とある科学の魔眼使い   作:虎鉄

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第3話

 七月になり、暑さが本格的になり始めたこの時期。常盤台中学では身体検査(システムスキャン)が実施されていた。

 校庭で検査しているのは茶髪にツインテールの少女、白井黒子である。

「記録、78m23cm。指定範囲との誤差54cm。総合評価レベル4」

空間移動の能力者である白井黒子は今までとあまり変わらない結果に思わず溜め息を吐く。

「調子が今ひとつですの。やっぱり昨日の風紀委員のお仕事が影響して……」

「うふふふ」

黒子の言い訳めいた発言に近くにいた少女が笑い声を上げた。黒髪ロングヘアでおでこを出している。その表情にはどこか気品があり手には扇子を持っている。彼女の名前は婚后光子。

「言い訳なさる様では先は見えてますわね。この分だとレベル5に到達するのはわたくしの方が先かしら」

それを聞いて眉を顰める黒子。

「ふん、わたくしと貴女の能力を一緒にしないで欲しいんですの。そもそも、三次元と十一次元では空間把握の……」

「元々、わたくし一年の分際で大きな顔をする貴女が気に入りませんの」

婚后の人の話の聞かなさに黒子は思わず呆れる。隣で扇子をひらりひらりとしている婚后を思わず睨みつける。

 すると、爆発音と共にプールから大きな水柱が立つ。あまりに大きな音のため耳を塞ぐ生徒までいる中、婚后はその場で腰を抜かし、へたり込んでいた。手で頭を抑えて呻いている。

「な、なにごとですの?」

「本年度から二年に転入して来た貴女はご存知無いかもしれませんが、今あのプールで能力測定されているのは常盤台のエースですわ」

黒子の説明を肯定するかの様に再び派手な水飛沫と爆発音が聞こえる。その光景を見て婚后は思わず顔を歪める。

「記録、砲弾射速秒速1030m、連発能力毎分8発、着弾分布18.9mm、総合評価レベル5」

それが常盤台のエース、学園都市第三位の『超電磁砲』御坂美琴の評価であった。

 測定後、美琴と黒子はシャワー室で汗を流していた。二人だけでは無く測定を終えた生徒が数多くシャワーを浴びている。

 身体検査がある日には授業が無いので、生徒たちはこれから自由なのだ。そのため、お嬢様方はシャワーを浴びているのだ。

「あれ、校庭にまで音が届いてたの?」

「凄い音でしたもの。みんな驚いていましたわ」

それを聞いて美琴を肩をすくめる。

「プールを緩衝材にしなきゃ、まともに測定出来ないなんて面倒よね。黒子の能力の方が便利で良いわよ」

「隣の芝生は青く見えるんですのよ。まぁお姉様は常盤台のエース。堂々と胸を張っていればいいんですの。もっとも……」

そこで黒子は言葉を区切る。

 瞬時に隣のブースにいる美琴の後ろへと空間移動をして、胸へと手を回す。

「自己主張をするには慎ましい胸ですけど」

その後、言うまでも無く黒子は美琴からの制裁を受けた。場所がシャワー室だったので電撃は無かったようだが。

 

 

 

 身体検査を終えた初春飾利は柵川中学の校門前で携帯を弄っていた。その表情に喜びが無い事から身体検査の結果は言わずもがな。

「う〜い〜は〜る〜っ!!」

そんな初春の後ろから接近した佐天涙子は何の遠慮も無く初春のスカートをめくる。

「ひゃっ!?」

「おー、今日は淡いピンクの水玉かぁ」

「きゃーー!!!!いきなり何するんですか佐天さん!?」

公衆の面前で恥を晒された初春は顔を真っ赤にしながら佐天に抗議する。

「まぁまぁ、クラスメイトに敬語とは相変わらず他人行儀だねぇ」

そんなやり取りをしながら逃げるようにして二人は校門から遠ざかっていく。

「うぅ、ひどいですよ」

「ごめんごめん、代わりにあたしのパンツ見る?」

「結構ですー」

ニコニコとしている佐天とは対照的に初春はいかにも不機嫌ですといった顔を横に背ける。

「そういえばどうだった?身体検査」

とりあえず話題を変えることにした佐天。

「全然ダメでした。相変わらずのレベル1です」

「レベル1ならまだいいじゃん?あたしなんかレベル0だよー」

佐天はわざとらしく手で0の形を作り、その輪を覗き込むようにする。そんな佐天の様子に初春は思わず言葉を無くす。

「でもそんなのは気にしない。あたしは毎日が楽しければそれでオッケー。それに士騎さんみたいにレベル0でも凄い人もいるしねー」

佐天は笑いながら初春にそう告げる。そんな佐天の優しさに初春は思わず笑顔になる。

「あ、そういえば私今日、白井さんと約束があるんでした」

「白井って風紀委員の?」

「はい!ついに念願叶い、御坂さんに会わせて貰えることになったんです!常盤台のエースですよ!!」

初春は眼を輝かせている。

「常盤台のレベル5?どうせ上から目線の嫌な奴じゃないの?」

「でもお嬢様ですよ!?むしろお嬢様ですよ!?だからお嬢様ですよ!!」

訳の分からない事を言いながらもひたすらテンションの上がって行く初春を見て佐天は呆れた顔をしている。

「……あんた単にお嬢様に憧れてるだけなんじゃ」

「そ、そんな事無いですよ。そーだ、この際ですから佐天さんも一緒に」

こうして佐天は否応無しにういはに引っ張られて行った。

 

 

 

 黄泉川士騎は第七学区の路地裏を欠伸をしながら歩いていた。普通の学校では今は授業の時間帯だ。しかし能力開発に重点を置いている長点上機学園では個人のカリキュラムが優先される。故に近接戦闘という名目で入学した士騎は自主トレだと言えばある程度自由に動けるのだ。もちろん、設備自体は学園内の機材を使用した方が遥かに効率は良いはずなのだが、何故だか文句は言われない。

「えーと、確か第七学区の公園の近くだよな」

士騎は電話をしながら歩いている。

『……ああ。……そこにある銀行に襲撃があるらしい』

電話口から聞こえて来たのは陰鬱な口調であった。声はかなり低い。

「お前さんは動けんのか?」

『……すまん。こっちにも色々あってな』

「ふ〜ん、まぁいいよ。流石に未然に犯行を食い止めるのは無理だけど、民間人に被害がいかないようにはしてやるよ」

『……恩に着る』

それだけ言って電話は切れた。士騎は携帯をポケットにしまい、目的地へと進む。

 どうやら第七学区の銀行で他の学区のスキルアウトが強盗をしようと企てているらしく、それを止めてくれないかと士騎は仲間に頼まれたのだ。

「いやぁ、やっぱり第十八学区よりも第七学区の方が賑やかな感じだよなぁ。路地裏も含めて、ね」

そう呟いた士騎の周りに何人もスキルアウトが現れた。

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