バレンドス「俺に指図するな!俺は……」
ジグラ「”元”親衛隊長様、だろう?」
バレンドス「……くぅ、やればいいんだろう!」
ジーク「(何があったんだろう?)」
機械帝国ガルファの移動型巨大要塞「螺旋城」は、月の大地にその威容を示すかのように聳え立っていた。
地球を背に聳え立つ巨大要塞。そこに収められた戦力は、突出した超技術と宇宙や地上の勢力が入り乱れて混沌としている地球でなければ瞬く間に制圧できたのは疑う余地はないだろう。
いやー、月にあるって事しか知らんかったから、マジ苦労したわー。
「ベガ星連合がミニフォー飛ばしまくってるせいでデスアーミー出せませんからね……月を何週したことか……」
「ブラック・グレートの慣らしついでにちょっと物資や人員を頂いただけだっていうのに……ここまで恨まなくてもよくね?」
ギルギルガンを撒いてから約一週間。連中の追跡の手は緩むことは全くなく、月の空には異常とも言える数のミニフォーが飛び回っている。
目立つデスアーミーやブラック・グレートを出す訳にも行かず、俺とナビ子ちゃんは徒歩での移動を強いられる羽目となってしまったのである。
まったく、やり過ぎて基地の三割が全壊しただけだというのにこの恨みっぷり。あそこの責任者は間違いなく陰険でねちっこい性格をしているだろう。
「機械と同化できる素体兵に特殊能力を備えた3幹部、他の星の機械と同化している重機獣。いやはや、宝の山とは正にこの事だよなぁ」
「欲を言えば螺旋城ごと頂きたいものですが、相手は間違いなく月の最強陣営。欲張らず堅実に行きましょう」
「凰牙やギャンドラーが居なければ楽なのに……」
月に点在するベ三つの勢力の中でも突出した戦力を持つ螺旋城。
その戦力だけでも厄介だというのに、現在ここにはGEAR戦士電童の兄弟機である「騎士GEAR凰牙」と協力関係を結んでいる「宇宙犯罪組織」の異名を持つギャンドラーが滞在している。
いつもの様に数で圧せない現状、戦闘になったら分が悪いどころの話ではない。
というか確実に負ける。螺旋城の戦力に電童という作品での最強キャラが操るGEAR、歴戦の兵ぞろいのギャンドラーと正面から戦うという発想そのものが間違っている。
「そこは激しく同意します。ですがどうやって中に侵入するんですか?」
「安心してくれナビ子ちゃん。俺に良い考えがある!」
実はここに来るまでの間、俺はずっと潜入の方法について考えていた。
普通に入ったらまず間違いなく、問答無用で中に居る素体兵士に襲われるだろう。
どうにか見つからないように行きたい所だが、螺旋城は「御館様」と呼ばれている巨大コンピューターが制御している。
デスシュピーゲルの迷彩能力があれば素体兵士の目は誤魔化せるかもしれないが、デカすぎて見つかる可能性が高い。よってこれは却下。
ならばこのまま侵入するという手もある。が、あそこにはガンダムファイター並みの戦闘力を持つ凰牙のパイロット「アルテア」やギャンドラーの幹部がいる。白兵戦などしたら間違いなく殺られるのでこれも却下。
よってここはそれなりの戦力を保持しつつ、安全で目立たない手段が必要だ。
さてどうするかとここまでの道中で頭を捻って考えた結果、俺は久しぶりに天啓を得たのである。
「取り出しますはクリムゾンの施設から頂いてきたCCと軍から頂戴したエステバリス! これさえあればボソンジャンプで行きも帰りもバッチりよ!!」
いやー、コンテナ担いで歩くのは意外としんどかったわ。
「デカいコンテナ担いで何企んでるかと思えば……というか、内部の座標とか分かってます? ジャンプ先が壁の中とか嫌ですよ」
「大丈夫! ジャンプ先が壁の中でも俺等は(多分)死なない! もしもの時はもう一回ジャンプして脱出すればいいだけさ!!」
「……エステバリスのエネルギーはどうするんですか?」
「大丈夫、バッテリー代わりにジャンク屋で買ったバッタたくさん付けてるから」
「…………重量過多で機体が壊れますよ?」
「大丈夫、強度上げる為にDG細胞たっぷりだから」
「………………隠密行動」
「大丈夫、デスシュピーゲルの迷彩能力を付与してあるから」
「……」
「……」
「…………もう好きにして下さい」
「うし、じゃあ逝くか!」
◆◆◆◆◆
「うおぉぉぉぉぉっ! 走れエステバリスーーーーーっ!!!」
「うわあああああん! 好きにして下さいなんて言うんじゃなかったぁあああ!!!」
『クソッ、放しやがれ!!』
脇目もふらずに全力疾走する俺達と戦利品を乗せたエステバリス。
新品同様だった侵入前とは打って変わり、装甲は傷だらけな上に片腕は無い。その上DG細胞による修復が追い付いていないのか、各部で黒煙まで上がっている。
その後ろからは凄い数の素体兵と妖兵コマンダーがぞろぞろと追ってきている。おまけに―――
『待たんかいコラァ! アネゴのメドゥーサとバラバット返さんかい!!』
関西弁で喋る妖兵コマンダー、
左腕が無いせいでバランスが悪いのか若干ふらついているものの、それでもその速度は決して遅くはない。前にいる素体兵や妖兵コマンダーを撥ねながら、どんどん距離を詰めてきている。
「どうしてだ、どうしてこうなった!?」
「どうしたもこうしたもありませんよ! 貴方が適当なイメージで跳んだせいに決まってるじゃないですか!! 壁の中どころかギャンドラーの幹部の頭上に跳ぶとかどんなイメージですか!?」
「不可抗力だよ!? 俺は御館さまの目の届きにくい場所ってイメージしてジャンプしただけだし!!」
「それでギャンドラーが滞在してる区域に跳ぶとか馬鹿ですか!?」
「馬鹿ってなんだ馬鹿『逃さんで!!』って危ね!?」
放たれたチェーンナックルを躱し、態勢を立て直しつつエステバリスを走らせる。
どういう切欠でこんな事になったのか、それを語るとなるととても長くなってしまうので割愛……いや、本当はそんなに長くない。
詳しく説明するとこうだ。
俺達はエステバリスに乗り込んだ後、無事に螺旋城の内部へと跳ぶことに成功した……成功はしたのだが、跳んだ先が問題だった。
俺達が跳んだ先、其処は螺旋城に滞在しているギャンドラーに用意されていた区域、その中でも一際厄介なギャンドラー幹部であるディオンドラの部屋だったのだ。
そして何よりも問題なのは、俺達が出現したのはディオンドラの頭上だった事だ。
……うん、ぶっちゃけた話をするとあれだ。
思いっきり踏みつぶした。赤い配管工が茶色のキノコを踏むが如く踏んづけた。
如何に歴戦の女傑といえども、流石に寛いでいる時に機動兵器が落ちて来るとは思っていなかったのだろう。
下敷きにされた当人も思わなかっただろうし、踏みつぶした事に気づいた俺達も本気で焦った。
焦るあまりに近くに有った妖剣メドゥーサを回収し、衝撃音を聞きつけてやって来たデビルサターン達を蹴散らし、合体される前に一人を人質にして逃走した事は些細なことだろう。
そこまでは良かった。本当にそこまでは良かったのだ。連中が人質を気にせず撃って来るまでは。
正直な所、俺は宇宙犯罪組織のブラックっぷりを甘く見過ぎていたのだろう。
エステバリスの腕の中で踠いてるデビルサターンNo.2の事を取り返そうとしてるのは他のデビルサターン達だけで、他の連中は気にした様子も無く、寧ろ死ねと言わんばかりに撃って来るとは思いもしなかった。
連中に仲間意識は無いのか?
そんな疑問を俺は抱いたが、自陣でのランキングを上げる為なら仲間を闇討ちする事すら厭わない連中にそんなものある筈もない訳で。
そんなこんなで、俺達はこんな状況に陥った訳である。
「回想してる場合ですか!? 何でもいいから早くジャンプして下さい!! 三機将とか凰牙が来る前に!!」
「言われなくてもそのつもりだよ!」
俺は、決意を秘めて機体を後ろに向ける。
逃げる事を止めた此方に驚いたのか、追って来ていた連中もその足を停めた。
腰部のブースターを数秒後のロケットスタートに備えて噴かしておく。
今から放つのは、窮地に追いやられた者が行なう最大最後の攻撃。
『なんや、ようやく諦めたんか? だったら大人しく「ファイナルカミカゼアタック!!」ってまだやるんか!!』
特攻、神風、万歳突撃。
追い詰められた者達が行なう、最大にして最後の攻撃。
無論、こんな悪あがきのような突撃をわざわざ受けてやる奴などいない。
迎撃しようと残された右腕を振り上げるデビルサターン6もその一人だろう。
だが、俺の本当の狙いは貴様ではない。
『何やと!?』
『■■■■■!?』
『グェッ!!』
此方を迎撃しようとしたデビルサターン6をスルーし、その隣に控えていた素体兵に組み付く。
組み付いた際、握りっぱなしだったデビルサターンNo.2が苦悶の声を上げるが、それを気にする者は一人もいない。
全身に取り付けたバッテリー代わりのバッタにわざと負荷を掛けつつ、CCを取り出してイメージを伝達。
『な、何や? 自爆でもするんか? お前等、取りあえず距離を取るんや!!』
B級ジャンパーなのでそれ程遠くには跳べないが、それでも追い詰められているこの場よりは遥かにマシだ。
目標は……取りあえずこいつ等の遥か後方!
そう念じ始めるとこっちに目を奪われているデビルサターン達の背後、遠く離れた場所に七色の光が現れた。
「この借りは必ず返すからな! 月夜だけだと思うなよ!!」
『な、何言うとるんや? ここは月やで?』
負荷を掛けたバッタを一気に自爆させ、その爆発を目くらましに使い、エステバリスは光に包まれた。
『な、何が起こったんだ!?』
『■■■■■!?』
「ジャンプ成功! 感づかれる前に早く逃げてください!」
「分かってるよ!!」
そして、デビルサターン達の遥か後方に無事にジャンプした俺達は、一緒にジャンプしたデビルサターンNo.2と素体兵が余計な事をする前に脱出するべく行動を開始。
「(……つ、次来る時はもっと上手くやろう)」
そんな事を思いながら、俺達は足早に螺旋城を後にした。
その後、今回の件で螺旋城の主が動くのが遅すぎた三機将の廃棄処分を本気で考えたり、電童を捕獲して帰還したアルテアに螺旋城の主が嫌味を言われたり、ギャンドラー内のディオンドラ達の評価が一気に下がったのは、俺のせいでは無いだろう多分。
ガルファ皇帝「使えぬなら、食わせようか? 螺旋城」
ラゴウ「グルルルル!」
螺旋城「((((;´゚Д゚)))」