エレンの右手では小さい黒球が転送しますか?転送しますか?と点滅する。
エレンは両手をつよくにぎりしめ、ウォールローゼに向かって疾走する。
眼前のはるかかなたには、ウォールローゼの巨大な壁面が見えていた。
エレンが走っているとまたしても地面が暗く染まった。
エレンは走りながら上空を見る。
「なんだ?あれは?」
エレンの見上げた上空に巨大な、さきほどの巨人よりさらに巨大な巨人が見えた。
その巨人の両脇には何か伸びている。翼だろうか、巨人が空を飛んでいるのか?
その大型巨人が両腕に抱えたものをはなした。
すると大型巨人にかかえられた数体の巨人がパルテア区の街に落下してきた。
エレンのずっと後方に、ドチャ、ドチャ、と音を立てて巨人が落下する。
エレンはそこまで見て、走った。
あれだ。さっきの巨人もああやって侵入させたのだ。
あの巨人は壁を超えることができるのか?いや、できるのだ。こうしてパルテア区に巨人が侵入しているのだから。
エレンが走っていると、ズシンズシンという足音が聞こえてきた。
背後、その近くに巨人がいる。
そのとき、エレンの正面から高速で何かが飛んできた。
それは立体機動装置を装備した兵士たちだった、
アンカーを建物に打ち込み、背部の高圧ガスで高速移動する。
巨人と戦うために必要な立体機動だ。
その人影が見えたと思ったら、瞬間でエレンを通り過ぎて背後に疾走していく。
交差ぎわに早く逃げろ!と叫ばれたのがわかった。
今彼らは市民がウォールローゼ内に避難できるよう、巨人をひきつけ、討伐しようとしているのだ。
走りながら後ろを振り向いて高速ですぎさった兵士たちを見た。
と、建物の上を高速で立体機動していた兵士のひとりの横から、5Mの巨人が巨大な腕を高速でふりおとし、
その兵士を叩き落した、バチンという音がして建物の上に血液が飛び散る。
くそっ!立体機動装置を使ってなお、巨人は凶悪だ。
エレンは向き直って走る。背後から悲鳴が聞こえた。
走って、走って、ウォールローゼまであと半分くらいまでの場所まで来た。
右手の黒球は転送しますか?と点滅している。
両足に力を入れながら頭をよぎる。なんだ。転送って。
首尾よくウォールローゼにたどりつけたとして、その後どうする?
当然、立体機動装置を装備して、パルテア区にもどる。
やつらを、巨人どもを殺すのだ。
走っていると、背後からドシンドシンと音がするのが聞こえてきた。
後ろを振り向くと、5Mの巨人が薄く笑いながらこちらに走ってきているのが見えた。
心臓がさらに収縮し、フッと息が押し出される。
エレンは足に力を込めた。
さっきの兵士たちはどうした!?もう全員やられたのか?
それとも巨人に振り切られたのか?
いずれにせよだ。あの巨人は自分を狙っている。食おうとしている。
エレンの背後30Mに巨人が走ってくる。
エレンは逃げる。巨人の速度は人間の走る速さとは比べ物にならない。
エレンの右手では黒球が点滅する。