真・カンピオーネ無双 天の御使いと呼ばれた魔王 作:ゴーレム参式
なお、登場する邪神はMUGENのあの方です。
それではどうぞ。
天の御使いと這い寄る混沌
人というのは幻想を観ずにはいられない生物である。
と、私はそう解釈している。
老若男女問わず誰しも理想・欲望・夢・希望といった幻想を内側に秘めているもの。
そして、人間というのはそんな幻想を現実にするために生きているいって過言ではない。
例えば、
ある者は理想の為、己の信念に従い道を進み、
ある者は欲望の為、他者を蹴落とし己の色に染め上げ、
ある者は夢の為、苦難に立ち向かいながら努力し、
ある者は希望の為、己の望みを叶うまで願い続ける。
善悪問う・問わず、操り人形のように幻想に踊らされる生き物たち。
実に滑稽で健気で愚かで醜く卑しく勇敢で、そしてなにより、愛おしいのか。
まぁ、がどれほど評価したところで、所詮彼らの行動原理は幻想でしかないけど。
どうしてかって? だってそうでしょう?
幻想というものは所詮は幻想。
想いの幻と書いて幻想。光よって消える幻。
夢幻の如く儚く消える泡沫の夢。
それが幻想の本質。
故に幻想というモノは現実に存在しない。
どんなに気高い理想を抱こうとも、
どれだけ邪な欲望を抱こうとも、
どれほど大きな夢を語ろうとも、
必ずしも実現できるものではない。
残酷な現実が、覆されない真実が、潰えたという事実が、押し寄せる荒波の如く彼らの幻想を飲み込み、
それ故に幻想は己自身の中身でしか生きられないか弱いもの。
『胡蝶の夢』という話がある。
パタパタと羽を羽ばたかせ飛ぶ蝶を自分が観る夢。
しかし、その光景を認識して観ているのははたして人間の自分だろうか?
それとも、蝶が人間の自分を観ているのだろうか?
どちらが夢で、どちら見る側なのだろうか?
そんなことを延々と考えるチンプンカンプンな御話。
もっとも、そんなもの、どうでもいいことだ。
なにせ、人間の自分も蝶も、それが夢だとを認識してる時点でそれは夢でしかないのだから。
たとえ、目を覚ましたとしても、その夢が終わるだけ。
それだけのこと。
幻想なんて外に出せば死んでしまう脆弱な存在でしかない。
たとえ幻想を現実にしても、それがその幻想の終わりを意味する。
そう、幻想の実現は、幻想の死であり消滅を意味している。
あぁ、なんとも儚く脆く、それにいて残酷な結末だろうか。
ならば、幻想など観ないほうがいい。
ただ、今の幸せを噛みしめて生きればいい。
幻想という甘い麻薬を断ち切り、むなしく天寿を全うすればいい。
さすれば安泰な平穏が送れるはずだろう。
…もっとも、それでも人は幻想を観てしまう。
なぜなら、人は幻想という怪物に食い殺されてしまったのだから。
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俺、北郷一刀はただいまトラブルの渦中にいた。
ことのはじまりは旅の途中、オーストリアのとある草原を歩いていたら、いつの間にかジャングルのような場所に居て、必然的にサバイバル生活をに強いらげたところから始まる。
サバイバル生活の三日後、体力の限界で生き倒れていたところ、謎の銀髪シスターに助けられ、数日ほどシスターと教会で(同棲)生活するも、食事中シスターが唐突に「突然ですがカズトさん、あなた攻略不可能な迷宮で宝探しするのに興味おありデスカー?」と分からないことを言い出したと思ったら、どこからいきなり落とし穴に落とされ、謎の地下迷宮に放り投げられてしまった。
なにを言っているのか理解できないため現在の状況を一行で説明すると……
「………出口どこ…(涙)」
ただいま、謎の地下迷宮で迷子中(汗)。
電灯や火の灯りもない長く続く石造りの通路を重い足取りで歩く。
薄暗い空間を謎の苔のようなモノが薄く青白く光っているためうっすら見えるが、通路の先は見えない。
しかも…、
シュッパパパパパパパ!!
「おっと」
突壁から数百の矢が飛んできたが、躱しながら進む。
そう、この迷宮にはいくつもの罠が待ち構えているのだ。
これまで多くの罠が待ち構えていた。あるときは、太くて鋭い針天井が落ちてきたり、両側の壁が迫ってきたり、巨大な岩が転がってきたり、角と蝙蝠の羽を生やした黒いのっぺらぼうな怪物とかゾンビみたいな化け物とか肉肉しいスライムとか青い液体をまき散らす猟犬とかツナギを着たイイ男とかヤラシイ触手に物理的兼生理的に襲われたりとかエトセトラエトセトラ・・・・・・・・・・・・・・・・
「…ほんと、どうしてこうなった?」
その言葉を何度も自身に問う度に、俺はこの現状の原因であるあの自称帰国系銀髪シスターが脳裏に浮かんだ。
普段から怪しい――というより胡散臭い雰囲気があったけど、根っ子は良い人でなんというか子犬属性のかまってちゃんだったからつい気が緩んでたけど、まさか、こんな危ない場所に放り出すなんて…。
そういえば、俺を落とし穴に落とす際、宝差しに興味ないとか言ってたけど、もしかして最初っからこの迷宮に送り出して、宝を見つけさせるためにわざと優しく接していた?
いや、そんなことない。
だって、行き倒れていた俺を拾って看病してくれた上、俺の
それにあの人、いかにも嘘をつかない、というか嘘が下手でバレバレだから何かと裏があればすぐに表に出すからこんな用意周到な策略を考えるタイプじゃないはずだ。
食事のときなんか、味わったことのない料理が出たときに、この食材は何ができてるかと聞いたら露骨に目をそらしてたし。
俺がひとり森で散歩してたら頭上の空で何か蝙蝠の羽を生やした大きなモノが飛び去ったことを話したら「ききき、きっとこの地に住むUOMネ‼ そいつ人食いだから食われなくってほんとよかったデース‼ ――あのバカ鳥後でシメル(ボソ)」って、俺の事心配してくれたし。
お風呂のときなんか風呂場には俺一人しかいなかったのに突然瞬間移動したみたいに現れて「うっふふふ、せっかくだから裸の付き合いしましょうネー///」って頬を赤くながら光のない紅の瞳で俺の身体を―――
…って、あれ? 思えば怪しすぎじゃねぇ?
改めて考えてみれば、こんな精神が狂いそうな摩訶不思議な森にたつ教会で一人で暮らしている時点でもう怪しすぎるし、あの蝙蝠の羽を生やした生物も何か知ってた様子だし、風呂の時だってアノ眼、性的というか悪意的な視線を放してたというか……――
うん、考えるやめておこう。
とりあえず、今この現状を打開することに専念しよう。そうしよう(現実逃避)。
うんでもって迷宮から出たら絶対あの爆乳揉む。お風呂のときは理性が働いたおかげで【ニャーン】は阻止したけど、この狂気と生存本能に従って生き延びよう。そして思う存分揉みまくろう。
SANチェック? イイ男が「やらないか?」と聞いてきた瞬間から10は減ったわ!
「ふぅ、にしても、数日間暮らしていたけど、まさか教会の下にこんな地下迷宮があるなんて…」
教会の中はほとんど熟知したつもりだったが、よもや食事の時に俺が座る椅子に落とし穴が仕掛けられていたなんて考えられなかった。いつのまに作ったあのシスター?
「とにかく、早いとこ出口を探さないとマジで死ぬ。罠の数が増えるし、段々精神が狂ってきてるし…」
探索してからというものの、一向に出口とシスターが言ってた宝が見つからない。しかも、この不気味な地下迷宮。このまま彷徨っていたら気が狂いそうだ。ただでさえ、食事前に放り込まれたから食料なんて持ち合わせてない。あるのは落とし穴に落とされるときに掴んだ銀製のフォーク一本のみ。
これでどう生き残ればいいんだ?
それに、あのツナギとまた合ったら逃げ切れる自信がない。今度こそ(貞操と精神が)食われてしまう!?
え? 怪物はどうなんだと?
アレに掘られるくらいなら怪物に(食料的な意味で)食われたほうがまだマシだ!
……死ぬつもりは元からないけど。
「とりあえず、あのツナギと出くわさないよう出口を探さないと…」
無闇に動かないほうがいいが、貞操を守るためだ。
とにかく真っすぐ進めば何かがあるはず――
ガチャ♪
……あれぇ~なんだろう~足元の床を踏み押したようか感触が…!?
パッカン♪
その瞬間、硬い床が一瞬にして消え、俺の足元には一条の光もない奈落の底が出来上がった。
「…――またかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
重力の法則に従い、俺はまた奈落の底へと落ちるのだった。
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「うぅ…うぅん…?」
身体が思いと感じながら北郷一刀は意識を取り戻した。
落とし穴に落ちた際、気絶していたらしい。
「二回も落とし穴に落とされるなんて……」
溜息を吐きながら、一刀は立ち上がり周りを見渡す。
そこはホテルの会場並みの円状の広い空間だった。灰色の石壁には怪しげな文字と装飾が施され、周囲には怪しげで不気味な造形をした巨大な石像が立っている。その手には火が、この広い部屋を明るく照らしていた。
一刀が部屋の中心に目をやると、何かが刺さっているような金属質のような四角い祭壇があった。石像に火に照らされ、滑らかに反射している。近づいて観ると祭壇にも席壁に描かれた文字が刻まれていた。とくに、何かを象った扉の形をした彫刻が彫られており、触ると金属の感触で、冷たい。
そして、祭壇に刺さっていたのは銀色の《鍵》だった。
祭壇に刺さってる部分を除いても、玄関や車のドアに掛ける鍵より三倍ほど大きいと予想される。
また、鍵自体も部屋と祭壇のように文字と文様の彫刻が施されている。
形からしてディンプルキーに似ていた。
「なんだこれ…?」
一刀は垂直に鍵を引っこ抜く。
鍵はスムーズに抜けた。
銀色に輝く謎の巨鍵を見詰めながら考えていると……
「おおお~! さすがカズトさんネー。よもやソレを見つけてくれるとは! 私の目に狂いはなかったデース!」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
とっさに振り替えるとそこにはシスターらしき女性が数メートル先に居た。
「ナイア? なんで君がここに…?」
――『シスター・ナイア』。
北郷一刀が行き倒れていたところ彼を助けたシスターである。
銀髪に焔のような紅い瞳。豊満な胸に胸元を開けた修道服を纏い、知らない人が見ればミステリアスな雰囲気を放つ美女として見えるだろう。
ただし、外見と裏腹にハイテンションかつメタらしいことを口ずさむ、兼艦ゲーの提督LOVEな帰国少女というギャップの持ち主だ。
そんな彼女に、一刀は真剣な表情を装いながら内心警戒していた。
なぜなら、出入り口がない部屋に気づかずに現れるなど、ただの一般人ではないことは明白。
一刀は恐る恐るナイアに問いかける。
「…ナイア…おまえは一体…」
「ふふふふふ、我はナイア。でもナイアで非ず。コレは私の一面でしかありません」
その瞬間、部屋の空気が変わった。
ナイアという女性が黒い霧のように霞む。
まるで生きた《闇》のように、漆黒が蠢いていた。
そして、暗き闇には三日月のように吊り上がった口と紅く燃える焔の三眼が浮かんでいた。
「我は混沌。永劫無限に続く根源の
シスターの姿を真似た黒き異形は冷たい声で告げた。
「人は我をこう呼ぶ…。混沌の邪神《ナイアーラトテップ》と」
「ナ、ナイアーラトテップ!?」
――ナイアーラトテップ。
別名ニャルホッテップと呼ばれるクトゥルフ神話に登場する邪神。
無貌で千の貌と千の化身にもち、世界を恐怖と混沌に陥れる主神アザトースの使者。そして、すべての事象を嘲笑い、己の愉悦のためなら、人間だけでなくと同類の邪神さえ陥れるという最悪最低な混沌の神性である。
そのため、人間や邪神たちはその邪神を畏怖と敬意を評して言う…《這い寄る混沌》と。
そして、その邪神が今、一刀の目の前に居る。それも数日間暮らした女性だった事実に一刀は驚きを禁じ得なかった。
学生の頃、一刀は多少なりにクトゥルフ神話は知っていた。そのため邪神について多少なりに知識をもっている。
しかし、クトゥルフ神話はあくまで創作物のはずだ。それに、登場する神だってゼウスやオーディンとか、歴史的に有名な神々と違って、複数の作家たちが創った架空の神だ。
たとえ、英雄が全員美少女という三国志の世界に行ったことがあるとはいえ、まさか、現実世界で神――邪神が現実に存在するなんてありえない。荒唐無稽すぎる。
一刀が困惑しているとナイア――という女性に再度固定した邪神は、察して言う。
「ソーデース! ただし普通のまつろわぬ神じゃなく、中身は
「まつろわぬ神? 地上の神話?」
「HAHAHA! カズトさんには関係の無い話デース! なぜならカズトさんはこれからBad endingを迎えるのデスから…」
顔が影に隠れ、うっすらと赤い眼光を光らせるナイア。
すると、彼女の足元の影から漆黒の棺桶が飛び出した。
黒い棺桶の蓋が自動で開くと、棺桶の中は闇一色…否、闇そのものが泥のようにあふれ出す。その闇より、ナイアは片腕を突っ込み、闇の泥から一本の大剣を取り出した。
成人女性の身長より長く、重量感のある片刃の大剣。それを小枝のように片手で軽々と振るう。
「さぁ、その鍵を渡して。抵抗したら殺すけど、素直にしてくれたら私の愛玩性奴隷にしてあげてもいいのよ?」
「…一体なにが目的だあんたが動いてるってことは何かやましいことでも考えているのか?」
「うっふふふ、私は混沌の化生。邪神らしく世界を混沌と狂気の渦に巻き込ませるのが仕事よ。まぁ、何度も肌を合した男性ですから、今回は無償で教えてあげましょう」
「いや、肌合わせてないだろう。ほぼ未遂だろう」
一刀に冷静にツッコミを入れるも、ナイアは微笑みを向けながら冷淡な口調で言う。
「私の目的は同類の邪神および古今東西の神話の神々を全員地上に顕現させ、戦わせること。その名も『神話大戦』を起こすことなのデース」
「神話大戦…!? 内容が大きすぎて理解不能だけど、とつもなく大惨事がおきそうな予感が…。むしろ、どうしてそんなことをするんだ…!?」
「理由は5つあるわ。①面白いから。②楽しそうだから。③刺激が欲しいから。④プライドの高い神々を屈辱と恥辱と凌辱を尽くして絶望のどん底に突き落としたいから。⑤気まぐれな邪神の思い付き♪」
「そんな理由で…いや、混沌の名を冠する邪神さまらし行動原理かもしれないな。めちゃくちゃだ」
「ありがとう。邪神にとっては褒め言葉よ♪」
「褒めてない! でも、まだわらかない。どうして俺を助けた? もしかして、この鍵と関係があるのか?」
「えぇ、すこしは。ここからちょっとっむずかしくなるから順番ずつ教えるわ。まず、ワタシの計画を進めるには最計画の要であり、登場人物の神々を召喚しなくいけなくてね。この世界の法則を使っても召喚することもできるけど、それだと骨が折れるのよ。下手に動くと、真の神とか現在の魔王たちにバレそうだし。そこで私は銀の鍵を使うことにしたの」
「銀の鍵…って!? もしかしてこれってあの銀の鍵か!?」
――『銀の鍵』。
クトゥルフ神話に登場するアイテムで、外なる神《ヨグ=ソトース》と対面するための窮極の門を開くことができる鍵である。
そんな危険なアイテムが手に持っていることに一刀は取り乱す。
そのリアクションにナイアはクスクスと嗤う。
「銀の鍵がもつ次元を操る権能。それがあれば、無条件で神を招来させることができる。いいえ、むしろ不死と生の境界を無くし現実と幻想を融合させることも可能。そうなれば、この世は筋書の無い新たな混沌神話がはじまるの」
まるで好きなアニメをまちのぞむ子供のように無邪気な笑顔を見せる。
すると笑顔から困った表情へ変えて語り続けた。
「銀の鍵の在処が生と不死の境界にあることはわかって、すぐに探したんだけ見つからなかった。でも、そんなときあなたが現れた。私がなんの手順もしていないのにもかかわらず」
「…俺と出会ったのは偶然だった…?」
「えぇぇ。他の神どもに邪魔されないよう銀の鍵がある領域をン・ガイの森で隔離してたのに、あなたはなんの予兆もなく私の領域に現れた。いいえ、導かれたほうが正しいでしょう。あなたは銀の鍵に選ばれた人間だもん。わたしにとってはまさしくチャンスだと思ったわ」
「それって運命っていわないか?」
「ふふ、この世に必然なんて無いわ。すべては偶然で構成されている。たとえそれが誰かか介入した
そう言って大剣の剣先を一刀に向ける。紅い瞳が一刀を直視する。
その視線に殺意と悪意が混じり合っていた。慈悲など感じない。下手に拒否すれば、躊躇無く殺す眼だ。数日間暮らしただけの一刀だが、彼女の性格をほとんど熟知していた。彼女は冗談や嘘は吐くが、ヤル時は一直線にやり遂げる女だ。
一刀は額に汗を一筋流し、冷静に質問をする。
「ナイア、もしも、君がこの鍵を使って他の神さまたちを呼んだら世界は…人間はどうなるんだ?」
「…最悪、絶滅するわね。神にっとって人間なんて下等で無価値な石ころしか思っていもの。下等生物がどうなろうが知ったことじゃないわ。むろん
「…そう…」
素直に回答したナイアに、一刀は一瞬悲しげな表情をみせも、すぐさま覚悟を決めたかのような真剣な表情で鋭い視線をナイアに向けた。
銀の鍵を持った左手を後ろへ、右手を拳を作りながら膝を前に突き出し、下半身をどっしり構える。
その身体から拳に通じて闘志のオーラがにじみ出る。
「そう、それがあなた答えなのね。残念よ、あなたこと大好きだったんだけど…ねッ!!」
刹那、ナイアは地面を蹴り、一気に距離を詰めた。
その加速を合わせ、一刀の頭上に大剣を垂直に振り下ろす。
分厚い刃が、一刀の身体を縦に両断――
「――破ッ!!」
「がっは!?」
するはずだった。
分厚刃が当たる直前、一刀は身体を横に数センチずらして振り下ろされた大剣を避ける。それと同時に一刀はナイアの腹部に拳を突き出し、ナイアの腹に拳をめり込ませる。
鋭く重い拳にくの字に曲がったナイハはそのまま後ろの壁側まで吹き飛ばされた。
突然、何が起きたのか邪神でさえ分からず、(ダメージはないが)身体を起き上がっても、その頭はいまだ困惑に陥っていた。
「あれ~どうなってるんデスカ? 本来の神格を出してないといえば格ゲー用の化身だから一般人ステータスのカズトさんの攻撃ナンテ屁でも無いはず…!?」
「…前に俺の御伽話を話しただろう? 実はアレにはまだ続きがあるんだ」
それは普通の高校生の青年が三国志に似た世界へ旅立った奇怪な物語。
そこは英雄たちが美少女になった三国志の世界。青年は武将の少女たちと出会いと別れを繰り返し、最後に彼女たちに道を指示し、元の世界を帰った冒険。
しかし、青年の御伽話はまだ続いていた。
元の世界へ帰った青年は、自身の弱さと不甲斐無さに憎くみ悔しがり、そして、悲しんだ。しかし、青年かいつまでも過去にとらわれるほどネガティブな人間ではなかった。弱い自分を変えるために実家の道場の祖父に頼み込み、修業し心身を強く鍛え上げた。
そして、修業を終えた青年は己の新たな道を探すため世界へと旅に出た。
新たな道を探すため、胸に空いた空白を埋めるため、定まらぬ幻想を求め彷徨い歩く。
「もう二度と…理不尽な力に屈しないために、また中途半端な結果に後悔しないために、俺は
拳を固く握りしめ、ナイアに睨みつける一刀。
地面を蹴り上げ、一気に加速。その瞬発力でナイアとの距離を詰め、そのまま拳を正面から放つ。
「そのために、おまえの計画で世界を壊させるわけにはいかないんだよ!」
「のっわ!?」
当たる直前はナイアは横に避けるも、一刀の拳が後ろの壁に直撃する。
壁は罅割れし、まるで爆破したかのように石壁の破片が飛び散った。
「ちょっ、あなたはどこぞの問題児様でございましょうかーッ!?」
一刀の出鱈目な身体能力と戦闘能力にすこしビビるナイア。
一刀が殴り蹴りでを繰り返し攻める。
ナイアは大剣と巨大棺を使って応戦。棺を盾にしてガード、また、ロケットパンチのように放ち、大剣を振り回す。だが、一刀は臆さず攻撃を緩めない。分厚い刃と鈍器を紙一重で避け、瞬時に彼女の胴体に重く・早く・鋭い一撃を何度も捉えられ、トラックが激突したかのような衝撃がナイアの肉体に蓄積する。
このままでは…、責められ続けたナイアは慌てて黒棺に入ると棺ごと消えた。
すると今度は、棺が一刀の背後から20メートル放たれた場所に出現し、棺からナイアが出てきた。
「ぜぇぜぇ、格ゲーの化身をこうもダメージを与えるとは…どうやら天の御使いの特権もとっくに発動済みということデスカ…」
とっさに瞬間移動で距離を話したナイア。しかし、疲労のあまり片膝を床につき、息を整える。
物理的なダメージだけでなく、精神的に追い詰められ、汗が多く流れ屈辱で貌を歪める。
ただし、口元は嬉しそうににやけていた。
「仕方ありません。少々癪ですがこの世界のルールに従って私も全力で逝くデース! ってゆうかはじめっからクライマックスだぁぁぁぁ!」
大地を引き裂くような激しい慟哭が、奈落から押し寄せるような重圧な怒号が、室内に木霊する。
その奇声に耳を塞ぐ一刀は観た。
ナイアの身体が分解され、黒い‟何か”へと再構築されていく様子を。
ナイアだったモノはプランクトンのように複数の黒い異形へと分裂しはじめる。
あるモノは眼と口から火花を零すカボチャ頭の亡霊。
あるモノはその身を焔で燃やす巨大な木偶人形。
あるモノは額に極太の一本角を生やした牛。
あるモノはエジプトの王の風格を持った予言者。
あるモノは息を荒くする傷だらけ獅子。
あるモノは暗黒で構成されたような黒一色の男性。
あるモノは禍々しい鎧を纏った武者。
あるモノは紅いドレスを纏い冷徹な眼で見下す女王。
あるモノはチャイナ服を纏い口元を扇で隠した佳人。
あるモノは触手のような蔦を伸ばす大樹。
あるモノは配線と歯車と装甲で覆われた機械。
あるモノは童女、月神、疫病神、仏、蝙蝠、物理学者、スフィンクス、神父、風、トリックスター、方程式、悪鬼、燕尾服、像、触手、宇宙人、エトセトラエトセトラ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
千差万別。名状しがたいものたちが室内を埋め尽くす。
その数は50以上。さらに数が増える。
「そんなのアリィッ…!?」
『総力戦というなの全力全壊! 貴方は生き残れますカッ!!』
召喚されたナイア―ラトッテプの化身たちが一斉に一刀に襲い掛かる。
その光景は、真っ黒な大津波が四方八方から押し寄せるかの如く。
逃げ場のない大軍に、一刀は一瞬怖気づくが、勇気と闘志など感情を昂ぶらせ漆黒の軍団に正面から立ち向かった。
火を吐くカボチャの亡霊を頭から蹴り割る!
月神の巨大な拳を正拳で打ち砕く!
何かを計算する機械に頭突きで叩き潰す!
刀とパールのようなものを振るう武者と宇宙人の刀とパールのようなものを奪い、武者と女王と佳人と仏と複数の化身たちを残虐していく!
その姿は、まさに修羅の如し。
殺戮機械の精密さで、次々と化身たちを殺していく。
しかし、化身は減るどころか逆に増え、徐々に一刀を押していく。
ナイア―ラトッテプは無貌の神にして千の貌の神。その異名通り千の化身をもつ邪神である世界の数だけ新しく姿を変えるため化身もそのたびに数が増える。おそらく、人間が未だ知らない化身を含めれば、ほぼ無制限だろう。
そして、化身すべてがナイア―ラトッテプの一部のため、どれだけナイア―ラトッテプの一部を殺しても他の個体が存命していれば『ナイア―ラトッテプ』という存在は決して滅びはしない。
殺したくば、滅ぼしたくば、『ナイア―ラトッテプ』のすべての貌を、すべて同時に殺さなくてはいけない。
「ウッぉぉぉぉォォォオオオ!!」
鬼神の気迫で、次々と不形体の怪物たち殲滅していく一刀。
幸い、化身たちは互いにコンビネーションを合わせず単騎で攻撃してくるため、同士討ちやフェイクでなんとか迎撃ができる。
が、このまま永遠と人海戦術で攻められれば負けるのは、やはり人間である。
どれだけ強くなっても所詮は貧弱な生物。人外な身体能力を身に着けた一刀でもあっても、生物としての限界がある。
しかも、相手は無尽蔵並み攻めてくる群集。
力尽きたら最後、化身たちにぼろ雑巾のように暴殺されるのは明白。
この絶望的な状況に、一刀は思考回路をフル回転させ打開策を模索するも徐々に体力の限界が近づく。
「くっそ! このままじゃ…!?」
まさに絶体絶命のピンチ。
この危機的状況を打破しようと頭をフル回転するが、絶え間なく流れてくる怪物たちは考える暇さえ与えない。
焦りと体力消費で攻めが弱まりつつある、その時だ。
絶望の黒い荒波に希望の光が差しこんだ。
『――力が、欲しいですか?』
「えっ?」
突然の声に一刀は一瞬呆けた。
取り囲む触手と怪物を刀で斬りながら声の主を探すが、周りには化身たちの奇声しか聞こえない。
『ここです。あなたの左手』
左手の…銀の鍵を観た。
銀のボディーに紅いラインの光を放ちながら銀の鍵から「ここですよ~」と少女の声が聞こえてくる。
「銀の鍵がしゃべった…!?」
『――答えてください。汝、かの混沌を葬る力、欲しますか?』
驚く一刀に無視して、少女の声が冷淡に質問する。
混沌の邪神に続き、今度は銀の鍵がしゃべった。もはや一刀の頭は困惑と混乱で頭が回らなかった(それでも身体だけは襲い来る化身たちを殺しているが)。
しかし、銀の鍵は『早くしないと、死んじゃいますよ』と一刀の回答を待ち望んだ。
状況がいまいちど解らない一刀は、周りの化身たちを倒しながら数秒考え……
「俺が欲しいのはアイツを‟殺す力”なんかじゃない。今、必要なのはアイツと‟正面から戦う為の力”だけだ!」
と、銀髪美少女の化身の頭をパールでカチ割りながら、大声で答えた。
すると、銀の鍵は数秒ほど沈黙したのち、言葉を発した。
『・・・・・・いいでしょう。我もナイア―ラトッテプに利用されるのは嫌ですし、その願い叶えてあげましょう』
その時、銀の鍵は銀色の極光を放つ。
あまりにも眩しさに一刀は目をつぶり、その光に触れた化身たちは断末魔を上げながら泥のように溶けだした。
『な、なにがおきたんでやがりますか!?』
『これにて契約は成立しました。我『ウムル・アト=タウィル』の契約者《北郷一刀》。汝に祝福の歌、憎悪の狂気があらんことを』
突然の自体にナイア―ラトッテプは混乱する。
銀の鍵は心臓のように鼓動し、緩まっていた一刀の左手から離れる。
すると、鍵は一刀の胸に吸い込まれた。
「銀の鍵が俺の中にッ…!?」
『まさか、ありえない! 銀の鍵が人間と同化するなんて! しかも、なんで
ありえない現状に困惑する両者。
すると、一刀の脳裏に謎の呪文とイメージが浮かんだ。
「……こいつは…?」
銀の鍵の融合の影響なのか、一刀はその謎の呪文を理解した。
そして、使用した後のデリメットも…。
だが、一刀は覚悟を決め、突然の事態に困惑するナイアーラトテップに告げる。
「――ナイア、死にたくなかったらはやく逃げろ!!」
『ッ!?』
一刀は目を閉じ、熱く澄んだ声で言霊を紡いだ。
――絶望の地に堕ちしは折れた魔を断つ劔。
――侵され、犯され、冒され、殺され、壊された骸たちは折れた劔に縋り付く。
――希望をくれと、慈悲をくれと、仇を討てと呪詛と断末魔を劔に吹き込む。
――憎悪の焔が折れた劔を熱す、哀しみの涙が折れた劔を冷やす、憤怒の拳が折れた劔を叩く。
――憎悪の空、絶望の地の境界線で、折れた劔は屍たちの怨嗟で鍛えられる。
――絶望を殺すために、希望を壊すために、世界を滅ぼすために、劔は奈落の底で再び刃を鳴らす。
――それは希望に成れなかった無敵の刃金。
――それは絶望を殺すためだけに研がれた最弱の刃金。
――森羅万象、善悪、太極、すべての可能性を塵殺するため、ここに魔を断つ劔は破壊の劔へと転生する。
――終焉無き世界に、汝新たな命生まれずと知れ!
――渇けろ、飢えろ、無に恐れ戦け!!
まるで詩を謡うに、激しく切ない声が邪神たちに満たされた空間に響き渡る。
そして、詩が中盤を終えたとき、化身たちが同時に動いた。
これだめだ!
止めなくてば!
でなければ私たちが死ぬ!
危険を察知する邪神たち。
一刀の命を刈り取ろうとするが――……
「――叛逆の旗に誓って!」
聖句は最後まで唱えらえた。
「我は世界を終わらす者なり!!」
瞬間、世界は一色の『白』に乗り潰される。
不気味な地下迷宮も、ン・ガイの森も、教会も、黒い異形も、北郷一刀も、すべての存在が白き『光』によって包まれ、世界は消滅した。
==============================
そこは何も無い真っ白い空間。森も教会も地下迷宮もすべてあったものが消失した並行地平線が続く。
そんな何もない世界に、一刀とナイアだけが取り残されていた。
「はぁはぁ…ナイア、無事か?」
「それはこっちのセリフですヨ」
意識が薄れ、倒れそうになる身体を気力だけで立ち続ける一刀。その目は焦点が合っておらず、ナイアの姿が霞んでいた。
一方、ナイアは直視する一刀の前で平然と立っていた。もっとも、彼女の修道服はほとんど焼き焦げ、柔らかな生肌は四割ほど炭化していた。
「まったくただでさえ銀の鍵と融合したとはいえはあなたは生身の人間。その身体で無限大の対消滅エネルギーを放つなんて自殺行為デスヨ。おかげでこっちまでとばっちりデス。ン・ガイの森は消失。せっかく作ったグラマーボディーが台無しですヨ。観てくださいよ、体のほとんどが炭化しちゃいました」
「悪かったな…綺麗な体だったのに傷つけちゃって…」
「ほんとうですよ。乙女の身体を傷つけた傷は重いんですカラネ」
プンプンと、頬を膨らますナイアに、一刀は苦笑する。
平然と会話をしている二人だが、お互いに長くないことは察していた。
「それにしても、貴方は可笑しな人ですネ。私を殺そうとして『はやく逃げろ』なんて。殺そうとした邪神に気を使うなどあなた、どこまで御人好しなんですカ。馬鹿ですか? アホですか? 女たらしですか」
「よ、よく…言われるよ…とくに三番目が…」
「まぁ、いいです、どうせ、私たち終わりなんですから。先ほどの攻撃でワタシの限界値が超えてしまったので、じきに身体が崩壊して、私はこの世界から死にます。そしても、あなたも。どうやって銀の鍵と融合したかは知りませんが、その命、長くありませんヨ」
「……そうか、でも、お互い殺そうとしたんだし、御あいこだよなぁ…」
あははは、と乾いた笑い後をだす一刀。
だが、ナイハはらしくもなくぶっきらぼうな顔で言う。
「…それは、嘘デス。貴方、本気で私を殺す気なんてなかった。むしろ、私を助けようとしました。私は邪神なのに。世界を凌辱する這い寄る混沌なのに。貴方を殺そうとした人の形をした化け物なのに」
左腕から胴体にかけて亀裂らしきヒビが広がっていく。 炭化した肉体が徐々に灰となり散るが、ナイアはお構いなしに澄み切った赤い瞳で一刀を見つめる。
「どうして、私を助けようとしたの? 一緒に暮らして愛着でも生まれのかしら? そうだったら残念ね。この姿は私たちの一面にすぎない。たとえ、今の私が消えてもナイアラホテップは別の個体として何度も甦る。あなたとの出会いは一時の夢としてじきに忘れるでしょう。そして、あなたとの想い出は儚く消えるの」
「…それでも、俺たちが出会ったことは消えないよ」
「………」
「・・・・・・・・・・」
「どうしてそんなに私のことを想うんデスカ? 貴方が想い続ける人は私じゃなく、貴方の
「幻想か…たしかにこれ幻想だな」
不気味な森で謎のシスターと出会い、共に平穏で珍事で楽しい生活を送り、実はシスターは邪神、最後はお互い殺し合う。なんとも荒唐無稽な物語にして、なんとも粗末なオチだろうか。
それでも…
「俺はこの
「・・・・・・・・・・」
「邪神だろうが、神だろうが、悪魔だろうが、武将だろうが、俺は君と出会った数日間、ほんとうに楽しい日々だった。桃香たちと…別れて早一年半…君はこの空いた胸を埋めてくれた。それだけ俺は十分君を想うことができる。これが自己満足で、俺の我儘だったとしても、俺はこの想い出を忘れたくない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから、ナイア。最後にお願い。……――俺、
「……フフフフフ、わかった。その願い、邪神ナイアーラトテップの名をかけ、貴方の渇望と渇きすべて受け止めてあげる…♪」
ナイアは右手で大剣を掲げた。動いただけで体の崩壊が早まる。体中の亀裂も広がっていくが彼女は気にせず一刀に微笑む。
一刀も最後の気力を振り絞り拳を構える。身体中が激痛で悲鳴をあげている。視界もほぼ見えていないはずなのに彼は正面に居る女性を直視する。
最初に動いたのは邪神だった。
頭上を剣先で円を描くと、幾何学模様と文字で構成された紅い魔法陣が出現した。
陣は邪神の背後に移動し、魔法陣は増え、巨大な陣へと変わる。
そして、ナイアの背後には魔法陣で創られた紅い壁が出来上がった。
その陣の一つ一つに凶悪な刃の剣先が数多く露出していた。
おそらく大量の刀剣を打ち出すものだと、一刀は推測した。
「これが最後の攻撃。打ち勝てるものなら打ち勝ってみせなさい!」
高々と叫ぶは、壊れかけた邪神。
彼女が動作いた瞬間、刃は一斉に一刀に降り注ぐだろう。
(さて、どうしたもんかな…?)
ナイアとの距離は少し長く、懐に入るにしても数秒はかかる。距離を詰めようにも、走る間に大量の刃で串刺しされるのは確実だ。
一気に疾走すればギリギリ懐に入れる距離だが、そのためには彼女の隙を作らねばならない。
一刀が攻略法を考えていると、ふと、懐のポケットに入れていたモノを思い出す。
一刀はポケットをつっこみ、その顔が不敵に微笑した。
「さぁ、虚構の彼方へと消えろ!!」
発射の準備を終え、とうとう邪神が動く。
剣先を一刀に振り向けた瞬間、魔法陣から大量の刃が一斉発射――
ぐっさり!!
――されるはずだった。
一刀がポケットから取り出したモノ――銀製のフォークが、ナイアの額に突き刺さった。その反動と痛みで一瞬攻撃を中断、展開されていた魔法陣がすべて消えた。
「痛ぁぁぁぁぁ!? な、なんでフォーク持って――って、これ私たちが使っていた!?」
「ナイアァァァァアアアアアアアアアアアア!!!!」
その隙を一刀は見逃さない。
ナイアはすぐさまフォークを抜くが、一刀は一直線に疾走、一気に彼女の懐に潜り込んだ。
二人の視線が交差する。それは一秒よりも短な時間の間。
一刀は身体を捻りながら蹴りの準備を、ナイアは微動せず呆然と立ち尽くす。
加速と体の捻りで生まれた遠心力を上乗せした一刀の回し蹴りが、彼女の首に直撃するまで刹那の間があった。
ナイアは一刀を慈愛の満ちた瞳を向けていた。
「フフフ…これだから人間は――」
その言葉は一刀に耳に届かない。
その顔は一刀の眼には映らない。
それでも彼女は最後まで自分を殺した男性を見届ける。
そして――
「――面白い♪」
ぐっぎ!!
鈍い音が一刀の耳に届く。
振り下ろされた死神の大鎌のような蹴りが、ナイアの首がくの字に曲げた。
蹴りの衝撃で、ナイアは数メートル吹き飛び、地面にバウンドしながら数メートルほど転がり続ける。
そして、転がり終わると、その身体をぴくりとも動かさなかった。
「ゼェ…ゼェ…」
邪神が動かないことを確認し、一刀は脱力し地面に膝をつく。
たった一撃。その一撃に全身全霊を賭けた蹴りを放てたことに、気力が尽き果てた。
「…桃香…愛紗…鈴々…みんな…俺、君たちみたいに…前に…進めること出来たのか…な……」
かつての仲間の名を呟き、ナイアのほうをチラッと見る。
首が折れ、地面に伏したまま微動しない。が、彼女の貌が一刀をみつめていた。
まるで勝利を称賛するかのように、微笑みを向けたまま。
その不気味なほど綺麗な死顔に、一刀はすこしも恐怖を感じなかった。
彼が感じるのはすこしの後悔と…哀しみだけ。
ツーン、と頬に一筋の涙が零れる。
その時、視界が暗転となった。
「…もう…だめ…限界……」ガク
亀更新なので投稿が遅れたり、失踪するかもしれませんがあしからず。
では、これからもよろしゅうお願いします。
では、つづけて投稿します。