進撃のGANTZ   作:3×41

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ミカサの休日⑥

 エレンとミカサとアルミンとクリスタはジャドの駐屯兵団員二人に連れられて馬を引きながらジャドの街頭を歩いていた。

 周りには人々が往来し、ちらほらと商店がならんでいる。

 遠くから鍛冶屋が金床を鳴らす音が聞こえ、どこかから肉がやける香ばしいにおいがかすかに漂っている。

 

「これはサシャをつれてこなくて正解だったかもね」

 調査兵団の食に人一倍理性がきかない兵団員を思い出しながら歩きながらアルミンが言った。

 そばで歩いていたエレンがそれに答えた。

「サシャなら我を忘れて肉に食いついてるかもな。まぁせっかくだからトロストのやつらにも何か買っていってやるか」

 その隣のミカサがエレンに尋ねる。

「エレン、あなたがトロストの兵団員たちのことをおもんばかることは悪いことではないと思う。でもジャドにこれたのは私の功績が大きい。一方トロストの兵団員たちはこれに関して何もしていない」

「?・・・俺たちは酒場で一緒に昼飯を食べただろ?」

「・・・」

 エレンがそういうとミカサは黙って歩みを続けた。

「ハハハ、エレンはミカサにも何か買ってあげたら?私もユミルにも何か買っていってあげようかな」

 エレンをフォローするようにクリスタが言った。

 そのクリスタは歩きながら街並みをキョロキョロと見回している。

「そういうもんなのか?まぁ今は腹もふくれてるし特に何かいるわけでもないしな。でも今日は肉料理もうまかったしジャドにこれてよかったよ、ありがとうな」

「・・・」

 エレンがミカサに礼をつげるとミカサは少し押し黙って、

「いい、私もみんなでこれてよかった」

 

 6人が歩いている大通りはジャドの中央を縦に伸びており、先ほどの酒場から大通りを歩くと、大きな役所につく。

一向はそこから右に曲がり、しばらく歩くと、街の外れにジャドの兵舎が見えてきた。

 

 兵舎は10人規模の宿舎や食堂があり、近くを小川が流れ、

宿舎の手前のレンガつくりの花壇には紫と白の花々が咲いていた。

 

 一向が馬舎で馬をつなぐと、

エレンたちを案内していたビグスが言った。

 

「われわれはまだ巡回が残ってるから、ジャドの話はこっちにいる兵団員に聞いてくれ。ジャドの近くには温泉もわいてるから、時間があったらそちらにいってもいいだろう」

 

 ビグスとウェッジはそういって巡回にジャドの街へ戻っていった。

 

 クリスタとミカサは横長の花壇の前で軽く風にそよぐ花々を眺めている。

「わぁ、きれいだねミカサ。トロストにもこんな花壇があればもっと和やかになるのになぁ」

 クリスタが歓声をあげるように言う。となりのミカサはその花をじっとみつめている。

「私には、よくわからない。この花が人の心に何か影響を与えるの?」

「うーん。全員がそうだというわけじゃないだろうけど、きれいな花がすきな人は多いんじゃないかな。ミーナはきれいな花を持っていってあげたら喜ぶかも!ユミルは、あんまり気にしないかもなぁ」

 二人がそうしていると、後ろから聞きなれない声が聞こえてきた。

 

「いやぁ、こんなところに可憐な花が二輪も咲いているとは驚きだ。いったいどこから迷い込んだんだい?」

 

 どうにもきざな声に二人が振り向くと、駐屯兵団の格好をした男が二人の後ろで大げさに両手を広げていた。

 背は175cmくらいと高く、彫りの深い顔に青みのかかった目に亜麻色のウェーブした髪を後ろで縛っていて少したれた目に端正な顔立ちをしている。

 

「ど、どうも」

 驚いた様子でクリスタが言う。

 クリスタとミカサが振り返ると男はギョっとしたようにのけぞった。

 

「ほ、本当にかわいいじゃないか。二人とも、その格好は兵団員かい?ジャドに来るのははじめて?」

 

 男はミカサとクリスタの服装を確認して続ける。

 

「俺はジャドの駐屯兵団所属、ミーシャ=シュトルフだ、ミーシャでいいよ」

 

 ミーシャという男に言われて、クリスタはおずおずと頭を下げた。

「は、はい。私はトロスト区からきましたクリスタ=レンズです。彼女はミカサ=アッカーマンです」

 クリスタが言ってミカサが小さく頭を下げる。

 

 ミーシャと自己紹介した男はミカサとクリスタが花壇の花を見ていたのをさっすると、アゴに手をやっていった。

 

「ああ、その花壇か。きれいなもんだろう?うちのクラリスが育ててるんだよ」

 

「はい、とてもきれいでみとれてしまいました。この種類の花ははじめてみました」

とクリスタ。

 

「はっはっは、そうだろうそうだろう。クラリスが聞いたら喜ぶよ。これはクラリスがジャドの北の森でえりすぐった花を持ってきて育ててるのさ。どうだい?もしよかったら少し譲ろうか?俺から言ってあげよう」

 

「え、いいんですか!?ありがとうございますミーシャさん!」

 クリスタが輝くような表情でお礼を言う。

 ミーシャはゆっくりと首を振ると二人に右手を差し出した。

 

「ミーシャでいいよ。それにしても俺も君たちのような美しい女性は始めてみたよ。君たち、運命って信じる?」

 

 ミーシャがそこまで言ったところで、馬舎のほうからエレンとアルミンが歩いて来た。

エレンがミカサとクリスタと話しているミーシャを認めてかけよる。

 

「こんにちは、俺たちこちらのビグスさんに教えてもらってきたんです。

俺はエレン=イェーガー。こっちはアルミン=アルレルトです」

「ど、どうも」と後ろのアルミン。

 

 ミカサが二人のほうを見て説明する。

「この人はミーシャ=シュトルフ。ミーシャでいいらしい」

 

「な、なんてこった」

 エレンとアルミンを見てミーシャが後ろに2、3歩よろめき、

ついでサササとエレンとアルミンまでかけよると、

二人の後ろにまわりこんで両手で二人の肩を持ち、二人の顔の間から顔を出した。

 

「エレンとアルミン、だったか?遠くからジャドまで女二人に男二人、こいつはただごとじゃねぇなぁ」

ミーシャが二人に目くばせをして続ける。

「で、どっちがどっちと付き合ってるんだ?エレンがクリスタで、アルミンがミカサとか?トロストの兵団にはあんなにかわいい子たちばかりなのかい?」

 

 アルミンが驚いた様子で答える。

「つ、付き合うって、そんなことはないですよ!ただの兵団員どうしです。それにクリスタのかわいさは例外ですよ!」

 

「うーん。むきになるところが怪しいなぁ、本当は隠して付き合ってるんじゃないのかい?」

 

「ん?それってたまに聞くけど、付き合うっていったいどういう意味だ?ちょくちょく気になってたんだよな」

と、エレン。

 

「本当か?まぁいいか。遠路はるばるよくきたな。歓迎するよ」

 

 

 ミカサとクリスタが小さい声でしゃべっている三人のほうを見ていると、

兵舎のほうからもう一人男がかけよってきた。

 

「むむっ、これは見目麗しい方々でゴザル!」

 

 エレンとアルミンとミーシャをよそに男は花壇のほうのミカサとクリスタの前に立った。

 黒縁の四角いメガネをかけた男は黒い髪を左右にわけて首くらいまでたらしている。

 

「拙者、このジャドの守護を任ぜられたヤークト=ゴジョーというものにござる。うぷっ!」

 ヤークトという兵団員がミカサとクリスタのほうにかけよったところで、

男は花壇のレンガに足をとられて花の中に吸い込まれた。

 

 エレンとアルミンのとなりでミーシャがヤークトについて説明する。

「あれはうちのヤークト=ゴジョーだ。あいつの生まれがウォールシーナ内の武家の出らしくてああいう口調なんだよ」

 ミーシャがフーとため息をついた。

「少々お調子もので腕もからっきしときてるが根はいいやつだよ。たまに暑苦しいけどね」

「な、仲良くなれそうです」とエレン。

 

「あのー、大丈夫ですか?」

 クリスタが花壇の中に転倒したヤークトに声をかける。その声には心配そうな響きがあった。

 

 クリスタが花壇を覗き込んでいると、

急に花壇の中からヤークトが立ち上がった。

その右手には花壇の花が一輪にぎられている。

 

「お近づきのしるしに、これを差し上げるでござる」

 ヤークトが花をクリスタに差し出す。

 

 そのヤークトの後ろから、

ヤークトの頭の上に何かが伸びた。

 

「なに勝手に花摘んでんだこのスケトウダラァァァ!!」

 

 ヤークトの背後から頭上に伸びた右足がそのまま高速で

ヤークトの頭上に振り下ろされた。

 

「ヘブシッ!!」

 

 細いかかとがボゴォっという音とともにヤークトの頭頂部に振り下ろされると、

しぼりだされるようにヤークトが叫び声を上げて、パタリと倒れた。

 

「だ、大丈夫ですか!?ヤークトさん!?」

 

 クリスタが倒れたヤークトにかけよる。

 ヤークトはピクピクと追撃しながらうめいた。

 

「や、ヤークトとよんほしいでござる…ゴフッ…」

 

 ミカサは倒れたヤークトの後ろの人影を見つめていた。

 

「・・・」

 

 その人影は線の細めの少女だった。

全体的に色白で髪はブロンドの金髪で前髪は横にそろえている。

 

「あらっ?お客様かしら、私はジャドの駐屯兵団所属のクラリス=マクガーデン、よろしくねー」

 

「…よろしく」

 

 

 それを見ていたエレンたちの横でミーシャがささやくように言う。

「あいつはうちのクラリス=マクガーデンだ。普段は穏やかな気性なんだが監獄主の親の家庭で育ったからか懲罰が筋金入りだ。おまけに俺とヤークトとクラリスは訓練兵時代に一緒だったんだが、クラリスの格闘術は俺たちの訓練兵団中でダントツでな」

 

「は、はい。気をつけます」とエレン。

 

「まぁ基本的にあいつの理不尽な暴力は基本的にヤークトと、あと俺にしか向かないから安心してくれ」

 

 話しているとクリスタとミカサと話していたクラリスがエレンたちのほうにかけよってくる。

「あなたがエレンで、こっちがアルミン?クラリス=マクガーデンです。ジャド特製の紅茶があるんだけど、みんなでお茶でもどう?」

 

「は、はい。いただきます」とエレン。

 

「みんな兵団はどこ所属なの?兵団はどんなかんじ?訓練兵時代は大変じゃなかった?いろいろ聞かせてねー。アハハッ」

 そう言ってクラリスは花のような笑顔を浮かべる。

エレンとアルミンはお互い見合わせてほっとしたような様子だった。

 

「君たち調査兵団に入ったの!?見かけによらず度胸あるんだねー」

 

 クラリスとエレンたちが話しているのをよそに、

ミカサとクリスタの後ろで倒れふしていたヤークトがよろよろと起き上がる。

 そしてプルプルと震える右手でミカサとクリスタに花を差し出した。

 

「こ、これを、お近づきのしるしにござる…」

 

 そういって息を切らしながらヤークトがニコリと笑った。

 

「だからいつその花がおまえのもんになったんだよおぉぉぉぉ!?」

 

 次の瞬間叫び声とともにクラリスの膝蹴りがヤークトの側頭部に突き刺さり、ヤークトーは横っ飛びしたように地面をきりもんで転がって倒れこんだ。

 

 

「そういえばあなたたち」

 

 ヤークトを打ち倒したクラリスがミカサとクリスタのほうを向いた。

 

「私の花壇が気に入ってくれたんだって?好きなだけもっていってくれていいからあとで包んであげるねー」

 

 花のように微笑むクラリスに、

クリスタはとまどうような表情で

 

「あ、ありがとうございます。でも…」

 

 クリスタはヤークトのほうを気にかけてそこまで言うと、

隣のミカサがクリスタをさえぎった。

 

「クリスタ、ここにはここの流儀がある。それに対して私たちが口を出すべきではない」

 

「そういうものかな」とクリスタ。

 

 二人がそこまで話すと、クラリスが二人を呼んだ。

「それじゃぁこっちのベンチに来てよー」

 

 

 

 エレンたちとジャドの兵団員たちは

ジャドの兵舎のちかくの石畳におかれたテーブルを囲んでいた。

 テーブルの上にはクラリスが入れた紅茶が出されている。

 ジャドに外から人が来ることはめったにないようで、

クラリスはどこか楽しげにエレンたちを歓迎していた。

 

「あ、このお茶すごくおいしい」

 クリスタが紅茶を一口飲んでつぶやくように言った。

 

「そうでしょー?ジャドの近くではサトウキビもとれるからね。甘いでしょ?よそでは貴重品で貴族や豪商の飲み物かもしれないけどここではけっこう手に入れやすいんだー」

 クラリスが笑顔で言う。

 どうやらジャドには狩猟による肉料理やサトウキビの採集で食事情についてはほかの街よりずいぶんといいようだった。

 一緒にテーブルを囲んでいたヤークトが黒縁のメガネをぐいっとあげる。

 

「あとはそうでござるね。ジャドには温泉も出てるでござるからもしよかったらそちらにつかっていくとよろしかろう。もしよろしければみなさんのお背中をお流しゴボァッ!!」

 

 いいかけたヤークトのわき腹に隣に座っていたクラリスの右こぶしが突き刺さり、

ヤークトはうめき声を上げて机につっぷした。

 

「べ、べつにミカサ殿とクリスタ殿といってござらんのに…」

 

 その隣のミーシャが言う。

「まぁとはいえ、最近はジャドの治安もあまりいいとはいえないんだよね。街に鉱山上がりのゴロツキが増えて、よく問題が起こるようになったし、めったにないが殺人まで出る始末さ」

 

「そういえばジャドの酒場でいざこざを起こしてたやつらがいましたが、それも同じようなことなんでしょうか?」

とエレン。

 

 ミーシャは両手を上げてフーと息をついた。

「そういうことだね。ちょっと前からジャドにゴードレクの一味がいつくようになってさ、路上で喧嘩はやるわ、酒場で暴れるわひどいもんだよ」

 

 紅茶の器を置いたクラリスが続ける。

「そうなんだよねー。しかももっと困ったことにそのゴードレクがジャドの市長におさまってるんだよねー」

 

「市長って、ジャドの執政者ということですか?」

 アルミンが怪訝そうにたずねた。

 

「そうそう、まぁゴロツキたちの頭だからそういうのを統率することができると思ったのかな。前の市長のハインツさんは割りと人気のある市長だったんだけどねー。しばらく前に別の街に向かってるときに崩落事故に巻き込まれたらしくって…」

 

「そうなんですか、それはお気の毒でしたね」とエレン。

 

「本当に残念だったよー。それでキグナスさんが市長室の机からゴードレクを次の市長に推薦するっていうハインツさんの書状を見つけたっていうことで、そのままゴードレクが次の市長になったってわけなんだよねー」

 

「ゴフッ、そのキグナスさんというのはジャドの駐屯兵団のトップで、憲兵団から出向されているのでござるよ」

 

「それでゴードレクのほうからもゴロツキたちにはおとなしくしているようには言ってるらしいんだけど。これが一向におさまらなくてこっちも困ってるんだよねー」

 

「俺とクラリスはああいう荒くれものにも対処できるんだが、ヤークトなんかはビビっちまって使い物にならないしな」

 

「いやぁ、面目ござらん」

 とヤークト。

 

「まぁ暴力沙汰の対処だけが仕事じゃないし、ヤークトはそれ以外のところでがんばればいいんじゃないのー」

 クラリスが言った。

 するうとヤークトが黒縁のメガネをクイっと上げていう。

「まいったでござるなぁ。クラリス、拙者は妻を娶ろうという気はゴボォッ!?」

 ヤークトは再びクラリスの右拳をわき腹にめり込ませて机につっぷした。

 

「こういった問題は、トロスト区ではあまり聞きませんけどね」

とアルミン。

 トロスト区はかなり大きな街で、巨人からの侵攻に対処するためかなりの兵力が割かれている。

 それが起因するのか、野党や暴力沙汰などの問題はあまり聞いたことがなかったのだ。

 

「まぁトロストなんかの外縁都市ではそうかもしれないな」

 とミーシャ。

「しかしジャドなんかのほかの街と隔絶したところではそうはいかない。

野党やゴロツキなんていうのはえてして警備が行き届いていないところを狙うものさ。

だからこのジャドやほかの遠方の町はまだまだ治安が悪い、あるいは悪化しやすい性質があるわけだ。

まぁだからこそ俺たちが駐留して治安維持につとめてるわけだよ」

 

「しかし理解に苦しみますね」

 とエレン。憤懣やるかたない様子である。

 

「今も壁の外から巨人が侵攻してくる可能性は依然としてあるんですよ?なのに壁の中の人間が争いあっていては、逆効果だ」

 

「気持ちはわかるが、それも仕方のないことというものさ」

 とミーシャ。右手の人差し指を振って続ける。

「人は遠くの壁の向こうのできごとにそこまで気を回すことはできないことが多いのさ。ただ目の前のことをまず処理しようとする。目の前の危惧や欲望に向かいやすいんだよな。みんながみんなそういうわけじゃぁないだろうけどね」

 

「それは、理解できますが」

 言って。エレンは目の前の紅茶の器に視線を落とした。

 

「誰もがエレンたちみたいに人類全体のことにまで視野がまわらないってことだよねー」

 クラリスが言って紅茶の器を口に運んだ。

 

 話していると、ジャドの街のほうから兵舎のほうへ二つの人影が歩いてくるのがわかった。

 見ると、一人は兵団員の服装をしていて、もうひとりはえらくごちゃごちゃとした服装である。

 

「あー、キグナスさんおかえりなさーい」

 クラリスが二人に気がついて手をふる。

 

 キグナスと呼ばれた男が小さく手を上げると、もう一人の男のほうを向いた。

「ではゴードレクさん。私はこれで」

 

 どうやらスキンヘッドの男がゴードレクという男らしかった。

 ゴードレクはのけぞって笑って何か一言二言言うとジャドのほうへ引き返していった。

 

 キグナスがエレンたちのいるほうへ歩いてきていった。

「そとから来た兵団員たちがいるというのはもしかして君たちか?」

 

 キグナスがアルミンたちに尋ねる。

 キグナスという男は茶色の髪を側頭部を刈り上げている身長180cmほどと長身の男だった。

 そしてその制服の兵団章は一角の馬のマーク。憲兵団の兵団章である。

 

 エレンたちが立ち上がって挨拶すると、

キグナスは右手に持ったバスケットをテーブルの上においた。

 

「酒場のアンナから話を聞いたんだが、どうもジャドの問題を処理してくれたらしいな。感謝するよ。

これはアンナから君たちにと、揚げたシカ肉のサンドイッチだそうだ」

 

「おお、ありがとうございます!」

 エレンが喜色を含んで礼を言った。

 トロスト区へのちょうどよいみやげができたわけである。

 トロストの兵士たちも喜ぶことだろう。

 

「キグナスさーん。そろそろ訓練の時間になりますよー」

 とクラリスが言った。

 

「ああ、わかってるよ」

 それを聞いてキグナスが思いついたような表情をする。

 

「よかったら君たちも参加してみないか?ジャドの北の巨大樹の森を立体起動で流す予定なんだが」

 

 言ってキグナスは左手のもうひとつのバスケットを持ち上げて見せた。

「酒場のアンナがこっちにと作ってくれた鹿肉のサンドイッチを賞品につけよう」

 

 ヤークトがキグナスのほうを見ていった。

「なにをおっしゃいます。キグナス殿は訓練兵でも立体起動はトップだったと聞いてござる。そのサンドイッチもあなたの総取りでござろう」

 

「いやいや、俺が勝てばジャドの兵団で分けよう。それにこちらには土地勘があるからな、ハンデもつけよう。それに最近ジャドの北で暴れ熊が出るという話があるからその見回りもかねてということになるな。どうするね?」

 キグナスは憲兵団所属であり、ということは訓練兵団時代に上位10名に名を連ねていたことを意味する。

 そのキグナスに土地勘のある地形でいい勝負になるかは疑わしかった。

 ただ単にレースをしてみようという提案にはひかれる響きがあったし、ジャドの森を走り抜けてみるということにも多少の興味がある。

 

 エレンたちにミーシャが言う。

「あまり肩肘はらずに楽しんでくれればいいんじゃないかな。軽い気持ちで参加してくれていいと思うよ」

 

「まぁまぁミーシャ殿、無理強いはよくないでござるよ」

 ヤークトがメガネをクイっとあげながら言った。

 

 エレンはミカサとアルミンとクリスタに目配せするとキグナスに言った。

「いえ、訓練と見回り、是非参加させてください。よろしくお願いします」

 

 キグナスがエレンに答えていった。

「よし、じゃぁ決まりだな。立体機動装置は兵舎にあるものを使ってくれていい。準備ができたらさっそく出かけよう」

 

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