Fate/Grand Order 朱槍と弟子   作:ラグ0109

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#38

「『すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)!!!』」

 

宝具名の開帳と共に爆発的に増殖する樹木が、この玉座の間に居る全員を圧倒し圧潰させ、押し流そうと迫りくる。

それは正に質量兵器…過去に芽吹いた芽がやがて育ち、苦難の現代を乗り越え栄えある未来へと成長を続けるが如く、その質量を爆発的に増やしていく。

 

「うああああああ!!!」

 

マシュは裂帛の気合と共に宝具を展開し続けるものの、その質量による圧力にやがて耐えきれなくなり、徐々にだが後方へと押し出され始める。

騎士王の聖剣による一撃を受け切った盾が、押し切られてしまうと言うのか…!?

 

「エミヤさん!!」

「わかっている!マシュ、もう少し耐えてくれ!!」

 

すかさず立香さんはエミヤに号令を送り、エミヤはマシュの後方へと立ってその手に黒弓を手に持つ。

 

I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ狂う)―――」

 

莫大な魔力を込めた詠唱に何時か見た螺旋剣を投影したエミヤは、その剣を矢へと変貌させて弓に番えて大きく弦を引き絞る。

並の魔力量では足りないと判断したのか、その尋常ではない魔力量はエミヤの足元の床を砕き始め、浮き上がった瓦礫が矢を中心にして渦を巻く様にして塵と化していく。

 

「退け、マシュ!!」

「はい!!」

 

マシュが宝具展開を止めてその場から離脱すると同時に、エミヤはその狙いを未だ玉座に居るであろうロムルスへと定め、その宝具の真名解放を行う。

 

「貫け!偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!!」

 

大きく引き絞られた弓から放たれるその一撃は、放たれた瞬間にソニックブームを発生させて僕達の身体を玉座の間の隅へと吹き飛ばす。

迫りくるロムルスの宝具へと赤熱化しながら突き進むその矢は、ロムルスの宝具と衝突した瞬間、玉座の間目いっぱいに広がっていた樹木を巻き込み、捩じり切る様に粉砕しながら目標であるロムルスに向かって突き進んでいく。

それでも、足りない…圧倒的質量は恐らく聖杯のバックアップを受けての物。

圧倒的魔力で放たれた宝具は、今も尚増殖を続けているのだ。

やがて勢いが衰え、その力を失い始めた時…その樹木の中で一際大きな閃光が放たれ、内側から大爆発を起こす。

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』による魔力の大爆発だ。

偽・螺旋剣に込められた神秘を解放することで起きたその爆発が原因なのか、それとも宝具の展開が終了したのか…王宮はすでにその面影を失くし、真紅の塔の如き巨樹が僕達の目の前に聳え立っていた。

 

「神祖ロムルスは…上か!」

 

巨樹の遥かな高みから、ロムルスの放つ神性の如き威圧感が僕達に圧し掛かる。

その存在に気付いた瞬間に気合を入れ直したネロが、大樹から伸びる足場の様な枝葉に飛び移り素早く上へと登っていく。

 

「立香さん、僕が先に行くから体勢を整えたら上がって来て!」

「わ、分かった!」

「彼女を頼むぞ、東雲!」

「…では、余は雑兵を狩り出す事としよう」

 

僕は立香さんに失った魔力の補充を促すのと同時に、ネロに倣って足場となっている大樹の枝へとお師匠達と共に跳躍して登っていく。

僕達が昇り登り始めるのと同時に、玉座の間だった場所に黒い靄…黒化英霊を中心にしたゴーストの群が現れる。

恐らくどこかに潜んでいるレフ・ライノールの差し金だろう。

しかし、まだ彼女の英霊は健在で、外にはアサシンとバーサーカーの英霊が控えている状態だ。

レフ・ライノールが出張って来ることが無ければ、そうそう彼女たちが追い詰められることは無いだろう。

 

「こっちはこっちで湧くか!」

「まるで、おるれあんの時の様です…ハッ!!」

 

大樹の中腹まで登ってくると、まるでロムルスとネロの戦いに横槍は入れさせないと言わんばかりに、無数のワイバーンが上空に召喚されて僕達目掛けて急襲を仕掛けてくる。

幸いにして巨樹の枝は足場に困らない程に広く、戦いやすい環境が整っている。

清姫は先手必勝と言わんばかりにその手の扇子を振るい、火炎弾を連続で放つ事で急襲を仕掛けてくるワイバーンに対する牽制を行っていく。

 

「数ばかり居たって俺たちの相手にゃならねぇんだよ!!」

 

清姫の弾幕に呼応するかのように、クー・フーリンは足を止めずに広いとは言え少ない足場を縦横無尽に駆け巡り空いた左手を思い切り横に薙ぎ払って複数のルーン文字を一斉に起動していく。

 

「我が師スカサハ直伝のルーン魔術…ありったけを喰らっていきなぁ!アンサズ!!!」

 

神速とも言える速度で放たれるそのルーン魔術は、ダブルクラスと言う特殊スキルの発現によってキャスタークラスと同等の威力をもって放たれる。

ランサーの身体能力、キャスターの魔術行使…その2つを併せ持つクー・フーリンは生前に近い能力を有していると言えるのかもしれない。

 

「ますたぁ…わたくしの愛しい君…どうか、先へ。ここはこの清姫と光の御子が受け持ちましょう」

「こいつら片付ける頃にゃ立香の嬢ちゃんも登って来てる筈だ。すぐに手伝いに行ってやるからよ!」

 

清姫はいつになく真剣な表情でワイバーンを撃ち落とし、クー・フーリンは飛来するワイバーンの背に乗ってその首を切り落とし、かの牛若丸の八艘飛びの様に次々に他のワイバーンへと乗り移っていく。

僕はお師匠の顔を見て頷いた後、2人が作ってくれた間隙を縫って巨樹の上層を目指す。

中腹から聞こえる炸裂音が小さくなってきたころ、巨樹の枝葉を揺らすような衝撃と剣戟音が聞こえてくる。

 

「たぁっ!!」

「ロムルス!!」

 

裂帛の気合と共に放たれる真紅の一撃。

それは同じく真紅の棍棒が如き巨大な槍によって阻まれ、そのまま振るわれる。

ネロの身体はロムルスの膂力に押し切られて木っ端の様に吹き飛ばされ、巨樹の幹に叩きつけられる瞬間に軽業師の様に体勢を整えて幹に着地して剣を突き立てる。

 

「これこそが(ローマ)、この威容こそが(ローマ)の在るべき姿!」

「否!断じて否だ、敬愛すべき神祖ロムルス!この国に例え愛があろうと、そこに暮らす人々が笑顔を浮かべることが出来なければ、その愛は偽りに過ぎぬ!!!」

 

ネロは突き刺した剣を引き抜くと、素早く幹を蹴り飛ばして弾丸の如くロムルスに向かって剣を振りかぶる。

ロムルスは全身の筋肉を撓ませてネロの一撃を受け止めようと、大きく足を開いて槍を構える。

ネロとロムルスが衝突する直前、ネロの手にする原初の火から魔力を伴った爆炎が噴き出し、その速度を爆発的に高める。

 

花散る天幕(ロサ・イクトゥス)!!!」

「ぬぅっ!!」

 

突如として起きたその加速に、さしもの神祖もその速度についてこられなかったのか、すれ違い様に放たれた一撃を肩口から受け、紅の薔薇が如き血の花を咲かせる。

ネロは足場の大樹の枝を勢いを殺すために着地と同時に回転をしながら滑り、剣を突き刺す事で急停止する。

ロムルスは受けた傷を素早く治癒魔術を用いたのか肉体を修復し、急停止したネロの隙を逃すまいとその大質量の槍を渾身の力を込めて突き放とうとする。

 

「スカサハァッ!!!」

「ヌッ…!!」

「流石は神祖…聖杯でその霊基を強化されているとは言え、凄まじい力量だ」

 

僕とお師匠はネロとロムルスの戦う枝へと跳躍した瞬間、ロムルスの一撃が今のままでは間に合わない事を確認。

僕は手に持つ朱槍をバッドの様に持って構えると、お師匠がそれに呼応する形で僕の朱槍を足場とする。

全身に強化魔術を施した僕は、渾身の力を込めてフルスイングを行いお師匠をロムルスに向かって撃ち出す。

お師匠は僕の期待通りにネロとの間に割って入り、ロムルスの剛撃を涼しい顔で朱槍で受け流せば至近距離でにらみ合い、その手に持つ朱槍でロムルスの肉体を軽々と弾き飛ばす。

 

「貴様は…ローマ、なのか…!?」

「私は影の国を統べる者。亡霊を閉じ込め、冥界と化した我が国の門を守る者――」

 

――誰も私と並び立つことは、ない――

 

孤高にして孤独なるもの。

世界に取り残されたもの。

死に忘却されたもの。

そして…死を渇望する者。

その言葉はあまりにも冷ややかで、そして諦観が混じっている。

並び立つ者が居ないと言う事は、自身を殺せる存在が居ないと言う事。

自身が望んで止まない死を叶えるものが居ないと言う事だ。

だから――僕は――

思考を切り替え、落下していく体を繋ぎ止めるために腰のポーチから13番のルーン文字『ユル』が刻まれた魔石を握り込み砕く。

落下しているならば、その運動エネルギーを反転させれば良い。

僕の目論見通り急激に運動エネルギーの方向が切り替わり、肉体に凄まじい負荷がかかり思い切り歯を食い縛る。

そのまま凄まじい勢いで上昇した僕はロムルスと対峙している枝を大きく飛び越えて上空へと躍り出る。

その瞬間、高らかに声が響き渡る。

 

「いいや、今この晴れ舞台に並び立つ者は此処に居るぞ!」

 

晴れやかな声。

薔薇の帝都において気高く咲く大輪の薔薇の如きその輝きが、お師匠の隣に立ち胸を張る。

ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス。

薔薇の皇帝。

当代のローマ皇帝。

彼女こそがロムルスの言う(ローマ)なのだ。

お師匠達の居る枝に五点着地で上手く衝撃を逃がして無事に着地すると同時に、下方から5つの影が飛び出してくる。

 

「おっと、皇帝陛下…俺たちを忘れて貰っちゃ困るぜ?」

「お待たせしました!」

 

僕の目の前に降り立つ5つの影…クー・フーリンを始めとした英霊達と立香さんだ。

僕はゆっくりと立ち上がり、お師匠の下へと歩み寄る。

 

「いずれ、僕が並び立ちます…必ず」

「フン…弟子の分際で良く言うな」

 

お師匠は軽く肩を竦め、口元に微笑を浮かべる。

緊迫した戦いの中にあってこの余裕は、ざわつく僕の心を静めさせてくれる。

お師匠と並び立って槍を構えようとすると、少しだけ頬を煤けた清姫が僕の身体に抱き着いて頬擦りをし始める。

 

「ますたぁ、この清姫心配で心配で…胸が張り裂けそうでした!よくぞご無事で…!」

「清姫、ステイ!まだ戦闘中!!」

「ったくこっちは緊張感がねぇなぁ…立香の嬢ちゃん所をちったぁ見習った方がいいぜ?」

 

クー・フーリンがそんな清姫の様子を諫めながら、親指で後方に居る立香さん達を指し示す。

そこには少しばかり青い顔をした立香さんと、両手に夫婦剣である干将莫邪を持ったエミヤ、手に持つ槍を威風堂々とした王の如く持つヴラドが立ち、マシュが立香さんの背中を優しく撫でて介抱している。

 

「マシュ、エミヤさん、ヴラド公…此処が正念場です。私の事は構わず、全力でお願いします」

「了解した、マスター」

「良かろう、この異変を企てし者共に呪わしき我が名を吠え立てようぞ」

「せ、先輩は必ず、このマシュ・キリエライトが!」

 

ネロは更に一歩前に出て、ロムルスに対して真正面から鋭く睨み付ければ原初の火の切先を突き付ける。

 

「よもや言葉を違えはしますまいな、神祖ロムルス!余は言った!強者達と共に貴方を討つと!!」

「フフフ…フハハ…フハハハハハ!!!」

「何がおかしい!?」

 

ロムルスは、まるで我が子の成長を間近で見届ける事が出来た喜びを感じいる様に高らかに笑う。

その姿をこそ見たかったのだと。

まるで美しい物を見たと言わんばかりに、心底愛おしそうに笑う。

 

「そうだ、それこそが(ローマ)!それこそが世界(ローマ)!!愛し子ネロよ、お前は存分に人々(ローマ)を愛せ!その内なる獣ですら、世界(ローマ)は愛するであろう!!!」

「余はいつでも愛している!ローマと言う(世界)を!その(世界)に住まう人々を!!行くぞ建国の神祖ロムルス!我が才を見よ!!!」

 

ネロが原初の火を高らかに掲げ、そのまま足場へと突き刺すと凄まじい魔力反応が巻き起こり、大気に紫電が迸る。

それと同時にこの巨樹全てを包み込むかのように魔法陣がネロの足元から広がっていき、何処からともなく薔薇の花びらの吹雪が起こる。

 

「万雷の喝采を聞け!しかして称えるが良い――」

 

――黄金の劇場を!!!!

 

視界の確保が困難になるほどの花吹雪が巻き起こりネロの足元に広がった魔法陣を中心に金色の装丁が施された巨大な舞台が築き上げられる。

荘厳にして流麗、ありとあらゆる贅を尽くして築き上げられたその場所は、まさに黄金劇場!

 

「これこそが我が才、我が愛の結晶!『招き賜う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)』!!」

「固有…結界…!?」

「いや、彼女の物は私の物と違い、似て非なる物だ。彼女は世界を書き換えるのではなく、世界の上に()()している!」

 

立香さんの驚きの声に対し、エミヤは驚いてはいるものの冷静にこの場の解析を行う。

…そもそも、彼女は魔術師でも無ければ、英霊でもないただの人間の筈だ。

そのネロがどうして、英霊である存在と渡り合う事ができたのだろうか…?

 

「これよりは余達の独壇場…薔薇の如く散れ、神祖ロムルス!!」

「良いぞ愛し子ネロ!ならば、(ローマ)も全力で答えよう!!!」

 

ロムルスは満足気に頷くと同時にその棍棒の如き真紅の槍を構え、待ち構える。

先手を打って出たのは、意外なことに清姫だ。

 

「それでは、先にご照覧あれ!『転身火生三昧』!!」

 

良いところを見せようと言う魂胆なのか、それとも単純に高火力で一気に押し切ってしまおうと言う魂胆なのかは分からないけども、清姫は最速で炎纏う龍の姿へと身を変じさせ、その口から灼熱の炎をロムルスに向かって吐き出す。

その炎は離れていても皮膚が火傷してしまうのではないかと錯覚するほどの熱量で、まともに受けてしまえば大けがでは済まされない筈だ。

 

「『すべては我が愛に通ずる(モレス・ネチェサーリエ)』!」

 

ロムルスの新たな宝具の開帳…その瞬間清姫とロムルスを別つ様に城壁が瞬時にせり上がり、灼熱の炎を遮断してしまう。

幻想種のもつドラゴンブレスを弾くほどの強度を見せるその宝具は、所謂結界宝具と呼ばれるものに違いない。

清姫はその城壁を打ち崩そうと至近距離でドラゴンブレスを叩き込もうとするも、城壁を足場に飛び降りてきたロムルスが隙を突いたと言わんばかりに槍を叩き込もうとする。

 

「させるか!赤原を往け、緋の猟犬!!」

「ぬぅっ!!」

 

清姫に痛恨の一撃が届こうとするその直前、エミヤは『赤原猟犬(フルンディング)』を最速で投影して弓に番えてロムルスに向かって放つ。

その一矢は朱の軌道を描いてロムルスへと真っ直ぐに駆け抜け、そしてロムルスの持つ真紅の槍で打ち払われる。

その衝撃はすさまじく、空中で踏ん張る事の出来なかったロムルスは衝撃で自身の結界宝具に叩きつけられて一度バウンドする。

 

「生贄の時間である、血の晩餐である。建国の祖よ、闇に沈むが良い!」

 

すんでのところで助けられた清姫は時間切れとなって人の身に戻ってしまい、咄嗟の追撃が出来なくなる。

その追撃の役目は影から影へと通じて密かに移動してきたヴラド公が担う。

ヴラド公はロムルスの真下に現れたかと思うと、自身を無数の蝙蝠へと変じさせて一斉にロムルスの肉体目掛けて襲い掛かる。

その一撃はひ弱でも数が数…振り払う事は最早困難であり、その包囲網はまるでロムルスを束縛しているようにすら思える。

其処へ弾かれた赤原猟犬がミサイルの如き勢いで、ロムルス目掛けて襲い掛かる!

咄嗟にその一撃に気付く事のできたロムルスは左腕を赤原猟犬へと差し向け、左腕を犠牲にすることでその一撃を受け止める事に成功する。

 

「ローマ!ロムス!!セプテム!!!」

「ぐぅっ!!」

 

赤原猟犬がヒットしたと同時に実体に戻ったヴラド公をロムルスが目視すると、右腕だけとは言えその真紅の槍を高速で連続で振り払いヴラド公を圧倒し続ける。

その勢いは暴威の嵐。

受け続ければ、いずれ此方が力尽きてしまうのではないかと言わんばかりの轟音が、この黄金劇場に響き渡る。

しかし、それを止める2色の影がロムルスへと襲い掛かる。

ケルトが誇る最強の戦士、スカサハとクー・フーリンだ。

 

「そうら、皇帝陛下!トドメはあんただぜ!!」

「フッ、私とて多少は空気を読むものだ!!」

 

黒と蒼の閃光は朱の軌跡を伴ってロムルスで交錯し、両脇腹をその手に持つ朱槍で深く刺し貫き、タイミングを合わせて上空へと放り投げる。

 

「神祖、覚悟!!『童女謳う華の帝政(ラウス・セント・クラウディウス)』!!!」

「ヌゥゥゥッ!!!!!」

 

ロムルスに向かって原初の火の切先を向けたネロは、ロムルスに向かって華麗な跳躍を魅せる。

その姿は正に劇場の主役に相応しき姿。

大きく振りかぶって放たれる十文字切りは情熱の炎を伴ってロムルスを彩り、万雷の喝采の下に黄金劇場は閃光に包まれた。

 

 

 

 

「よくぞ…よくぞ(ローマ)(ローマ)を乗り越えた…ローマ帝国第五代皇帝、ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス…薔薇の皇帝よ」

「し、神祖ロムルス…余は…」

「我が愛し子よ…苦難があろうとも忘れる事は無い…いつでも(ローマ)が…(ローマ)(ローマ)が見守っていると」

 

閃光が収まると、元の巨樹の枝の上に戻っていた。

神祖ロムルスは心底安心したように…期待していた通りに難事を乗り越えたと言わんばかりに穏やかな笑みを浮かべている。

…思えば、この国を造り上げた者が…親とも言える存在が子の死を望むとは思えない。

そうであるならば…彼は…。

ロムルスは我が子を慈しむ様にネロの頬を優しく撫でると、僕達へとその視線を向ける。

 

「遠い未来から来たカルデア(ローマ)の子らよ。まだ、これで終わりではない。どうか最期まで愛し子ネロを…ぐぅっ…!」

「神祖!神祖ロムルス!!!」

「ネロさん!危ないです!!」

 

ロムルスは痛みに呻くと後ずさり、背中から地上へと落下していく。

そのロムルスの手を掴もうとネロは身を乗り出して手を伸ばすも、その手はロムルスを掴むことなく立香さんとマシュがネロの身体を抑える事で阻止されてしまう。

いつの間にか西の空は夕焼けに暮れなずみ、空は天幕が落ちるかのように夜の帳が落ち始める。

 

 

―――本当に―――

 

―――――本当に、貴様らは腹立たしいな、人間!!!!―――――

 

 

戦いは、まだ終わらない。




こう、上手くロムルスの強大さとか表現できていたでしょうか?
あっさりと言えばあっさりな戦闘描写ではありますが…
気軽に感想を書いていただければ幸いです。
書いてる人が舞い上がります、はい。


次回

憤怒と殺意と

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