とある科学の黄昏勇気   作:たらりあ

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第三話

 

 

 御坂達と離れて手持ちぶさたになった勇気は研究所に戻ろうとしていたのだが...

(どうも辺りがおかしい...。)

 まだ夕方の6時位なのに人が全くいない。今日は休日なのだから、もっと人がいてもいいはずだ。

(あいつの手を借りるのは癪だが...。)

 勇気は携帯を取り出し、ある人物に電話をかけた。相手は勿論...

「よーーぉ勇気ちゃーーん!寂しくなったのかなぁーん?」

 勇気は声に殺気を込め、

「木原。急ぎの用だ。第七学区で不自然に人がいないところをサーチしろ。」

「あぁ?ったく、ちょっと待ってろ。」

 少しの間キーボードの音が耳に入り、

「お前の近くに学生寮があるだろ?そこから半径約10メートルにわたって無人になっているぜ。」

「つまり。」

「あぁ。」

「「そこが鍵だ。」」

「分かった。ありがとよ、木原。」

「おい。」

「あぁ?」

「門限は俺の気分で勝手に変えた。また追って連絡する。」

「ハッ、そうかよ。そりゃどーも。」

 勇気は携帯を仕舞い、第七学区へと向かった。

ーーが、いつまで経っても到着しない。勇気はまるで迷路に迷ったような気分になる。勇気は一旦歩みを止め、深い思索の渦に入った。

(木原の言った通りあの学生寮から半径10メートルの中に入れない。つまり陸上からあそこに到達する手段はない。なら空からは?仮に『無人の円』が球形でなく円形ならば、三次元的な移動は防げないはずだ。そうと決まったら...)

 勇気は自身にかかる重力をほぼ0にして空中に浮き、分子の動きで突風を起こすことで、空高く飛翔した。高度30メートルを飛んだところ、あの学生寮に近づくことができた。勇気は学生寮の真上で止まり、

「はっ!!!」

 と大声を出したところ何者かが叫ぶのが聞こえた。そう、勇気はただ大声を出したのでは無く、『音に質量を持たせ』ていたのだ。勇気は不気味に笑い、

「そ こ か。」

 その言葉と同時に勇気は何者かがいる廊下に着陸。そこで勇気が目にしたのは、

「...ッ!」

 血塗れで横たわるシスターのような少女と、彼女を庇うように立つウニ頭の男、そしてその二人に膝をつきながら対峙する赤髪で長身の男。その赤髪の男が勇気に尋ねてきた。

「君は何故『人払い』の影響を受けていないんだ!?」

「あぁ、あれ『人払い』って言うの?まぁそんなのどーでもいいだろ。そんなことよりも俺はさぁこの状況の説明が欲しいんだよね。ウニ頭の君、何か知ってるかい?」

 ウニ頭の青年はその問いかけに答える。

「簡単に言うぞ。一つ目はそこの女の子があいつに狙われてるってこと。もう一つはそいつが『魔術師』ってことだ!」

 勇気は彼が真面目に言っているのは分かった。しかしその言葉を容易には信じられなかった。

(は?魔術師?そんなのいるわけねーだろ。)

 しかし現場の状況がそれを真実だと肯定していた。

(魔術師、ね...。)

「僕を無視するなんて随分余裕だね!ーー灰は灰にーー塵は塵にーー吸血殺しの紅十字!」

 その言葉と同時にトランプのような物から炎が吹き出てくる。勇気は目を見張りながらも、

「甘いぜ!」

 と言って勇気の前方の酸素の質量を増加させた。すると勇気の前方の空気から酸素が無くなり、炎は消失した。

「今度は俺のターンだぜ。」

 勇気は足で地面を蹴り飛ばす。その時に作用反作用の法則を操作し、亜音速で赤髪の男に接近した。

「な、なんだと!?」

「吹き飛べ、雑魚が。」

 勇気は突風を起こして赤髪の男を吹き飛ばした。

 

「ふぅ。んで、君は見たところ敵意は無さそうだけど、その子をどうするつもりだ?」

「どうって...そりゃ病院にーー」

「無理だな。その出血量じゃあ着く前には死ぬぜ。」

「じゃ...じゃあ、どうすればいいんだよ!」

 勇気はしばらく熟考し、

「悪いがそこのシスター、人を癒す魔術というのはあるのかい?」

「お、おい!怪我人に喋らせるなよ!」

 その言葉を聞くと、勇気は彼の胸ぐらを掴み、

「一時の苦しみを味わうことと死ぬこと、どっちをお前は選ぶ?」

 彼はそれを聞いて言い返そうとしたが、

「いいの、当麻...。うん、回復魔術はあるんだよ。でもね、あなた達二人には使えないの。」

「な、何でだよ!?」

「基本的に魔術は才能の無い人のためのものなの。あなた達みたいに才能ある人には使え無いんだよ。」

「で、でも俺はレベル0だから...。」

「関係無いんだよ。能力開発を受けた時点でその人は魔術師とは回路が変わってしまうんだよ。もしあなた達が魔術を使ったら、死に至る可能性もあるんだよ。」

「くそッ、じゃあどうすれば...。」

「......。」

 シスターは苦しさを隠そうとしながら言う。

「あなた達二人には本当に感謝してるんだよ。だからーー」

「いぃや、まだ終わってない。」

 それを勇気は遮る。

「この街の全員が能力開発をしているわけじゃ無いだろ?そう、大人だよ。あいつらは魔術を使えるはずだ。えーと、当麻、だっけか?心当たりはないか?」

 当麻は少し考え閃いたのか、ハッとした顔になり、

「小萌先生...!」

「教師か。妥当なところだな。だけど当麻、そいつの家はこっから近いのか?」

「あぁ、かなり近いぜ。歩いてすぐだ。」

 勇気は少し考える素振りをし、

「成る程。じゃあ当麻はシスターを抱えてくれ。そして俺が能力で空を飛べば一瞬で着く。」

 当麻は少し遠慮がちに、

「すまない。俺の右手には幻想殺し(イマジンブレイカー)ていう能力があって、それが異能なら神の奇跡だろうが打ち消してしまうんだよ。」

「それの効果範囲は?」

「右手首から先だけだ。」

 勇気は不気味に笑い、

「なら大丈夫だろ。俺が当麻を脇に抱えればいい。ただしーー」

 勇気は悪魔のような笑顔で当麻に、

「絶対俺に右手で触んなよ。」

 

ーー小萌の住むアパートーー

 そこには顔が真っ青な上に息が荒い当麻がいた。

「よし。何事も無く到着したな。」

「あれぇ?あれぇーーー!?上条さんは完全スルーでせうか!?」

「大丈夫だ当麻。気分が悪いだけだろ。俺達忙しいから、うん。さっさと行くぞ。」

 そう言って彼らは小萌の部屋へと向かう。

「ここだ。」

 当麻がインターホンを押すと、

「ちょっと待っててくださーい!」

 と声が聞こえた。それを聞いて勇気が

「すまない、当麻。シスターの回復には立ち会えないんだ。親に門限を破る許可を貰わないといけないからな。20分後には戻って来るよ。」

 当麻はそれを聞いて笑いながら

「気にすんな。行ってこい。」

「サンキュー。」

 勇気は能力で飛翔し、全く人がいないところに着陸した。そして

「おい。監視なんてセコい真似してないでさっさとかかってこいよ!」

 と言うと、こちらに歩いてくる人影を見つけた。その人物は

「お見事です。視線に気づいたこと、更に『人払い』の三次元的な対処。素晴らしかったです。」

「あっそ、んでお前も魔術師か?」 

「えぇ、そうです。私は魔術師でありーー」

 彼女は腰に提げている刀の柄に手を置き、

「世界に20人といない、聖人です。」

 勇気は彼女からの覇気を感じながらも、

「ハッ、そんなのどーでもいーんだよ。どーせお前もシスターの回収に来たんだろ?」

「回収じゃなく、保護です。さぁインデックスをこちらに渡してください。」

「あいつは物じゃねえ、だから渡せないな。」 

「そうですか、交渉は決裂ですね。ではーー」

 彼女は腰を低くし、言った。

「神裂火織(かんざき かおり)、行きます!」

 そして神裂は刀を抜き放った。勇気は 

「隙がありすぎるぜぇ!」

 と言って亜音速で突撃するが、

「チッ!」

 キラリと光るのを見て即座に真上に飛翔した。

「成る程。ただの抜刀と見せかけたワイヤーでの攻撃とはな。やるじゃねぇか。」

「あなたも今のをかわすとは、やりますね。」

 勇気は不敵に笑い、

「今度は俺のターンだぜ!」

 分子を高速で振動させることで空気を熱くした後、その空気で突風を起こす。つまり...

「くっ!熱風ですか!」

 神裂は風から逃れようとするが、

「まだ終わらないんだよなぁ。」

 勇気は砂鉄の質量を空気より小さくすることで、砂鉄を巻き上げた。それにより一瞬視界を奪われた神裂は回避行動が遅れ、

「がぁぁぁぁぁ!」

 熱風が直撃した。更に

「おーいおい。砂鉄をただの目眩ましと思っちゃダメだぜ。」

 勇気は風で砂鉄を互いにぶつかり合わせ、より鋭くしていった。そして

「死ぬなよ、神裂。」

 大量の砂鉄を突風で一気に吹き飛ばした。

「なッ...!」

 神裂は音速で回避を試みるが全てはかわせず、

「あぁぁぁぁぁぁ!」

 砂鉄が神裂を切り裂いていった。

 砂鉄の嵐が終わった時には、神裂は火傷と切り傷でボロボロだった。それを見て勇気は、

「諦めろ。お前じゃ俺を倒せねぇ。」

「嫌です。」

「そうかよ、じゃあ...」

     キ    エ    ロ

 勇気が足で地面をつついた瞬間、神裂の真下の地面が10メートル程盛り上がり、神裂は空に放り投げられた。

勇気は神裂に向かって飛翔し、

「あばよ、雑魚が。」

 神裂の顔面を思いきり殴った。神裂は地面に叩きつけられ、勝敗は決定した。

 勇気は着陸し、アパートへと戻りながら、

「チッ、つまんねぇ闘いだったぜ。」

 と言い放った。

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでです
また次回も読んでください

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