進撃のGANTZ   作:3×41

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ミカサの休日⑤

 

 飛び交う話し声で騒然としていた店内だったが、エレンたちが気がつくと逆に静かになっていくようだった。

 エレンたちが見ると、店内が静かになっている中心のテーブルに3人の男が座っているのがわかった。

 その男の一人が机に丸太のような右腕を乗せて倒しており、その倒れたさきの床にウェイターの男が倒れている。

 どうも、アームレスリングをしてウェイターの男が負けた勢いで床に倒れこんでしまったようだった。

 ほかの椅子に座っていた男たちは静まり返ったまわりをよそにそれを見てゲラゲラと笑っている。

 

「おいユリアン!おれぁ真剣勝負で勝ったわけだから、この飯代はただでいいな!?」

 

 巨漢の男が荒々しい声で言う。

 ユリアンと呼ばれたウェイターの男は床からよろよろと起き上がると、男に反論した。

 

「そんな…あなたが強引にテーブルにつかせただけでそんな約束はしてなかったじゃないですか!?」

 

 ウェイターが反論すると三人の屈強そうな男たちはまた笑い声を上げた。

 見ると店内のカウンターで酒を飲んでいた小男も笑い声を上げていた。男たちの一行の一人だろうか。

 

「ははは、そりゃぁお前の記憶違いだろう。なぁ?俺はやる前にちゃんと約束してたよなぁ?」

 

 笑いながら椅子に座った男が近くの仲間であるようである男たちに尋ねた。

 男の仲間たちは口々にいった、ああいってたなと同意した。

 それを聞いてウェイターの男は弱弱しくそんな、とうめいた。

 

 エレンが横目でそれを見ていると、

 すぐ目の前でクリスタが立ち上がっているのがわかった。

 クリスタの目には決然とした様子が見て取れる、どうもそのいざこざに割って入ろうとしているようだ。

 そして一歩踏み出したクリスタの右手をアルミンがつかむ。

 

「クリスタ。少し冷静になってよ。あの男たちは荒事になれてるみたいだし、君に怪我をさせたくない」

 

「でも、アルミン…」

 

 クリスタが迷ったような表情をする。クリスタの手をつかんだアルミンがそれに気づくとゴメンとあやまって手を離した。

 

 そのとき、店の厨房から大声が聞こえてきた。

 

「くるぁぁああああああ!!なにやっとるかおまえら!!」

 

 厨房から声を上げながら背の小さい老人が歩いてきた。

 どうも気の短いたちのようで、ごたごたを起こしている屈強な男たちのほうにズンズンと歩いていく。

 

 老人が歩いていくと、店内の客が二人老人を押しとどめた。

 

「やめときなじいさん。下手すりゃ殺されちまうぞ」

 

 その客たちは老人を心配しているようで、なおもわめく老人を押しとどめて厨房に押しやっていく。

 

 

「やる気か?じじいはひっこんでな!!」

 

 屈強な男たちががなって笑い声を上げる。酒も入っているらしく余計にたかぶっているらしかった。

 男のジョッキを握る力は必要以上に力がこもっており。何かの間違いが起こってもおかしくない雰囲気があった。

 笑う男たちをよそに、その周りの客席は静まり返って声もまばらになっている。

 

「こういうのを処理するのも兵団の範疇か」

 

 言って、エレンが席を立った。

 エレンが店内の反対側に歩いていくと、途中で初老くらいの男がエレンに声をかけた。

 

 

「やめときなぁ若いの」

 

 エレンがそちらを向くと声をかけたのは初老の男だった。

 その男は器の酒を一口あおると

 

「ありゃぁゴードレクの一味さ。ジャドの付近の鉱山を根城にしてるゴロツキだ。下手に刺激すりゃ痛い目を見るからジャドのやつらは黙っちまってる。それにあいつを見てみな」

 

 初老の男はアゴをしゃくってカウンター席を促すと、カウンターで笑ってる小男を指した。

 

「あいつは懐に投げナイフを仕込ませてる。狙った的ははずさないらしいぜ。この前も…」

 

 初老の男はまた酒をあおると

 

「夜に街頭で男が一人ナイフで刺し殺されててな。それがあいつの仕業なんじゃないかってもっぱらの噂さ。証拠はないんだがね」

 

「お気遣いありがとうございます。ですが…」

 

 エレンが言いかけて初老の男がさえぎった。

 

「やめときなって、あんたらよそもんだろう?せっかくの旅路で命を粗末にするような真似はよしな」

 

 

 そのとき、ジョッキの酒を飲み干した屈強な男の一人が、

ダン、とひときわ大きな音をたてて器を机に打ち付けて

 

「そういえばユリアンが負けたら今日一日アンナが俺たちに付き合うって話もあったよなぁ!?えぇ!?」

 

 男がウェイターをしていた少女に向かって叫んだ。少女は小さく体をふるわせた。

 

「そ、そんな。私はそんな約束は…」

 

「した!したんだよ!!さっさとこっちにこい!!」

 

 男が声を荒げて、三人の男たちが笑い声を上げた。

 それは明らかにふっかけているようだったが、三人の男たちは口裏を合わせているようで、口々に確かそうだったと

男に同意している。

 

 

 このようなことは今回が初めてではないのかもしれなかった。

 その男たちのテーブルの周りは静まり返ってしまっている。

 

 静かな店内に男たちの笑い声が響いていた。

 と、そのとき笑う男のテーブルの前にひとつの影が座った。

 

「グハハハ、ハ…ん、なんだぁ?」

 

 男は笑うのをピタっととめると、目の前に座った人間をまじまじと見つめた。

 大男の前に座ったミカサは右腕のひじを机につけて、右手を開いて大男に顔を向けた。

 ミカサの右手の指が男を促すように別々に動いた。

 

「なにかと思えば、女じゃねぇか」

 

 男は言って、目の前に座るミカサを見回す。

 男はミカサの顔見て言った。

 

「それもえらく上玉じゃねぇか。なんだおじょうさん、俺たちに付き合いてぇってわけかい?」

 

「・・・」

 

 ミカサは黙ったまま机にひじをつけた右腕を大男のほうに突き出している。

 

 

 男はニヤついた笑みを浮かべると、丸太のような腕を机に乗せた。

 

「いいぜおじょうちゃん、かわいがってやるよ。ハハッ!」

 

 男がその丸太のような腕で机に置かれたミカサの右腕をつかんだ。

 さっきのように床に放り出すまでもない。軽く机の上に右腕を倒して。どこかに連れて行こう。

 男はニヤつきながら丸太のような右腕に力をこめた。

 

「お、おい…」

 

 別の巨漢が男を見てつぶやいた。

 右手に力を入れた男はその力がうまく伝わらないことに気づいた。

 男が気がついたように自分の腕を見ると、

丸太のような腕が変な方向に曲がって机に倒されている。

 

「なっ!な、ああぁぁぁああ!!」

 

 間接が外れたように机に伏した右腕に気がつくと、ついで鋭い痛みに男がうめき声を上げはじめた。

 その様子を見てほかの男たちがざわつくように立ち上がる。

 奥のカウンターで酒を飲んでいた小男も席から立った。

 

 ミカサは黙ったまま席を立つと、男たちのほうを見て

「私が勝ったので、さっきの約束はすべて破棄。静かに食事を食べたら代金を置いて速やかに店を出て」

 

「なんだとぉ…?」

 

 大男がにらみつけてミカサにつめよる。カウンター席の小男が身をよじるようにマントの中に手を突っ込んだ。

 ミカサはさらに静かに続ける。

 

「私の要求はあなたたちの要求と同等のものだから。さっきの勝利によって十分要求する権利がある」

 

 

 大男はひたいに青筋を浮かべると、ミカサに歩みよって太い屈強な腕でミカサの襟をつかんだ。

 

「グオッ…」

 

 男がうめいて、男の大きな体がブワっと上に浮く。

 ミカサの右手が男の腹に深々と突き刺さった。

 男が口をパクパクとうごめかせて崩れ落ちると同時に、奥のカウンターの小男が瞬時に両手をひらめかせた。

 

 小男から高速で疾走した二本の投げナイフがミカサに向かう。

 

 次の瞬間、ミカサはマントに両手を入れて瞬時に振り返ると、

ギャリギャリと音を立てて抜いて両手に持ったブレードを高速でないで、疾走する二本の投げナイフを打ち払った。

ブレードに弾き飛ばされた一本のナイフが床に、もう一本が天井に突き刺さる。

 

 それに気づいた回りの客がざわつきそこから離れ始めた。

 

 

「ミカサ、やめろよ」

 

 ミカサに駆け寄ってきたエレンがミカサの右肩をつかんでいった。

 

「ここでやったらお店がこわれちゃうだろ」

 

「・・・」

 

 ミカサは少し考えるようにうつむくと

 

「わかった。たしかにエレンに一理ある」

 

 といって。両手に持ったブレードを腰のサヤに収めた。

 次にミカサが男たちのほうを向くと、頭を傾けて外に出るように促した。

 

 

「なにをやっとる貴様らぁっ!!」

 

 そのとき、店の入り口から叫び声が聞こえた。

 ミカサとエレンがそちらを見ると、駐屯兵団の制服を着た二人の兵団員が、叫びながら店に入ってきた。

 

「なんだぁ?このままでおさまりがつくかよぉ…」

 

 腕が折れ曲がった巨漢がうめきながら立ち上がる。

 その男に別の男が何かささやいた。近くのミカサにはその声が聞こえた。

 

(おい、夜まで大事を起こすなといわれてるだろ)

 

 男に言われると、その巨漢はクソッとうめき、店内をねめつけるようににらむと、ほかの男たちを連れて店から出て行った。

 

 

「…」

 

 ミカサは黙って男たちを見ると、店に入ってきた兵団員たちに向き直った。

 

「私たちはトロスト区駐留の調査兵団員です。私はミカサ=アッカーマンといいます」

 

 二人の兵団員はミカサを見て

 

「ふむ、その服はたしかにそのようだな」

 

 エレンとミカサのところにアルミンがかけよってきた。

 

「すいません、僕たちは馬でジャドを訪れてたんです。それでこの店内で騒動が起こったので、兵団員として問題に対処しました」

 

 アルミンが二人の兵団員に説明する。

 

 兵団員は少し考えると、

「どうやらそのようだな。俺はジャドに駐留している駐屯兵団のビグス、こっちはウェッジだ。俺たちは同じ兵団同士というわけだ。手間をかけたようですまなかったな。どうだ、ジャドの駐屯兵団の兵舎に来ないか。いろいろ案内でもしよう」

 

 エレンたち4人は少しお互いを見たあとエレンが言った。

 

「俺はトロスト駐留の調査兵団所属のエレンです。こちらからも是非お願いします」

 

 二人の兵団員はお互いを見ると。

「よし、じゃぁ決まりだな。それじゃぁ外で待ってるから、支払いをすませたら出てきてくれ」

 と言って二人は店を出た。

 

 

 クリスタがほっとした様子で言う。

 

「ふぅ、びっくりしたね。あまり無理しないでねミカサ」

 

「クリスタ、あなたには言われたくない」

 

「ええ、そんな」

 

 真っ先に飛び出していこうとしていたクリスタは、しかし言われてすこしガックリとする。

 その二人にアルミンが言う。

 

「ハハハ、二人ともだよ。まったく寿命が縮んじゃうよ僕は。大事にならなくてよかったよ」

 

「それじゃぁいくか、馬をつなぐところもあるかな」とエレン。

 

 

 四人は酒場を出ると、ビグスとウェッジと言った兵団員たちとジャドの兵舎に向かった。

 

 

 

 

 

 

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