島村家の元フェザー級日本チャンピオン~challenge again~   作:伊吹恋

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友人「ラ○ライブ面白いぞ!」

自分「ありきたりな日常アニメだろう、○魂のほうが・・・」

数週間後

自分「ラ○ライブ面白え!!」


Round.4

時間は午前8:00を回っていた。アイドルグループ『ニュージェネレーション』三人と一樹の後輩木崎京介は一樹の店の二階にあるリングで待っていた。ほとんど倉庫として使われていたため埃をかぶっているサンドバックやらがある。だがリングだけはなぜか綺麗だった。

リングの上では京介が身体を温めるためシャドウをしていた。そこにグローブを片手に現れた一樹。手には既にバンテージが巻かれており、頭にはヘッドギアをかぶっていた。すぐにでもスパーが出来る状態にしていた。

 

「待たせたな」

 

そう言いながら一樹はロープをまたがりリングに足を付ける。

 

「ヘッドギアは?」

 

「要りません。少しでも実戦のような緊張感を味わいたいので・・・」

 

キュッキュッとリングの上でステップを踏み状態を確認しながら言う京介。それを聴くと一樹は自分が付けていたヘッドギアを取り、未央に投げる。

 

「えっ、ちょ」

 

慌てて手を出してヘッドギアをキャッチする未央。一樹は親指を立てて「ナイスキャッチ」と言う。

 

「お、お兄さん!?いいのスパーリングって練習試合だよね、練習で怪我なんてしたら・・・!」

 

「いいから、早くゴングを鳴らしてくれ」

 

一樹は両手を顔の前に出し、現役時代に使っていた構え、『ピーカブースタイル』を取る。一方京介は左手と足を前に出した基本的な構えを取る。二人とも既に臨戦態勢状態。もう聞く耳も持たないで居た。

 

「も、もう知らないからね!」

 

カァァーーン!!

 

二人の戦いを合図するようにゴングの音が響く。

 

 

 

キュッキュッ

 

 

リングの上でステップを踏む京介と、頭を左右上下と揺らしてウィービングをする一樹。静かな時間が流れる。それは数秒の筈なのに、数分かかったような気分がする。

ニュージェネの三人はそれを見ている。

 

「ねえ、二人は何をしているの?」

 

「あれはお互いに様子を見てるんです。どちらが前に手を出すか」

 

「どちらが先に攻撃するかって事?」

 

凛と問いに横から入るように未央が額にたまった汗を拭いながら口を開く。

 

「こういう時間って、何だかこっちまで緊張するね」

 

 

「(現役じゃなくても一樹さんは元日本チャンプ。俺の実力がどこまで通じるか、見て貰いましょう!!)」

 

シュッ!!

 

先に手を出したのは京介。風を切るような左ジャブがまっすぐと一樹に向かって飛んできた。しかし、それは空振りで終わる。一樹はすれすれで顔を左にずらし、ジャブを避けていた。しかし、それを皮切りに京介は左ジャブを繰り出す。

 

「は、速い!」

 

「あの京介って人、速すぎるよ」

 

素早く、そして鋭いジャブの連打、それは何千何万回とサンドバックに叩きつけた練習が実を結んでいるのだ。

 

しかし―――

 

「ウソ...」

 

「お兄さん、あれを全部避けてる...」

 

一樹のウィービングは冴えている。京介のジャブを全部避けていた。さらに避けながら一樹は京介を見つめていた。それはまるでタイミングを掴むようにリズムを刻むように、

 

「(あ、当たらない...引退した人間のはず...せめて、一発だけでもー!!)」

 

シュッ!!

 

京介が左を伸ばした時、一樹の姿が消えたーーー「(は?)」とその場にいた全員が思ったのだろう。だが、一樹は消えたのではない。一樹は単調になった京介の左をダッキングで避けていたのだ。

 

視線を横にするとそこには、低い姿勢で左拳を構えている一樹がいた。

 

ガァン!!!

 

左のフックが京介の腹に目掛けてふり抜かれた。

 

「ゴォッ!!?」

 

京介の体がくの字に折れマットの上に横たわる。鈍い痛みと吐き気がこみ上げる。

 

「(あ――――やべえ。思わず重いの入れちまった。)」

 

しまったという顔をしながら一樹はアイドルたちの方を見る。

 

 

その顔は――――ドン引きである――――

 

 

幾らなんでもやりすぎた。京介はプロでもなったばかりの新人。そんな京介に手を抜いていたとは言え、日本一の座に収まったインファイターの拳を入れてしまった。やり過ぎである。

 

「いや、待て...手は抜いたつもりなんだが…体が力んでだな」

 

何とかドン引きしているアイドル立ちに弁解をしようとするも、卯月はクラスメイトが思いっきり殴られ泣きそうな顔をして、凛はジト目でこちらを見て未央は口が開いたまま固まってる。

もう何を言っても無駄である。しかし、そこで凛が一樹の横を指さす。

 

「あ」

 

一樹は凛が指さす所を見る。

 

「ハァ...ハァ...」

 

そこにはさっきまで倒れていた京介が立ち上がりファイティングポーズを取っていた。しかしダメージが隠せていない。足がガクガクと震えていた。

 

「まだ...10カウント入ってないですよ・・・」

 

ステップを踏む余裕も無いだろう。もう足はフラフラしている。立っているのがやっとだろう。

 

「・・・・・・どうするのまだ続けるの?」

 

凛の言葉を聞き、一樹は拳を構える。

 

「はじめてくれ・・・!」

 

既に一樹の心は決まっていた。

 

「(やる・・・これだけの覚悟を見せられたんだ・・・残り3ラウンド・・・打ち合ってやる)」

 

カァァン!!

 

再びゴングの音が聞こえ、すぐに一樹が懐に飛び込む。

 

「お、お兄さん!?」

 

「すぐにでも決着を付ける気だよ!」

 

「(打ち合ってやるが、プロの世界でそんな悠長に待ってくれてると思うな!!)」

 

低い姿勢からとどめの一撃のアッパーカットを構える。しかも右拳。今は意識が朦朧としている状態。これでアッパーをかませば次こそ意識を刈り取るのに十分な威力だ。

 

「(人間は極限の状態ではないと真の力を発揮できないとよく言われている。だからこそ今見せろ。お前の実力をォォォ!!)」

 

右拳が伸びきるその瞬間。

 

京介の首が左にずれた。一樹の拳が空を切った。

 

「お兄さんの攻撃を避けた!?」

 

「あれ、動画で見たことある、あれはカウンター!」

 

「(なにっ!?朦朧とした意識の中でカウンターだと!?)」

 

拳を振り切ってしまい戻すような猶予が無い。そこに遠慮なく振り抜かれる京介の右のカウンターは一直線に一樹に目がけて飛んでくる。

 

 

 

 

 

 

―――――――2時間後――――――

 

バシャーッと水を掛けられて目を覚ます。目の前には三人のアイドルがバケツを持っていた。京介はその時悟った。そうか、自分はスパーで負けたのだと。

 

結局京介は一樹のアッパーに合わせてカウンターを打ったが、そのカウンターを一樹は紙一重でかわしそして一樹のカウンター返しにより倒された。

 

「・・・計2回ダウンか・・・良い具合に半殺しにされた気分だ」

 

ムクリと立ち上がり京介は辺りを見渡す。

 

「・・・卯月、一樹さんは?」

 

「お兄ちゃんは木崎君の合格のお祝いにご馳走を作るって言ってました」

 

「それより凄かったよさっきの試合!」

 

「・・・慰めにもならないよ。結局全攻撃を防がれた。リズムによるウィービング・・・堅いガード・・・そしてあの一撃の破壊力・・・そして俺のカウンターを避けたあの反射神経・・・流石元日本チャンプだ・・・」

 

下を向いたまま俯く京介、そんな京介に何か声を掛けて上げたいが出来ない。何を言って上げれば良いか分からなかっただが・・・

 

「だから目標に出来る!」

 

俯いたその顔は穏やかに微笑んでいた。

そしてその姿を少し開いたドアの隙間から見ていた一樹も笑っていた。まるで己が育てたボクサーが世界を取ったコーチみたいな顔だった。

 

「(目標は高い方が良い・・・って誰かが言ってたかな・・・俺も高い目標があったな・・・あいつのカウンター・・・もし京介が目標にするなら俺のようなインファイターじゃなく、カウンターに特化したアウトボクサーだ。もしその目標に近づくとしたら・・・あいつは最高のカウンター使いに成長する・・・そう思えて仕方ない)」

 

一樹はそう言いながらエプロンを再度着けて厨房に向かっていった。




戦闘シーンが書きづらい!参考書(単行本)を見ててもそのシーンになるように書いてしまう・・・!
っというか、3~5年ぐらいボクシングしてない人間ってどこまで戦えるもんなんだ?

伊達さんは天才だからすぐに復帰したが・・・

というわけで次回をお楽しみに、次回はあのプロジェクトのメンバーとプロデューサーが登場!・・・・・・する予定だ!!

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