島村家の元フェザー級日本チャンピオン~challenge again~ 作:伊吹恋
友人「お前の小説なんかおかしくね?」
自分「ご都合主義やぁ!」
朝早く店からジャージ姿の一樹が出ていき、ゆっくりと走り出す。
「......」
前から見慣れた人影が3人。
「おはようございます。お兄ちゃん」
いつもの3人。卯月と凛と未央だ。
一樹たちはゆっくりと土手道を走る。一樹は3人の歩幅に合わせてゆっくりと走る。
「どうしたんだ?こんな朝早くから...」
「学校休みだしたまにはジョギングしよう...って未央が」
「いやー最近身体が鈍っちゃって」
「身体を動かす事が本業のアイドルが言う台詞じゃねえな」
走るのを止めて休憩をする。一樹は息一つ乱していないが3人はその場にお尻を地面につけて息を切らす。
その間に一樹はシャドウをして身体が冷たくならないように常に動かす。
「シッ、シシッ!」
一樹が拳を振るう度に風が空を切る。頭を大きく振るう。
「お兄さんそんなに動き続けて疲れないの?」
「昔の習慣でな。つい癖でやってしまうんだ」
「へえ、ねえねえ!試しにジャブ教えてよ!」
未央は立ち上がり一樹の近くに来る。一方一樹は首に掛けているタオルで汗を拭う。
「良いが、ジャブだからって甘く見るなよボクシングではこの技はとても重要な技なんだ」
未央は一樹の横に立ち一樹の構えを真似る。
「いいか、ジャブっていうのは威力を殺してスピードを重視した技だ。だから拳は硬く握る必要はない。少し握る程度でいいんだ。そしてもう一つ、当てることも肝心だが、そのあとも重要だ」
「そのあと?」
「拳をすぐ構え直す。伸ばした肘をすぐに曲げて戻すこと。試しに来い」
と一樹は右手を開いて未央の前に出す。
その姿を真似るように未央もファイティングポーズを取り「こ、こうかな・・・」とぎこちない構えで左拳を前に突き出し、一樹の手に当てる。プロ顔負け・・・とまでは行かないもののその構えは基本に習ったような綺麗な構えだった。一樹もそれを見てうんうんと頷く。
「アイドルに何を教えてるんですか。一樹さん」
後ろから聞こえる声に一同はその声の主を見るために振り向く。そこにはジャージ姿のまだ幼さの残る顔小柄の少年がいた。
「あっ木崎君!」
と卯月が立ち上がり少年に声を掛ける。
「そうか、お前ら同じ学校だったな」
「はいっ同じクラスメイトです!」
「ねえ卯月。そちらは?」
「俺から説明した方が良いかな・・・」
と一樹が前に出て少年の肩に手を置く。
「コイツは木崎京介。俺が前に居たボクシングジムの後輩だ」
「
木崎は一樹の手を払い素っ気なく言う。
「堅いこと言うな。俺とお前の仲だろ。それよりも、プロテストはどうだった?」
「この通りですよ」
木崎はジャージに入れていた財布を取り出しある物を出す。それはプロボクサーのC級ライセンス証だ。一樹はそれを手に取る。
「立派なもんだ、今日は学校休みだったな俺んち来いよ、京介の合格祝いだ」
「...ありがとうございます...それでついでに頼みたいことがあるんですけど...」
「なんだよ改まって、俺に出来ることならなんでも言え」
京介は俯いたまま何か言いにくそうにしていた。しかし意を決して一樹を見て口を開いた。
「俺の...スパーリング相手をして下さい」
ロードを早めに切り上げ、俺達は俺の店の上の階にいた。元々俺の店はボクシングジムでそれを改装したものだった。1階は店、2階はリングがあるが倉庫代わりに使っていた。
因みに3階立てで3階が俺の部屋だ。今俺は自分の部屋からあるものを出していた。
「お、あった」
ダンボールから出てきたのは古びた俺の愛用していたボクシンググローブだ。何故こんなものを出しているのか、それは京介のスパーリング相手を受けたからだ。
最初は断ろうかと思っていた。俺はもうリングを降りた身、俺が京介の事でしゃしゃり出てはいけないと思ってた。しかしあいつはもうプロのボクサー。プロのリングには強者揃いなのは間違いないし初試合も控えていた。プロの強者、そして初試合のプレッシャーは凄まじいものだろう。だから、俺とスパーリングをして参考にしようと思ったのだろう。そんなに思いをしている奴の思いを無下にするのは兄貴分としては見過ごせない。
俺は胸の鼓動を高鳴らせ、ワクワクしながらグローブを手に2階に向かった。