誰か文才下さい。
緑色の隊服と黄色の覆面を着用した雑兵達を、黄土色の巨人が蹂躙する。
黄土の色をした巨人の棍棒が逃げる獲物を叩き潰し、時折放たれるビームがその影すら残さずに蒸発させる。
違い過ぎる質量差に隊服は防具の役目を果たせずに叩き潰され、放たれるビームを雑兵達は防ぐことも回避する事も出来ず、射線に居た者達を文字通りに消し飛ばしていく。
無論、彼等も黙ってやられるままになっているわけではない。
恐怖に身体を震わせつつ、必死に立ち上がりながら銃を構え、雄叫びを上げながら発砲する。
だが、巨人の身体を傷つけるに至った攻撃は一つもなく、鬱陶しいと言わんばかりに振るわれる棍棒の前に、その抵抗は儚く感じる。
彼等も弱くはないのだろう。少なくとも、彼らが侵略しようとしていた惑星の人間よりは、武器も身体能力も勝っている筈だ(一部の例外は除くが)。
だけど、足りない。巨人と正面から戦うには不足、あまりに不足。
あるいは、その手にした武器に巨人を破壊しうる威力があれば、もしくは人外の域に達した身体能力の持ち主が居れば戦いになったのかもしれないが、この場にはどちらもない。
つまり、それは戦いなどではなく虐殺でしかなかった。
「……どうしてこんな事になったのかねぇ?」
「何というか、成り行きじゃないですか?」
元気にベガ兵の虐殺に勤しむデスアーミーのコックピットの中、呑気にジュースを飲みながらぼやく俺に、同じように寛いでどら焼きを齧っていたナビ子ちゃんが返す。
その眼下では蹂躙という言葉ですら生温く感じる、文字通りの虐殺が行なわれている。
……さて、何故こんな事になっているのか疑問に思っている方も居るだろう。
軽く説明するとこうだ。
俺とナビ子ちゃんは宇宙へ行く為に日本から観光も兼ねて船を乗り継ぎ北アメリカに渡り、寄り道ついでに
乗ったシャトルは間違いなく月と地球を結ぶ定期便。宇宙が慌ただしくなっているせいで割と高くなっているものの、お値段に見合うだけの乗り心地と快適さを与えてくれる素晴らしいものだった。
途中、ベガ星連合のミニフォーにシャトルが撃墜されるというハプニングがあったが、慰謝料代わりに命ごと頂戴したミニフォーに乗って俺達は月に到着した……まあ、頂戴したミニフォーの操縦を、ゾンビ兵にしたベガ兵に任せたのが失敗だったのだが。
ゾンビ兵はDG細胞に脳まで侵食されることで完成する生きた屍だ。
自我はほぼ消失し、DG細胞の根源である
大変言いにくいのだが……まあ、アレだ。自我が消えてるので命令しなきゃ自発的に動かない。その上命令に忠実に動くので状況に応じて柔軟に対応できない。つまりバカなのだ。
……さて、ここまで言えば察しの良い者ならば気づいているだろう。
俺はゾンビ兵に対し、安全な航路で月に向かえと命令した。
そう、
ゾンビ兵は俺の命令に忠実に従った。
月に戦力を置いているギガノスやガルファの勢力圏を避けつつ、最も安全な航路で月へと向かった。
そこまでは良かった。本当にそこまでは良かったのだ。
ミニフォーが向かった場所、ソレが俺達が向かおうとしていた月面都市の近くではなく、ベガ星連合の本拠地であるスカルムーン基地でさえなければ尚よかった。
ゾンビ兵は俺の命令を完遂した。
自分が知る限り最も安全な航路で、俺の命令通りに月に到着したのだ。
目的地と違う事に気づいたのはミニフォーから降りた直後、整備班と思われるベガ兵と対面した時だった。
『うわぁあああああああッ!!??』
『きゃぁあああああああッ!!??』
『ギャァアアアアアアアッ!!??』
俺とナビ子ちゃんは絶叫した。それに驚いたベガ兵も絶叫した。
驚きのあまりにベガ兵の頭を粉砕し、乗って来たミニフォーをデスアーミーに変えてしまった俺を誰が責められようか。
……と、まあ、そんなこんなで今はデスアーミーの中。ナビ子ちゃんと寛ぎながらスカルムーン基地を物色しつつ破壊活動中。逃げまわる仮面だか覆面だかをかぶったベガ兵を踏み潰しながら棍棒を振り回し、地球から持ってきたお菓子を喰いながらめぼしい物を求めて基地内を闊歩する。
途中、その辺の死体と残骸を使ってデスアーミー増やして引き連れつつ、やたらと煩い警告音を鳴らす基地内を突き進むと、大量の円盤獣が納められた格納庫に到達した。その円盤獣に紛れ一つだけセンスの違う、いや、どう見ても円盤獣には見えない機体が。
元祖スーパーロボットであるマジンガーZによく似てるが間違いない、偉大なる勇者で有名なグレートマジンガーで間違いないだろう……って、あれ? 何で此処にグレートが在るんだ?
「先日ロボット博物館が襲われたという情報が来てます。恐らくは量産型じゃないでしょうか? やや黒っぽいですし」
「あー…言われてみれば黒っぽいな。つー事はブラック・グレートか」
そんなやり取りしていると、徐にこちらに拳を向けて来たのでアトミックパンチか――と思ったら指を突き付け、外部スピーカーで何か喋り出した。
『フフフ、このスカルムーン基地をここまで荒らし回るとは見上げた奴等よ。だが! 俺とこのブラック・グレー「やかましい!」…おっと!』
偉そうな上に隙だらけ、ムカつきついでに空気を読んで棍棒を投擲。
マジンガー系列の機体でお馴染み、狙ってくださいと言わんばかりの頭部を狙ったのだがあっさり防がれた。
『おのれ口上の途中で攻撃とは…! だがこのバレン「突撃開始!!」てぬぅおおおお!?』
口上の途中、後ろに控えていたデスアーミー達がナビ子ちゃんの指示の下突撃を開始、突っ込んだ端から万歳アタックを敢行する。
こいつ自身も何か強そうだが、周りの円盤獣も怖い。少し勿体な気もするが、動かれる前に諸共破壊するに越したことはない。よって突撃させるデスアーミーを追加する。
「……結構耳に響きますねコレ」
「意外と効くんだから文句言わない! …っと、そろそろかな!?」
機体をデスアーミーからデスシュピーゲルへと変異させ、ブースト全開で突撃をかける。狙うは爆炎の向こうの黒っぽいグレート。
悪いなパイロットの人。貴様の口上なぞ聞く気は無いし興味も無い、その機体だけ置いていけ。
『おのれ一度ならず二度までも、だがこの程度で俺がってぬおおおお!!!!』
口上の途中、一気に接近してアイアンネットを発射。絡めとったグレートに飛び蹴りを叩き込む。
その衝撃に耐え切れず片足が四散するが、特に気にする事もなく組み付いて動けない様に拘束する。当然、グレートも引き剥がそうとするが、残ったデスアーミーが雲霞の如く組み付いて来るので簡単にはいかない。
「……そう長くは抑えられません。マジンパワーでも使われたら厄介です。手早く済ませて下さい」
「あいよー」
デスシュピーゲルのコックピットハッチを蹴破り、一気に跳躍する。
目指す場所はただ一つ、むき出しのコックピットがあるグレートの頭部。
「な、なんだ貴様は!?」
突然現れた俺に戸惑うパイロットの声。
デビルマンみたいな頭してるなーと、どうでもいい感想抱きつつ、俺はキャノピーを叩き割ってコックピットに侵入。銃らしきものを構えようとするパイロットの襟首掴んで外へと放り捨てる。
コックピット内に散らばってるガラス片を適当に片づけ、ついでにDG細胞を変異させない程度にグレートの中に潜り込ませ物騒な機構が付いていないかチェック。遠隔操作されたり自爆させられたら嫌なので念入りにチェック―――どうやら杞憂だったらしい。奪われる事を想定しないとか馬鹿じゃないだろうか、こんな事だからゲームとかでボス達にあっさり持ち逃げされるのだ。
「じゃ、ありがたく貰ってくわ!!」
ナビ子ちゃんを回収し、景気づけにブレストバーンを発射。
五万度の高熱で格納庫の壁に風穴を開け、残ったデスアーミー達を引き連れてスカルムーン基地から脱出した。
「……そういえば、あのパイロット名前なんだっけ?」
「さあ? 私は顔を見てませんから分かりませんが……スカルムーン基地に居たのですし、多分ガンダル指令かブラッキー隊長じゃないですか?」