「……できるかしら?」
『無茶言うな。 オレ一応か弱い航空機で通ってんだぜ? まぁ一応出来ないことも無いと思うが……あと、大洗の連中だが、あのまま道なりに進んでいった』
「報告ありがとう。 あと、やりたいようにやってみなさい。 貴方と貴方のパートナー達ならできるわ」
『信頼痛み入るよ、じゃあ指示通りに』
エアレイドの通信が切断され、一先ず憂いはなくなる。
――― 目の前の岩石の山を除いてではあるが。
「う、動けない……」
「早くこの岩をどけてくれないか……エネルゴンが口から出てきそうだ」
「あんまりガタガタ騒ぐな。 大丈夫今どけてやる」
無残な光景に思わずため息をつきたくなるが、らしくないと思いぐっとこらえる。
ウルトラマグナスが岩石を退けている間に、今後どうするか考えることにしよう。
すると、察したのかペコがさっと地図を広げ、現在地に印を付ける。
ペコに礼を言いながら地図を確認し、エアレイドの情報と統合して現在地から道なりに進んだとする。 その先には大洗町の居住区が広がっていた。
「厄介な所に籠もられましたね」
ペコが苦い顔をして呟く。
彼女が言うように、確かに難儀な所に入られたものである。
まず、彼女達大洗女子のテリトリーに完全に入り込まれたのはかなりの痛手だ。
地元の地理を熟知しているという利点を惜しみなく使ってくる事だろうし、なにより最後のグリムロックを用いた大胆な作戦。
あの無謀とも言える手段に、私は少し興味を持った。
前半の手堅くも使い古された囮戦術とは違い、まるで発案者が変わったかのような方向性。
一歩間違えればグリムロックだけが取り残され貴重な戦力を失うだけという可能性もあっただろうに。
――― 久しぶりに面白い相手になるかもしれない。
「何を笑ってらっしゃるんですか?」
「……訂正するわ。 今日の紅茶は意外なアクセントが効いてたのね」
「はぁ……」
相変らず察しの悪いペコはさておき、ここからは少し静観といこう。
高揚した気分のままこの熱をぶつけてしまうのも悪くは無いが、これもまたよろしくない。
戦いの熱は気分を良くさせるが、引き替えに機を見逃してしまう危険性も孕んでいるからだ。
今はウルトラマグナスが地上部隊を回収して再び相まみえる事になったときまでに、彼女達が聖グロリアーナの航空部隊相手にどう相手取るのか、紅茶を飲みながらじっくりと見極めさせていただくとしよう。
不思議と、頬が緩むのを押さえられなかった。
『取りあえずルクリリ達と協同して絨毯爆撃でもしましょうか?』
「……野蛮だなぁ。 もっと楽しめよぉ! この景色とかをさ!」
『非効率的ですね。 第一今は競技中、何を景色なんて楽しんでいるんですか』
「そりゃあ、あれだよ。 こう、口では言えないもんさ!」
『理解できません』
攻撃手アッサムのありがたぁい提言をなんとか却下し、一先ず安堵した。
彼女には色々足りていない気がする。余裕や感性を養う努力とかが。
先程アッサムに言ったように、俺は高高度から大洗の町を一望しながら得も言われぬ充実感を感じていた。
昔から高いところから町並とかを観察する事が好きで、暇があれば許可を得て飛行制限ギリギリまで高く飛び、空から色々な所を見てきた。
何気ない町も、貴重な観光資源がある場所も、俺にとっては新鮮に思えたからだ。
空から見ると、ほんの小さな点にしか見えないモノ一つ一つに生活があると思うと、途方もなく充実した気分になれる。
ダージリンやペコ、ルクリリあたりは理解してくれるのだが、どうにもアッサムやあの暴走娘――― なんといったか……まぁ気にする程でも無いか。
とにかくあの辺りの感動や情緒といったモノから程遠い奴らはどうにもわかり合える気がしない。
暴走娘はとにかく飛ばしてやれば喜ぶが。
そんな事を思っていると、ダメージチェックから復帰したパワーグライドがようやく追いついてきた。
かなりの速度で一気に近づいてきたかと思うと、一気に機首を上げて急減速すると、ゆっくりと機首をさげて速度を俺と同期させた。
相変らず推進力を二台の大型ターボファンエンジンに頼っている割に、よくもまぁ器用に飛ぶものだ。
「おーいエアレイド! そっちはどうするんだい?」
「アッサム嬢は空からの爆撃がお好みらしい。 俺はあんまり乗り気じゃないんだが」
「いやぁそれはよくない! そんなんじゃこのパワーグライド様とパイロット皆の凄さを観客にみせられないからね!」
「よし、じゃあダージリンの指示通りに各個撃破で行くか。 しくじるなよ?」
「まぁかせなさいって! 行くよ皆!」
そういうと、パワーグライドは一気に機首を下げて大洗の町へと向かっていった。
アッサムが不満げにため息を漏らすが、まぁ今回は俺の提案で行かせてもらおう。
――― 始めてペコを乗せた時、どうして感性が合わないのに、俺の攻撃手の席はアッサムしか乗せていないのかと聞かれた事がある。
確かにその通りで、彼女の効率重視の考えは好きではないし、おそらくあっちも俺の趣味を理解するのは難しいだろう。
だが、ただハッキリと言えることがある。
それは彼女は戦いのパートナーとしての相性ならバッチリだと、お互いに確信していることだ。
大洗町はTF道の会場となったため、近隣住民の退去を行ったので町の中は今は異様なほど静かだ。
猫の声すら聞こえない静けさの中、小道の一角に一台のトランスフォーマーが忍んでいた。
住宅の植え込みと高さのある建物の影に隠れ、そのトランスフォーマー……チャーは上空を警戒していた。
そんなチャーの副操縦席の内部では、歴女チーム総出での作戦会議が催されていた。
「んー……チャーのパワーはそれほど高くない。 でも火力でゴリ押せないと逃げ回る内にこっちがやられるぜよ」
「だが私達の操縦技術では歯が立たないのは、先刻の撃ち合いでもわかった……どうしたものか」
「大洗は我々の庭のようなものだ。 必ず勝ちの目はある」
「エルヴィンの言うとおりだな。 チャーの武装はマスケットガンと塩酸弾。 これでなにかできないものか……」
手詰まり感に思わず歯噛みする。
こんなことならクレー射撃でも習っておくべきだったか。
私―――
理由は、私が弓道をやっているという理由と自分からの立候補であった。的を狙うという事のコツや撃つものであるから多分きっとなんとかなるんじゃないかということからの攻撃手であったが、これが想像以上に、まぁ当然のことながら大苦戦。
弓道も狙って射るものだが、ここまで激しく動きながら射ることはまずないし、流鏑馬などいったものもしたことはない。
結局の所、練習と参考にするノウハウが決定的に足りていなかったのだ。
好きな戦国時代の戦術なども単機では殆ど役に立つことが無い用兵の術ばかり。
まぁ、門外漢といわれてしまえばそれまでなのだが、こうも力になれていないとどうにも申し訳なさでいっぱいになる。
「んん? あれは……」
チャーが視点を上に向けると、付けていたバイザー内の視点もそれに追随して表示される。
視線の先は太陽が眩しく照っており、光度の関係から白飛びしてしまっている。
次の瞬間、チャーが叫ぶ。
「おりょう、小道に逃げ込むんじゃ!」
「応!」
おりょうがロボット操縦用の操縦桿の片方を思い切り引き倒し、足下のペダルを踏み込む。
連動してチャーがより狭い小道に入り込むと、先程までいた地点にレーザーが着弾し、アスファルトを砕き、溶かす。
再び空を見上げると、太陽の光の中に黒点が紛れているのが確認できた。
黒い点は次第に大きくなっており、急接近していることを理解する。
「あれは……赤いトランスフォーマー! エルヴィン、誰だ!?」
「赤い攻撃機……パワーグライドだ!」
赤い攻撃機パワーグライドは地面に対して殆ど垂直に近い形で急降下してきており、そのまま此方に突っ込んでくる勢いだ。
「いくぞチャー! パワーグライド様のお通りだ!」
そのまま相手はレーザーを連射しながら機首を此方に向け始め、エルヴィンがとっさに指示を出す。
「おりょう! 横にと飛べ!」
おりょうが咄嗟にレバーを倒すとチャーの体が横に飛びすさり、操縦席に凄まじい遠心力がかかる。
カエサルがチャーのコンディションを表示するパネルを見ながら声を上げる
「あまり無茶させるな、チャーといえども関節がイカれたらどうしようもない!」
「注文が多いぜよ!」
チャーの横をレーザーが掃射し、機首を上げたパワーグライドはそのまま此方に背を向け飛びすさっていって、あっという間に見えなくなる。
エルヴィンがホッと息をつき、指示を出す。
「今のうちに何処かへ隠れるぞ、飛ぶ相手に構っていられな……」
「いんや、パワーグライドの早さはそんなことさせてくれんよ。 ホレ見ろ」
チャーの視線の先には、既に此方に機首を向けるパワーグライドがいた。
一息つけるかと思ったのも束の間、想像以上の早さで此方に向かってくる。
「オレっちの早さに酔いしれなっ!」
パワーグライドのレーザーが降り注ぎ、数発被弾する。
チャーが呻き声を上げるが、彼の耐久性ならまだまだ耐えることができるだろう。
だがこのままだとリタイアするのも時間の問題だった。
「このままやられるか!」
バイザー内のロックオンサイトを相手の機影に合わせ、トリガーを数回引き絞る。
チャーのマスケットガンから光線が相手に放たれ、光線は相対速度も合わさり凄まじい速度でパワーグライドに襲い掛かった。
だが、すんでのところで相手は機体を捻らせた。そのまま光線を避けクルリと一回転し同高度に復帰する。
「そんな攻撃じゃあこのパワーグライド様を落とすなんて100年はやいよ!」
余裕の言葉を投げかけながらチャーの真上を通過し、相手は再び此方の射程距離外へと飛び去っていく。
今のうちと、おりょうがチャーの身を背の高い建物の影に逃がしたが、思わずエルヴィンは歯噛みする。
「くっ……このまま嬲られてたまるか!」
「かと言ってどうする。 相手の方が技術も速度も上、しかも空を飛ぶ」
カエサルが冷静に状況を判断する。
確かにその通りであった。
少なくとも経験はあちらの方が多く、なおかつこちらは経験が足りていない。
更に私の技術では空を飛ぶ素早い相手の体に攻撃を当てるだけの技量はない。
あまりにも一方的な構図である。
「でも、このままやられたままは悔しいぜよ……」
おりょうが操縦桿を握りしめて呟いた。
その言葉に私は思わず、おりょうから顔を背ける。
実際に戦っているチャーを除けば、この中で一番負担がかかっているのは操縦手のおりょうである。逐一素早い相手の行動に合わせねばならないし、加えて一方的な状況は彼女への凄まじい心的負担となっているのは想像に難くない。
私が攻撃を当てることができさえすればこの閉塞感から脱却できるかもしれないが、その自信も力もないのは明らかだった。当たったとしても、それは数撃てば当たるの偶然から生み出されたものであり、しかもその一発を当てるのにどれほどの攻撃を相手から受けるだろうか。
情けなさに思わず唇を噛む。
「隠れたってすぐに見つけ出してやるからな~!」
再び飛来してきたパワーグライドだが、こちらが身を隠したことが幸いして捕捉しそこねたようだ。
だがエルヴィンは焦った様子で地図を睨み付けた。
「だが、この手は二度もつかえないぞ。 最初の奇襲の時のように高高度から探されたら丸見えだ」
「八方塞がりか……」
思わず弱音が口を突いて出る。
それを聞いていたのか、チャーが怒鳴りつける。
「何を諦めとるんじゃ、ワシは諦めとらんぞ!」
「チャー、今の私にやれと言われてできるような実力はない」
「馬鹿いっとる暇があったら撃たんか! パワーグライドは早さこそ凄まじいがそこまで頑丈なトランスフォーマーじゃないんじゃぞ!」
チャーの一言を聞いて、カエサルが唇に指を当てて何か考え始める。
そして、一つの提案を投げかけた。
「……無茶だ。 チャーにどれだけ被害が」
「いいや、それで行くとしよう」
「チャー! 私は仲間を痛めつける趣味はないぞ!」
エルヴィンが却下しかけるが、チャーがそれを遮って賛成の意を示した。
当然ながら私もエルヴィン同様に納得できず反対する。
だがチャーは既に乗り気であり、マスケットガンをゆっくりと構え始めていた。
「ワシを信じんか。 ふざけてグリムロックに噛まれたときの方が余程痛いだろうよ。 それともなにか、お前達は相手に舐められたままでいいとでも言うのか? TF道であってもそんなのワシはご免じゃよ。 ここでハッキリ言っておくがの、この程度でうろたえるような奴をパートナーにするのはこっちから願い下げじゃ」
「……石頭の爺めッ! 腹を決めたぞッ!」
エルヴィンが帽子の鍔をつまみ、深く被り直す。
おりょうは無言で操縦桿を握りしめて集中し始め、カエサルは目をパネルに釘付けにした。
私は攻撃手用のデバイスを握り、チャーへ声をかける。
「……その気概、確かに買ったぞ」
「おぅ。 お前さんも気張るんじゃぞ」
少しすると、高度から索敵をしていたパワーグライドがやってきた。
相手も此方を発見したようで、一気に高度を下げ始めた。
そして、予定通りにおりょうがチャーを操縦する。
「――― おいおいチャー! 自滅する気かい?!」
チャーは大通りに仁王立ちのように立ちはだかる。態々相手の目の前に身を曝け出したのだ。
パワーグライドは動揺はしつつも、高度を住宅の屋根の上ギリギリを維持したまま此方に迫ってくる。
「そっちがその気なら、こっちは容赦しないよ!」
「やれるもんならやってみるんじゃな!」
パワーグライドが熱線を連射し、そのまま真っ直ぐチャーに襲い掛かる。
だが、チャーは避けることをしなかった。
正面から受け続けているのだ。
「このままリタイアしてもらうよ!」
「……まだまだッ! もっと撃ってこんかい!」
「チャーの胴体ダメージ蓄積値、4割を超えたぞ!」
カエサルの焦りを含んだ報告が操縦席の緊張感をより一層高めさせた。
あちらの攻撃は止まらない。
「ルクリリ! このまま押し通してくれ!」
「まだじゃ……まだ……」
チャーは銃を構えたまま微動だにしない。
攻撃用のバイザーの視点から伝わるあまりの圧力に、思わず引き金を引いてしまいたくなる。
だが、それはしてはいけないことだった。
おりょうが、チャーが一番それをしたいのだ。
一番抵抗したいであろう二人が堪え忍んだ後の逆転のチャンスを、私が託されているのだ。
「ダメだッ! 機首を上げちゃいけな―――」
「――― 今ッ!」
パワーグライドが機首を上げた瞬間。
そこが決定的なチャンスだった。
機首を上げるためにフロップが上げられたパワーグライドの速度は、微々たるものだが減速する。
そして、機首を上げたために、機体下部の部分が此方に一瞬だが曝け出された。
正面からだと面積の小さい的だが、この瞬間と真上を通過するときだけこの的は最大限大きくなる。
あとは、ここを狙うだけ。
否、狙うのではない。
絶対に当てるのだ。
バイザーのサイトが、チャーが体を張って稼いでくれた距離と、圧力に屈した相手が無防備にも曝け出したことによって最大限に大きな的となった両翼を捉えた。
トリガーを、二回だけ引いた。
正確には、それだけしかチャンスがなかった。
それ程の短時間の間しかなかったが、マスケットガンから放たれた塩酸弾がパワーグライドの両翼を穿った。
「バ、バランスがッ?! 翼が溶けて……」
「翼がなけりゃあお前さんは只の脆いトランスフォーマーじゃよ、パワーグライド」
「うわぁあああああッ!!」
溶けたことによって脆くなった両翼は、風圧と揚力によって一気にもぎ取られ、バランスをとる両翼を一気に失ったパワーグライドは勢いを殺せず真上をすっ飛んでいく。
そのまま住宅地を数件派手に破壊しながら突っ込む。
崩れた住宅から凄まじい砂埃が巻き上がった。
そのまま油断せず、銃を砂埃に向けたままにする。
次第に舞い上がっていた埃が晴れていく。
ようやく視線が通ったときに見えたものは、無残にも両翼を失い、勢いよく建築物に突っ込んだことでリタイア判定の端をつき出したパワーグライドの姿だった。
「――― いっよしッ!」
「や、やった……やったのか?」
緊張感から解放されたのか、ガッツポーズを取るエルヴィン。
カエサルは実感を感じないのか呆けている。
おりょうは、操縦桿を握ったまま頬に冷や汗を流しながら震えていた。
「…………死ぬかとおもったぜよ」
「私もだ……」
頬に笑みを浮かべるながら言うおりょうの言葉に同意し、攻撃用のデバイスをぎゅうと握る。
恐怖とか突っ込んでくる相手の圧力からの怯えとか、そういうものは完全に霧散してしまっていた。
ただただ、嬉しかった。
皆とチャーで、協力して勝ったことが。
嬉しかった。
「勝って兜のなんとやらってねッ!」
「――― なっ」
突然、大きな衝撃と共に、バイザーの視界に何かが下から飛び出してきた。
おりょうも同じ物を見たようで、驚いた声を上げる。
「何……? 胴体へのダメージ九割突破……リタイア?」
「カエサル、何を言ってるんだ? 一体何が―――」
いきなり起こった出来事に、エルヴィンもカエサルも動揺する。
画面に現れた物を良く見てみる。
橙色をした長く細長い何か。
それは、剣だった。
自然と、何が起こったのか理解した。
「剣だ……チャーが……後ろから刺されたんだ」
「そんな……こんな、なんで……」
おりょうが途切れ途切れに呟く。
ズルリと剣が抜かれたのか、剣が視界から消える。
すると、ダメージが一定以上を超えたチャーに行動制限がかかり、一気にチャーが崩れ落ちた。
外部の近距離用集音マイクから拾った音を流すスピーカーから、聞き覚えの無い声が聞こえてきた。
「体張ってパワーグライドを堕としたのはお見事だったが、ちょっと油断しすぎたな」
チャーが視線を相手に向ける。
黒を基調とし所々に橙色の塗装を施した、細身のトランスフォーマー。
その右手には大きな剣が握られており、紫色と茶色の液体がべったり付着していた。
「パワーグライドの奴は囮だった。 お前らが上ばっか気にしてる間に地上を走って近づいて、油断した所を後ろからグサッと、な」
まさかパワーグライドの奴を落とすとは予想外だったけどと、相手は呟いたが私達の誰もそれを碌に聞いていなかった。
「ま、及第点ギリギリってとこかな。 もっと訓練してから出直して来な」
そう言うと、黒のトランスフォーマーはエイリアンジェットに変形して飛び去っていった。
残された私達の間に、重苦しい静寂が満ちる。
チャーは、スリープモードに入ったのか、何も答えてくれない。
「……チクショウ」
少しして、おりょうが呟いた。
その一言だけで、私達の思いを全て代弁していた。
エルヴィンも、カエサルも何も言わない。
ただ、俯いたままだった。
「……絶対、見返す」
口から呻くようなか細さで、私の率直な思いを告げる。
今までなんとなくだった。
カエサルやエルヴィンに誘われるままに、TF道を選択した。
だが、たった今変わった。
こんな短い間だったが、チャーや皆と確かに一緒になって戦っていたのだ。
それはとても、充実していた。
このメンバーで、皆で勝ちたい。 そう思った。
そして、確かに勝ったのだ。
ほんの一瞬だが、相手を倒して、勝利した。
だが、私達は手のひらで踊らされていて、挙げ句相手に『及第点ギリギリ』と評されたのだ。
――― 悔しすぎるじゃないか。
目に涙が溜まり、零さないように上を向いてぐっと奥歯を噛みしめる。
「今度は絶対勝つッ!」
私の言葉に、親友達は黙って頷いてくれた。
解説! TF図鑑
【パワーグライド】 出典・戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー
赤いA-10へと変形するトランスフォーマー。武器は振動爆弾と熱線ビーム。
初期サイバトロンにとっての貴重な航空戦力で、その素早さと器用な飛行技術でデストロンを相手取った。お調子者で、よく空飛ぶ自身の姿を見せびらかすが、それは自身の才能を仲間に評価して欲しいためである。
トランスフォーマーとしては恋多き人で、セイバートロン星にはムーンレーサーという恋人がいたり、地球人の女性に恋をしたことがある。