とある科学の魔眼使い 作:虎鉄
ファミレスで抹茶プリンを食べながら、黄泉川士騎は女子中学生二人と話をしていた。どうやら二人は第七学区立柵川中学の生徒らしい。しかもまだ中学一年生とのことだ。
「中1かぁー、若いっていいねー」
士騎はブラックコーヒーをズズッと啜りながら遠目で悲しげに語る。無駄に哀愁が漂っている。
「いやいや、士騎さんだってまだまだ若いじゃないですか」
そんな様子の士騎に佐天は苦笑いしながら答える。初春も隣でうんうんと頷いている。ちなみに初春はジャンボパフェを、佐天はパンケーキを食べている。
「分かってねーなー、もう高校生なんておっさんだぜ?俺のダチなんて根暗女とゴリラ野郎だしな」
そう言ってカラカラ笑う。二人はその様子を見て頬を赤らめている。黄泉川士騎は容姿は良いのだ。性格は割と適当で女好きではある上に何を考えているのか分からないので、避けられる時も多いが。
「そ、それは個性的なお友達ですねー」
そう言って初春は視線を士騎から外す。するとだらしなく着崩している制服が眼に入った。どこか見覚えのある制服に考え込む初春。
「士騎さんって彼女とかいるんですかっ?」
初春が考え込んでいる間に佐天が喰い気味で質問をする。
「いやいや、いないよ。残念ながらフリーってやつ」
「えぇー、ホントですか?士騎さんってモテそうじゃないですか」
佐天は疑わし気な眼で士騎を見つめる。
「マジだって。ただいま彼女募集「ああぁーー!!」……ん?」
士騎の台詞に被せる初春。佐天は突然の奇声に驚いて横を見る。士騎も視線を初春の方へと向ける。
「そ、その制服って……も、もしかて長点上機学園の制服じゃないですか!?」
「ん?そうだけど?」
驚いている初春に対して、それがどうした?とでも言うかのように軽い士騎。佐天も改めてその制服を見て驚いている。
「ってことは、もしかして高位能力者!?」
「いや、ただのレベル0」
「あれ?そうなんですか?レベル0でも長点上機に入れるんですか?」
「うちの学校には一芸入試ってのがあってな、高位能力者じゃなくても特定の分野で突出した力があれば入学出来るんだよ」
常盤台中学と同じく学園都市でも5本の指に入るとされる長点上機学園。能力開発においてはナンバーワンを誇る超エリート校である。同じ名門でも常盤台とは教育の方針が異なり、徹底した能力至上主義が敷かれている。故に在籍者の能力管理に対しても敏感である。
「へぇー、そうなんですか。じゃあ黄泉川さんは何で入学したんですかー?」
「近接戦闘能力で入学した。入試でレベル4をボッコボコにしたら受かった」
「「なっ!?」」
あまりに予想外の答えに絶句する二人。士騎の言ったことはそれだけあり得ない事なのだ。高位能力者に対してまともな武装もなく対峙するというのは自殺行為なのだ。それ程、高位能力者と無能力者には大きな差があるのだ。高位能力者を相手にするには少なくとも4、5人は必要であり、武器なども無ければならない。そこまで準備しても返り討ちにされる事は珍しくない。
「(まぁ本当は、それだけじゃ無いんだけどね)」
「すごいですねっ!アチョー!!ホアタァー!!って感じですかっ!?」
佐天は興奮してカンフーらしきポーズを取りながら喋り始める。
「違いますよー、佐天さん。きっと……ふっ、またつまらぬ物を斬って「初春、それは無いわ」……な、何でですかぁー⁉」
ワイワイきゃっきゃっと楽しそうに会話している二人を尻目に士騎は抹茶プリンの最後の一口を食べて、すっかりぬるくなったコーヒーを飲み干す。
「二人はレベルはいくつなの?」
あまり騒がせると店側に迷惑になるだろうと考えた士騎は話題を変える事にした。すると、二人とも、その話題に乗ってくる。
「あ〜、あたしはレベル0ですよ……あはは」
「私はレベル1ですー。
「へぇー、佐天さんは俺と同じなんだな」
少し自虐気味な佐天に明るく声を掛ける。
「はい。まぁ初春や士騎さんみたいに凄い特技とかは無いですけどね……」
「大丈夫だろ、佐天さんは可愛いんだし問題無いって」
「あははっ、何ですかソレ」
士騎の少し茶目っ気な感じに、ようやく佐天は笑顔を見せる。初春も隣でホッとした様な表情を浮かべている。
「まっ、可愛いは正義って奴さ」
「タラシですね、士騎さん」
「ははは、よく言われるわ。っと、そろそろ帰らないといけないから、またな」
そう言って席を立つ士騎。さりげなく伝票を取る辺りは紳士なのであろう。しかも「またな」と言いつつも連絡先などは交換していないので、今後会えるかは運次第でもあるのだ。
そのまま士騎は二人が何かを言う前に去って行ってしまった。
「行っちゃいましたね」
「何かちょっとチャラいけど良い人だったし、デザート代も浮いてラッキーじゃん」
「長点上機学園のエリートには見えませんでしたね」
「そうだねぇ〜、今度会ったらお礼に初春のパンツ見せてあげるかな」
「な、なんでそうなるんですか⁉」
「いいじゃん、いいじゃん。減るもんじゃないんだし」
「いやいや、大切な何かが減りますからっ!!」
と、ファミレスに残った二人は不毛な会話をしていた。