到着し、他の車の流れに任せてロディマスを降船させる。

 他のチームの皆も上手く下りられたようで、一列に並びながら船から降りる。

 すると、いつもであれば青空が見られるはずの場所が何かに被われていた。

 よく見ればそれは、聖グロリアーナ女学園を擁する学園艦であった。

 大洗女子の物との大きさの違いに圧倒されながら、親善試合の会場へと向かう。

 大洗町の住宅地を横断しようとすると、町の人たちが物珍しそうにトランスフォーマー達を見物しに来ていた。

 

「おぉ、ホットロディマスだ!」

「グリムロックにマイスターもいるぞ!」

「なんだか久しぶりだなぁ……この感じ」

「最後はもう20年も前になるのかの」

「ホイスト! ホイストじゃない!」

「……ああっ?! もしかして杏子くんかい! いやぁ随分美人になったじゃないか!」

「ロディマスやぁ、この年寄りのこと覚えとるかい?」

「忘れるもんか、機械イジリが好きだった花山! まだまだ元気そうで安心したぞ!」

「おれグリムロック、ずいぶんかわったけど、大洗なつかしいぞ」

 

 周囲からの暖かい声援に囲まれながら、ロディマス達トランスフォーマーが地域に深く根付いていることに操縦者の皆は驚きを禁じ得なかった。

 しばらく声援に囲まれながら進んでいくと、競技会場付近になるにつれて人が少なくなっていく。

 静かになった途端に、不思議と緊張が皆を包み始めた。

 会場に到着すると、すでに聖グロリアーナの人たちが到着しており、トランスフォーマーの簡易検査を行っていた。

 一台のトランスフォーマーらしき車両が近づいてきて、私達の前を塞ぐように停車した。

 青と白を基調とした大型のキャリアカーで、連結されている荷台横には赤い弾頭の大型ロケットが備え付けられている。

 

「大洗、全車両停止してください」

 

 そう一声かけて車両を停止させるとキャリアカーの扉が開き、中から人が降りてきた。

 赤い競技用ジャケットに身を包み、透き通るような碧眼に整えられた美しい金髪の女子生徒――― 資料で見た事がある、聖グロリアーナ女子学園のリーダー、通称ダージリンその人だ。

 河嶋さんが降りて事情を聞こうとすると、こちらが話しかけるやいなや、

 

「用事があるのは私ではありません。 こちらのトランスフォーマー、ウルトラマグナスの方ですわ」

「久しぶりだな、ロディマス」

 

 キャリアカーが変形した。

 荷台部分が変形し、前方の車両部分を包み込むように外装がスライドする。

 あっという間に上部の土台部分が腕に、下部が足になり、ロボットモードに変形した。

 

「ウルトラマグナス! いやぁ懐かしい顔が揃ってるじゃないか!」

「お前さんもTF道に参加してたんじゃな」

「ウルトラマグナス、おれグリムロック、会えてうれしいぞ」

 

 口々にこちらのトランスフォーマーも親しげにウルトラマグナスと話し出す。

 

『なぁ隊長、トランスフォーマーって大体知り合いなのか?』

「長寿ですからね、多くのトランスフォーマー同士は皆お互いの事を知ってますよ」

 

 通信越しに松本さん(エルヴィン)の質問に答えると、何やら嬉しそうな笑い声がした。

 歴史好きとは話しから聞いて(といっても見た目からでもなんとなく想像は付くのだが)いたが、最近はトランスフォーマーに関しても熱心に学んでいるらしい。

 

 久しぶりの再会を喜び合う皆。

 そんな中、ダージリンさんが何か考える様な顔をしてこちらを見ている事に気がついた。

 こちらの視線に気がついたのか、顔に笑みを浮かべる。

 彼女の容姿もあるが、所々に見られる所作の雅やかな雰囲気も相まって非常にさまになっており、心なしか見とれてしまう。

 こちらのメンバーで彼女に近いのは華さんぐらいだろうか。

 彼女も言葉尻や動作の一つ一つが品がある。といっても、ダージリンさんの方はまさに淑女といったモノで有り、華さんの場合は大和撫子といった部類であるが。

 

「……どうかしたか」

「いや、なんでもありません」

 

 ロディマス達はもう会話を十分したようで、試合準備に入ろうとしている。

 ウルトラマグナスは姿勢を下げて私達の方をみると、笑顔をむけてきて、

 

「初めまして、君たちがロディマス達のパートナーだね? 私はウルトラマグナス、見ての通り彼らとは無駄に長い腐れ縁さ」

「いいか、そいつの人の良さに騙されるなよ。 そんな紳士ぶった物腰して俺の知り合いの中じゃなかなかのやばい奴だぞ」

「うるさいぞロディマス! 少なくとも暴走行為で免許停止処分を受けたお前に言われたくは無いな」

「あぁそんなこともあったの……ワシも長いこと生きとるが免停食らったトランスフォーマーはお前だけじゃったよ」

『トランスフォーマーって免許取ってたんだ……』

『ええ、ありますよ。 政府発行のヤツが、といっても国際A級ライセンスぐらいのレベルですけどね』

『凄いのか凄くないのかよく分からないですね』

「うるさいぞ! 走るのは俺の人生なんだ、少しくらい羽目を外してもいいだろ?!」

 

 そんなことをしている内に、集合前の合図が鳴り響く。

 ウルトラマグナスは聖グロリアーナの一団の方へと向き直ると、トランスフォームする前に、私達に向けて話しかける。

 

「昔の仲間だとしても、今日は私達が勝たせてもらう」

「いやぁどうかなマグナス。 なかなか筋がいい奴らだよウチは」

「そうか……手加減はしないからな」

 

 そう言い残すと、キャリアカーにトランスフォームし、ダージリンが乗り込ませると自分たちの仲間の下へ向かっていった。

 

 

 

「それでは、聖グロリアーナ女学園と大洗女子学園の親善試合を行います! 双方、礼!」

『よろしくお願いします!』

 

 聖グロリアーナ女子学園との戦いが、遂に始まる。




解説! TF図鑑

【チャー】 出典・戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー2010

 浅葱色のボディをしたフューチャーカーに変形するトランスフォーマー。
 体のあちこちには傷や溶けた跡が残されており、一見すると只の古いトランスフォーマーに見えるが、その傷跡は多くの戦場を駆けた証である。経験に裏付けされた実力と長年生きてきたの知恵から多くのトランスフォーマーからの信頼を寄せられている。昔話好きでよく若い頃の話をするが、話が長いのが難点で若いサイバトロンからは避けられており、真面目に聞くのは戦いの話が好きなダイノボットぐらいである。
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