真・カンピオーネ無双 天の御使いと呼ばれた魔王   作:ゴーレム参式

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 この作品は作者のTRPG動画好きと文章力の低さにより、テンポが悪かったり誤字脱字が多いです。
 それが嫌な人はお戻りください。


探索開始

 廃工場から数メートル離れた森林。

 そこには、一刀の愛車であるハマーH1が停まっていた。

 車内では一刀が一般人である草薙静花に一部を省きながら事情を説明していた。

 

「ふーん…。つまり、世界には魔法とか神とかそいうオカルトが存在するってわけね…」

「そういうこと。信じられない話だろうけど信じてくれる?」

 

 タブレットを操作しながら運転席に座る一刀は後ろの席で着替えている静花に言う。

 

「普通なら信じないわよ。でも、あんなモノ見せられたら信じるしかないじゃない」

 

 破れた服をルリが買ってきたシャツに袖を通す。

 車には一刀と静花の二人しかない。ルリはというと静花の服を買ってきた後、用事があると言い残して(瞬間移動で)どこかへ行ってる。どこかは一刀には予想できていた。

 ふと、ボタンを留めていた静花は視線を感じ、車の前方を向く。

 一刀は後ろの席を振り向いていない。が――、

 

「見ないでよ」

「見ないって。そもそも前を向いてるんだから見えるわけないだろう」

「……なら、どうしてバックミラーを動かしてるわけ?」

 

 ちょくちょくと、バックミラーを調整する一刀に静花はジト眼で向ける。

 一刀はタブレットをもったまま停止し、無言になる。

 視線を合わせないまま、十秒間。無音の空間は静花の溜息ひとつで破かれた。

 

「言い訳なら聞いてもいいわ…」

「そう、ならば…――発達途中の少女は良い!」

「このえっち!? すけべ! 変態! ロリコン!!」

 

 性欲に正直な一刀に、静花が後ろから彼の頭をポカポカ叩く。

 羞恥心で赤面し、わりと強める殴る静花。が、一刀の耐久性ではダメージは1しか与えられない。むしろ、少女の可愛げな抵抗に、一刀は萌えながら「あっははははは」と笑う始末だった。

 逆に喜ばせていると理解した後、静花は不満げな顔で座席にどっしりと座った。

 

「たっく。それで北郷さんは最近話題になってる失踪事件を追ってるわけね。でも、どうしてあの廃工場の来たの? ニュースじゃー事件が誘拐がそれとも失踪かわからなかいほど手掛かりはなかったはずなのに?」

「俺の権能の化身のひとつ【暗黒のファラオ】の予言でね。事件解決の手掛かりはあの廃工場に行けってことだったんだけど、まさか神話がかかわっているなんて予想しなかったよ。しかも、一般人にまで巻き込まれていることも…ね」

「その説はどうも。おかげで助かったわ」

 

 もしも、あのままだったらエロ同人誌みたくなっていた。と、身震いする静花。

 だが、ここで怖がっては変態に嘗められるため強気を装い、肩をすくめていた。

 なにせ、まだ問題は解決してないのだから。

 

「それで…家には戻らないつもりはないんだね?」

「当り前よ。ここで『ハイ、サヨナラ』なんて嫌ッ。私だって自分で首を突っ込んだことだもん。最後までやり遂げたい…。それにあの子…最後まで私に助けを求めてた。ここで逃げたら、あの子を裏切ることになるし、私だって後悔が残る! だからお願い! 私も連れって! 助手でもなんでもするからさぁッ!!」

 

 上半身を運転席に乗り出し、一刀の真横で頼み込む。

 ちらっ、と、一刀がチラ見する。

 強く、真っすぐな瞳で、こちらを睨むかのようにみつめていた。

 魔法使いの爺による過酷な修業時代、別世界の友人たちの行動をまじかで見ていた一刀は知っている。

 …そういう目をする人は絶対に身を引かない。ということを。

 

「はぁぁ、わかった。同行を許す。でも危険になったら安全なところに非難すること。それが条件だ」

「わかった!」

 

 ガッツポーズをする静花に一刀は長い溜息を吐く。

 悪漢に襲われかけ、さらにグールに恐れていたはずの普通の少女。それでもなお、危険に突き進む蛮勇らしき勇気と義理堅い義侠に関心を得る。

 いったいどういう教育をしているのか、彼女の親族の顔を見てみたいものだ。

 

 

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「はっくしょんッ!?」

「あら? 護堂、風邪でもひいたの?」

 

 

 

 

 

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「それで、これらからどうするの?」

「ん~とりあえず情報を整理しようか」

 

 一刀は静花にタブレットを渡した。

 タブレットには及川から渡された書類が添付されており、失踪者たちの個人情報などが閲覧できる。

 

「行方不明になってるのは君が助けようとした子を合わせて17名。年齢も職業もバラバラ。失踪した人たちに家族、彼らに共通する点は接点は性別が全員、男。その他、恨まれるような過去も、あやしい関係者もなし」

「見事にバラバラね」

「そうでもないんだよこれが。親の職業をみてみろ」

 

 静花はタブレットの画面を操作し、親族の職業の欄に目を通す。

 

「えぇーと。なになに…鋏職人、刀鍛冶職人、金属加工工場のベテラン加工職人…、全員職人の家系をもつ人たちばっか」

「そう。(工場に落ちてた学生証からミーミルの瞳で調べてわかったけど)君が助けようとした子も老舗の金具職人の孫でね。行方不明全員が職人の親をもち。全員が金属…《鋼》に関係する職人たちだ」

 

 ――《鋼》。という言葉を強調する。

 それが何か、と首を傾げる静花に、一刀が説明する。

 

「俺たちカンピオーネにとっては《鋼》はある神々の性質を示す重要な象徴でね。もしかしたらこれに関係するんじゃないかと思うんだ」

「でも、それは()()()()の視点であって今回の事件と関わってるわけじゃ…」

「もちろんこれは俺の憶測だ。でも、ならどうしてあんな化け物が出てきた? いっとくけど今の魔術では屍を怪物にすることができるのは高位の魔術師か、現在の魔女、もしくは神か俺たちカンピオーネくらいだ。しかも、あれだけ神話に近いグールとなると、今回の事件の背景になにかしらに神話、まつろわぬ神が関わっている可能性が高い」

 

 ――まつろわぬ神。

 それも一刀の説明に出てきた単語だ。

 神話という箱庭から抜け出した神であり、自由奔放に世界を渡り災いを撒き散らすはた迷惑な存在。と、静香はそう捉えている。

 

「まつろわぬ神ねぇー、説明されてもあんまりピンってこないけど、あいつら(グール)より凄そぉうねぇ…。まっ、神様だからすごいのはあたりまえか」

「神と言っても各々のアイデンティティーによって強さは違うけど、標準ならグールに比べられるほどのもんじゃないよ。まつろわぬ神っていうのは」

 

 時々種族のパワーバランスが崩れるけど、と苦笑して呟く一刀。

 そんなとき一刀のスマートフォンが鳴った。

 一刀はスマートフォンを手に取る。

 

「案外仕事が早かったな」

「誰からなの?」

「アラブ地方で商いをしてる知り合いから。アラブでなにか不審な動きがないかって調べてもらってたんだ」

 

 グールを片付けた後すぐさまイランにいる知人に調べ物を頼んでいたのだ。

 知人より送られてきたメールに読む。

 

「どうやらイスライムの過激派のマフィアのひとつが最近沈黙して水面下で何かをしているってぽいな。その何かはまだ情報不足だけど、おそらく邪悪な魔術結社になったってもっぱらの噂らしい」

「その人たちってもしかして私を襲うとした…」

「おそらく。しかも証拠を残さないために仕掛けもしてあった」

 

 実際グールと対面したとき、一刀は〝ミーミルの瞳〟でグールたちの正体を解析もしていた。

 そこから悪漢たちはトラブルまたは障害となる者が現れた場合、死亡した瞬間よりグールになるよう魔術を仕込まれていたのが分かった。

 また、その魔術系統は現代魔術より神話の魔法近いもののため、おそらく神祖(堕ちた神)、もしくは神と関わり合いがある者が絡んでいると一刀は推測している。

 静花は用意周到な黒幕に顎を当てて考える。

 

「そこまでして何をやろうとしてるのよ、その黒幕は…!?」

「それが分かればこっちだって苦労はしないって。さっきの推理だってまだ仮説の域だし。確固たる証拠があればこの事件の背景が分かるんだけど…」

 

 他にも手掛かりとなる情報をグールから解析したが、これといった黒幕に関する情報がなかった(そのため処分として塵残さず燃えしたのかこのためである)。

 犯人につながる手詰まりな状況に、頭を悩ます中、ふと、あることを思い出し口ずさむ。

 

「…『悪徳を囁くもの。千夜の想いを胸に、千里の砂漠を超え、七つの海を渡り、かの地にて辿り着かん。17人の鍛冶屋の息子たち、勇者の矛で命奪えれば、二匹の蛇は目を覚まし、悪の王はここに降臨する。されど天に掲げた光輪に燃える火を飲み込めば、悪の王、真なる魔王へと覚醒せん」

「なにそれ?」

「廃工場に行く際〝彼女〟が最後に言った予言。俺がここまで仮説を立てた理由だ。急いでたから忘れてたよ」

「17人の鍛冶屋の息子…それって誘拐された子を意味しているの?」

「あぁ、それに千夜、砂漠、七つの海はアラビアの物語でよく使われてる単語だ。しかもアラブ伝承のグールまでもがでてきたんだ。背景にいる黒幕はたぶんアラブかそれに系譜する神話なのは間違いない」

 

 でも…、と言葉を紡ぐ。

 

「勇者の矛と悪の王、そして真なる魔王。この三つが何を示しているのかどうか…(ミーミルの瞳で調べようにも不確定な情報だと検索不能になるしなぁ…)」

 

 〝ミーミルの瞳〟。森羅万象の事象、万物を網羅し、計算し、そして、完璧な結果を導き出すことができる権能。しかし、それは視覚することで十分に発揮するものであり、そのほかにもいろいろとな制限と欠点がある。例えば、一定の情報さえ与えれば答えを検索・表示することができるが、不十分、あるいは曖昧な情報で検索すると検索不能となるという。そのため、情報を閲覧するには的確なキーワードが必要不可欠になる。

 そして、一番肝心なのが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そこんところは念入りだと一刀はどこかの集合意識に思う。

 

 この手詰まりな状況に、一刀は頭を掻きながらこれからどう行動するか考えていると…、

 

「おやおや、まるで謎が解けない二流の中年探偵のような顔つきですね一刀」

「うっわ!? また…!?」

 

 いつのまにか(おそらくテレポーテーションで)ルリが助手席に座っていた。

 突然現れたルリに静花はまたもや驚く。

 

「おかえりぃ~ルリ~。…んで、どこ行ってたんだ君は?」

「道中のラーメン屋が極大ラーメンの大食いをやってたので探索前に腹ごしらえをしてました。げっぷ」

 

 ルリはラーメン屋で極大ラーメンを食べていることを思い出す。

 それはスープを煮込んでいる底が深い鍋にチャーシュー、メンマ、ナルトが山盛りにのったラーメンであり、そばで店主らしき男がストップウォッチを片手に、顔色を変えず具の山から極太麺を小さな口でズルズルと余裕で啜るルリに驚愕している光景であった。

 

「こんなときにラーメン食ってる場合じゃないでしょう! ってか、小さい身体で大食いできたわねぇあんた…!?」

「人を大食いキャラにしないでください。私の胃袋はだいたい赤城さんくらいの容量しかありませんよ」

「十分大食いチャンピオンになれるわよそれ!? あんたはギャル〇根かっ!?」

「ギャルではありません。電子の〇精です」

「いったん、pixiv辞典で真似たキャラの設定見直してこい。もしくは本家(本人)に謝れ」

 

 静花は激しくツッコミ、一刀呆れてツッコミをいれた。

 けれど通常運転のルリは無表情で冷淡に言う。

 

「そうそう、ラーメンを食べきった景品でこんなものをもらいました」

 

 袖から取り出したのは一枚のチケットであった。

 チケットに『古代ペルシア展』と書かれていた。

 

「古代ペルシア展?」

「えぇ。横浜にある博物館でやってるそうです。一枚で団体三名までいけるので息抜きにいきませんか?」

「あのね。私たちは誘拐された人たちを探してんの。それに、事件の犯人はアラブ関係するみたいだし、ペルシアのこと調べれも時間の無駄。それよりも誘拐された人たちを地道に探したほうがいいってあたしは思うんだけど…?」

 

 と、進路を勝手に決める静花。

 だが、手がかりの無い中、そちらのほうが合理的だと一刀は思うのだが――

 

「…行くか。その展示会」

「へっ?」

 

 唐突にキーを回しエンジンをかける。ギアを動かしアクセルを踏みつけてハマーH1を走らせた。

 突然の行動に静花は「どうして?」という顔で尋ねる。

 

「静花ちゃん。たとえ関係の無い神話だっとしても神っていう原型は様々な神話を通して性質を変質させたものだから根っ子は同じ」

「つまり…?」

「ようは、他の神話を知ることは、神を…まつろわぬ神の出世を知るために必要なことなのです。それにペルシアも同じアラブ世界と割と関係があるので調べる価値はあると思いますよ」

「でも、それで黒幕の正体とか予言の意味が分かるわけ?」

「それを調べるために博物館に行くんだ」

 

 森林から住宅街の道路に乗り出し、博物館へ向かう

 

「調べるっていっても、誘拐された人たちはどうすんのよッ。予言だと生贄にされるっぽいんだけど…!?」

「裏を返せば生贄に捧げるまで時間があるはずだ。まぁ、それが何時なのか何時間後なのかわからないけど17人目が攫われた以上、あまり余裕はないな」

「だったら――」

「だからこそ、無駄なく行動するために手掛かりを探すんだ。たとえ、小さな希望でも砂漠の中のコンタクトレンズを探すことに同じであっても全力で手に入れる。それが確実に真相にたどり着くための近道だ」

 

 いまだ文句がありそうな目で睨む静花だが、真剣に語る一刀の言葉に唸ることしかできなかった。

 

「そう心配しない。ちゃんと同時進行で俺の眷属が東京中を血眼でさがしてるんだからなにか見つけてくれるはずさ。それに、この展示会にいけば何かが分かるって思うんだ…」

「…その根拠は?」

「直感」

「勘かい!」

 

 静花は我慢できず叫んでしまう。

 不満げな静花にルリは後ろを振り向いて……、

 

「カンピオーネの直感はわりと当たるので大丈夫ですよ。とりあえず、今は出た所勝負でいってみましょう」

「・・・・・・・あんたたち、もしかして当てずっぽうで仕事してない…?」

「「・・・・・・・・・」」

 

 返事がなかった。

 静花の一刀たちに対する信頼度が上りから下り坂になり、内心疲れを感じる。

 その心は、もはや不安しかなかった。

 

 

========================

 

 

 新宿区にある高層ビル。その最上階。

 そこはイランの財団の会長が会長室兼住宅として使用していた部屋。パーティー会場にできそうな広さに加え、壁側にはアラビアン風の置物や絵画が置かれ御香らしき煙が充満している。また、部屋の床には魔法陣らしき線が部屋の中心から描かれており、その上の天井には()()()()()()()()()がとりついた天窓があり、見上げれば昼の青空が一望できるようになっている。

 

「おかしい。別行動していた信者が死んだ。しかもグール化したのにもかかわらず」

 

 そんな部屋で、一人の男性が窓から外の景色を覗きながら独り言を呟いていた。

 褐色の肌に、無精ひげを生やし、一束にまとめたウェーブのかかった長髪で、上流階級だと思わせる高価なスーツに、時計にネックレスを纏っている。

 彼こそが、このビルのオーナーであり、財団の会長であることは一目瞭然であろう。

 

「並みの魔術師では我がグールたちを倒せないはず。ならばカンピオーネか? 否、日本のカンピオーネはまだイタリアにいるはず。だとすれば何者だ…?」

 

 顎に手を当てた考える男。

 されど男は考察することをすぐさまやめた。

 

「…まぁいい。誰であろうと生贄は揃えた。あとは預けているモノを取りにいかせればいいだけのこと」

 

 そう言って、部屋の中央まで近寄った。

 ちょうど、床の魔法陣らしき円の端につま先が届くところで立ち止まった。

 

「念には念を。新たに援軍を寄越すか」

 

 男性はアラビア語で呪文らしき言葉を紡ぎだす。

 すると、床の円が青色に光だし、部屋を満たす。

 輝きはすぐに失った。代わりに、男の眼前にはひとりの女性が居た。

 

「なんの用かしら…―――の魔神さま?」

 

 うっとりしたような和らげな顔つきに、小麦色の肌と豊満な胸。腰まで届く髪は流水と連想させる水色に波状のウェーブの美女であった。

 そして、特徴的なのは彼女の格好であろう。紐もしくはビキニとおもわせる肌色の水着。腰には花びらとハートをあしらったパレオ。金の腕輪に首輪、そして鎖状の冠。両手首と太ももには同じく肌色の衣らしきスライム状の膜が羽衣とズボンの役割をしている。

 その姿はまるでアラビアナイト世界から飛び出した踊り子であった。

 同時に彼女が人間でないことも容易にわかる。近寄り難い神秘的なオーラを撒き散らし、なおかつ、耳に当たる部分には魚のヒレらしきものが水色の髪の毛から露出していた。

 女性はくるりと回りながら、微笑ましく首を傾げて言う。

 

「ところでなに、その恰好…? 人の布を纏うなんてそれでも神の端くれかしらー?」

「むろん神さ。だが、我はその神すら背く神格。神としての矜持など微塵も持たんよ」

 

 マイペースな女性の問いに、男は自嘲して言った。

 

「さてと、こちらはいろいろと立て込んでいるので手短に用件だけ言おう。――おなじ精霊の端くれと汝に頼む。我が宿願のため汝の舞を我に預けてくれないか」

「断るわ」

 

 威厳を込めて言う男に、女性はやわらかげな口調で言い返す。

 

「私だって誇りある神の一柱だもの。無理やり呼び出したあなたに従う理由も義理もないわ」

「…そうか。()()()()()()()()。――よ、()()()()

 

 鼻歌を歌いながら男の周りを軽やかなステップで踊る。

 そんな中、男がポケットから手帳サイズの本を取り出し、表紙を撫でる。その瞬間、女性は悪寒に襲られ、途端に身体の自由が奪われ硬直する。

 突然の事態に女性が困惑していると、自身の意思とは無関係に男のほうへ身体が向いてしまい、そのまま彼の前に膝をついてしまう。

 何が起きたのか女性が分からず、女性は動かない身体で首だけ無理やり動かし男に視線を向ける。

 そして、男が手に持った本に気づいた。

 

「そ、それが原因ね…!?」

「くっくく、地上を彷徨っているといろいろと役に立つものを拾うこともあるのでな。かすかな繋がりを持つ貴様でも、神である我が触媒と使えば汝を召喚することも隷属することもできるのだよ」

「道具に頼るなんて卑怯だわ…!」

「卑怯? ふん、当たり前だッ。我は精霊であり魔神であり――である。神らしらなぬことしても当然であろう」

 

 むしろ誉め言葉だとばかりに誇らしげに胸を張った。

 恥辱を与えられた女性は悔しそうな眼で男を見上げる。

 そんな女性に、男は不敵な笑みを浮かべながら彼女に手を差し伸べた。

 

「それでは()()()よ。我と盟約を結べ。我が手足となり、悪の王の復活を手伝うのだ。代価は汝の自由。それでいいな」

「…わかった…でもあくまで従属神じゃなく同盟神としてだから。あなたみたいな乱暴者の奴隷なんて嫌なんだからね…!」

「くっくく、かまんよ。我が宿願が叶えれるなら、後はおぬしの勝手だ。好きにするがいい」

 

 不敵に笑う男は本をポケットに入れた。途端、女性の体の硬直が解ける。

 くるりと身体を回し動けるようなったことを確認した女性は、不満げな顔で窓へと歩く男の背中を睨む。

 

「もうすぐお会いできます。我が親愛なる君…―――様……!!」

 

 

 男はガラス窓から新宿の街を眺めながら、長年の想いを零すのであった。

 

 

 

 




 種馬の設定と権能は一章が終了したあとで追加していく予定です。
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