The egoist 作:阿蘭
「被告人に判決を言い渡す…」
ああ、俺は…
「死刑」
なんのために生きたのか…わからない。
死刑と決まってから帰った独房は、行きしに見たものとまるで違っていた。それは絶望に包まれた空間であった。これまで僅かばかりの希望が残っていたが、もはやそれも潰えていた。
《ふ…う…ろ》
幻聴だ。きっとショックが大きすぎたのだろう。自分が客観的な存在、第三者であるように思われた。
「俺も…焼きが回ったな…」
《ふ…しゅ…し》
声は少しずつ近くなってくる。
《ふく…う…ろ!》
それは暗闇のなか近づいてくる。
《復讐しろ!》
そうだ、それもいいかもしれない…自分の心が微かに高揚していくのがわかった。
《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》《復讐しろ!》
誰に?
《社会に》《世間に》《屑どもに》《万物に》《希望に》
《命に》《神に》《法廷に》《全てに》《奴に》《人に》
その声は男なのか女なのか、それもわからない声である。
そうだ、復讐だ。
《復讐しろ》《報復しろ》《根絶やせ》《刈り取れ》《殺せ》《破壊しろ》《果てさせろ》《血の海に静めろ》
その声は囁き続けた。
《世界を絶望に染めあげろ》
知らない間にくっくっと笑っていた。
その時、自分の目が爛々と輝いているように思われた。
「ああ、全てを、この俺を殺そうとした世界を…」
破滅させてやる…
俺が、この手で
きっと、必ず、いつか。
死んでもこの恨みは、、、
その時、胸に強烈な痛みが襲った。自分の体が無様に地面を転げ回っていた。
ざまぁねぇ…意識が急速に薄れてゆく。冤罪をかけた社会を潰すと決めたのに、決めたばかりなのに…
ゴホッ、ゴホッと咳が漏れ出る。
痰が喉に絡む。吐き出すとそれは血の塊であった。
自分の死が迫ってきているようにしか思われなかった。
「悔しい…悔しいよぉ…」
口から地が吹き出る。血を見た瞬間だけ、自分が生きていることが理解できた。
「かっ…は…」
口から血が出続ける。ゴポッと奇妙な音がした。
口からまた血が溢れ出た。それはとめどなく、自らの口から流れ出ていた。
悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、くやっ…
すべての意識が闇に消えた。
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